地上。
そこでは四人の装者が、今までのノイズの出現の元凶であるフィーネと戦いを繰り広げていた。
拳を振るい、フィーネを止めようとする響。剣を携え、響の攻撃の合間にフィーネの次の手を止めて反撃を許さないように立ち回る翼。そして、そんな響と翼の作っている隙に何度も大技を繰り出す奏。だが、フィーネも易々と大技を黙って見逃すはずもないのだが、翼と響の反撃の切り替えの合間に攻撃をしようとするが、その攻撃も奏を守るように立つクリスが己が持つ銃で弾き返す。
その中核となるコンビネーションを作り上げているのは翼であり、かつての奏とのコンビネーションは健在、響とも幾重にも戦場に出て築き上げたコンビネーションはフィーネにとっても思うような戦闘が出来ない事を歯痒く感じている。
「小娘共が!」
フィーネは上手く事が進んでいかない事に痺れを切らし、纏うネフシュタンの鎧から溢れるエネルギーを解放させて翼と響を吹き飛ばす。
「お前等!?」
クリスは飛ばされる二人に声を上げる。だが、その瞬間には既にフィーネがクリスの目の前にまで接近しており、クリスに向けて鎖を振り下ろす所であった。
「なっ!?」
クリスは慌てて防御しようとしたが、その前に背後にいる奏がクリスの前に出ており、穂先を回転させた槍でフィーネを突き穿つ。
「クッ!?」
フィーネは鎖を自身の身体へと雷撃鱗のように纏うように展開させた。
「吹っ飛べ!」
回転する穂先から竜巻が巻き起こり、防御するフィーネをそのまま竜巻に飲み込まれ、姿を消した。
空間を吹き飛ばす程の一撃を放つ奏。だが、万全でない彼女にとって何度目か分からない大技で身体のあちこちは血で染まっていない場所がないほど酷く傷付いている。
「はあ、はあ…」
竜巻が収まり、周囲は土煙が舞い、フィーネの様子が全く分からない。だが、あれほどの一撃を防御してたとは言えまともに食らえば、そう易々と反撃は出来ないと感じる。
奏は膝を突き、軋む身体を何とか立ち上げようとするも、先程から気力のみで立たせていた身体は上手くいう事を聞かない。
「おい、そこまでやれば十分だろ!なんでそんな身体になってまで立ち上がろうとするんだよ!?」
クリスは膝を突く奏に肩を貸して立ち上げる。
「悪いな…でも、私が…私が奴を止めなきゃいけないんだ…私があいつを…ガンヴォルトを倒れさせた原因を作ったんだ…だからガンヴォルトの代わりに私が止めなきゃいけないんだよ」
奏は力の入りきらない足をクリスに支えてもらいながら、鞭打って座る事を拒絶する。
「あいつ、あいつって!だからってそうまでなってあいつを止める事をあいつが望んでるのかよ!」
クリスは奏に向けて叫ぶ。
「望んじゃいないさ…でも、それでもガンヴォルトを助ける為には私が…私達が頑張らないと駄目じゃないのか?早く助けないと、ガンヴォルトが本当にくたばっちまうだろ?」
奏はクリスにそう言う。
「あんたも私と同じだろ?私はあんたの名前も、どんな過去があったかも分からない。でもあんたもガンヴォルトに助けられた。だからこそ、ガンヴォルトの為に…助ける為にもこうやって戦っているんだろ?」
クリスは名を知られていない奏に的を得た事を言われ狼狽える。
「だからってそんな身体になるまで…」
「絶対にガンヴォルトもなんか言ってくるだろうな…でも、二年越しにあいつに怒られるのも悪くないと思うんだ」
穏やかにそう告げる奏。
「奏、雪音!危ない!」
突如、土煙の中から翼の声が聞こえると同時に、土煙を貫いて鎖のようなものが奏とクリスへと飛び出す。
「やらせません!」
だが、鎖は奏とクリスには届く直前に響が掴んで止めた。
「奏さん!もう奏さんは休んで下さい!そんな身体じゃもう持ちませんよ」
「馬鹿言え…こんな所で休めるかよ…」
そう言ってボロボロの身体で槍を構えて土煙の中へ、鎖を頼りに入って行った。それと共に響の掴んだ鎖も激しく動き、再び土煙の中へと戻っていく。
そして聞こえる、激しい鉄のような物がぶつかり合う音。あの中で翼と奏がフィーネと戦っているのだろう。
「おい!あいつも長くない!それにいつあの馬鹿デカい塔が月に何をしでかすか分からない!私がフィーネか塔のどっちか何とかする!お前はあいつ等と連携して戦え!準備が出来たら私が合図を送る!お前はそれをあいつ等に私が送った合図と一緒に下がるよう何とかしてフィーネに悟られないようにしろ!」
「えっ!?そ、そんな事私には…」
「出来るか出来ないかなんかじゃねえんだよ!やるしかねぇんだよ!そうしないとあいつが…ガンヴォルトが助けられないだろ!」
クリスは狼狽える響に喝を入れるように叫んだ。響はそのクリスの言葉に狼狽えるのをやめて聞き返す。
「ああ、なんとかしてやるよ。私の命に替えてもな」
その言葉に響はその言葉に頷いた。しかし、何処となくその言葉に響は引っ掛かりを感じた。
なぜそこまで重く、そして命まで懸けるのか。だが、響は今は深くは考える事はやめて、奏と翼のサポートへと回る為、土煙へと飛び込んで行った。
◇◇◇◇◇◇
クリスは響が土煙へと入って行くのを確認すると、フィーネか塔を止める為に、銃を下ろし、念じる。
それと同時に現れる巨大なミサイル弾が三つ。
「あんたの言う通り、結局私はフィーネを止めてあいつを助けたいみたいだ…でもあんたと違って私はあんたよりも重たい罪を持っているんだ。あんたがあいつと戦ってしまう原因を作ったのも、こんな事になったのもフィーネと協力していた私なんだから…こんな汚れきった手をあいつは絶対に取ってはくれないだろうな…」
クリスは寂しそうに呟いた。そして何処かこの土煙の舞う中戦う三人を何処か羨ましく思う。
もし二年前にテロリストに連れ去られずにガンヴォルトに助けられていたら、フィーネと会わなかったらクリスもガンヴォルトと共に歩んでいたのだろうか?普通の女の子のように学校へと通い、友達と放課後に楽しく買い食いをしたり出来ていたのだろうか。
もしかしたらガンヴォルトとも一緒に楽しい生活があったのだろか。もしかしたらそんな事もあり得たかもしれない。
だがそんな事は起きないし、今のクリスにとってそんなものは幻想に過ぎない。
首を振るい、今まで考えていた事を振り払い、目の前の戦いに集中する。
土煙が晴れ、そこで戦う三人の姿がようやく視認する事が出来た。そして、クリスは響に向けて合図を送ると共に、ミサイル弾を一発フィーネへと撃ち出した。
「フィーネ!あんたの悲願は私が砕く!」
そして一発を吐き出すと同時に二発目を聳え立つカ・ディンギルへと照準を合わせて発射させる。それと共に自身は残りのミサイル弾へと乗り込み、空へと飛んで行った。
◇◇◇◇◇◇
響はクリスからの合図を受け、アイコンタクトで翼と奏へと伝えると、全力でその場から退避する。三人が避けると同時にこの中で弱り切っている奏を鎖で絡め取り、自身の盾とした。
「ガァァ!?」
「奏!?」
「奏さん!?」
ミサイル弾が直撃した奏はシンフォギアが破壊され、生身を晒す。
そんな奏を助けようと翼と響がフィーネへと近付いた。
「私に構うな!あいつがなんかしようとしてるんだ!あいつがやろうとしている事を全力で手助けしろ!」
そう言うと同時にフィーネは鎖を更に強く締めて奏は絶叫する。そして遂に今まで気力で繋ぎ止めていた意識もそこで途絶えた。
「見上げた根性だな!天羽奏!」
そう言って奏を塔へと向かうミサイルへと向けて投げ放つ。
「奏!」
翼がいち早く奏の元へ向かい、空中で奏をキャッチした。その翼に向けてフィーネは鎖を操り、翼へと投げ放つ。
「やらせない!」
響は奏と翼を守るべく、自身も飛び上がり、盾になるべく前へと出た。しかし、鎖は響を避けるように動くとカ・ディンギルを破壊する為に放たれたミサイル弾を破壊した。
「そんな!?」
響はクリスの撃ち出したミサイル弾が破壊された事でクリスのしようとしていたカ・ディンギルの破壊が失敗した事に口を噛み締めた。
だが、依然止まないミサイル弾の動き続ける音。
「クリスちゃん!?」
その音の元へ目を向けると、クリスがミサイル弾に捕まり、天高く飛び去ろうとする姿であった。
「何をするつもりなんだ!雪音!」
翼はクリスの意図が読めず、叫んだ。だが、クリスは何も返すことなく、寂しそうな表情で、そして何処か覚悟を決めた様な表情で天高く飛び去った。
「まさか!?撃ち出したカ・ディンギルのエネルギーを止める気か!?」
だが、フィーネはその意図を瞬時に理解してクリスへと向けて叫んだ。
◇◇◇◇◇◇
クリスは成層圏へと辿り着くと、ミサイル弾から離れ、対空すると絶唱を放つ。
「Gatrandis babel ziggurat edenal
Emustolronzen fine el baral zizzl
Gatrandis babel ziggurat edenal
Emustolronzen fine el zizzl」
歌と共に現れる幾つもの光り輝くビット。それは幾重にも広がり、蝶のような紋様を空中へと出現させた。
クリスは口から血を流しながらも歌い続け、銃をカ・ディンギルへと構える。
「お前が守ろうとしていた物…私が代わりに守ってやるよ…」
構えた銃は巨大な砲へと変わり、砲口へとエネルギーを収束させる。
そして地上からこちらへと向けて発射される緑色の光線。クリスも砲口へと収束させたエネルギーをその光へと向けて解き放つ。それと同時に蝶の紋様からも放たれる細い光が砲口から放たれる光に纏わりついて更に強化される。
そしてぶつかり合う紫と緑のエネルギーの塊。
クリスはぶつかり合う衝撃に身体を揺らされる。だが照準を逸らすことなく真っ向で対抗する。
「くっ…」
だが、カ・ディンギルから放たれたエネルギーは想像を絶し、徐々に押され始める。同時に砲身が軋み、亀裂が入る。
初めからどうにか出来る物じゃない事ぐらい、クリスには分かっていた。
だけど、
「私は…私の歌で守るんだ!」
両親が死んだ頃から嫌いになった歌で。
だけど本当は歌を心の底から嫌いになる事は出来なかった。でもそのおかげで、守る為にこうして歌う事が出来た。
そして押され始めた頃から亀裂の走った砲身はひしゃげ、砕け散り、クリスは無防備な状態となる。
「パパ…ママ…私、最初は道を間違えたけど…最後は間違えなかったと思うんだ…。全部信じられる男のお陰なんだよ…」
そう呟くと同時に光がクリスを飲み込んだ。