戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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あと三話で一期を終わります。


76VOLT

ボクは新たな鎧、オロチを纏う紫電へと避雷針(ダート)を撃ち込んでいく。

 

避雷針(ダート)は紫電を守る様に動く、蛇の頭がそれを受ける。

 

蛇の頭に紋様が浮かび上がり、その蛇に雷撃を放つ。雷撃を浴びる蛇の頭はそのまま身体を伝い、紫電の本体へと向かっていく。

 

だが、それをさせないとばかりに他の六つの頭が、ボクの攻撃を止めようと襲い掛かる。

 

そして残る一つの頭は紫電へと伝う雷撃を断つ為に根元から首を噛みちぎり、捨て去った。

 

「自分の身体を!?」

 

逃げながら紫電の起こした行動に驚きを隠せない。だが、取れた首は砂の様に崩れ去り、また新たな首が出現する。

 

「再生した!?」

 

「再生能力を持つネフシュタンを得たボクに…神に君の雷撃はもう通用しない!それに見たかい、この再生速度!何の代償もなしに発揮する事が出来るこの力!本当に素晴らしい!」

 

紫電は笑い声を上げ、復活した頭も加勢させる。そして攻撃を避け続ける中、ボクへと向けていた八つの頭へとエネルギーを送る様に首を光らせるとその瞬間放たれる紫色の光線。

 

「クッ!?」

 

ボクは全力でその射線から逃げ出す。だが、今までと比べ物にならないエネルギーの余波にボクの身体は月面へと衝突した際に巻き起こる爆風により吹き飛ばされてしまう。

 

だが、それでも攻撃のチャンスを逃してはならない。空中で素早くダートを構え、全ての避雷針(ダート)を蛇の頭へと撃ち込んでいく。

 

「それなら全部一気に倒せば関係ない!」

 

ボクは雷撃鱗を展開して八つ全ての頭へと雷撃を誘導させる。そして咆哮を上げる八体の蛇。同時に先程同様に首を伝って紫電へと雷撃が流れていく。

 

「無駄だと言ったはずだよ!」

 

紫電は自身の腕で全ての首を切り落とした。再び現れる。

 

「君の雷撃はボク本体に届く事はない!オロチの前では皆等しく無力なんだ!例え、君の持つ無限の可能性のある第七波動(セブンス)だろうとね!」

 

「無駄なんて分からない!ボクはどんな苦境に立たされたって絶対に君を止める!」

 

「まだそんな事を口に出来る程の威勢があるなんてね。いや、君だからこそまだそう感じるのだろう、ガンヴォルト!だけどもう無駄なんだよ!君は僕に勝てると思い込んでいるみたいだけど現実は違う!君にもう勝てる要素なんて存在しない!勝てる見込みなんてもう無いんだ!」

 

そう叫ぶと紫電自身が動き、手を上空へと翳した。

 

「見せてあげるよ、ガンヴォルト!この力を得た僕がどれほどのものか!君を地を這いつくばらせる程の力を!」

 

そう言うと同時に、紫電はボクへと八つの蛇の頭が操られボクへと襲い掛かる。

 

「力を誇示する事に何の意味があるんだ!誇れる程の力じゃないその力を!」

 

「いいや、この力は誇示するべきなんだ!もう誰も争わせない為に!僕が崇拝される為に!その為に地上にいる全ての人間に見せつけなければならない!逆らっても無駄だという事実を植え付ける為に!僕という神の前に君の様な害悪な存在が生まれない為に!ここで力を誇示してこの先の安寧を作り上げる為に!」

 

叫ぶ紫電は翳していた手が何かを終えたのか、ボクに向けて指差す。

 

「その証を君という(テロリスト)を倒す為に使う!ここで証明するんだ!僕という神がいる限り、この世に蔓延る(テロリスト)をそして産まれようとする(テロリスト)を途絶えさせる!君という(テロリスト)を消してそれを証明させる!」

 

「そんな事!やったって無駄だ!君の様な存在がいる限り、それを止めようとする組織が生まれる!かつてのフェザーの様に!ボクの様に!」

 

「無駄だ!そんなものが生まれようと僕の前では無力なんだ!ガンヴォルト!」

 

そう言って一体の蛇がボクの身体を捉え、そのまま電子の障壁(サイバーフィールド)へと叩きつけた。

 

「ガハッ!?」

 

「これで終わりだ!ガンヴォルト!カ・ディンギル…いや、バベルの…神の一撃の前に散れ!」

 

紫電がそう叫ぶとボクは電子の障壁(サイバーフィールド)を突き抜けてきた巨大な熱線に包まれた。

 

◇◇◇◇◇◇

 

地上ではガンヴォルトの戦いが勝利で終わる事を全員が祈っていた。

 

「ガンヴォルトさん…」

 

空に浮かぶ月の欠片を見上げながら響は呟いた。遠くからでは全く分からないがガンヴォルトはあの月面で一人、あの少年と戦っている。

 

皆の為に、全員が助かる為に。紫電が作り出そうとする管理された世界を止める為に。

 

「響…ガンヴォルトさんは無事だよね?絶対帰ってきてくれるよね?」

 

未来が心配そうに響に問う。いつもの響ならば絶対に大丈夫、とそう言うが、今回ばかりはどうしてもその言葉が出てこなかった。

 

フィーネと互角に戦い、勝機を手繰り寄せたガンヴォルトであったが、あの強大な力を前にどうにか出来るのか。

 

響は不安を振り払う為に首を振るう。

 

「絶対帰ってくる…ガンヴォルトさんは帰ってくるよ…」

 

力なく祈る様に言う響。

 

「ガンヴォルトは絶対に帰ってくる…帰ってくるんだ…そうじゃないと私はあんたにちゃんと謝れない…だから帰ってきてくれ」

 

奏もガンヴォルトのいる月の欠片を見上げて呟いた。

 

「私はあんたに救われたんだ…こんな私を何処までも信じてくれたあんただから私は信じてるんだ…絶対に帰ってこい…」

 

「絶対に帰ってきて、ガンヴォルト。貴方とまだ私はいたいの…私は貴方の隣で色々なものを見たいの…だから無事に帰ってきて…」

 

クリスも翼も月の欠片を見上げながら呟いた。それぞれの思いを、ガンヴォルトへの思いを吐露する。

 

だが、そんな中、突如停止していたカ・ディンギルが急に光を放ち、何か強大なエネルギーを収束させていく。

 

「馬鹿な!?カ・ディンギルは完全に停止しているはず!?核となるデュランダルもない今、何が起ころうとしているんだ!?」

 

弦十郎の言葉にカ・ディンギルがエネルギーの収束を瞬時に終わらせてそのまま月へ、いやガンヴォルトが戦う月の欠片へと向けて紫の光のエネルギーを解き放った。

 

そして放たれた一撃は月の欠片へとぶつかり、その一撃で月の欠片を半分以上損失させた。

 

「ガンヴォルトさん!」

 

あの場所ではガンヴォルトが戦っていた。損失していた部分にガンヴォルトがいればただでは、いや跡形もなく消え去るだろう。

 

「ガンヴォルトぉ!」

 

全員が叫んだ。だが、その声は絶対に月の欠片へとは届かない。だが、叫ばずにはいられなかった。

 

ここからではガンヴォルトがどうなったかさえも分からない。ガンヴォルトが生きているのかさえも。

 

「ガンヴォルトぉ!」

 

奏が叫び、装者全員は再び電子の障壁(サイバーフィールド)へと攻撃を再開する。

 

無駄だと分かっていても、無理だと分かっていてもそうしなければならないと全員が思ったのだ。

 

「壊れろ!壊れろよ!ガンヴォルトの元に行かなきゃ!あいつの所に行かなきゃ!」

 

「ガンヴォルト!早くこんなもの壊して行かないと!」

 

「何でだよ!何でカ・ディンギルが今頃動き出すんだよ!あいつが…あいつが止めたあれが何で!」

 

「ガンヴォルトさん!絶対に生きていて下さい!私達が行くまで絶対に!」

 

装者達は各々の思いを口にしながら電子の障壁(サイバーフィールド)を攻撃し続ける。だが、いくら攻撃しても傷さえ付かず、反撃により装者達の身体をどんどん傷付けていく。

 

下でもオペレーター達がガンヴォルトの為に、カ・ディンギルを止めようと落ちた廃材等で攻撃しているが何の意味をなさず、どんどん倒れて行っている。

 

「ここで終わってたまるか!あいつが絶対に何とかしてくれるはずだ!諦めるな!」

 

弦十郎も痛む腹を押さえながら、電子の障壁(サイバーフィールド)へと攻撃する。傷を負いながらもこの中で一番の強者である弦十郎でさえ、電子の障壁(サイバーフィールド)に傷を付ける事が出来ず、倒れ伏してしまう。

 

「どうすればいいんだよ!?」

 

「諦めるな!諦めたらガンヴォルトが危ないんだ!」

 

「奏の言う通りだ!雪音!絶対に諦めるな!」

 

クリス達も傷付きながらも攻撃していくが、何の意味をなさない。

 

「どうすればいいの…こんなの…これじゃあガンヴォルトさんが…」

 

そして響を残した装者達が立ち上がる事さえ出来なくなるまで傷付き、崩れ落ちる。オペレーターや下で頑張っていた生徒達も傷付き倒れてしまう。

 

もう残っているのは響のみ。

 

「響!諦めちゃダメ!絶対に諦めないで!諦めたら皆あの子に何をされるか分からない!ガンヴォルトさんがどうなるか分からない!」

 

傷付きながらも響へと叫ぶ未来の姿。だが、この状況をどうする事も出来ないと感じてしまう。

 

「どうすればいい…どうすれば…」

 

そんな中、響はある歌を思い出す。それは響がライブ会場で聞いたあの歌。そして暗闇の中を彷徨っている時に切り開いてくれた蝶を思わせる服を着たあの少女、シアンの歌を。

 

「解けない心…溶かして二度と離さない…貴方の手…」

 

響は思い出しながら言葉を紡ぐ。だが、何も起こらない。

 

「駄目だ…こんな歌じゃない…あの子が歌っていた歌はもっと綺麗だった…もっと逞しかった!」

 

「大丈夫…貴方なら歌える…」

 

突如響く、少女の声。それは周囲からではなく心に響く優しい声。それと共に胸から何か光り輝く残滓が溢れ出し、空へと向かって行った。響は何が起きたか分からなかったが、その少女の言葉に頷いた。そして再び響は歌を歌う。今度は詰まらず、思い出す様にではなく、まるで知っていたかの様に。

 

「解けない心、溶かして二度と、離さない貴方の手」

 

その瞬間に溢れ出す力。そしてその力は全員の元へ行き、光で包み込み傷を癒していく。

 

「何だこれは?」

 

「この歌はあの時の…」

 

「シアンの歌…あの時と同じ、奏を治してくれた時と同じだ…」

 

倒れ伏していた装者達も傷が癒え、立ち上がり、響の元へ向かう。

 

「立花!これは一体!?」

 

「私にも分かりません!でもこの歌が思い浮かんだんです!皆を救いたい、ガンヴォルトさんを助けたいって思ったら!」

 

「何が起こったのかは分からないけど、今はこの歌で溢れたこの力なら!?」

 

「何が起こったか分からないけど、これで…この力があれば!」

 

全員は頷く。そして、四人はアームドギアに力を込める。今までにない程の力が溢れ、溢れ出る光には僅かながら蒼い雷光が垣間見える。

 

「行きましょう!ガンヴォルトさんの元へ!あの場所へ!」

 

響の言葉に全員が頷いて、力一杯各々のアームドギアを電子の障壁(サイバーフィールド)へとぶつける。その一撃は今までビクともしなかった電子の障壁(サイバーフィールド)を揺るがし、反撃の隙を与えず、一部を消滅させた。

 

「行きましょう!ガンヴォルトさんの元へ!」

 

響の言葉に全員が頷き、穴の空いた電子の障壁(サイバーフィールド)を飛び出した。それと共に閉じゆく電子の障壁(サイバーフィールド)

 

「響…絶対にガンヴォルトさんと一緒に…皆と一緒に帰ってきて」

 

飛び立つ装者達にガンヴォルトを託し、未来は全員の無事を願った。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「まさか、あの一撃を喰らってもなお身体が残っているなんて思わなかったよ、ガンヴォルト。君は本当に何なんだい?蒼き雷霆(アームドブルー)を持っていたとしてもそんな生命力はありえないと思うんだけど」

 

残った月面の端に倒れ伏したガンヴォルトを見下ろす紫電は意識があるか分からない倒れ伏す姿に向けてそう言った。

 

「でも、もう立ち上がる事も出来ないだろう?君はここで終わりだ。そして今度こそ僕の勝ちだ、ガンヴォルト!」

 

再び叫び、蛇の頭を全てガンヴォルトの元へ向けると大きく開けた口にエネルギーを収束させる。

 

「最後まで愚かだったよガンヴォルト!神に刃向かい戦う君の姿!まるで自分の事を英雄とでも思う様な態度!でも残念だけど君は英雄でも勇者でもない!君は(テロリスト)だ!本当の正義に叶うはずがないんだよ!今度こそ僕が君を倒して理想を実現させる!」

 

叫びと共に放たれる八つの光線。だが、その光線はガンヴォルトに当たることなく、月の欠片を覆う電子の障壁(サイバーフィールド)を貫いて現れた巨大な剣、砲撃、竜巻、そして爆風で弾き飛ばされた。

 

「絶対にガンヴォルトを殺させない!」

 

「こんな姿になるまでこいつは私達を守る為に戦っていたんだ!今度は私達がこいつを守って助ける!」

 

「貴方とガンヴォルトの因縁は私達には分からない…でも、貴方がガンヴォルトを殺そうとするなら私達が止める!」

 

「絶対にガンヴォルトさんを殺させない!死なせちゃいけないんだ!」

 

煙が飛び現れた装者達は各々が叫ぶ。

 

「まさか君達がこんな所まで来るなんてね…電子の障壁(サイバーフィールド)をどう破ったのか気になる所だけど、そんな事はどうでもいい。君達には何の恨みがある訳じゃない。でも、そんな力をガンヴォルトの為に使おうとするのならば話は別だよ。君達も危険な存在だ!僕の…神の前に立ちはだかり、戦おうというのならば、ガンヴォルトと同じくここで散れ!」

 

そして再び叫びを上げる紫電。それと共に八体の蛇が装者に向けて吼えた。

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