Fate/WizarDragonknight   作:カラス レヴィナ

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仮面ライダーセイバースタート!
三人目の主人公炎ドラゴンライダー……いやはや
昨日そういえば、ウィザードの放送開始八周年でしたね


筋肉襲来

 朝。日課のランニング。

 ただ、今日だけは違っていた。

 今日は、見滝原公園には行かずに、コンビニやお菓子屋へ向かった。そして、近所のお菓子屋で、目当てのものを購入した。

 そして、ラビットハウスに戻ってからしばらくして、モノクマよりアナウンスが流れた。

 慌てて部屋から御刀と買ったものをビニール袋ごと掴み、その瞬間に銀のオーロラに巻き込まれた。

 そういう経緯で、セイヴァーのマスター、衛藤可奈美はムー大陸の地を踏んでいる。

 

「朝ごはん食べてないから、お腹空いた……」

 

 可奈美はそんな声を上げた。

 すでに腹の機嫌は最悪で、音が止まない。

 

「お腹空いた~……もう動けない……」

 

 椅子のサイズの遺跡に腰を落とし、足をブラブラさせる可奈美。

 千鳥を手元に置きながら、可奈美は大きくため息をついた。

 

「ねえ、

「ねえ、何か食べるものない?」

「さっき私のポテト食べましたよね?」

 

 腕を組んだ少女が言った。

 だが、可奈美はそれでも「もうありません?」と尋ねた。

 

「もうありません。このやり取りも、五分前にしました」

「でもお腹空いたんだもん」

「それはもう聞きました」

 

 可奈美の隣に腰を下ろしている少女が言い放った。水色の長いウェーブ髪の少女はため息をつきながらスマホを弄っている。

 

「ここにいる限り、私達は食料にありつけることはありません。早急に脱出を試みるべきでしょう」

「バングレイがどこにいるのか分からないのに……どうやって脱出しようか?」

「分かりません。そもそも、衛藤さん刀使ですよね? こういう場合の訓練は受けていないのですか?」

「さすがにいきなり古代遺跡に閉じ込められてからの対処は教えられてないかな? それより……」

 

 可奈美は少女へ顔を向けた。彼女は必死の形相でスマホをタップしていた。

 

「ねえ、紗夜さん……さっきからスマホいじって、何してるの?」

「助けを呼ぶ手段を探しているんです」

 

 可奈美が紗夜と呼んだ少女は、険しい表情を崩さない。

 

「でも、結局電波通らないんでしょ?」

「そうですけど……ああもうっ!」

 

 紗夜はそう言って天井を仰いだ。

 

「どうして私がこんな目に遭わなければならないのっ!? 本当に……!」

 

 そう嘆く紗夜の手を、可奈美は凝視していた。真っ白で綺麗な素肌。ただ、可奈美の予想していた通り、彼女の手には小さな黒い紋様が浮かび上がっていた。

 令呪。聖杯戦争、参加者の証。

 

「紗夜さんは……その……ここに飛ばされた心当たりとか、ない?」

「何ですか突然。ありませんよ。そもそも、いきなり頭に変な声が聞こえたと思ったら……」

 

 唇を噛みながら、紗夜は答えた。

 そんな彼女の顔を見ながら、可奈美は顎に手を当てた。

 

「……何ですか?」

 

 紗夜はそんな可奈美の目線が気に入らないのか、ジト目で睨む。

 だが、可奈美は紗夜をジーっと見つめた。

 

「紗夜さん、初対面、ですよね?」

「……そうですけど?」

 

 紗夜は苛立った様子で言った。

 

「う~ん……何か、見たことある気がするんだよね。どこだろ?」

「……」

 

 紗夜は何も言わなかった。だが、どこか不快な表情を浮かべていた。

 やがて可奈美は、パチンと指を鳴らした。

 

「ああっ! 分かった! テレビでやってるアイドルの人……」

「止めてください!」

 

 突拍子に、紗夜が叫んだ。

 

「日菜のことは……」

「日菜?」

 

 その時、

 

「何!?」

 

 地響きはどんどん大きくなっていく。

 やがて、背後の壁に大きな亀裂が入った。

 

「これは……っ!?」

 

 危険を感じた可奈美は、その場から離れる。すると、壁が粉々の破片となり砕け散った。

 そして。

 

「がっはハハハハハ!」

 

 その中より、巨漢が現れた。

 見上げるような筋肉の塊。頭に巨大な筒___トップの切れ目から、貯金箱だろうか___を乗せた、オレンジのノースリーブジャケットを羽織った男。彼は、可奈美の姿を見定めると、にやりと口元を歪めた。

 

「みぃつけた!」

 

 筋肉は両手を組み、振り上げる。

 可奈美は千鳥を掴み、その場から退避。さっきまで可奈美がいた場所に風穴が開いた。

 その破壊力に驚愕しながら、可奈美はそれを行った男の顔を見上げた。

 

「オレ様はアブラミー! 世界征服する男だ!」

 

 彼は聞いてもいないのに名乗り、さらにバックダブルバイセップスで言った。

 

「さらに、この聖杯戦争で最強のサーヴァントだ! さあ、お前ら! オレ様の最初の相手になれ!」

 

 こちらの反応など意に介さず、彼は可奈美たちへ飛び掛かる。その巨大な剛腕で、二人を捻りつぶそうと襲い来る。

 

「危ない!」

 

 可奈美は紗夜の手を取り、お姫様抱っこ。「ええっ!?」さらにそのまま、体を捻ってその剛腕を寸でのところで避ける。

 

「いきなり何ですか!?」

 

 紗夜が抗議の声を上げるが、それを聞き入れる相手ではない。アブラミーと名乗った男は、可奈美と紗夜へ殴りかかる。

 

「うわわわ!」

 

 紗夜を抱えたまま、ステップでアブラミーの連撃を回避する。可奈美が踏んだところ一歩一歩に、アブラミーの筋肉が足跡を刻む。

 大きく飛び退きアブラミーから離れたが、アブラミーはまたこちらを潰そうと迫ってくる。

 

「紗夜さん、下がって!」

「衛藤さん!?」

 

 可奈美は紗夜を背中に回し、アブラミーに向き直る。

 

「危険です! 逃げないと!」

「これくらいの相手なら大丈夫! 行くよ、千鳥! ……千鳥?」

 

 いつものように抜刀しようと腰に持っていた千鳥を掴む。だが。

 ない。

 

「あれ!?」

「え、衛藤さん?」

 

 さっき、紗夜を御姫様抱っこした。

 両手を使った。その時、彼女を支えることに専念するために両手をパーにした。

 つまり。

 

 千鳥はアブラミーの足元に転がっていた。

 

「あ」

 

 思わず千鳥を手放したことに、可奈美は目が点になった。

 

「え、衛藤……さん?」

「ごめん、紗夜さん」

 

 可奈美は機械音が鳴るような遅いスピードで振り向く。

 

「私の武器、落としちゃった」

「……は?」

 

 紗夜が口をぽかんと開けていた。

 そうこうしているうちに、アブラミーが一気に距離を詰めてきた。

 

「これくらいの相手ぇ? このアブラミー様になめた口利くとどうなるか、思い知らせてやるぜ!」

「!」

 

 すでに目と鼻の先に迫る拳。

 可奈美は紗夜を抱え、その場から飛び退いた。背中を向け、回避したと同時に、床が粉々になる音が追ってくる。

 

「っ……!」

 

 浮かび上がる破片を遠い気持ちで眺めながら、可奈美は急ぐ。

 

「待てええええい!」

 

 巨漢は

 巨漢は、走るのももどかしく、ジャンプで移動している。一回一回のジャンプは、可奈美の移動をもしのぐ。狭いムーの壁を伝って先回りしたアブラミーは、即座にその丸木のような腕を振り下ろした。

 

「っ!」

 

 可奈美は急いで紗夜を下ろし、アブラミーの拳を蹴る。真っすぐ伸びていた拳は軌道を大きくずらされ、ムーの遺跡へ突き刺さった。

 

「な、なに!?」

「逃げて!」

 

 可奈美は紗夜を押し付けながら叫ぶ。

 紗夜は躊躇いながら、やがて可奈美に背を向けて反対方向へ去っていった。

 

「よし、今のうちに……」

 

 可奈美は千鳥を回収しようとする。だが、その前に巨大な瓦礫が落下した。

 

「うわわっ!」

「待てぃ!」

 

 アブラミーの仕業だった。彼はさらに、丸腰の可奈美へその筋肉で飛び掛かる。

 無防備な可奈美には、すでに防御の手はない。

 身構え、痛みに備えようとしたその時。

 

「随分諦めるのも速くなったな。可奈美」

 

「……え?」

 

 いつの間に。

 さらさらと伸びた黒い髪。その下にある、平城学館の深緑の制服。黒い鞘に収められたのは、可奈美の千鳥と深い縁を持つ御刀、小烏丸(こがらすまる)。真っすぐとした鋭い眼差し。女性としては平坦なボディライン。

 その名前を忘れたことなど、一瞬たりともない。

 

「姫和ちゃん……」

「瞬閃!」

 

 可奈美の記憶より再現された、可奈美が最も救いたい人物、十条姫和。彼女の振り抜いた小烏丸は、雷を帯びながらアブラミーへ放たれる。

 

「ぬぅぅぅぅぅ!」

 

 その圧倒的な筋肉は、小烏丸の電撃をも防ぐことはできた。だが、ダメージは少なくないのか、アブラミーは着地し、斬られた部分を手で撫でていた。

 

「お前、一体何者だ!?」

「貴様に名乗る必要などない」

 

 姫和は吐き捨て、可奈美へ赤い棒を投げる。

 慌てて受け取ったそれが千鳥だということに、可奈美は驚いた。

 

「え? 姫和ちゃん、これ……」

「お前が千鳥を落とすな。らしくもない」

「う、うん……」

 

 無意識に、可奈美は千鳥を抜刀した。

 すると、千鳥を通じて可奈美の頭に何かが響く。隣に小烏丸があるからだろう。

 だが。

 

「何か違う……姫和ちゃんの小烏丸とは、やっぱり違うんだ……」

 

 可奈美は、隣で斜の構えをする姫和を横目で見ながら呟いた。

 

「お前らあああああああああ!」

 

 怒り心頭のアブラミーは、その巨体をもって可奈美たちへ攻め入る。

 そして姫和は、告げた。

 

「行くぞ。可奈美」

「……うん! 姫和ちゃん!」

 

 そして、足を動かしたとき。

 あらゆる雑念が、消えた。

 姫和が本物ではない。ムー大陸。バングレイ。聖杯戦争。

 そんなことどうでもいい。

 

「姫和ちゃんと、一緒に戦える!」

「うらああああああああああ!」

 

 アブラミーの両腕が、それぞれ可奈美と姫和を押しつぶそうと迫る。そのハンマーのような腕を、可奈美と姫和は同時に飛び退いて回避する。

 

「行くよ!」

「ああ!」

 

 可奈美の斬撃と、姫和の突き技。それぞれがアブラミーの肩に命中。

 

「お前らああああ! このアブラミー様に向かって、よくもおおおお!」

 

 アブラミーは怒鳴りながら、その両腕を広げて回転する。圧倒的な質量のコマとなったそれは、防御の可奈美と姫和をいとも簡単に吹き飛ばし、ムーの壁に激突させた。

 

「っ!」

「やるな……可奈美!」

「うん!」

「ん?」

 

 回転が止まった。

 そんなアブラミーの上へ、可奈美はジャンプした。

 

「迅位斬!」

 

 迅位と呼ばれる、加速能力を駆使した斬撃。だが、それはアブラミーの右腕の筋肉に阻まれる。

 

「そんなもの、オレ様には利かねえ! 捻りつぶしてやる!」

 

 そして、向かってくる左腕。だが、可奈美は体を捻ってそれを避け、先に着地。

 

「今だよ! 姫和ちゃん!」

「もらった!」

 

 アブラミーが姫和の声に反応するがもう遅い。

 

「一つの太刀!」

 

 緑の矢のごとく、雷の突きがアブラミーの背中に命中する。

 

「ぬぐっ! まだまだ! オレ様の世界征服の夢は!」

「悪いけど、それはここでは叶わないよ!」

 

 アブラミーへ、着地した可奈美は言い放った。

 

「何!?」

「だって、この勝負……私達の勝ちだから!」

 

 隣の姫和と目を合わせ、可奈美は宣言した。

 だが、当然アブラミーは納得しない。

 

「何を言っている!? オレ様はまだ……!?」

 

 その時、アブラミーは気付いた。

 自らの足元に、無数の切れ込みが走っていることに。

 

「可奈美に気を取られすぎたな」

 

 そういうのは、姫和。

 

「お前が可奈美と向かい合っている間、貴様の足元を全て斬らせてもらった」

「何?」

 

 斬られれば、当然。

 床は抜ける。

 

「な、なああああああああああああああああああああああ!?」

 

 アブラミーは、両手を上げながら、ムー大陸の底へ落ちていった。

 

 

 

「……」

「……」

 

 アブラミーがいなくなってしばらく、可奈美と姫和はその奈落を見つめていた。

 すでに可奈美は、奈落を見てはいなかった。しばらくして可奈美は、口を開いた。

 

「この前は、あんまり話せなかったけど……本当に、会いたかったよ」

「そうか」

 

 姫和は、どことなく固い声で答えた。

 可奈美は続ける。

 

「あれからもう半年以上経ってるよ」

「私が幽世に閉じ込められてからか」

 

 その言葉に、思わず可奈美は拳を握った。

 

「うん……大荒魂に……タギツヒメと一緒に行ってから……」

「……そうか」

 

 姫和は静かに可奈美を見つめる。

 

「可奈美。お前の目的はあっちか?」

 

 姫和は奥の方を見ながら言った。ムー大陸深部へ続く通路。バングレイたちがいるのであろう方向。

 そして、姫和がやってきた方角。

 

「うん。……バングレイを止めるつもりだよ」

「そうか。……」

 

 姫和は、小烏丸をこちらに向けた。小烏丸特有の、両側に入った刃が、可奈美を警戒するように光る。

 

「奴に、強い参加者を連れて来いと言われた。……だが」

「何?」

「お前を、奴のもとへ行かせたくはない」

「……」

 

 可奈美も、彼女に呼応するように千鳥を抜く。誰に対しても変わらない、いつも通りの千鳥(・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・)は、静かに姫和を睨む。

 今度は、千鳥と小烏丸は、互いに全く反応はなかった。

 

「ムー大陸を止めないと。そのためには、バングレイを何とかしなくちゃいけない」

「奴は、狩りと称してお前を手にかける」

「姫和ちゃんだって知ってるでしょ? 私、結構強いよ」

「ああ。十分わかってる。だが、それでもだ」

「……そう」

 

 これ以上の会話は、必要ないだろう。可奈美は、腰を落とす。

 姫和も斜の構えで、可奈美を見据えた。

 

「まさか、こんな形でお前とまた戦うことになるとは思わなかったな」

「そうだね」

 

 姫和の言葉に、可奈美は頷いた。

 

「私だって。でもさ……私、実はちょっと……ワクワクしてる」

「……そうだな。お前はそういう奴だな」

 

 姫和は、どこか安心したような顔で言った。

 可奈美は笑顔で、「構え!」と宣言する。

 

「写シ!」

 

 可奈美の言葉に、可奈美と姫和の体が同時に白い光に包まれる。

 息を大きく吸い込み、可奈美は言った。

 

「始め!」

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