戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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何とか一年以内に一期完走は出来そう…



68VOLT

「絶唱のエネルギーでカ・ディンギルの砲撃を抑えるだと!?」

 

地上では空高く舞い上がったクリスが撃ち出した砲撃でカ・ディンギルの砲撃を抑え込んでいる事にフィーネが驚きの声を上げる。

 

「雪音の奴!?」

 

「クリスちゃん!?なんで…!?なんでそこまでして!?」

 

翼も響もまさかクリスがこうまでして止めようとするとも考えてなかった。

 

そして響はあの時クリスが言った言葉の意味を理解する。何故あの時クリスが自身の命を懸けてという言葉を使ったのか。

 

「クリスちゃん!?もうやめて!そんな事をしたらクリスちゃんが!」

 

響は自身の声が届かないと理解していてもどうしても叫ばずにいられなかった。

 

「何で…何で!?せっかく仲良くなれると思ったのに!?いっぱいおしゃべりしたかったのに!?何で自分の命を懸けてまで止めようとするの!?そんなの誰も喜ばないよ!?」

 

ただクリスの元へと叫ぶ。だが、その言葉は決してクリスへは届かない。

 

そしてカ・ディンギルの砲撃はエネルギーを増し、クリスが撃った砲撃を押し返し、やがてクリスがいた場所を飲み込んだ。

 

「雪音ェ!」

 

「クリスちゃん!」

 

二人は叫んだ。フィーネは放たれたカ・ディンギルがクリスを飲み込んで無事月へと向かった事を安堵する。だが、月は完全に砕けることはなく、一端を破壊するのみに留まった。

 

「馬鹿な!?絶唱のエネルギーを収束させて砲撃を止めるのではなく逸らす為に!?」

 

フィーネは一撃で目的の月を完全に破壊する事が出来なかった事に口を強く噛んでいた。

 

そして、カ・ディンギルの撃ち抜いた射線から崩れながら何かが地上へと落下していく。

 

それはクリスであり、カ・ディンギルの砲撃をまともに喰らった事によりシンフォギアが砕けており、落下の勢いでどんどんと欠けていく。

 

「クリス!お前はなんて事をしてくれたんだ!ようやく…ようやく私の長い年月をかけて完遂しようとした悲願を…!何処までお前は私の邪魔をすれば気が済むのだ!」

 

フィーネは落ちてゆく死に体のクリスに向けて叫ぶ。クリスは何も答える事はない。だが、クリスの何処かやり遂げた、そして満足そうな顔に更に怒りを覚える。

 

「クリス!貴様は絶対に殺してやる!絶対にだ!目的を果たせば、もうどうでもいいと思っていたが、お前だけは必ず殺してやる!」

 

フィーネはクリスに何度も私怨が交じった言葉を叫び続けた。

 

そんな中、クリスが落ちゆく姿を見て響は絶叫した。

 

「いやぁ!」

 

クリスが倒れ、奏も倒れ、そしてガンヴォルトも安否が分からない。そんな状況で翼と自分のみ残された。まだ翼がいるがそれでも何人も目の前で倒れ、響は自身がまた何も出来ず沢山の守るものを奪われて絶望した。

 

それと共にドス黒い感情が響を飲み込んでいく。もう、どうでもいい。全てなくなった。

 

それならばもうこの衝動に身を任せよう。

 

そして響の身体は黒く塗り潰された。

 

◇◇◇◇◇◇

 

アビスの深淵にてボクは目を覚ました。

 

「…まだだ…こんな所で…こんな所で死ぬ訳にはいかないんだ…」

 

ボクは譫言のように呟き、血反吐を吐きながら砕けてあらぬ方向に曲がった片腕、瓦礫に潰されて原型を僅かに保っているだけの足を引きずり瓦礫の山を越えていく。

 

奏を助けて意識を僅かにながら失って目を覚ました時、奏のいた場所はそこだけは無事であったが、奏の姿はなく、もしかしたらフィーネに連れ去られたのかもしれない。背中に刺さった宝剣の天叢雲、黒豹、八咫烏。それも全て何処かに消えていた。そして背中を刺された時はっきりと聞こえた紫電の声。何故宝剣から紫電の声が聞こえてきたか分からない。

 

でも宝剣が自律的に動き、攻撃する事はあり得ない。だったら操っている存在が、紫電がまだ生きていて、この世界にいる。

 

「止めないと…」

 

ボクは痛みを堪えながら崩れたアビスの深淵を脱出した。

 

◇◇◇◇◇◇

 

クリスが絶唱を放ち、カ・ディンギルの一撃を逸らし、崩れ落ちる様子を見た未来は絶望した。

 

「クリス…何で!?せっかく友達になれたのに!?何でなのよ!?」

 

せっかく友達になれたのに…あの時のサヨナラで本当に最後になるなんて。

 

「何故そこまでしたんだ…クリス君。君は…君はもっと世界を見るべきだったのに…何故だ…何故君は…」

 

弦十郎もクリスが崩れ落ちるのをただ眺める事しか出来ない様を口から血が滲む程強く噛んで後悔している。

 

「どうなってるのよこれ!?何でこんな事になってるの!?」

 

奏が倒れ、クリスが倒れる姿を見た弓美が絶叫する。

 

「私だって分かんないよ!?何でこんな事になっているのかも!?ビッキーや翼さん!奏さんやあの子も!何でこうなっているのかこっちが知りたいよ!」

 

「叫んだって何も変わりません!二人ともしっかり!」

 

そんな中絶望したように叫ぶ、弓美と創世に向けて詩織が叫ぶ。

 

「何で詩織は平気なのよ!?皆…皆どうなるか分からないんだよ!?」

 

創世が詩織に叫ぶ。

 

「平気な訳ないじゃないですか!?目の前で二人も倒れている様を見せられて、こんな状況になって平気でいられるはずないでしょう!?でも、私達が叫んでも状況が変わるはずないんですから!」

 

普段おっとりとした詩織の叫びに創世と弓美、そして未来までも驚く。

 

「まだ、立花さんや翼さんが戦っているんです!そんな中、勝手に託して、救ってくれると信じているのに絶望するなんて間違ってます!」

 

その言葉に二人も何とか希望を見出して顔を見合わせると互いに先程の絶望を振り払うように首を振るった。

 

ようやく振り払った絶望を希望に変えて創世と弓美は画面に映る響と翼の姿を見る。

 

だが、振り払った絶望は再び戻ってきた。

 

画面に映されていたのは先程まで黄色の鎧を纏った響が黒く染まり、仲間であったはずの翼に向けて拳を振るう響の姿であったからだ。

 

希望であった響の暴走。その姿を見た全員は希望すら打ち砕かれ、絶句する。

 

「何で…何で響があの時みたいに…」

 

その姿を唯一知る未来は親友の姿を見て涙を流す。その姿はまるで獣であり、太陽の様に暖かい響の姿はそこにはなかった。

 

「これが…以前ガンヴォルトから聞いていた、ガングニールの暴走…」

 

絶望した弦十郎は呟く事しか出来ず、唯一の無事である翼の身を案じながら、響にも戻ってきてくれる事を願うしか出来なかった。

 

「クソッ!俺達はもう何も出来ないのか!」

 

「落ち着いてよ!あんたがそんな事を口にしたって何も変わらないでしょう!」

 

叫ぶ朔也をあおいが諭すが、あおいの表情も曇っている。

 

本当にこれまでなのか。全員はただ黙って画面に映る、響が元に戻る事を祈る事しか出来なかった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「立花!しっかりしろ!」

 

急に鎧が黒く塗り潰された響は翼を攻撃し始めた。奏を持つ翼は響の攻撃を何とか躱しつつも奏を何とか安全な場所へ移す方法を考えていた。

 

「融合した聖遺物に再び飲まれるか…本当に貴方はよく分からないわね。勝手に苦しんで絶望し、味方すらも襲う貴方が」

 

フィーネは以前は興味があったのだが、悲願を為そうとする前では既にどうでもいいと感じていた。

 

だが、それをただ見ているだけであったが、急に響が反撃してこない翼に飽きたかの様に攻撃をやめ、今度はフィーネへと飛びかかる。

 

離れた距離を一瞬で詰めると光を掴んだ拳でフィーネへと向けて殴り掛かる。

 

フィーネは手を翳し、紫色の光を発生させ、壁のように形を変えると拳は光の障壁に阻まれる。

 

「まるで獣ね、立花響。四人で協力していた時の方が全然手強かったけど、今の貴方には何も感じないわ」

 

フィーネは、そんな響に言うと同時に背後から感じた殺気を頼りに鎖を剣のようにして、そちらに向けて振るう。

 

その瞬間にぶつかる剣と鎖。いつの間にか背後に回っていた翼が、フィーネに向けて剣を振るっていた。

 

「私が立花響に気取られている間に天羽奏を何処かに置いて接近していたか」

 

「フィーネ!あなたを止めて見せる!」

 

「ほざくなよ!小娘!」

 

フィーネは翼の剣を払い、鎖を操り剣を絡めとると、弾き飛ばして翼を蹴り飛ばす。

 

だが、その瞬間に展開していた光の障壁が響の拳により砕け散り、フィーネの腹を拳が貫いた。

 

「貴様には何度も驚かせられるな、立花響」

 

何事もないように、フィーネは黒く染まった響の頭を掴んだ。

 

そして紫の光が響を包み込む。

 

「お前は少し、風鳴翼の相手をしていなさい。あなたの戦うべき相手は私などではなく、あっちなのだから」

 

そう言うと、響は拳をフィーネの腹から抜いて、飛ばされた翼に拳を構える。腹の傷をグジュグジュと再生させながらほくそ笑みながら、響を膝を突く翼へと向けて駆り出させる。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「くっ!?」

 

翼は響の攻撃を何とか躱しながら、声を掛け続ける。

 

「しっかりしろ、立花!敵は私じゃない!貴方はフィーネを止めるんじゃなかったの!?このままじゃ、雪音に奏、ガンヴォルトが救えないのよ!?」

 

だが、響は翼の言葉に何の反応を示さず、ただ翼に向けて拳を振るうのみ。

 

「立花!」

 

翼はそれでも声を掛け続ける。翼も奏が倒れ、クリスも倒れた今絶望に打ちひしがれそうだった。だが、それでも、奏を助ける為、ガンヴォルトを助ける為、クリスを助ける為にそんな思いを押し殺して、戦い続けなければならなかった。

 

「私だって、己の衝動に任せて泣き喚きたい。でもそんな事をしたって、何も変わらない!そんな事じゃ誰も救えない!」

 

翼は響をフィーネの元へ蹴り飛ばして、弾き飛ばされた剣の元へ駆け、剣を拾い構える。

 

「武器を取って有意を気取ろうとするか。だが、無駄だ。既にカ・ディンギルは第二射の準備は着実に整っている。核となるデュランダルも直ぐにエネルギーの充填は済む。もう手遅れだ」

 

「そんなの分からないわ。私がガンヴォルトに会わなかったらそんな状況で絶望していたかもしれない。でもガンヴォルトに会ったからこそ、あの時、死にそうで絶望な状況を振り払ってくれた彼の姿を思い出せば、どんな状況でもどうにかなると思えるの。絶対に諦めない。どんな絶望に駆られようとガンヴォルトなら戦うはず」

 

「確かに、ガンヴォルトであればこの状況でも諦めず立ち向かうだろうな。だが、ガンヴォルトも死んだ。それなのに何故立ち塞がる?ガンヴォルトが生きているという幻影に何処まで追いすがり、自分から更なる絶望へと足を進める」

 

フィーネの言葉に翼は首を横に振るった。

 

「絶望なんかしない。それにガンヴォルトが生きているのは幻想なんかじゃない。ガンヴォルトは必ず生きている。あの人が死ぬ訳がない」

 

「それが幻想なのだと何故分からぬ!もういい!貴様等の妄言に付き合っているとおかしくなりそうだ!」

 

フィーネは倒れる響へと命令する。

 

「立花響!そいつを黙らせろ!口が開けぬ程!立ち上がる気力すら無くす程徹底的に!」

 

倒れていた響はゆっくりと立ち上がり、翼に向けて、拳を構える。

 

「立花、私がカ・ディンギルを止める。もし、私が倒れたら、後は貴方に任せるわ。でも諦めないで。絶対にガンヴォルトが何とかしてくれる。だから、お願いね」

 

翼は拳を構える響に向けて突撃する。響も応戦する為に駆ける。

 

ぶつかり合う拳と剣。だが、直ぐにその鬩ぎ合いは終わり、翼が取り出した小さな剣を響の影に突き刺すと響の動きが止まる。

 

影縫い。緒川家に伝わる忍法の一つで、慎次から教わり、使いこなす事が出来るようになった動きを止める技。

 

そして響が動けなくなった事を確認した翼は剣をもう一振り取り出すとスラスターを足から出現させて、飛び上がる。

 

「そんな技を隠してた所で私の悲願を止められると思うなよ!」

 

響が動けない事を理解した瞬間に飛んだ翼に向けて鎖を放つ。

 

だが、その鎖は翼へと当たる直前に弾かれる。それと同時に響く、絶唱の歌。

 

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal

Emustolronzen fine el baral zizzl

Gatrandis babel ziggurat edenal

Emustolronzen fine el zizzl」

 

「まさか!貴様も!?」

 

クリスに続き、翼の絶唱。

 

フィーネは驚きながらもカ・ディンギルを守る為に攻撃を続ける。だが、翼に攻撃は届く事はない。

 

しかし、その瞬間にカ・ディンギルのエネルギーは充填されて第二射を月に向けて放った。

 

「もう遅い!これで終わりだ!」

 

「やらせない!」

 

フィーネが叫ぶ。そして発射された緑のエネルギーに追いついた翼はエネルギーを解放した。

 

その瞬間、翼から溢れ出したエネルギーがカ・ディンギルのエネルギーと衝突し、空へと分散させていった。

 

「お前まで!何処まで邪魔をすれば気が済むんだ!貴様等!」

 

フィーネは叫んだ。そしてカ・ディンギルは第二射を終える。翼の絶唱は間に合い、打ち出された砲撃を全て散らし、月の破壊を抑えた。

 

だが、その方向の先からはクリス同様に鎧が砕けながら落ちていく翼の姿が。

 

「後は頼んだわ、立花…ガンヴォルト」

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