〜二人の焦り〜
二課本部。
そこでは珍しい組み合わせの二人がいる。
「シアン…何故今の様な状況になっているのか説明して貰おう」
「私だっておっぱい魔人達が居候なんて反対よ!でもGVが決めた以上何も言えないから仕方ないじゃない!」
それは翼とシアンの会合。普段はいがみ合う二人だがこの時ばかりはそんな事をしている場合ではないと話し合っているのだ。
「それは分かっている…あそこはガンヴォルトが元々借りている物件…家主であるのがガンヴォルトな以上それに何か言う立場ではないという事くらい…」
翼は悔しそうに言う。
「しかし…それなら私もいいじゃないか!私だってガンヴォルトと一緒の家に住みたい!」
そして自身の願望を包み隠さずに暴露した。
「待ちなさい翼!それもそれでおかしいでしょ!」
「おかしくない!シアンはガンヴォルトと今は一緒だからいいかもしれないが私は違うんだぞ!一番付き合いが長いだけ!ガンヴォルトは家には来てくれるけど私はガンヴォルトの家には行った事はない!おかしいでしょ!ここまでの付き合いでこんな関係って!」
「いや、おかしくないでしょ!と言うか翼は自身がこっちのトップアーティストでしょ!そんなのスキャンダルもいいところでしょ!」
「それなら奏もでしょう!奏だってまだ復帰はしていなくとも私達同様トップアーティストの一人!それなのに何故私だけ除け者にされているのだ!」
と翼が欲望をカミングアウトしてシアンが冷静に突っ込んでそれからヒートアップしていく。
「除け者とかじゃないでしょう!とりあえず貴方は落ち着きなさい翼!」
「落ち着いていられるか!シアンだって焦りを感じるだろう!よく考えてみろ!ガンヴォルトだって男だ!相当鈍くてもあの二人が迫ったらどうなるかわからないだろう!」
「確かにあの二つのおっぱいは私や翼からすれば羨ましいと思える!だけど!あのおっぱい魔人共だろうとGVがたらし込まれるなんて事はないでしょ!難攻不落の朴念仁!少女漫画を読んでも女性の気持ちすら察せないのにそんな事あるわけないじゃない!」
ガンヴォルトがいない故に酷い言い草のシアン。
だが、それもまた事実故に翼も否定はしなかった。
「私は普通だ!あの二人の一部の成長か異常なだけだ!だけど、何か起きないわけではないでしょう!確かに奏も雪音も男性からすれば魅力的に映る物を持っている!ガンヴォルトでももしかしたら!何か間違いが起きないとは限らない!」
「そんな間違い私がいながら起こすわけないでしょう!」
更にヒートアップする翼とシアン。
ころっといくかもしれないという不安な翼。そうならないというシアン。だが、翼の言葉は今の状況からあり得なくないと思いそうになるシアン。
どうすればいい?どうすればこの議題の終着点を見せるのか?
依然として終わりのない怒りを吐き出す翼とシアン。
そんな一人で騒いでいる様にしか見えない翼を陰から除く二人。
「またガンヴォルトは何かやったっぽいな…」
「ガンヴォルトが何かやったなんて今更でしょ」
それは朔也とあおい。たまたま居合わせた二人はそんな二人を見てまたかと溜息を吐く。
「可哀想よね…翼さん達…」
「事情があるにしろ、あんなに綺麗な子達に思われながらもそれに気付かれない…いい加減にして欲しいよ…」
「ガンヴォルトだから仕方ないわよ…あの恋愛朴念仁は…」
あおいがそう言い、朔也も確かにそうだなと言う。
だが、それでも。
「朴念仁だとしてもいい加減にイライラしてくるわ…ガンヴォルトには一発喰らわせてやろうかしら?」
「やめといた方がいいよ。前みたいにガンヴォルトが甘んじて受けるとか以外だと当たらないよ」
「まさか?もうやった?」
朔也の言葉にあおいがそう聞いて朔也が頷いた。
「全く…本当に厄介ね」
「厄介極まりないよ。あの恋愛朴念仁のそういうところ」
二人は溜め息を吐いて、いい加減に止めるかと翼と見えないシアンの言い合いを止めに入るのであった。
◇◇◇◇◇◇
〜奏のお見舞い〜
「奏さん!調子はどうですか!」
「ちょっと響、病室なんだから静かにしないと」
ノックをして許可を得た響が奏の病室の扉を開けて大きな声を出して開口一番にそう言った。そしてそれを嗜める未来。
「響は相変わらず元気だな。未来も個室だからそんな気にしなくていいぞ」
そんな二人を招き入れる奏。
「だってよ未来」
「奏さんもあんまり響を甘やかしちゃダメですよ」
奏の言葉に響は大丈夫だったと未来に言ったが、それは甘やかしすぎだと未来は奏に言う。
「そんなに甘いかな?」
「甘いと思いますよ」
奏がそうか?と言うと未来はきっぱりと甘いと言う。
「未来ー、そんなに言うなんて酷いよー」
響は親友にそう言われて少し悲しそうに未来に抱きついた。
「響は甘え過ぎなんだよ。もう高校生なんだから少しは成長したら」
「嫌だー、まだ未来にも甘えたい…」
「もう響ったら…」
そう言った未来だが、どこか嬉しそうに響の頭を撫でる。
「未来の方も大概響に甘くないか?」
その光景を見て奏は呆れながら未来へとそう言った。
そんな時に病室の扉が再びノックされる。
「?どうぞー」
奏は誰が来たかは分かっていたが、一応そう声を掛けた。
「入るよ、奏」
そう言って入ってきたのはスーツを着ているガンヴォルトであった。
「響に未来もいたのかい?」
「あっ、ガンヴォルトさん!ガンヴォルトさんも奏さんのお見舞いですか?それにシアンちゃんは?」
「そうだよ。シアンは本部に何故かいるみたい。それと奏が暇だと思ってまた色々と時間潰せるものを弦十郎や屋敷の人からまた貰ってきたから持ってきたんだ」
そう言ってガンヴォルトは手提げを持ち上げる。
それを受け取った奏は手提げの中を見ると新刊の雑誌が幾つかと変えの下着などが入っていた。
「中身見た?」
奏が悪戯っぽくそう聞くがガンヴォルトは首を横に振る。
「何度も同じことしているし、渡されたものだから勝手に見ないよ」
「つまんないなー」
奏は少し慌てるガンヴォルトを期待して聞いたが、その辺りは真面目な為にそんな事もなかった。
「でもほんと毎日来なくてもいいんだぞ?私は嬉しいけど今復興に忙しいんだろ?」
受け取った物を備え付けの机に置くとそう言った。
「忙しいけど大丈夫だよ。それに、奏が目を覚まして昔と違ってこうやって普通に話す機会が増えた事がボクは嬉しいからね。忙しいくらいどうって事ないよ」
「そりゃあ…私もあの時とは心境が違うし…そう思ってくれるのはすごい私も嬉しいけど…」
真正面からガンヴォルトからそう言われて奏は恥ずかしいのか吃りながらもそう言った。
それを見て未来は頬を膨らます。
未来も奏がガンヴォルトを思っている事は知っている。だが、それでもこうやって響と未来がいるのに自分達を無視して二人だけの世界に入り込むのはいただけない。
と言うか、その空間を無自覚に作り出すガンヴォルトもどうかと思う。
それに気付いた響が別の話題へと切り替えようと模索する。
そしてガンヴォルトが持つガンヴォルトが個人的に持ってきたお見舞いに気付き、その話を振る。
「あっ!ガンヴォルトさんまた果物持って来てたんですか!」
その言葉に気付いたガンヴォルトは思い出したようにそれを持ち上げ、みんなで食べようと言った。
それのお陰で話題が逸れたことに胸を撫で下ろす。
だが、響は忘れていた。かつて翼のお見舞いの時にガンヴォルトがどんなことをしていたかを。
全員分の果物を切り終えたガンヴォルト。皿に切った果物を響と未来に渡す。
そして奏の分はガンヴォルトが持ち、フォークに果物を刺すとそれを奏の口に持っていく。
「…天然め」
少し恥ずかしそうに、そしてジトーした視線をガンヴォルトに向けてそう言った。だが、それでも奏は嬉しそうに差し出された果物を食べた。
そしてそれを見て固まる未来と忘れてたと言うふうに固まる響。
「何が天然なの?」
そしてその言葉の意味を分かっていないガンヴォルトはそう言いながらも次に食べたい物を聞いてそれを同じようにフォークを指して奏に再度口元へ持っていく。
それを嬉しそうにまた食べる奏。
無自覚にそんな事をやるガンヴォルトに対してそのおすそ分けなのか言う。
「未来の果物もうなくなったみたいだし、私の分を分けてやってくれよ、ガンヴォルト」
その言葉に未来の方にガンヴォルトが視線を向けると未来の方の紙皿はもう何も残っていなかった。
「分かったよ」
ガンヴォルトはそう言って持っている紙皿から未来の皿に果物を移そうとする。
その瞬間に奏が響へと目を配らせると響も察して未来の紙皿に割り込ませるように自分の紙皿を入れる。
「私も欲しいです!」
そう言いながら響はわざと未来の紙皿にぶつけての紙皿と未来の紙皿を使えないようにくしゃっと潰してしまう。それと同時に落ちるフォーク。
「ごめん未来!わざとじゃないんだよ!」
何処か棒読みになりながらも響は未来に謝った。
「響も欲しいなら言ってくれればよかったのに…新しいのを取り出すよ」
そう言って勝手知ったかのように奏のベッドの近くににある紙皿を置いている場所を開けようとする。
「そう言えば出したこれらが最後だったか…」
だが、ガンヴォルトは取り出した時に無くなったことを確認していた為かそう呟いてどうしようと考えていた。
そうしてガンヴォルトは仕方ないと言うふうに奏にも使っていたフォークを果物に突き刺し、それを未来に渡そうとする。
だが、ガンヴォルトの意図を察してはいたが、ここまで奏と響にお膳立てされれば未来も気付かない訳がなかった。
未来は差し出された果物を手で受け取らず、そのまま齧り付いた。
その行動にガンヴォルトは驚きはしたものの、勘違いさせたかなと、未来に食べやすいように向きを直す。
そして恥ずかしがりながらも未来は嬉しそうに果物をいただく。
「ありがとうございます…」
食べ終わっても羞恥心は止まず、恥ずかしそうに礼を言う未来。それを気にしないでとガンヴォルトは返す。
「…なんやかんや一番甘いのってガンヴォルトさんですよね…翼さんの時もそうでしたし…」
「…そうだね…ガンヴォルトさんが一番甘やかしてくる…」
「そんなに甘やかしているつもりはないんだけど…」
「いいや、甘いね。凄く甘い」
そしてガンヴォルト以外がそれに同意とばかり頷き、ガンヴォルトはそれに対して苦笑いを浮かべる事しかできなかった。
そして丁度本部で言い合っているシアンが何かを勘付いて更に翼とシアンを焦らせるのであった。