80VOLT
復旧がどんどん進んで、ようやく装者達は日常を取り戻す事が出来た中、ボクはシアンと二人だけで話し合う為に、殆ど人が来る事のない二課の倉庫に赴いていた。
「シアン、出てきてくれ」
ボクの言葉に応えるように光が目の前に収束して蝶の模様を模した服を着たモルフォ、いやシアンが現れる。
「聞きたい事があるんだ。七年前の事を、ボクはどうしてこの世界に来た事を…そして君は何故体を無くし、その姿になっているのかを」
ボクは今までの疑問をシアンへと問う。
「七年前、私はあの場所であの人に…アシモフさんに殺された」
その言葉にボクはあの時の感情が溢れる。守れなかった…守りたかった人を守れなかった悲しみ。そしてその元凶への激しい憎しみを。
「アシモフ!ボクだけじゃなく、やっぱりあの時にシアンも!」
怒りを吐き出す為に壁に拳を打ちつけた。壁はボクの拳によりヒビが入る。それと共にボクの身体からは怒りのあまり、雷撃がバチバチと周辺を迸る。
「GV…」
シアンも怒りを露わにするボクを抱きしめて怒りを鎮めようとしてくれる。幾分怒りは治ったが胸の中で煮えたぎるアシモフの憎悪は変わらない。
「そして私は殺されて、私の魂はモルフォに…この身体と融合する事になった。そして、私が先に死んだけど、GV…貴方はまだ生きていた。でも、そのままだと死にそうな…死に体だったGVを助けたい。その一心で私の
「シアンのせいじゃない…ボクが…ボクが至らないばっかりに君をそんな目に…ここでもそうだ…ボクは誰かを守る為に戦っているのに沢山の人を傷付けてばかりだ…」
ボクは全ての出来事に対して対処はする事は出来たと思っているがその結果、沢山の人を傷付けている事をも後悔する。
そして守ると誓って守れなかった口だけの自分がどうしても許す事が出来なかった。
「心配しないでGV、それでも私がいるよ。だから自分を責めないで」
「シアン…」
シアンの言葉に幾分かは慰められるが、それでもシアンを死なせてしまった事を、助けられなかった事を悔やむ。
だが、もう悔いても起こった事は、シアンが死んだ事は変わらない。
だからこそ、ボクはやるべき事を見据えてシアンに言った。
「シアン…アシモフを絶対に止めよう。アシモフのやろうとしている事は長い年月が経とうと変わらない。アシモフも紫電と…
「GVのしたい事…私は力を貸すよ。どんな事があっても。だから、帰る方法を見つけよう」
「そうだね…でもその前にこっちでもまだやらなきゃいけない事があるんだ」
ボクはボクの力を知るテロリストの頭目、アッシュボルトの事をシアンに話した。
「
「ボクの推測だけど、
「まさか…そうなるとGVと戦った能力者だと…」
「こんな回りくどい事などをする能力者はメラクくらいしか思い浮かばないけど…でも、メラクじゃない気がする。倒した紫電が何故かこの世界にいた様に、あり得ない事じゃない。だからこそ、その能力者を倒さなければならない…この世界に
かつての
それがボクの何故か来てしまったこの世界でやらなければならない事だから。
「GVがしたい事なら私は協力するよ。だから二人で止めよう?そして帰ってあの人を…アシモフさんも」
「絶対に止めるんだ…アッシュボルトもアシモフも…」
ボクは拳を握り、呟いた。
「もうこんな連鎖を止めるんだ…誰もが笑っていられる世界の為にも…ボクが止めるんだ」
その言葉と共にシアンはボクを抱きしめる。
「GVなら出来るよ…だって私が付いているし、私もGVの事を信じているから」
「シアン…」
やらなければならない。だからボクは誓うんだ。この仕組まれた様な因果を止める為に。
「絶対に終わらせよう…絶対に…」
絶対にあんな世界をこの世界でも作らない為に。
◇◇◇◇◇◇
同時刻ーー
場所はアメリカへと移り、とある研究施設の中二人の人物がモニターに映る映像を見ていた。
「興味深いね、宝剣というものは。完全聖遺物であるネフシュタンの鎧と融合するなんて」
「不可能ではないさ、Dr.ウェル。宝剣も元を辿れば聖遺物なのだからな」
画面を見ながら応えるアッシュボルト。
「だが可能としたのは何故かあの男と同様に紫電に宿っていた
「つまりこの力があれば僕達の英雄への道は更に確実に!」
画面を食い入るウェルは叫んだ。
「まあ出来る限り私もやってみよう。いずれにしろこれは必ず必要となる」
そう言ってアッシュボルトは研究室から出る為に出口へと歩き出す。
「何処に行くんだいアッシュ?まだ映像は終わってないよ?」
「どうせあの男に紫電は勝てないさ。それよりも行かねばならない所がある。君はいずれ
そう言うアッシュボルトにウェルは問い掛ける。
「行くって何処へだい?君が赴かないといけない程の事なのかい?」
「駒は全てフィーネに殺されたからな。私自ら出向くしかないんだ。それにこの
そう言ってアッシュボルトはウェルに向けて行く場所を伝える。
「私は
「何でDNA鑑定を?」
「決まっている」
アッシュボルトは少し間を置いてウェルに向けて言った。
「奴が…ガンヴォルトを名乗るあの男が本物なのか確かめる為だ」
そう言うとアッシュボルトは研究室を立ち去った。
「あの男…ガンヴォルトの事なんてまだほっとけばいいのに…そんな事よりも僕等の英雄たる為の事柄を二人っきりで話し合った方が有意義だよ、アッシュ。と言うよりもDNA鑑定したって君が知るとしてもネットワークに照合しない男をどうやって判断するんだい?」
何処か寂しそうにウェルはアッシュボルトの出て行った扉を見つめるのであった。
◇◇◇◇◇◇
「マム!何故平和の為に私達が為そうとする事の為にテロリストと手を組まないといけないの!?」
とある広間で女性が車椅子に座る老婆に叫んだ。
「仕方ないのです。世界を平和にさせるにはどんな手を使っても為さなければ。例えその道が悪になろうとも」
「それは分かっている!でも…でもあんな外道と手を組む理由にはならない!第一にアッシュボルトという男の何処を信用すればいいというの!?」
女性は叫ぶ。
「それでも手を組むしかないのよ…世界を平和にする為に…月の落下による崩壊を防ぐ為に…」
空に薄らと浮かぶ土星の様に輪を作る月を見上げながら言った。
日本のシンフォギア装者とガンヴォルトという男が止めたフィーネの起こした事件。終息はしたものの、月を欠けさせる程の一撃を受けた月は軌道がずれ、いずれ地球へと衝突させる事となった。
だからこそ、やらねばならぬのだ。
例え自分達が悪となろうとも。人類を救う為に。
「ごめんなさい…マリア…貴方にはとても重い罪を背負わせてしまう事になって」
「マム…」
女性、マリアはマムの言葉に首を振るう。
「いいえ、マム。それが世界を救う為なら私はどんな重い罪でも背負って歩く」
「ありがとう…マリア…行きましょう。ウェル博士と協力を結びに」
そう言うとマリアがマムと呼ぶ女性、ナスターシャに近付くと車椅子を押してその場を去る。