戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

91 / 246
81VOLT

ボクは弦十郎、慎次に連れられてある場所へ車で向かっていた。

 

場所は永田町にある国会議事堂。

 

「なんでボクまで呼び出されたんだろう?」

 

「ガンヴォルト、今回の功績はお前と装者で止めたと言っていい。それを国は隠さなきゃならないが、国を救った、いや世界をも脅かそうとした事件を解決へ導いた英雄であるお前に何の報酬を与えないのも国として世界への印象が悪くなるからな」

 

「殆ど装者の皆のおかげだと思うけどね。でも英雄は装者達であってボクじゃないよ。ボクは英雄って柄じゃないし、英雄を名乗れる資格なんてないさ」

 

ボクの手は既に血に塗れている。そんなボクには英雄と名乗る資格はない。いやあってはならない。

 

「そう自分を貶める事はありません。君は僕等からすればこの国を、世界をフィーネの野望から、紫電という少年の語った歪な世界を作り上げようとする野望からそれらを止めてくれた英雄なんですから」

 

運転する慎次がボクに気遣ってそう言ってくれる。

 

「そうだよGV。貴方は自分の為に…皆の為にやったんだから。GVがやった事は正しいよ。紫電がやろうとしていた事はあの世界みたいに私の様な苦しむ人を作らない為にやったんだから」

 

シアンもカーナビを通じてボクを慰めてくれる。

 

「そうだ、ガンヴォルト。シアン君や慎次の言う通り、お前は俺達にとって、そしてこの国の人達にとって充分な働きをした。そんな人間を英雄と言って何が悪いというんだ。過去がどうあれ、今のお前は紛れもなく英雄なんだからな」

 

弦十郎もそう言う。

 

「ありがとう。でも英雄なんて大それた称号はやっぱりボクには似合わないよ」

 

少しは気が晴れるがやっぱり自分が英雄である事は否定する。

 

「何処まで頑固なんだか…まあ、お前が否定しても他の者からしたらお前は英雄としか言いようがないんだがな」

 

弦十郎も困った顔で言う。

 

「到着しましたよ。行きましょう」

 

慎次が国会議事堂に到着を告げ、待機していた黒服の集団にボク等は囲まれながら国会議事堂の内部へと足を進める。

 

そして、とある扉の前に待機する様に言われると秘書らしき人物が出てきて色々とボディチェックを始める。

 

「すみません、念の為こちらの武器はこちらで一旦預けさせてもらいます」

 

秘書がボクの持つダートリーダーとテザーガン、そして慎次の持つ銃を丁重に扱い、預かる事を告げる。

 

ボク達はそれを了承し、扉の内部へと案内される。

 

「英雄がどんな奴かと思えば、弦十郎の様なむさ苦しい男かシンフォギア装者の様な別嬪な嬢ちゃんが来ると思えば、こんな色男が来るなんて驚きだ」

 

蕎麦を啜りながらそう言うのはこの国を代表する大臣を助け、事務を統括する存在。

 

斯波田事務次官であった。

 

「お久しぶりです、斯波田事務次官」

 

「おう、お前達下がっていいぞ」

 

斯波田事務次官はそう言って待機する補佐達を部屋から退出させる。

 

「さて、この度はご苦労だったな。国を守り、新たな脅威からも未然に防ぐ事をしたオメェさんに国を代表して礼を言うぞ。ありがとう」

 

ボクはその賛辞を受け入れる。

 

「勲章の一つや二つ渡したい所なんだが、なんせこの国にはそう言った武功での勲章がある訳じゃないんだ。すまんな」

 

「大丈夫です。ボクはボク自身のやるべき事を為しただけですから」

 

「かぁー!この男、自分がどれほどの事を為したのか分かってないのか!だが、その志!見事なもんだ!」

 

斯波田事務次官は高笑いを上げながら蕎麦を啜る。

 

「所で我々を呼び出したのは何用なのですか?」

 

高笑いを上げる斯波田事務次官に弦十郎が問う。

 

「あぁ、礼を述べるのならこの場を用意しなくてもビデオ通話なんかでよかったんだが、米国含めた諸外国に今回の件に付いて色々と責任問題を問われてな。ビデオ通話じゃ何処の誰かが回線に割り込んだりする危険性があるから態々こちらに出向いてもらった。それで、色々と厄介な事を要求されてるのさ。特にお前さんの存在がな」

 

蕎麦を啜っていた箸をボクの方に向けて斯波田事務次官が言う。

 

「諸外国の要求は日本のみが保有する、櫻井理論の情報開示。もちろん、ノイズという脅威が世界に有る以上、櫻井了子亡き今、その情報を世界に開示して人類の為に使うのは俺は賛成している。だが、そのついでとばかりにお前さんの事を寄越せと諸外国が言い出しやがってな。ノイズに対抗出来るシンフォギア装者以外の第七波動(セブンス)とかいう能力を持つお前さんをな」

 

「なっ!?」

 

弦十郎はその言葉に驚いた。

 

「そんな馬鹿げた要求を飲むと言うのですか!?」

 

「馬鹿言うな、弦十郎。仮にもこの国を守った英雄だぞ?そんな馬鹿げた要求飲むはずねぇだろ。どんな事をしてでもこいつだけは国として、いや、俺達が何としてでも守らにゃならん」

 

そう言って再び蕎麦を啜る斯波田事務次官。

 

「だが、情報開示をしても諸外国はお前さんの事を諦めんだろう。装者達は学生の身、そこら辺は彼方さんも何故か考慮してくれている様でな。未だ装者の要求はない。だからこそ諸外国はお前さんという存在を手に入れる為ならどんな事をこの国にしでかすか分からん」

 

「ならば一体我々はどうすればいいんですか?」

 

弦十郎がそう言うと斯波田事務次官は蕎麦を啜る手を止めた。

 

「米国政府を一旦でもいいから味方に付ける。影響力の強いあの国さえ味方に付けば諸外国は暫くは何も言えんさ」

 

「しかし、どうやって?」

 

弦十郎の問いにしばらくの沈黙が流れる。そして斯波田事務次官は先程まで閉じていた口を開く。

 

「…米国政府にソロモンの杖を引き渡す」

 

「なっ!?」

 

その言葉にボクを含めた慎次も弦十郎も驚きを隠せない。

 

「ソロモンの杖を!?」

 

「あぁ、苦渋の決断だが、それしかない。幸運な事に米国政府はこちらがそれを差し出す事を条件にしたら、お前さんの事を苦い顔をしながらだが、それならと了承してくれた」

 

「しかし、あれはノイズという存在を操れる危険な代物!それをどんな手段に使われる事に!?」

 

「それしか方法がない。運の良い事にソロモンの杖は報告にあった紫電とか言う坊主が倒されて、沖縄の近海に落下し回収されている。現在も日本が保有している事になっている。それに米国政府も馬鹿じゃねえ。そんな身勝手な事でソロモンの杖なんてふざけた代物なんか使えば世界中から大バッシングを受けるだろうよ」

 

どうやら紫電が奪っていたソロモンの杖は未だ日本が保有している事になっているらしい。そしてそれさえ米国政府に渡せば、ボクは日本から別の国へと渡らなくて済むらしい。

 

「そこでお前さんの答えを聞かせてもらうか、ガンヴォルト。お前さんの意思も確認したい」

 

「ボクはこのまま国に残る。止めなきゃいけない存在が今はこの国に潜伏している可能性がある以上、この国から離れる訳にはいかない」

 

何処にいるか分からないアッシュボルトと言うテロリストの存在。奴が未だ何処にいるか分からない以上、この国から離れてはならない。それにアッシュボルトは以前に装者であるクリスを狙っていた。だからこそ、装者が危険に晒される中離れる訳にはいかない。

 

「ここまで真っ直ぐか!何処までも俺好みの男だな、ガンヴォルト!俺の首が飛ぶかも知れんが何とかしてやるよ!」

 

高笑いを再び上げる斯波田事務次官。

 

「だが、そうする為にはしばらくお前さんにはきついかも知れんが、行動の制限としばらく俺の所でお前さんを匿わなきゃならん。それでもいいか?」

 

「もちろんだよ。留置所よりはマシな環境なんでしょ?」

 

「がはは!こいつは面白え事を言うガキンチョだ!国を救った英雄が留置所に入っていたとは!」

 

斯波田事務次官もさらに笑いながら止めていた手を再び動かして蕎麦を啜る。

 

「ガンヴォルト、斯波田事務次官の元なら安心だが、それでいいのか?」

 

「仕方ないよ。ボク自身もこの国にいないと守るものも守れないからね」

 

「GVが決めたのなら私もいいよ。それにしばらくはあの子達からのGVへのアプローチが減るだろうし…」

 

最後は聞こえなかったが、シアンも了承してくれたみたいだ。

 

「分かった。斯波田事務次官、しばらくの間ガンヴォルトの事をよろしくお願いします」

 

「安心しろ、英雄を何としてでも諸外国には渡さんさ」

 

「弦十郎、しばらくノイズの対処はボクは出来なくなるかも知れない。装者と共にノイズの恐怖から皆を守ってくれる?」

 

「もちろんだ。お前も動けるまで我慢するんだぞ」

 

「ありがとう、弦十郎」

 

「任せておけ」

 

ボクは弦十郎と拳を合わせて斯波田事務次官の補佐としてしばらく国の為に働く事となった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

深夜、復興させる人達の姿も消え、誰もいなくなったその場所に一つの影が現れた。

 

「カ・ディンギル…いやバベルの塔と言うべきか?こんなものをフィーネは建造していたとはな…」

 

壊れた塔を見上げながらそう呟く男、アッシュボルト。

 

「だが、こんな壊れた塔(スクラップ)になど用はない」

 

そう言ってカ・ディンギルから離れてシェルターの入り口へと入っていく。

 

シェルターはガンヴォルトの放ったカ・ディンギルを破壊した一撃により、入り口の方は殆ど崩壊していたが中は依然無事であり、復旧などをしているのを知らせるカラーコーンや補強用の鉄骨などが張り巡らされている。

 

その中を進んでいくアッシュボルト。

 

そして辿り着いたのは未だ手のつかない深い深い深淵へと闇を広げるアビス。

 

「カ・ディンギルの動力源がサクリストD、デュランダルだったのなら、この地下深くで奴はフィーネと対峙したはず…」

 

そう呟くと何の躊躇いもなくアビスの深淵へとアッシュボルトは飛び降りた。普通の人であればそんな深淵に飛び込めばただでは済まない事は分かるのであるがアッシュボルトは何も躊躇わずに飛び込んだ。そして深淵へと到着してアッシュボルトは着地する。普通の人であればひしゃげ、見られない様な亡骸になるはずがアッシュボルトは何の負傷もなく降り立つ。

 

「これか…」

 

暗闇で見つける瓦礫に付いたどす黒く、そしてベッタリと付着した血の手形。暗闇の中、アッシュボルトはその瓦礫を砕くと、手の跡が付いた瓦礫を拾う。

 

「お前の正体…確かめさせてもらうぞ」

 

そう呟くと瓦礫を袋に入れてポーチにしまうとアッシュボルトは壁を蹴りながら、アビスの深淵から姿を消して行った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。