戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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新年明けましておめでとうございます。
本編が終わったのでまずはこちらを再開。
取り敢えずこっちは合計約十話行くかいかないかで終わる予定です。


5mVOLT

〜響と未来、そしてシアン〜

 

ガンヴォルトは復興の為に外に出ているが、シアンは復興中のガンヴォルト時はあまり話しかけるのも迷惑だと思い、二課内部をふわふわと漂っていた。

 

「…GVもいないし…やる事も無くて暇…」

 

だが、ガンヴォルトや装者でなければシアンの姿を目視する事は出来ない。それに、シアンはあまり二課の面子とも関わりがない為に、機械を通して話しかけようにも話す話題がない為に寂しい気持ちで漂っていた。

 

そんな時、

 

「あっ!シアンちゃーん!」

 

「響!」

 

寂しい気持ちを明るく照らすような声にシアンは先程の気持ちがパッと明るくなる。

 

翼や奏、クリスと違い、この世界に来て唯一、心置きなく話せ、そして何より心配をしなくていい存在である響が来たからだ。

 

だが、その声の方向へ振り向くと、シアンの表情は喜びともう一人の存在に表情を引き攣らせた。

 

響は友達であり、シアンにとってこの世界であった女の子の中で最も清涼剤になる人物。

 

だからシアンは心を許した。

 

だが、もう一人。響の親友にしてポッと現れた翼や奏、クリスに次ぐ新たなる恋敵(てき)かも知れない少女。

 

未来の存在。

 

「ど、どうしたのシアンちゃん?複雑な表情をして?」

 

響が近付いてシアンの表情に気付いてそう聞く。

 

「?私には見えないけど…そこにシアンちゃんがいるの?」

 

シアンの存在を感知出来ない未来は響が虚空に向けて話す為に何処か半信半疑の表情を浮かべる。

 

未来に失礼なと思うが見えないのだから仕方がないとシアンは心を落ち着かせて考える。

 

まだ未来は恋敵と完全に決まった訳じゃない。話せばもしかすれば恋敵でない事が分かり、仲良くなれるかも知れない。この世界に話し相手が少ないシアンにとってそれは重要な事。響の様な清涼剤が増えるだけでも助かるのだから。

 

翼や奏、クリス。いがみあいの多いと言う何とも言えない関係よりも、話してて落ち着ける友達が響以外にもいればと言う思いを持つシアン。

 

だが、話した事のない相手。どう話を切り出すべきか考えるシアン。翼は聖遺物を通し、何回かコンタクトを取っていたから大丈夫だった。奏もクリスもガンヴォルトの事で言い合ったからか会話は出来る。

 

本来であればあまり人付き合いが得意ではないシアン。彼方でも学友はいたが、それも自分から話したと言うより話しかけられて友達になった感じ。

 

故に正直、どう言う感じで未来に接すればいいのかわからない。そもそもそれは見える事が前提であり、見えない未来にどう切り出せばいいのか分からない。未来はどうなのだ?どう接すればいい?それに見えないのならどうやって?

 

そんな感じでシアンは未来とどうコンタクトを取るべきか考えるが、話題が見当たらない。

 

シアンが思考をする中、響が未来に見えない為にどうすればいいのか思いつき、スマートフォンを使い、カメラを起動させる。

 

機械を通せば見えると教わった響はそれを実行する。

 

だが、カメラ越しではシアンの姿は確認出来ない。それもそのはず。シアンは魂に電子を使い、形を作り出した存在。

 

その為電子を移せないカメラではシアンの姿を目視する事は出来ないのだ。

 

どうすればいいか全員が思考する。シアンは未来にどう接するべきか、響はどう未来にシアンを紹介するべきか、未来は見えないシアンにどう話せばいいのか。

 

それぞれが考えを重ねる。

 

だが、その思考は出口が見えない為、シアンが思い切って行動に移した。

 

響が握るスマートフォン。そちらに干渉し、画面から未来に姿を見れる様に、スマートフォンに移ったのだ。

 

「は、初めまして…」

 

シアンは見えている故に何回かは未来の顔を見ている。だが、シアンの姿を見た未来は気さくにシアンに話しかけてくれた。

 

「初めましてシアンちゃん。響やクリスから話は聞いているかも知れないけど、私は小日向未来。よろしくね」

 

その言葉から初めの邂逅はシアンの中では過去の友達と同じ様な感覚であり、懐かしく、嬉しい感情が湧いてきた。

 

「よ、よろしく!」

 

シアンはそう返すと未来はシアンに礼を言う。

 

そこからはとんとん拍子で上手くいく。シアンと未来は馬があった。それは二人に共通点があったから。

 

シアンはガンヴォルト、未来は響という形で互いに大切に思う人がいる。故にその心配事の話をすると自然と未来との会話が弾んだ。

 

故に、シアンは未来とはこれからも仲良く出来ると確信した。

 

だが、

 

その話は響の何気ない一言でその確信が変わってしまう。

 

「そう言えば、シアンちゃん。そろそろクリスちゃんがガンヴォルトさんの家に引っ越しするみたいだけどどうなってるの?」

 

その言葉にシアンは凍り付く。そして未来も。

 

シアンは自身もその言葉に凍り付きながらも未来の表情が変化するのを見逃さなかった。

 

「響…それはどう言う事?クリスが…ガンヴォルトさんと一緒に住むって?」

 

「クリスちゃんの家がないから物件を決めるはずだったんだけど、健康とか安全からの観点とか何たらでガンヴォルトさんと一緒に住むって話になってるんだよ」

 

そう未来に言った響は未来の表情の僅かな変化に気付いて察してしまった。

 

まさか、未来もなのかと。

 

いや、よくよく考えれば未来もそうなのかと思わせる事はあった。

 

ガンヴォルトと再開してから遊びに行くと決めたあの日。

 

普段とは違い、遊びに行くのに少し気合が入っていた。男の人と遊ぶと言う為と最初は思っていたが、それは違ったと今になって考えさせられる。

 

想っている人に綺麗に見られたい。普段とは違う綺麗な姿を見せたい。そんな理由だと。

 

そしてその言葉が地雷になったと漸く響は気付いた。

 

ガンヴォルトと住む事になったクリス。

 

そんな話を聞いて狼狽えないわけがない。それはその時の翼の反応から知っている。

 

だから話を別方向へとシフトさせようとする。

 

だが、響が声を発する前に、未来が言う。

 

「クリスはガンヴォルトさんと住むなら、引っ越しのお手伝いしなきゃね」

 

普通の言葉。その言葉に響は一瞬自分の耳を疑った。いや、シアンもだ。今までの他の人物とは違い、大なり小なりの衝撃と嫉妬を混じらせていた。

 

だが未来は違った。

 

嫉妬などを見せず、ただ淡々とそう言ったのだ。

 

シアンもこれを聞いて何処か安心した。響も別にそんな事はなかったのかな?と考える。

 

だから話を続けた。だが、その話の中でシアンは響には聞こえなかったが、スマートフォンのマイクから聞こえたごく小さな声を聞き逃さなかった。

 

「クリス…一緒に住むからってリードとは限らないんだよ」

 

「未来!やっぱり貴方も!」

 

安心したのも束の間。その言葉にせっかく友達と思ったが、シアンは未来をも恋敵に認定した。

 

「シアンちゃん…私だって一人の女の子。好きになったら振り向いて貰いたいって思うんだよ」

 

何処か蠱惑的に微笑む未来。

 

そして再びここでも落とされた火蓋。

 

その火蓋を落とされてヒートアップするシアン。だが、未来はそれを受け流す未来。

 

そしてそれを見た響はこう思う。

 

「ガンヴォルトさん…貴方は一体何処まで人を誑かせればばいいんですか…」

 

その様子を見て溜め息を吐く響。

 

勿論ガンヴォルトが悪いと思っていない。だが、いい加減にそろそろ好意に気付いて欲しい。

 

そうすれば少しでも争いの目が消えるのではないかと思うから。

 

だけど、響はシアンには悪いと思うが未来を応援しようと考えている。

 

大切な親友。その人が想い人と結ばれる事を望まないなど親友とは呼べない。

 

だが、そう思うと何処か寂しさと胸の苦しさを覚える。

 

それが響には寂しさと思わせるものか、それとも、別の何かである事はまだ響は知る由もなかった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

〜奏のリハビリ〜

 

ある程度のリハビリを重ねた奏。歩くまではいかないもののその回復力は驚異的な速さで、もう少しで車椅子ではなく松葉杖を使える様になるほどになっていた。

 

現在は特異災害機動の提携する病院のプールを借りてリハビリを行なっている。

 

そしてそこまで回復させたのは奏の努力の結果であり、リハビリが解禁されてから必死に取り込んだ事が身を結んでいた。

 

奏をそうまでさせる理由は勿論、新たな住居への引っ越し、そして今リハビリを手伝う人のお陰であった。

 

「奏、無理しなくていいからゆっくり行こう」

 

ガンヴォルトがこうしてリハビリを手伝ってくれる事が奏のリハビリへの意欲を上げていたから。奏の手を引いて歩きの補助をするガンヴォルト。奏は嬉しさと気恥ずかしさを隠さずに手助けしてくれている。

 

「おう。でもいいのかよ。私のリハビリばっかり付き合ってもらって。私は嬉しいけどシアンが拗ねちまってるぞ?いや、その他の奴もそうだけど…」

 

奏はそう言ってプールサイドを見る。

 

そこには険しくも羨ましそうな顔をするシアン。同じく翼。羨ましそうにクリス、未来がいた。

 

響はそれを知ってか知らずか分からないが関わると危ないと必死に奏の応援をしている。

 

「険しい表情をしているのは分かるけど、奏が溺れないか心配してるんじゃないかな?流石に手を引いているし、足もつくからそんなこともないだろうけど…」

 

ガンヴォルトは見当違いの反応をする為に、奏も溜め息を吐く。みんなの気持ちを理解してそう言っているのならただの鬼畜。だが、ガンヴォルトはそうではない。

 

恋愛という感情に限りなく鈍いのだ。故に、そう思う事しか出来ない。

 

だが、そこまで鈍い為に溜め息を吐くしかない。誰かが言えばいいのだが、ガンヴォルトには目的がある為に、誰も踏み込む事が出来ない。

 

だが、それでもやっぱり誰もが思う。ガンヴォルトに自身の気持ちを理解して欲しいと。

 

だから奏は踏み込む。

 

(少しくらいはいいよな?)

 

ガンヴォルトだけは取られたくないと。初めは憎かったが、今は愛しく思えるガンヴォルトに、少しくらいは振り向いて欲しいと。

 

そうして奏はわざとガンヴォルトの手を引いた。

 

勿論、今の奏の腕力でガンヴォルトを動かす事など不可能。しかし、ガンヴォルトが動かない故に、その力は奏をガンヴォルトの方に引き寄せ、奏の顔はガンヴォルトの胸へとぶつかる。

 

「っと、どうしたの急に」

 

「いや、ちょっとね」

 

そうして奏はガンヴォルトと抱き合う様な姿勢になる。

 

そして奏は悪戯っぽくプールサイドへと目をやった。

 

奏の視線の先、そこでは異常なまでの羨望と怒りを募らせたシアンと翼。そしてそこまでする必要あるのかと目で訴えてくるクリス。そして羨ましそうに見る未来の姿。

 

そしてまたですかと溜め息を吐く響。

 

それを見て奏は今だけは自分の時間なんだと少しばかりの優越感に浸る。

 

「ほら奏、足はつくし、今まで歩けてたんだから続けるよ?」

 

それに気付かないガンヴォルトは奏にそういうと奏もそれに従って再びリハビリを再開する。

 

奏はその辛くも暖かい今を、大切な人と行っているという幸福に満たされながらもリハビリに励むのであった。

 

だが、リハビリが終えると勿論、ガンヴォルトはまたシアンと翼、クリスに責められて、何が悪かったのかとガンヴォルトにとって答えの分からない問題について頭を抱えるのは言うまでもなかった。

 

「ガンヴォルトさん、少しはこれで勉強したほうがいいと思います」

 

「響、何で少女漫画を?」

 

そう言われて響から渡された漫画を渡されるガンヴォルト。しかし悲しきかな、ガンヴォルトはその漫画を読んだとしても、感動と切なさと言う感情以外分からなかったという感想のみしか響の耳には入らなかった。

 

しかし、その貸された漫画はシアンが気に入り、響とシアンの仲が深まった事以外、何もなかった。

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