戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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71VOLT

地上で激突するガンヴォルトとフィーネ。

 

慎次はモニターを見る弦十郎からガンヴォルトとフィーネの戦闘が始まった事を知る。

 

「ガンヴォルト君がカ・ディンギルの活動を停止させてフィーネとの戦闘を開始したそうです!一度ガンヴォルト君はフィーネに敗れている以上、僕等も急いで電源を復旧させて、響さんを起こさないといけません!」

 

「ガンヴォルトさんは約束を果たしてくれた…それなら私達も急がないと!」

 

五人は急ぎ、電源の元へと駆け出す。そして、辿り着いた場所は扉が僅かに開いた部屋の前。重厚な扉は五人では開ける事は不可能であると分かるが、その隙間なら創世、詩織、未来、弓美の四人ならなんとか通れそうなサイズであった。

 

「ここです!この奥にシェルターを復旧させる電源ブレーカーがあります!」

 

慎次の言葉に四人は急ぎ、中へと入る。その中は幾つものブレーカーが並び、ブレーカーの上に書かれた電源の名称は羅列のように思える。

 

「緒川さん!どのブレーカーですか!?」

 

「一番大きな物です!一番奥にあるはず!」

 

その言葉に四人は奥を向き、鎮座する扉に閉ざされた大きな盤を見つける。

 

「あれじゃない!」

 

創世がその盤を示して駆け寄ると扉を開ける。

 

現れた巨大なブレーカーは普段見慣れた物よりも大きく、そして重い。

 

「トリップ…ブレーカーのスイッチが上でも下でもない中間位置にいるようであれば一度下げて下さい!そうしないと上がりません!」

 

慎次の言葉通り、創世が下げようとするが強力なバネの力で全く動かない。四人は力を合わせてそれを下ろし、そして重いブレーカーを上げた。

 

「行っけぇ!」

 

電源が入り、電源が生き、明かりが灯り扉が開く。

 

その瞬間に慎次が飛び込むように入ると、次々とシェルターのあらゆる系統を動かす為にブレーカーを入れる。

 

「ありがとうございます!これでシェルターの電源は復帰出来ました!早く皆の元に向かいましょう!響さんに歌を届ける為に!」

 

その言葉に全員頷いて、皆が待つ部屋へと急いで戻る。

 

戻ってみれば全員が未来達を迎え入れ、声を掛けてくれる。だが、モニターに映る戦闘を行うガンヴォルトとフィーネの姿。

 

「急いで響に歌を届けないと!」

 

未来の言葉に生徒全員が頷く。だが、どんな歌を歌えば、響に届くのか。響を呼び起こすには何を歌えばいいのか。全員が悩まされる。

 

そんな中、未来だけは響がよく口ずさんでいた歌がリディアンの校歌という事を知っており、歌い始める。

 

そして創世、詩織、弓美が未来に続き、歌い出す。それは伝播する様に生徒へ、オペレーター達へ、他の避難者達が。全員の声が一つになり、歌が紡がれる。

 

(お願い、響。元に戻って)

 

未来は響に祈り、歌を歌い続けた。

 

◇◇◇◇◇◇

 

響は以前来た事のある暗闇にいて、倒れていた。

 

ガンヴォルトが倒れた事を聞き、奏が倒れ、クリスも倒れ、ただ衝動に身を任せた結果今に至る。

 

だが、響にとって救ってくれた恩人が二人も倒れた事。ようやく手を取ってくれるかも知れなかった、友達になれるはずだったクリスが倒れた。

 

それに未来の安否も分からない。

 

翼もいるが、圧倒的なカ・ディンギルの存在。その前には全てが無意味であり、フィーネを止める事が出来ない。

 

だからもう響は立ち上がろうとはしない。もう、苦しむのも痛いのも嫌だから。その思いが更なる倦怠感を生んで響を縛る。

 

だが、その空間は以前のように何かによって崩される。

 

だが、今回はあの時とは違い、外側から一部分が壊されるだけであり、暗闇を全て振り払うには至っていない。

 

だが、その隙間に移される情景を見て驚く。

 

映し出されたのは先程まで響がいた壊れかけたリディアン。フィーネ。そして、倒れたと聞いていたガンヴォルトの姿。

 

ガンヴォルトはフィーネと戦っており、雷撃で攻撃を防ぎ、反撃をしている。そして倒れる奏、翼、クリスの姿。ガンヴォルトは助ける為に戦っている。

 

「ガンヴォルトさん…」

 

ガンヴォルトが無事で戦っている。それなのに自分はこんな所で倒れてていいのか?

 

「いいわけない…ガンヴォルトさんが戦っているんだ…私達の為に…皆の為に…」

 

響は倦怠感を振り解くようにもがき立ち上がろうとする。だが、簡単に振り払う事は出来ず、響の身体を蝕む。

 

「行かないと…行かなきゃ誰も守れない…」

 

無理矢理立ち上がろうとする響は暗闇のない、その場所に手を伸ばす。

 

「絶対に行くんだ!」

 

叫ぶと共に、歌が響く。

 

その歌は大好きだったリディアンの校歌。歌の声にはクラスメイトや先輩、オペレーターやあの時助けた女の子の声も聞こえる。

 

そしてその中に混じる大切な親友の歌声。

 

「未来!」

 

その声を聞き、伸ばした手を床に付いて這い上がろうとする。

 

「皆生きてる…皆生きてるんだ!こんな所で寝てる場合じゃない…行くんだ、ガンヴォルトさんの所へ!皆の所へ!」

 

倦怠感なんてなんだ!そんな物いつものように平気、へっちゃらと言わんばかりに振り解き、立ち上がると駆け出す。

 

「皆で笑う為に…皆が楽しく笑っていられる為に戦うんだ!だから、力を貸して!」

 

そして響は聖詠を歌いながら破壊された一部に飛び込んだ。

 

それと共に覚醒して黒い鎧が弾かれ、光に包まれる。その光は四つ。奏と翼、そして倒れたクリスの元にも向かい、全員が光に包まれる。

 

「シンフォギヴァァア!」

 

響の叫びと共に光が解放される。四つの光が空へと向かい放たれると同時に倒れていた奏、翼、クリスも身体を起こして中心となるカ・ディンギルへと集まった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

リディアンの校歌が流れる戦場ではガンヴォルトがフィーネと戦う。

 

「何故こんな時まで歌を歌う!?シンフォギアすら持たぬ力無き者に何が出来るというのだ!」

 

「何も出来ないなんて事はない!歌は無限の可能性のある力だ!」

 

叫ぶフィーネにボクは返す。

 

「何が力だ!所詮歌は聖遺物を蘇らせる道具にすぎん!聖遺物を持たぬお前に何が分かるというんだ!」

 

「何も分かってないのは貴方だ、フィーネ!この歌に込められた願い、想いに気付けないのか!」

 

「黙れ!こんな歌!ただのフォニックゲインの垂れ流しにしかならない!」

 

そう言ってボクを屠る為に鎖を振るう。

 

雷撃鱗で弾き、避雷針(ダート)を撃ち出す。その攻撃も避けられる。

 

「虫唾が走る!貴様にも!この歌にも!」

 

フィーネは叫ぶ。

 

「ならばこの歌を貴様への鎮魂歌として屠ってやる!そして鳴り響く不快な歌を歌い続ける者共を屠り、歌というものを消してやる!」

 

「させない!」

 

ぶつかり合う雷撃とフィーネの放つ紫色の光。

 

その瞬間に動かなくなっていた響のいる場所が光り、その光が奏、翼、クリスの元へ向かうとその場から天を貫く程の光が上空へと伸びていく。

 

「馬鹿な!何が起こっている!」

 

「歌の力は無限の可能性がある…これは歌が起こした奇跡だ!」

 

戸惑うフィーネに向けてそう叫ぶと共に光がカ・ディンギルへと集まる。

 

 

「シンフォギヴァァア!」

 

響の叫び声と共にいつもと違うが力強く、そして輝く鎧、シンフォギアを纏った四人が現れた。

 

「馬鹿な!?こんな馬鹿げた事があってたまるか!」

 

四人を見上げて叫ぶフィーネに向けてボクは接近して雷撃を纏った拳を叩き込んでカ・ディンギルへと吹き飛ばす。

 

「ガンヴォルトさん!」

 

響達はボクの元へ急ぎ降りてくる。

 

「響!元に...!?」

 

戻った。そう言いかけた瞬間に響達よりもいち早く降りてきてボクへと抱きつく奏の姿があった。

 

「ガンヴォルト!良かった…良かった…生きてる?生きてるよな?幻覚でも幽霊になって化けて出た訳じゃないよな?」

 

奏は涙で顔をぐしゃぐしゃにしながらボクの傷のあった場所を何度も触りながら、確認するように声を掛ける。

 

「確かに化けてでもボクはフィーネを止める為なら出るとは思うけど、生きてるよ。ごめんね、心配掛けて」

 

「おい!そういう事は終わった後でいいだろ!というかいい加減離れろよ!まだフィーネと決着が付いている訳じゃないだろ!?」

 

「そうだ、奏!そんな羨ま…んっん!とにかく!今はそういう場合じゃないでしょ!?」

 

慌てるクリスと翼を見て起き上がって直ぐにこんな調子になる三人を見て響は乾いた笑みを浮かべる事しか出来ない。

 

でも、全員生きている。立ち上がっている。その事が響に戦う勇気をくれた。

 

「生きている事は喜ばしい事だけど翼の言う通り、フィーネはまだ止まっていない。奏、君は起きたばかりで辛いかもしれないけど手を貸してくれないか?」

 

「当たり前だろ、ガンヴォルト!」

 

ガンヴォルトが奏に問うと涙を拭い、言った。その言葉に全員が頷く。そしてカ・ディンギルにめり込みながら何かぶつぶつと呟くフィーネへと視線を移した。

 

それと同時にシェルターの無事であった入り口からあの時部屋にいた全員が出てくる。

 

「弦十郎!みんな!」

 

無事な事に安堵する。

 

「未来!みんな!」

 

響も全員が無事である事を確認出来、喜んだ。

 

「決着を早く付けよう。全員が助かる為に、笑えるようにする為に」

 

ボクはそう言うとフィーネの元へと向かう。それと共に先程からぶつぶつと何か言うフィーネの言葉がはっきりと聞こえてくる。

 

「うんざりだ…もうどうでもいい…皆殺しだ…この場にいる全員…邪魔な者を全て殺す…」

 

「誰も殺させない。諦めるんだ」

 

近付くと共にフィーネを抑える為に雷撃を纏った手を近付ける。

 

その瞬間にカ・ディンギルの壁を突き抜けてボク目掛けて剣が現れた。ボクはそれを躱し、剣の正体を見て驚く。

 

その剣はデュランダルであり、あれ程の雷撃を浴びたのにも関わらず、無傷で存在していた。

 

「デュランダル!?」

 

「皆殺しだ!貴様等全員!不快な歌を響かせ、復活させた装者とガンヴォルトと共に!貴様等全員炭へと変えてやる!」

 

フィーネがそう叫ぶと共に現れるソロモンの杖。そしてデュランダルを握るとソロモンの杖により膨大な数のノイズを呼び出した。

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