戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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書くばかりで確認しておりませんでしたがいつの間にかお気に入り300突破してました。
読んでくださっている方々、お気に入りしている方々ありがとうございます。


65VOLT

弦十郎は腹の痛みにより目を覚ます。小さいモニターのみ照らし出された暗い指令室のソファーの上であり、身体を起こした。

 

弦十郎が目を覚ました事にオペレーター達は安堵する。

 

「状況は?」

 

弦十郎の問いにあおいが答える。

 

「ハッキングにより、ほぼ全ての機能が使えない様になっています。現在の内部の状況、それに外の状況は一切分かりません」

 

そうかと答え、今了子を止めようとしているガンヴォルトの事を聞く。

 

その言葉に誰もが首を横に振り、ガンヴォルトの様子すらも分からないと物語っていた。

 

「了子君…ガンヴォルト…」

 

どうなっているか分からない二人。どちらも無事であると共に、この件が収束していく事を弦十郎は願う事しか出来なかった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

響達がリディアンへと辿り着いた時、そこは既に破壊の限りを尽くされ、薄らとしか原型を留めていなかった。

 

「未来…おーい!未来!皆!」

 

響は未来や他の生存者の確認の為に声を上げるが、その声に反応する者は誰もいない。

 

「いったい何が…」

 

「おい!こっちにはあいつがいるだろ!?なのになんでこんな風になっているんだ!?」

 

翼はあまりの光景に絶句して、クリスはガンヴォルトがいるはずなのに悲惨な光景を目にして叫ぶ。

 

「お前達の信じたガンヴォルトなら地下深くで既に息絶えているわ、クリス」

 

三人は声のした方向に目を向ける。

 

崩れたリディアンの屋上。そこには腹部を血に染めた了子が立っていた。

 

「了子さん!?」

 

響は了子が生存していた事に安堵すると共に何故ガンヴォルトが息絶えた事を知り、危険な場所に現れたのか疑問に思う。だが、その疑問をクリスが解消した。

 

「フィーネ!」

 

「櫻井女史がフィーネ!?」

 

クリスの言葉に翼が驚きの声を上げる。

 

「全く、お前が奴と協力しなければあやつもあんな悲惨な最後に遭わずに済んだのに。まあ、どちらにしろ、あいつには消えてもらう以外の選択肢はありはしなかったが」

 

「そ、そんな…」

 

「嘘だ!ガンヴォルトは死にはしない!あの人は絶対に生きている!?」

 

クリスは自分のせいでガンヴォルトを死なせてしまったという言葉に後悔に苛まれた。そしてガンヴォルトの死を口にする了子、いや、フィーネの言葉を否定する翼。

 

「そうですよ!ガンヴォルトさんが死ぬ訳ありません!それに、どうして了子さんがこんな事を!?了子さんは今まで私達と一緒にノイズから皆を守る為に力を貸してくれたじゃないですか!?私を助けてくれたじゃないですか!?」

 

「そんな事は目的を達成する為の手段に過ぎない」

 

そう言った了子は眼鏡を外し、髪留めを取り髪を下ろすと金色の光に纏われる。そして、その瞬間に金色のネフシュタンの鎧を纏った状態で現れる。

 

そして、響も翼もようやく了子がフィーネであると認識する。だが、響と翼も了子がフィーネであると信じたくはなかった。

 

「既に準備は整った。お前達には特等席で見てもらおうか。世界が一つになる瞬間を!」

 

フィーネがそう叫ぶと同時に、地面が大きく揺れ始め、リディアンが崩れていき、その中から何か巨大な物が浮上していく。

 

三人は揺れにより倒れないように踏ん張ってその浮上する何かを呆然と眺める事しか出来なかった。

 

揺れが収まり、浮上する何かも動きを停止させる。浮上してきた物は天高く聳え立つ塔。

 

「これがお前達が探していた塔、カ・ディンギルだ!」

 

フィーネはその聳え立つ塔を背に高々に笑う。

 

「これが…カ・ディンギル…」

 

翼が目の前に聳え立つ巨大な塔を見て呟いた。

 

「了子さん!いったいこんな物で何をしようと!?」

 

響がカ・ディンギルを見てフィーネに問う。

 

「お前達は知らないだろう…かつて世界が一つであった時の事を…」

 

カ・ディンギルを見上げながら、フィーネは何処か愛おしそうに、そして憎そうに話す。

 

世界が一つであった時の事を。そして、フィーネが思っていた人と並びたいが為に、天にも届く塔を建設してその人の元へと向かおうとした事。だが、その事に激怒した人は塔を破壊して、世界を統一された文明を崩壊させて、バラバラの世界を作り上げた事を。

 

何故、フィーネがそんな事を知っているのかも彼女の口から告げられる。フィーネという存在はその先史文明の頃に作り上げた技術により、何度も蘇り続ける事を可能にした先史文明を生きた彼女の記憶を呼び起こし、現世へと舞い戻る事が出来るようだ。

 

「私は何度も歴史的瞬間に立ち会ってきた。数々の偉人達も私という存在があるおかげで様々な偉業を成し遂げた。だが、私にとってそんな事はどうでもいい。私のしたかった事は偉業を成し遂げる事でも、歴史に名を刻む事などでもない。ただ、世界を一つに束ねたかったのだ。だが、過去ではそんな技術がまだなく、何度も苦い思いをしながら、その時を待った。そしてようやく、私の悲願が成就する時代が来たのだ!誰一人として疑問に思わなかった分裂した世界!私だけが一人苦しみ、もがき続けるのもここで終わる!このカ・ディンギルによって月を破壊する事によってな!」

 

「何故月を!?」

 

フィーネが何故月を破壊しようとしているのかを翼が問う。

 

そしてフィーネはようやく本当の目的を、悲願を口にした。

 

「月こそが、この世界をバラバラにさせ、統一言語をなくした全ての元凶!バラルの呪詛という憎たらしい物を作り上げる動力源であるからだ!そして、今ここで全てを元に戻す!このカ・ディンギルという月すら穿つ、この荷電粒子砲によってな!」

 

「そんな事の為に…そんな事の為にあいつを殺したのか!私を救おうとしてくれたあいつを!?」

 

クリスは泣きながらフィーネへと叫ぶ。

 

「そんな事の為だと!?私がどれだけ苦しんできたのか、お前に分かるのか!?クリス!?私がどれだけ願っても叶わなかった願いをようやく叶えられそうな時に、あの様なこの世界にとって異端である奴こそが、最大の障害だ!目的の成就の為に消して何が悪いんだ、クリス!お前も私と同じ様に、世界を平和にする為に強き者を殲滅し、平和を為そうとしていただろう!お前と私!何処が違うというのだ!」

 

クリスはフィーネの言葉に何も言い返せない。だが、それを否定したのは響と翼であった。

 

「違います!クリスちゃんはそんな事をしようとしていたかもしれない!でも、ガンヴォルトさんがクリスちゃんに何度も問いかけたおかげで、その事は間違いだと気付いて、考えを変えてくれた!」

 

「雪音はもうそんな思想を持っていない!少しだけ刃を交え、背中を合わせ戦った私達は彼女がもうそんな囚われた思想から変わっている!」

 

「お前等…」

 

フィーネはその三人の様子を見て怒り狂う。

 

「何が変わっただ!囚われていないだ!人間の思想など、根本的な部分は決して変わる事などない!お前達が待っていた天羽奏の様にな!」

 

その瞬間に翼が驚き、フィーネに向けて言い放つ。

 

「何故そこで奏の名前が出る!?答えろ!フィーネ!」

 

「天羽奏はガンヴォルトと同じくアビスの深淵で死んでいる。哀れなものだったよ。助けてくれた恩人を過去の憎しみで殺そうとする様を見てな」

 

その言葉に翼は絶句した。

 

「嘘だ…奏はまだ眠っているはずじゃ…」

 

「嘘ではない。天羽奏は私によって二年もの間昏睡させていて、もしもの際の奴への対抗手段になってもらう為に生かしていたのだからな。そもそも、お前が私が天羽奏にガンヴォルトの事を説明してる時に、私の言う通りに飲み物を買いに行かなければこの様な事にならなかったかもしれないのに」

 

その言葉と共に、翼が自分があの時に言う通りにしなければこんな事にならなかったのでは、ガンヴォルトと奏。大切な人を二人とも無くさなくて済んだのではと考えてしまう。

 

「違います!絶対に違います!」

 

だが、響がフィーネの言葉を否定する。

 

「ガンヴォルトさんも奏さんも死んでなんかいない!ガンヴォルトさんは了子さんが思うよりも強いし、凄い人です!一緒に戦ってきたからこそ、ガンヴォルトさんの凄さは分かります!例え、どんな事があろうと必ず生きて私達の元へ来ます!奏さんだってそうです!」

 

響は二人の死を否定して叫んだ。

 

「愚かだな、立花響。現実を見ぬふりをしてその既に壊れた儚い幻想に縋り付くとは」

 

「幻想なんかじゃねぇ!あいつは生きている!あいつはそんなやわな奴じゃない!」

 

クリスはフィーネに叫びながらシンフォギアを纏う。

 

「雪音の言う通りだ…あの二人がそんな簡単に死ぬ様な人じゃない事ぐらい私が一番分かっている!二人は絶対に生きてる!」

 

翼もシンフォギアを纏い、剣を構えてフィーネと対峙する。

 

「絶対に了子さんを止めてガンヴォルトさんと奏さんを見つけ出します!だから、ここでもう止まって下さい!了子さん!」

 

響もシンフォギアを纏い、三人はフィーネと対峙する。

 

「背中に深々と剣を刺された男が生きていると思っているお前等が本当に滑稽にしか見えないわ。特等席での見物人など不要だ。全員纏めて地に這いつくばらせてやる!」

 

そうフィーネが言った瞬間、誰かの血飛沫が飛んだ。

 

血飛沫を上げたのは三人などではなく、フィーネ自身であり、背中から槍が腹に向けて生えていた。

 

「了子さん!あんただけは絶対に許さない!父さんや…家族を…それに私を救おうとしたガンヴォルトにあんな事をしたあんたを絶対に許さない!」

 

いつの間にか現れたガングニールを纏う奏がフィーネへとそう叫んだ。

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