戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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屋敷から脱出すると弦十郎がボク等が怪我していない事に安堵する。

 

「怪我はないか、二人とも」

 

「ああ、爆発も崩落による被害はボク等にはないよ」

 

「良かった。それで中の現状はどうだったんだ?」

 

「酷い有り様だ。テロリスト達が何人も殺されていた。特に雪音クリスの居た部屋が一番酷かった。多分、あの場所で激しい戦闘があったんだろう。今となっては爆発で瓦礫の下に埋れたり破壊されたりで調べるにしてもかなりの時間と労力をかけると思う」

 

ボクは弦十郎に伝えると腕を組んで唸る。

 

「フィーネによる何かの手掛かりが有ればと思っていたのだが…」

 

「ここまで破壊されたらあんまり目ぼしいものも見つからないかもしれないね」

 

そして腕を組んだ弦十郎はボクの後ろについて来ていた、クリスに問う。

 

「クリス君、君は何の為にここにいたんだ?」

 

「私はフィーネが持っているソロモンの杖、それにネフシュタンの鎧を奪う為にここに来た」

 

「なるほど。だがフィーネはその場におらず、ガンヴォルトと出会ったのか」

 

その言葉に頷く。

 

「君は少し前まで、フィーネと協力関係であった君なら何か彼女の目的を知っているんじゃないか?」

 

クリスに問う弦十郎は悩むクリスが口にするのを待った。

 

「私もフィーネの本当の目的は分からない。フィーネは最初は私と同じ目的と言ってはいたけど、フィーネ自身は常に私に対して世界を一つにとしか言っていなかった」

 

「世界を一つに…それはいったい?」

 

「雪音クリスと同じ目的なら、それが意味するのは争いのない世界という形で統一すると思うけど、それなら何で完全聖遺物を集めていたんだろう?」

 

フィーネの謎が深まるばかりで、特に進展もしなかった。

 

「このままここで悩んでいても仕方ないだろう。ここの調査は二課の本部から了子君を合わせた調査チームに任せて、俺等は俺等で出来る事をするぞ」

 

そう言って弦十郎は撤収する様に伝える。

 

「ごめん、弦十郎。ボクはまだ周囲の捜索をするよ。可能性は低いかもしれないけど、フィーネの痕跡があるか探してみるよ。それにこの前この子に聞いたテロリストの頭目、アッシュボルトを探ってみる」

 

「そうか。だったら止めはしないが、何か見つけたら連絡と深追いはするなよ。それとクリス君。君にも協力して欲しいんだ。フィーネを…テロリストを止める為に」

 

「…分かった。だが、私は私自身のやり方でやらせてもらう」

 

弦十郎にそう伝えると弦十郎は少し複雑そうな顔をする。

 

「それでは君とこちらで連携や情報の伝達が」

 

「それならこいつに連絡して伝えればいいだろ」

 

クリスはボクの方を指差してそう言う。

 

「いやしかし…」

 

「なら協力はなしだ」

 

そう言われて弦十郎は折れてその要求を呑んだ。ボク自身は特に不満はないがなぜボクをワンクッションに挟まないと協力しないのかが謎であった。

 

そして弦十郎はクリスに通信端末を投げ渡すと、良い報告を期待していると言って本部へと帰っていく。

 

だけど、弦十郎。投げた通信端末の説明をしていってくれても良かったんじゃないか?と思いながら、急に渡された端末が何なのか分からず、観察していた。

 

ボクはクリスの持つ端末を一通り、説明をし終えて、クリスになぜボクを通してでないと協力をしないのか聞いた。

 

「私が今信用しているのはお前だからだよ。お前の所属している組織を信用した訳じゃない」

 

信用しているのは嬉しいが、少しめんどくさいのではなかろうか。そんな事を考えながら、ボクはクリスに何かあれば連絡をしてくれる様に頼むと、鍵を一つ渡し、自分の端末から位置情報をクリスの端末に送った。

 

「前みたいな所で身体を休ませているんだろ。しっかりと休める様にその場所を使ってくれても構わないから」

 

「お前!?自分の家の鍵を簡単に渡しすぎだろ!?」

 

「何を勘違いしてるか知らないけど、それは家の鍵だけどボクの住んでいる部屋とは別で、他で借りているマンションの鍵だよ。友人が二課の運営しているマンションに来てボクの部屋にあるダートリーダーや戦闘服とか見られたら困るからね」

 

そう伝えるとクリスは何処か安堵したとも残念そうとも取れる複雑な表情を浮かべた。

 

「その部屋なら好きに使ってくれて構わない。それじゃあ、ボクは行くから、何かあれば連絡を。それと危険な事はなるべくしないで」

 

そう言ってボクは再び屋敷へと戻ろうとするとクリスがボクを呼び止めた。

 

「この中をまだ探すってんなら、私を連れて行け。多分、手掛かりになりそうな所の心当たりがある」

 

「何でボクだけに?」

 

「さっきも言ったが、今信用しているのはお前だけだからだ」

 

そう言ってクリスはボクの返答を待たず、屋敷の中に入っていった。ボクはクリスに待つように言ってクリスに危険な事を伝えるが、連れて行かなければ教えないと言われ、仕方なくクリスと崩れそうな屋敷の中へ向かった。先導しながらクリスの指示通りに進んでいく。辿り着いたのは先程戦闘の爪痕を深く残していた場所であるが、ほとんど瓦礫によって埋まっているような感じだ。

 

クリスはその奥に何かあると指示した為、指示通りに瓦礫を雷撃で壊しながら進むと爆発の衝撃により、破壊されたパソコンのようなものがあるだけであった。

 

「この辺りだ」

 

そう言うとクリスは前に出て瓦礫を指差した。

 

ボクはクリスに離れるように言うと雷撃を放ち、瓦礫を次々と粉々に粉砕していく。

 

そして、赤いカーペットが姿を表す。爆発する前にもあったが何の変哲もないカーペット。クリスはそれを掴んで取っ払うと石畳の床が露になる。

 

「確かこの辺りにあったはずだ」

 

クリスは床を見て何かを探し始める。

 

「そこに何があるの?」

 

「フィーネがこの辺りで何かしているのを何回か見た事あるんだ。私も詳しくは知らないから何があるかは知らない。でも、私にも隠していたんだ。きっとフィーネの本当の目的が分かるかもしれない」

 

それを聞いてボクもクリスと共に捜索する。そして数カ所の石畳の床に不自然な浮き上がりを見つける。それを押してみると石が開き、電子錠が見つかった。

 

「これは?」

 

「私が知るかよ。でもこれを解けば何か分かるはずだ」

 

ボクは電子錠に手を翳し、ハッキングをして解除する事に成功する。

 

「…あんたのそれ、どんだけ便利なんだよ…」

 

「このくらいならね。それより解除出来たけど何があるか分からない」

 

気を引き締めて、辺りを警戒する。そして微かに響くモーター音。その方向に目を向けると先程の破壊されたパソコンのような場所が動き、人が通れそうな穴が現れた。

 

そちらに向かい穴の内部を確認すると梯子で数メートル程の深さで下には微かな灯りが見える。

 

「何だこれ?」

 

「ボクにも分からない。でも、この下に何かあるね。ボクが先に行って下の安全を確保してくるよ。君はその後に降りてきてくれ」

 

クリスはその言葉に頷き、先に下へ降りる。

 

降りた先は研究室のような場所であり、破壊されているがパソコンなどが並んでいる。だが、その中で異彩を放つ真ん中に置かれた三つのポッド。中身には何が入っていただろうか。怪しいが、まずは安全を確保しておく。

 

特に危険がある訳ではなかった為、クリスにも降りてきてもらい、共に隠されていたこの部屋の捜索を開始する。

 

「こんなとこに何でこんな部屋が?」

 

「君にも隠していた部屋は何かの研究をしていたみたいだけど、一体何を?」

 

「何だこの絵は?」

 

クリスが何か見つけたのか、A4サイズの紙をボクに見せる。

 

そしてその紙に映ったものを見てボクは驚愕する。

 

普通の人がそれを見たら幾何学な模様が描かれただけの絵にしか見えない。だが、ボクや二課の皆が見たらこの模様は聖遺物が起動する際に発するアウフヴァッフェン波形だと分かる。

 

だが、このアウフヴァッフェン波形が問題なのだ。

 

そこに描かれていたのはボクの蒼き雷霆(アームドブルー)に宿る電子の謡精(サイバーディーヴァ)と同様の蝶の翅を模した波形。そして以前了子が見せてくれた波形と異なる、蒼き雷霆(アームドブルー)と違う波形が組み合わさっている。

 

そして、それと同時にこの波形の能力にボクは何故か既視感を覚えた。この波形は今回初めて確認した。

 

だが、フィーネが何故こんなものがこの場にあるんだ。あまりの驚愕の事に固まってしまう。

 

「おい、どうしたんだよ?」

 

クリスはそんなボクに、対して聞いてきた事で我に帰る。

 

「…ちょっと、この模様を見てね。アウフヴァッフェン波形だよ。クリスもシンフォギアを纏う時に発生する波形」

 

「こんなものが出てたのか。それでこれはフィーネに繋がる手掛かりにはなりそうなのか?」

 

「これが何の聖遺物の波形なのか分かればだけどね。二課の調査班に確認させてみるよ。これはボクが持っていてもいいかな?」

 

「私が持ってても何の役にも立たないならお前に渡してやるよ。しかし、フィーネはこんな所に何を隠していたんだ?」

 

クリスは特に発展がないこの場を眺めながら言った。

 

だが、フィーネに関わる情報がなかったにしても今まで不明であった、シアンの持つ第七波動(セブンス)電子の謡精(サイバーディーヴァ)を持つ何かを知る事が出来た。

 

それは聖遺物であり、フィーネが持っている事。

 

フィーネがそれで何をなそうとしているのかもその聖遺物を持っている理由も分からない。

 

だが、シアンの行方の手掛かりとなるのならば、必ずそれを見つけなければならない。

 

ボクはクリスの言葉に分からないと言いつつも、これは一体何の聖遺物なのか。

 

そして、第七波動(セブンス)を知るテロリストの頭目、アッシュボルトにも関係しているのか。考えても答えは出ない。

 

「ここにはこれ以外何もなさそうだ」

 

そう言ってこの場を後にした。クリスと共にその部屋を出て、元の場所に戻ると、ボク等は他の部屋も捜索していく。

 

「フィーネに繋がりそうなものはもう残ってなさそうだね…何か他に手掛かりになりそうな事はある?」

 

「…確か、カ・ディンギル…だったか?フィーネが最近になって言っていたような気がする」

 

「カ・ディンギル…確か、メソポタミアの都市の名前だった気がするけど…意味は神の門だったかな?」

 

「何でそんな事まで詳しいかは聞かないけど、手掛かりになりそうか?」

 

クリスは力になれているのか不安そうに言った。

 

「いや、それだけでも十分だよ。ありがとうクリス」

 

その言葉を聞いてクリスは胸を撫で下ろした。

 

「その件も弦十郎に伝えておくよ。もうここにも手掛かりも無さそうだし、クリスも疲れたろ?家に案内するよ。そこで今日は休んでて」

 

そう言ってクリスと共に屋敷を後にした。

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