〜クリスの買い物〜
クリスはガンヴォルトとの買い物に胸を躍らせていた。
二人での買い物とは行かない。何故ならガンヴォルトと常にシアンがいる。だが、それでも、一緒に住む。そして家具を見に行く。
(結婚して夫婦になるカップルがやる自分達の家の家具を見る奴だろ…これ)
そしてそう考えると顔が赤くなってしまう。
今までに無い初めての事。そしてそれが想っている男と一緒となるとそうなってしまう。
(色々と順序が飛びすぎて頭がおかしくなってきやがる!)
頭の中はそう言う考えばかりが浮かび、黄色い歓声が心の中が五月蝿くなる。
だが、
(でも…あいつはそんな事一つも考えてねぇんだろうな)
しかし、そんな考えを阻んで来るのもまたガンヴォルト。朴念仁のトンチンカン。可愛いなど口にしても恋愛なんかに繋がらない小学生、いや、恋愛のれの字も理解出来ない男。
そう考えると今度はムカついてくる。
だが、ムカつきはするが怒りは抑える。恋愛を知らないのならば自分が意識させればいい、と画策する。
そうする事で差がつけられる。奏にしろ、翼にしろ、シアンにしろ、この時により優位になれば良い。
そう考えていた。
「ごめん、クリス。待たせたかな?」
そんな時、後ろから声をかけられる。勿論それはガンヴォルトであり、クリスの今後の同居人。そして想い人である。
その言葉にクリスは胸を躍らせて振り返るが、その瞬間に一気にそれは鳴りを顰めてしまう。
それもそのはず。
来ていたのはガンヴォルトだけではないから。
シアン。それは分かっている。ガンヴォルトと一心同体故にあまりに退屈でなければガンヴォルトと常に一緒にいるから。
だが、そこに居たのはシアンだけではなかった。
翼、響、未来の姿もあったのだから。
「どう言う事だよ!なんでこいつらも!」
「なんかみんなも買い物途中だったみたいでそれなら一緒に見回ろうって話になってね」
その言葉にガンヴォルトが答える。だが、クリスは理解している。そんな偶然があるわけ無いと。
「そう言う事だ、雪音。どうせならみんなで回ろう」
そして翼がクリスの近くに来てそう言った。
「みんなで回った方が楽しいよ?クリス」
「私と話せる人は多い方が良いからね」
そして未来とシアンも。
「これ以上抜け駆けさせるわけ無いだろう、雪音」
「クリスばっかりいい思いしてずるいからね」
「あんたばっかりにいい思いなんてさせないわよ」
普段なら歪み合うのにこんな時ばかり協力的な三人にクリスは表情を歪める。
そしてそんな嫉妬の感情が混ざり合う所から離れて見守るガンヴォルトと響。
「…本当に私達まで付いて来て大丈夫だったのかな?」
「みんなが楽しければボクはいいと思うけど?」
「あの雰囲気を楽しそうと表現するガンヴォルトさんは目が節穴じゃ無いんですか?」
「!?」
急に響に毒を吐かれたガンヴォルトは驚きを隠せない。
少女漫画を貸して読んだのに全くと言って理解出来ないガンヴォルトに頭を痛める響。
ガンヴォルトにはもう少し女の子の気持ちを理解出来る力が身について欲しいと思うが、こればかりは響はもう諦める。
言えばいいのだろうが、自分自身がそれに気付かないと意味が無い。
「ガンヴォルトさん、いい加減にみんなの感情を理解する努力をした方がいいと思いますよ」
「…善処するよ…でも…せめてヒントを…いや、自分で気付けない様じゃダメな気がするからなんとか頑張るよ」
ヒントと言うとむぅと響が頬を膨らませて何かを訴えて来たためそう答えた。
「善処じゃなくて、気付いてください。そうしないとこれからもっと大変になるかもしれないんで」
強めに、そして呆れながらもそう言う響。
だが、そうでもしないと響にまでとばっちりが来るかもしれない。だからこそ、善処でもなく、理解してと言う。
「頑張るよ…」
そう言ったガンヴォルトに響はこれだと当分気付かないだろうと溜め息を吐く。
そしてそんな間でもヒートアップする四人の場所を見てそろそろ彼方を止めなければ買い物どころじゃないと思い、響はガンヴォルトの手を引いて向かう。
「そうしてください。じゃあ、みんなの所に行って買い物しちゃいましょう!」
どうすればいいか考えるガンヴォルトも響に引かれたことで取り敢えずその事を胸に刻みながらも四人の元へ向かうのであった。
◇◇◇◇◇◇
一旦その場を後にした五人は大型の家具店へと移動する。
勿論、クリスが使う家具を見るため。
その為、クリスが必要とするものをスマートフォンに書き起こしており、一つ一つを見ながらクリスの気に入ったものを購入していくと言う流れであった。
「本当にいいのかよ…結構良い値段するのに出して貰って…」
だが、クリスは自身が選んだ物を店員に伝えて購入予約をしていくボクに対して少し不安そうに聞いてくる。
「構わないよ。ボク自身が良いって言ったんだから。クリスは気にせず、必要物があるなら出してあげるから」
ガンヴォルトはそんなクリスに大丈夫と優しく言った。
その事にクリスはその行為に甘え、必要最低限の物を選んでいく。
「いいなぁークリスちゃん…」
そんな様子を見ていた響が羨ましそうに言う。
「本当に羨ましい…ガンヴォルトと一緒に住むなんて…ッ!なら私も!」
そして翼も響とは違う羨ましいと羨望して気付き、ガンヴォルトへとそう言った。
「ごめんね、翼。今後ボクが住む部屋はもう空きがないんだ…」
それを聞いた翼が絶望した。
「ガンヴォルトさんの借りていた住まいって二人で住む広さなんですか?」
未来も何処かクリスを羨ましそうにしていたが、自分は響と寮に住んでいる事、そして仕送りなどがある為に離れられない。
だが、遊びに行く事は可能になったりするのでそこを堪え、間取りなどが気になり、聞いた。
「いいや、3LDKのそれなりに広い部屋を借りてるよ」
それを聞いた翼はならば何故と言いたげな表情を浮かべ、クリスとシアンはその言葉苦虫を噛み潰したように表情を歪め、未来はそれならは何故と言う様に、そして響は何か嫌な予感と更なる混沌をこの場に呼び込もうとする気配を感じた。
「もう一部屋は奏が来る事になっているからもう空きがないんだよ」
その言葉に響は予感が的中し、翼と未来は凍り付き、クリスとシアンはガンヴォルトの変わらぬ答えに呆れと怒りを見せる。
「何故だガンヴォルト!何故奏が!」
そして初めに反応を見せたのは翼。辺りに人がいるのにも関わらず翼はガンヴォルトに詰め寄る。
「何故ってシアンがいるにしてもボクとクリスは異性だから。住みにくいと思っていたんだけど奏がそう提案してくれたからボクは了承しただけだよ」
翼に対してガンヴォルトが言った。
「いつなんだ!奏は私よりも先にそう言ったのか!?」
「どうしてそこが気になるかは知らないけどクリスが部屋に住む事が決定した時に奏から言われたからボクは了承したんだよ」
そう答えたガンヴォルト。だが、その言葉に翼は遅れた事に膝をつく事になる。
人前でそうなるとなると流石にガンヴォルトは翼を止める。
同様に未来も少しばかりダメージを受けたのかふらつくがそちらは響がフォローする。
「…とんでもない爆弾をいくつか変えてるんですか…ガンヴォルトさん…」
そしてその言葉と共に独り言の様にそう呟いた。
「それについてはあいつに言ってくれ…」
「GVが安請け合いしすぎなのよ…」
そしてその響の言葉を聞いていたクリスとシアンが響に対してそう返すのであった。
そんなこんなで色々とあったが家具を揃えることは出来た。
だが、クリスはこんなに貰ってばかりいる事に少し申し訳ない気持ちがあり続けた。だから少しサプライズとお礼をと考えていた。
「じゃあボクは支払いと配送の日程を決めて来るから少しだけ待ってて」
そう言ってガンヴォルトはレジの方へと向かっていった。
そしてガンヴォルトの姿が見えなくなった時、クリスは動き出す。
「クリスちゃんどうしたの?」
ガンヴォルトが見えなくなり動き始めたクリスを見て響が声を上げる。
「なんでもねぇよ!少しだけ待ってろ!」
そう言って響の言葉を聞かずにクリスはみんなから離れる。
「何があったのかな?」
「忘れ物だとしてもガンヴォルトさんと違う方に行くなんて…」
「お花を摘みに行ったのだろう。雪音はああ言う性格だ」
「そうかもだけど…何か胸騒ぎが…」
響も未来もクリスがガンヴォルトとは別に行くのを見て疑問を浮かべるが翼は多分慌て方としてトイレと捉える。だが、シアンは何処となく嫌な予感を持ってクリスの帰りを待つのであった。
◇◇◇◇◇◇
あれからガンヴォルトが支払いを終える前に帰ってきたクリス。みんな深くは踏み込まず、話をしているとガンヴォルトが支払いを終えて帰ってきた。
「待たせてごめんね」
「そんなに待ってねぇから大丈夫だ」
クリスはぶっきらぼうに答える。
「素直じゃないなぁー、クリスちゃんは」
「もう少し素直になっても良いんじゃない?クリス」
そんなクリスに響と未来がそう言った。
「うるせぇ」
そう言われて小さく言うクリス。
「確かに雪音も素直になると良いと思うぞ?」
「そうそう。少しは素直にお礼くらい言えれば良いのに」
翼もシアンもそんな恥ずかしそうにするクリスへとそう言った。
「まぁまぁ」
そんなクリスに向けてやれやれとしているみんなを嗜めるようにガンヴォルトが間に入る。
そんな時、響のお腹が可愛らしい音を立てる。
その瞬間、響はお腹を恥ずかしそうに抑えて笑った。
「良い時間だし、帰る前に何か食べて帰ろうか」
「良いですね!美味しい物たくさん食べて帰りたいです!」
そのガンヴォルトの案に賛成する響。
「確かに良い時間だし、そうしよう」
翼が賛成して、みんなで外食する事になる。
近場のファミレスで食事をとる事になり、響が本当に食べれるのかと言えるほど注文したり、クリスの食べ方に絶句したりあったが、何事もなく食事も終わり、クリス以外を寮や自宅に届けた帰り道。
クリスとガンヴォルト、シアンが帰っている中。
「今日は…あんがと…色々と買ってくれて…」
「気にしなくて良いって言ったのに」
「GVは誰にでも優しずぎなのよ!」
クリスはガンヴォルトに礼を言う。ガンヴォルトはそんなクリスに対して気にしなくても良いと前と同じ事を言った。
そしてガンヴォルトのその無償の優しさにシアンは自分自身にも向けられている事に怒りを込めて言う。
だが、ガンヴォルトにそんな事を言っても無意味。
ガンヴォルトは自身の大切にしたい者にはそう言う人物だから。
そうしてクリスが一時的に間借りしている二課の宿舎へと送り届け終えようとした時、クリスはぶっきらぼうにガンヴォルトへと持っていたバックの中から何かを取り出して渡した。
「その…お前の好みとかわかんなかったし…これで全部お前に借りを返したと思わねぇけど…今回のお礼だ」
そう言われてガンヴォルトは受け取ったそれはアクセサリーなどを飾れる小さな置物。
「別にいらなかったら返してもらっても良い!」
そのお礼に戸惑うガンヴォルトにクリスがやっちまったと思いそう言う。
だが、
「いや、ありがとうクリス。大切に使わせてもらうよ」
ガンヴォルトは嬉しそうにそう言った。
「ッ!それならいい!じゃあまたな!」
そう言ってクリスはそのまま宿舎の方へと走っていった。しかし、その後ろ姿は恥ずかしそうに、そして何処か嬉しそうにするように見えた。
「お礼はいいって言ったけど…でも、やっぱりこうやって返されると嬉しいな」
ガンヴォルトはクリスから受け取った置物を見てほおを弛ませた。
だが、ガンヴォルトとは対比にシアンの顔は果てしなく怒りに満ち溢れていた。
「あのおっぱい魔人!姑息な手を!」
「なんでシアンは怒っているのさ?」
「全部GVが悪い!」
「えぇ…」
謂れのない怒りをぶつけられたガンヴォルトは本当に訳が分からないと思いながら、帰路に着く事にした。
しかし、帰る際にシアンからの謂れのない口撃が続いたのは言うまでもない。