戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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ボクはフィーネが向かったデュランダルの保管場所、アビスへと足を踏み入れる。底の見えぬ穴が広がる空間。

 

「シャフトが降りている。動いていない所を見るとフィーネはもうデュランダルの下に!」

 

あるはずのシャフトが既に降り、動きを停止している事からフィーネは既にデュランダルの元へ辿り着いていると推測したボクは何の躊躇いもなく、底の見えぬ穴へと飛び込んだ。

 

今までに飛んだ事のない高さだが、生体電流を活性化させた肉体。着地前に雷撃鱗で降下速度を落とせば何とかなる為に躊躇わない。

 

ここで躊躇えばフィーネが何をしでかすか分からないからだ。

 

降下に適した体勢に移り、ボクは先の見えぬデュランダルの保管されているエリアまで加速しながら落ちていく。

 

そして、数十秒でフィーネがデュランダルを取り出している所が見える所まで降りてくる事が出来た。

 

ボクは体勢を変えて、腕を構える。

 

「煌めくは雷纏し聖剣、蒼雷の暴虐よ、敵を貫け!」

 

腕から迸る雷撃が手へ、そして翳した手の前に剣の形へ収束していく。

 

「迸れ!蒼き雷霆よ(アームドブルー)!スパークカリバー!」

 

その瞬間に現れる巨大な雷の剣。

 

「やはり、来たか。ガンヴォルト」

 

フィーネはボクの存在に気付き、どうやらここまで来る事を予測していたのか焦りは見えない。

 

ボクはフィーネからデュランダルを遠ざける様に剣を構えて振るい、デュランダルへと続いていた足場を破壊してフィーネと共に更にアビスの深淵へと降下していく。

 

「了子!いや、フィーネ!ボクがここで貴方を止める!そして持っている聖遺物を…いや宝剣を、天叢雲を渡してもらう!」

 

「その事にも気付いたのか…いや、クリスか。余計な事を…お前に余計な事を話してくれたな。やはり、あの時に処分していれば…」

 

その言葉と同時に、ボクは落ちる瓦礫を足場にフィーネへと接近して拳を叩き込む。

 

「そんな事の為に雪音クリスを殺そうとしたのか!本当の事を話さず、自身の目的の為に雪音クリスの人生を狂わせて殺す!?ふざけるな!」

 

フィーネはかつてのあの人、アシモフの様に。要らないと判断すれば切り捨てる。そんなの間違っている。それに、あんな経験をするのはもうボクだけで十分だ。

 

拳を受け止めたフィーネはそのまま蹴ろうとするが、ボクはダートリーダーを持つ手でその軌道を逸らしてフィーネを蹴って距離を取る。

 

「駒をどう扱おうが私の勝手だ。まあ、お前の場合は前に聞いたお前自身の過去に重ねてしまうのも無理はないがな」

 

「重ねて何が悪い!苦しみを味わった事があるからこそ、ボクは同じ境遇に遭いそうな雪音クリスを救いたいんだ!」

 

「そんなもの偽善に過ぎない」

 

「偽善でも構わない!誰かがあんな苦しみを味わうくらいならボクが止める!」

 

そしてフィーネと共にようやく降り立ったアビスの深淵で、ボクはダートリーダーを構え、フィーネと対峙する。

 

「あの子の到着まで少しだけ付き合ってあげる」

 

誰かを待っている様だが、そんな事は関係ない。増援が来る前に捕えればいいだけだ。

 

「言っておくが、ノイズの様に簡単にいくと思うなよ」

 

そう言ってネフシュタンの鎖を操り、ボクへと放つ。

 

雷撃鱗を展開して鎖を弾き、展開したまま、フィーネへと駆けていく。

 

フィーネは地面へともう一方の鎖を放ち地面を持ち上げ、土塊をボクに向けて放り投げる。

 

「無駄だ!そんな攻撃、ボクには通用しない!」

 

雷撃鱗に触れた瞬間に土塊は崩れ去り、消滅させたがフィーネのそこにはない。

 

「上か!?」

 

ボクは素早く上に視線を向けるとフィーネは以前クリスの使っていた光の玉を二つ作り上げてボクに向かって振り下ろして来た。

 

「天体の如く揺蕩え雷。是に到る総てを打ち払わん!迸れ!蒼き雷霆よ(アームドブルー)!ライトニングスフィア!」

 

ボクは素早く言葉を紡ぎ、公転する三つの雷撃の球体を出現させると二つの光の玉を飲み込んで消滅させた。

 

「小賢しい!」

 

フィーネは叫び、再びボクに向けて光の玉を出現させて投げ放つ。

 

スキルはさっきのスパークカリバーとライトニングスフィアのせいで弾切れだ。もう少し時間をおかなければ使う事が出来ない。

 

ならば、

 

ボクはそのまま球体に向けて避雷針(ダート)を撃ち込んでいく。そして三発撃ち込む事により文様が赤く浮かび上がると雷撃を流してエネルギーを暴発させるまで増幅させて爆発させた。

 

周囲に爆発した事による煙幕が漂う。

 

「姿を消して奇襲するつもりか!?それならばこの煙幕全てに攻撃するだけだ!」

 

姿の見えぬフィーネの声が上空から響く。

 

ボクは素早く壁際に移動して壁を蹴り上がり、煙幕から抜け出した。フィーネと同じ高度に達した際にはフィーネは既にこちらに気付き、既に作り上げた光の玉をこちらに向けて投げ飛ばす。

 

「散れ!」

 

投げられた光の玉。ボクは更に壁を蹴り上がり、更に高く駆け上がる。

 

「ちょこまかと!」

 

フィーネも更に光の玉を作り上げようとするがその瞬間に光の玉に向けて避雷針(ダート)を三発撃ち込み雷撃を逃して爆発させた。

 

「くっ!?」

 

爆発に巻き込まれたフィーネは鎧が所々砕け、爆風で仰反る。その瞬間にボクは壁を強く蹴り、フィーネに向けて突撃する。

 

ダートリーダーを構え、フィーネに向けて避雷針(ダート)を撃ち込み、フィーネに赤い紋様を浮かばせる。

 

「しまっ…!?」

 

「遅い!」

 

ボクは雷撃を纏わせた足でフィーネの腹に向けて蹴りを入れる。それと同時に雷撃がフィーネの身体中を迸る。

 

「ガァ!?」

 

そのまま蹴り落とし、煙幕の蔓延する地面へと叩きつけて、馬乗りになると三発更に避雷針(ダート)を撃ち込んでその状態をキープする。

 

煙幕が晴れ、視界が確保出来るようになりボクは地面に倒れ込むフィーネに向けて言い放つ。

 

「これで終わりだ、フィーネ。お前の目的、そして天叢雲を渡してもらう。口以外少しでも動かせば雷撃を流し込む」

 

フィーネが少しでも動けばボクは直ぐ様雷撃を流し込める事を伝え、フィーネが言葉を発するのを待つ。だが、その言葉と共にフィーネは笑い声を上げた。

 

「ハハハッ!」

 

「何がおかしい!?」

 

「やはり、最大の障害はお前であったか、ガンヴォルト。だが、この程度で終わったと思っているあたり、勘違いしては困るな」

 

そう言うと同時に空中からこの二年聴く事のなかった、歌声が響く。

 

「Croitzal ronzell Gungnir zizzl」

 

その歌と共に上空で光を発した瞬間にボクはその方向を向いた瞬間にフィーネはボクを体を起こす反動で飛ばして距離を取る。

 

それと同時にボクが飛ばされた場所に向けて何本もの槍が降り注ぐ。

 

直ぐ様雷撃鱗を展開して、槍を全て防いでいく。そして槍の放たれた方向を見ると、その隣には今まで目を開ける事なく眠っていたガングニールを纏う奏の姿が。以前と違うのは奏の顔にはバイザーのような物が施され、目が見えない事。

 

「奏!?」

 

突然の乱入者に驚く。何故ここに奏が。目を覚ましてくれた事は嬉しいのだが、何故ボクに向けて攻撃を?だが、奏は何も答えない。

 

「遅い、と言いたいが良いタイミングだ。お陰でガンヴォルトの驚いた表情を見る事が出来た」

 

そう言ってフィーネは奏の肩に手を置く。その瞬間、ボクはフィーネに向けて避雷針(ダート)を撃ち放つ。

 

だが、避雷針(ダート)は奏の振るう槍に弾かれ、消えてしまう。

 

「奏!なんで止める!?」

 

「教えておいてあげる。この子には以前貴方を憎んでいた時に植え込んだ催眠を発現させているの。天羽奏は貴方を憎み、殺そうとする戦闘マシンに変えているの。貴方と対等に戦えるかもしれない存在。でも貴方はこの子を傷付ける事が出来るかしら?貴方の大切な人を」

 

そう言って、フィーネはアビスの深淵から飛び、デュランダルのある場所に向かっていく。

 

ボクは更に避雷針(ダート)を撃ち込もうとするが、その前に奏がボクへと近付き、槍を振るい、それを阻止する。

 

「殺さないと止まらないわ。足止めをお願いするわ、天羽奏」

 

そう言うとフィーネは更に上空へと飛び去っていく。

 

「フィーネ!貴方はなんて事を!」

 

フィーネに向けて再び攻撃しようとするが既にダートリーダーの射程圏外であり、今も攻撃しようとする奏の槍を避けるのに専念する。

 

「奏!止まってくれ!君と戦いたくないんだ!」

 

奏に呼びかけるが、奏は何も答えず、ボクを殺す気で攻撃を仕掛けてくる。ボクは攻撃を躱して奏と距離を取る。

 

「フィーネ!絶対にボクは貴方を許さない!必ずボクが止めてやる!そして、絶対に奏を救う!」

 

空に向けてそう叫ぶと、奏と戦う為にダートを構えた。

 

◇◇◇◇◇◇

 

弦十郎を本部の司令室へと連れてきた慎次と未来は全員にフィーネの正体が了子である事、そしてガンヴォルトが止める為にアビスへと向かった事を伝えた。

 

「まさか了子さんが…」

 

弦十郎の手当てを終えたあおいはまさかフィーネの正体が了子である事に狼狽える。他の隊員も手を止める程驚いていた。

 

「手を止めないで!とにかく、僕達はやるべき事をやります!」

 

司令の代わりに慎次が指揮を取り、他のオペレーターに指示を飛ばす。

 

「優先は街の方にいる装者にこちらの状況を伝えて、戻ってきてもらいます!他はあまり効果はないかもしれませんが、アビスのデュランダルの保管のロックを強化してフィーネがデュランダルを奪取する時間を稼いで下さい!」

 

慎次の指示にオペレーター達は素早く動き始める。

 

「緒川さん!装者、響さんとの回線繋がりました!」

 

朔也がいち早く装者である響に繋がった事を伝える。

 

「未来さん、貴方がお願いします」

 

慎次の言葉に未来は頷いて響に現状を伝える。

 

「大変よ、響!リディアンがノイズに襲われているの!直ぐに帰ってきて!それにガンヴォルトさんが!」

 

だが、未来が響に全て伝える前に回線が落ちてしまう。それと同時に司令室の電気が全て落ちた。

 

パソコンのコンソール画面のみ光る司令室。

 

「外部からのハッキングにより、回線を落とされました!その他多数の機能の停止!」

 

オペレーター達はなんとか復旧する為に動くがどうする事も出来ていない。

 

「こんな事が出来るのなんて了子さんしか…」

 

朔也が手を動かしながらそう呟いた。だが、彼もなんとかしようと手を動かし続ける。

 

「響…お願い…早く戻ってきて…」

 

未来は響が早く戻ってくる事を祈った。

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