ORCHO-PASS PAGES of MEMORY Page.1 「最弱の教官」   作:マクギリシマ

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Chapter.6

 

 

腕にはめた携帯端末のけたたましいコールサイレンに、御留我は一瞬ビクリとした。

それもそのはず、今の時刻は夜中の1時34分。とうに勤務は終わり、皆就寝している頃だったからだ。

着信は宜野座監視官からだった。汗の滴る首にタオルをかけ、電話に出る。

「公安局刑事課1係執行官、御留我威都華だぞ。」

「いちいち自己紹介するな。」

「何かあったのか?」

「街頭スキャナに細川俊輔が引っかかった。夜中で悪いが出動するぞ。」

早口でそう言った宜野座の声は不機嫌そうであった。御留我は起きていたからいいものの、宜野座は眠っているところを無理やり起こされたに違いない。

ところが御留我は別のことが気になっていた。

「えっと、細川…?」

「やっぱり聞いていなかったのか…。細川は台東区の連続火災事件の容疑者の一人に上がっていた男だ。ここしばらく検診も受けず、行方をくらましていた。」

「え、ええ。わかってますわかってます!で…どういうことだ?」

恐らくは数日前1係の捜査会議で上がった件だろう。御留我は居眠りをしていたため、ほとんど概要を知らなかった。

宜野座はさぞ面倒くさそうに舌打ちをしてから言った。

「スキャナに引っかかったのは犯罪係数が高かったからだ。細川が一連の事件の犯人である可能性は高いし、仮にそうでなかったとしても潜在犯であることに違いはない。早急に身柄を確保する必要があるということだ!!」

夜中に起こされて苛立っているのが電話越しにしっかりと伝わってきた。

仕方のないこととはいえ、御留我はいつも高圧的な態度で接してくる監視官に少しばかり哀れみを覚えた。

「わかった、5分で行く。」

そう簡潔に伝えると、御留我は汗の滲むトレーニングウェアを脱ぎ捨て、至るところがへこんだサンドバッグを後にした。

 

 

都心から離れた閑静な住宅街。スキャナや巡回ドローン、交通照明ホログラムは整備されているものの、都市部の華々しさとは程遠い。周囲の住居は高層ビルではなく、せいぜい十数階建てのマンションばかり。決して廃れているわけではないのだが、未だに少し時代に取り残された雰囲気が漂う。

御留我ら三人は現場に到着し、あるマンションの駐車場で潜在犯追跡の準備をしていた。御留我は黒地に青襟のジャケットに身を包み、赤いストールを少しきつめに首に巻いていた。

「あーあ。明日は非番だから一晩中スマブラやりこもうと思ってたのに。なんでこんな真夜中に出なきゃなんないんすか、ギノさん。」

キャリアからポップアップしたドミネーターを抜き取りながら縢がそうこぼした。黒シャツに赤ネクタイ、その上に黒いジャケットと青いコートを羽織りながらも、冬の夜の寒さに身を震わせていた。

「つべこべ言うな。当直の日のうちは最後まで勤務する覚悟でいろ。」

「もう日付変わってんじゃん。明日勤務の奴呼べば…」

「当直切り替えの規定時間は朝6時だ。」

冷たく言い放つ宜野座は明らかに不服といった様子だった。

当直は宜野座、縢、御留我の3人。どうやら縢も起きていたようでピンピンしていたが、やはりどう見ても宜野座監視官は寝起きだった。いつも以上に目つきは悪い上に急いで支度をしたのだろう。真っ黒のスーツとコートはきっちりとさせているものの、髪には寝癖がちらほらと見受けられた。

御留我は「当直の日は最後まで勤務する覚悟でいろ」という先ほどの台詞をそのまま宜野座に投げ返してやりたかったが、逆鱗に触れてしまうのが想像に容易い。

縢もそのことは言わずとも心得ているようで、これ以上軽口をたたこうとはしなかった。

「このマンション内のスキャナが最後に細川を捉えた。住民は退避したはずだが、人質を取られている可能性もある。1階から慎重に行くぞ。縢と御留我は裏から回れ。俺は正面から入る。いいな?」

街頭スキャナが容疑者の細川の姿を捉えた直後からこのエリア一帯に非常線が敷かれ、住民はあらかた退避させられていた。しかし全員かどうかは定かではない。このエリア全体の居住者データと非常線を抜けたログ、遠出の人間がいるかどうかの記録を照らし合わせる時間がないからだ。それも夜中、退避指示に気づかず眠っている住人や、あるいは人質が残っていてもおかしくはない。

風の音すら聞こえない静けさに、御留我は胸騒ぎを覚えた。

 

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