未来は雨が降り頻る中、傘も差さず墓地へと訪れていた。
だが、未来の前に建つ墓には名前など刻まれておらず、ただ一枚の写真立てが立て掛けられているのみ。
そして、その写真立ての中にある写真には親友、響との写真が納められている。
月の欠片が砕かれて、帰ってくると信じていた響、そしてガンヴォルト。クリスに翼に奏も、あの後未来の前に姿を現す事はなかった。
「なんで…なんでなの…なんで皆帰って来れなかったの…」
未来はお墓の前で泣き崩れる。だが泣き崩れた時にいつも慰めてくれる響の姿は何処にもない。
「私…どうすればいいの…」
助けてくれた恩人も、折角仲良くなれると思っていたクリスも、翼も、奏も誰もいない。
「折角…皆が作ってくれたのに…こんなのないよ…ガンヴォルトさんが頑張ってくれたのに…皆が頑張ってくれたのに…響…一人は寂しいよ…」
墓の前で泣き続ける未来。
装者とガンヴォルトが救った世界に英雄がいないなんて。親友も、救ってくれた恩人もいない。
未来は絶望に立たされる。
「きゃあぁぁ!?」
そんな時に響く女性の悲鳴。
未来は涙を拭い、立ち上がるとその元へと駆け出す。到着したその場には動かない車のエンジンを必死にかけようとしている女性と、ノイズの姿が。
折角親友が、恩人が救ってくれた世界なのになぜノイズが。
だが、未来はそんな事も関係なしに車を必死に動かそうとしている女性の元へ駆ける。
「車を捨てて逃げましょう!」
女性の元へ辿り着き、車の中で泣きながらも必死に動かそうとする女性を車から出すと、未来はノイズから逃げる為に駆け出す。
その後をじわじわと追って来るノイズ。
「いや…いやぁ!」
女性は悲鳴を上げながら、未来に手を引かれながら走る。
ノイズの恐怖を理解している未来はそんな女性に向けて叫ぶ。
「落ち着いて下さい!叫んだって無駄な体力を使うだけです!叫んでいるくらいなら生きる為に走りましょう!」
その言葉に幾分か冷静さを取り戻したのか、叫ぶのをやめて、必死になって未来に引かれながら走る。
だが、女性は砕けた路面に足を取られて転んでしまう。
「大丈夫ですか!?」
未来は倒れる女性へと近付く。転んだだけで、怪我は見当たらない。
「逃げましょう!」
「いや、いやぁぁ!」
その言葉と共に叫び出す女性。立ち上がらせようと未来は手を伸ばすも伸ばした手と共に伸びる影。振り向くと、そこには既に未来へと襲い掛かろうとするノイズの姿。
もうだめだ。そう思ってしまう。だが、響なら…ガンヴォルトならこんな所で諦めない。
未来は女性を引っ張って襲い掛かるノイズを躱す事に成功した。
「諦めないで!絶対に助かります!だから!」
女性を響の様に励ます。だが、女性はさらに絶望する様な表情を浮かべる。
未来は周囲を見渡すと既にこの場はノイズによって包囲されており、逃げる道など存在しなかった。
だけど未来は女性の前に盾になるよう立つ。
諦めちゃだめなんだ。響なら、ガンヴォルトさんならそうするはず。
だが力のない未来に何が出来るというのだろうか。
無情にもそんな姿の未来を嘲笑うかのようにノイズは殺さんとばかりに未来へと押し寄せる。
「ッ!?」
未来は本当に死んでしまうのか?そう考えてしまうが、その瞬間に目の前に押し寄せたノイズが全て吹き飛ばされた。
「えっ?」
「機密とか色々あって動けなかったんだ。でも、もう大丈夫だよ。心配掛けてごめんね」
懐かしくて優しい、聞きたかった太陽のような親友の声。
その方向を向くと、黄色の鎧を解き、リディアンの制服を着た響の姿があった。
「響?」
最初は幻覚かそれとも夢かと思ってしまった。だが、幻覚でも夢でもない。
未来は響の元へ駆け出し、そのまま響の胸へと飛び込んだ。
「響ぃ!」
「ごめんね一人ぼっちにさせちゃって」
響の感触、声に未来は涙が止まらなかった。
そして響の他にも弦十郎、慎次、翼、クリスの姿もある。だが、その中に奏と恩人であるガンヴォルトの姿がない。
「響!ガンヴォルトさんは!?」
「心配しないで、ガンヴォルトさんもちゃーんと無事だから」
その言葉に安堵するも姿を見せていないガンヴォルトの事を響に聞く。
響もガンヴォルトが無事な事を説明していくが、響の説明ではいまいち未来には伝わらなかった。
「安心しろ。小日向。ガンヴォルトは今他の対処を出来るように二課で待機しているだけだ。奏は無理したせいで未だ筋肉痛で苦しんでいるだけだから安心しろ」
翼が上手く伝えきれない響に変わって説明してくれた。奏だけは無事?とは言い難いらしいがしっかりと生存しているようだ。
「ガンヴォルトさんも未来の事心配してたから行こう!ガンヴォルトさんの所に!」
未来は響に手を引かれながら、車へと乗り込んだ。
◇◇◇◇◇◇
「ガンヴォルトは行かなくってよかったのかよ?あの子の事心配してただろ?」
「あっちには響に翼、それにクリスもいるから大丈夫だよ。ボクは他にノイズが現れた時に対処出来るよう残ってるんだから」
奏が仰向けに寝そべるベッドの横で本を読みながらそう答える。
「それならいいんだけどよぉ…私達だけこうゆっくりしているのもなんか気が引けて…」
本を閉じて奏に言った。
「奏はあの時無理してでも頑張ったんだから休んでもいいんだよ。もし何かあってもボクが奏を守るから」
そう言うと奏は顔を真っ赤にして痛いはずなのに身体を動かして布団を頭までかぶった。
大丈夫ではないのかプルプルと布団の中で震えている。
「…本当に?本当に守ってくれるのか?」
ひょっこりと顔を出した奏は何処か心配そうにボクへと聞く。
「うん、前みたいに君が倒れそうになってもボクが奏を支えて守るから安心して」
そう言って奏の頭に手を置いて撫でる。
奏は恥ずかしそうにだが、嬉しそうにする。
「ちょっと二人だけの世界に入らないで欲しいんだけど…大体GV!こっちにきてどれだけの女の子を落とせば気が済むのよ!私が覚醒出来てない状態の時に気付いたら沢山の女の子が周りにいるし!」
突然現れるシアンに奏は驚く。
「シアン。何を言っているのか分からないけど、落とすって人聞きの悪い言い方しないでよ」
「いいえ、GV!私には分かる!この女!奏は絶対に!」
「そ、それ以上言うなよ!シアン!」
奏は顔を真っ赤にしながら何処か焦るようにシアンに口を閉ざすように叫んだ。
ボクはぽかんとしながら、シアンと奏の言い合いに平和だなと感じながら再び本を読む事にふける事にした。
何かボクの事について言い争っているようだが、肝心な部分だけは声が小さくなりよく聞き取れない。
聞かれたくないのならばこんな所で言い争わず、ボクのいない所でやればいいのにと思う。
そして...
「ガンヴォルトさん!?」
室内に響く、未来の声。それと同時にボクの背中にぶつかる小さな衝撃。
「ガンヴォルトさん…よかった…生きててよかった…」
ボクはそんな未来を解いて立ち上がり、未来に視線を合わせて言った。
「心配掛けてごめんね、未来。それとただいま」
ボクは未来の頭に手を置き撫でながら、涙を流す未来をあやすように笑顔を浮かべてそう言った。
戦姫絶唱シンフォギアABを一期最後まで読んでくれた方々に後書きを通して感謝の言葉を送ります。
読んでくれた方々、ありがとうございました。
ようやく一期も終わり、続く二期までの繋ぎと本編では語っていない復活したシアンのことを書くと同時に、楽しみにしていた人がいるしないフォギアことこちらでは迸らないシンフォギアABとしてシリアス多めな本作をコメディー風に書いていこうと思います。主人公はいないと困る脇役となり、装者達とその他ががメインの話になると思います。
そして二期を最終章として戦姫絶唱シンフォギアABを終わらせる為に今まで散りばめられた伏線を回収していきます。
今後ともよろしくお願いします。