Fate/WizarDragonknight   作:カラス レヴィナ

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”Last Engage”

 エンジェルの分身体。その一。

 

「私は、彗星の……ふん。それ以上は貴様らには覚える必要もあるまい」

 

 青をベースにした槍使いのエンジェル。上半身を青と銀の鎧で覆った彼は、そのまま槍で攻撃してくる。

 ウィザードは素早い槍術をソードガンで捌きながら、逆に斬りかかった。

 彗星のエンジェルの動きは、風のウィザードのそれよりも遅い。

 

「勝機はある!」

『チョーイイネ サンダー サイコー』

 

 ウィザードが使用した、雷の魔法。それは、エンジェルの動きを麻痺させ、さらに手痛いであろう一撃を与えた。

 

「むっ!」

 

 大きく足を引きずるエンジェル。さらにウィザードは、エメラルドからルビーとなり、シューティングストライクで追撃。

 しかし、その攻撃は目の前で両断される。現れた血まみれのエンジェルが、その大剣で炎を断ち切ったのだ。

見る者に恐怖を煽る、赤いエンジェル。両耳より長い飾りが伸び、その手には邪悪が刻まれたような黄色の剣が握られていた。

 

「もう一人か……っ!」

「無駄だ。貴様には、もう何もできん」

 

 さらに、血まみれのエンジェルはその大剣で攻め込んでくる。さらに、槍使いのエンジェルもまた攻勢に入った。

 結果、二人のエンジェルに対して、ウィザードは防戦一方になる。

 

「だったら……」

『コネクト プリーズ』

 

 大人数を相手にする時の基本は、相手に仲間同士でぶつからせること。

 コネクトで空間を湾曲させる。槍使いのエンジェルの刃に貫かせた魔法陣の先は、血まみれのエンジェルの背後。

 だが、血まみれのエンジェルは、あたかもそれが見えていたかのように、屈んだ。

 

「なっ!?」

「見えないとでも思ったか?」

 

 屈んだ血まみれのエンジェルは、そのままウィザードへ斬りつける。赤い閃光は、そのままウィザードの防御を貫通し、その体を大きく吹き飛ばす。

 

「ぐあっ……」

 

 ウィザードの変身が解かれ、ハルトは転がる。

 

「トドメだ!」

 

 槍使いのエンジェルが、生身のハルトを串刺しにしようとする。

 

「やべぇ!」

『カメレオン ゴー』

 

 茶色のエンジェル、機械のエンジェルと戦っていたビーストが、敵を切り離し、即座に指輪を使う。カメレオンの肩より伸びた舌が、ハルトの首を刈ろうとしたエンジェルの鉤爪を絡みとり、引き寄せた。

 

「ハルト! 逃げろ! ぐおっ!」

 

 だが、ハルトが戦線を離れたということは、四人のエンジェル全員の刃先がビーストに向けられるということ。槍と剣と鉤爪と弾丸が、次々にビーストに浴びせられていく。

 

「コウスケ!」

 

 ハルトはソードガンで背を向けるエンジェルへ発砲する。だが、すでに傷ついたハルトの魔力の弾丸など、エンジェルの片手間で弾かれてしまった。

 

「どうした? ライダーのマスターよ。そんなものか?」

 

 そう笑むのは、祭壇の端で観戦している本物のエンジェル。彼は肘を付きながらただハルトの奮戦ぶりを眺めていた。

 

「哀れなものだな。たかだか私の過去の姿にそこまでの姿にされるなど」

「哀れ……?」

「ああ。さあ、やれ。外道の私よ」

 

 すると、エンジェルの命令に、分身たちのうち一人がこちらへ向き直った。

 血まみれの姿のエンジェル。

 

「消えろ。哀れな魔法使い!」

「!」

 

 生身のハルトへ行われる、血まみれのエンジェルによる攻撃。一撃でも食らえば、ハルトにとっては危険な代物。

 ハルトは避けながら、ソードガンで斬りつける。だが、生身での攻撃などたかが知れている。

 

「どうした? こんなもの!」

「っ!」

 

 ハルトはエンジェルの剣を足場にバク転。その間に、ドライバーオンの指輪でウィザードライバーを出現させた。

 

「変し……」

「させん!」

 

 それは、エンジェルの声であってエンジェルのものではない。

 ビーストと戦っていた茶色のエンジェルが、突然振り向き、矛先をハルトに変えた。全身を茶色の軽量アーマーで包んだエンジェル。その俊敏さと、吸血に適していそうな体のつくりは、未確認生物のチュパカブラを連想させた。

その腕に付いたその鋭利な鉤爪で、ハルトの胸倉を貫いたのだ。

 

「っ!」

 

 痛みで変身のプロセスが吹き飛ぶ。横転したハルトへ、エンジェルが乗りかかる。

 

「終わりだ。マスターども」

 

 チュパカブラのエンジェルは、鼻を鳴らした。

 彼はハルトの顔を踏みつけながら、高らかに笑った。

 

「貴様では、我々分身には勝てん。思い知るがいい。人間ども」

「……人間……ね……」

 

 痛みで頭が充満する中、ハルトは一瞬クスリとほほ笑んだ。そして。

 

「さらばだ。人間!」

「させるかよぉ!」

『2 バッファ セイバーストライク』

 

 今にもハルトの首を取ろうとするエンジェルを、赤い水牛が吹き飛ばした。

 

「おいハルト、大丈夫か!?」

 

 駆けつけてきたビーストに助け起こされる。ハルトは「あ、ああ」と頷いた。

 

「おい、変身、出来るか?」

「あ、ああ……」

 

 ハルトは指輪を掲げる。再び出現したウィザードライバーで変身しようとするが。

 

「させん。排除する」

 

 冷徹なる声が響く。機械を体に埋め込み、全身を武器庫にしている……まさに生体兵器(サイボーグ)といったエンジェルは、そのあらゆる発射口よりミサイルを放つ。

 小型のそれは、生身のハルトにとっては十分な脅威となり、全身を吹き飛ばす。

 

「うわあああああああ!」

「ぐああああああああ!」

 

 ハルトとビーストはそのまま転がる。

 

「クソ……どうすんだよ……?」

「分かんないよ」

 

 ハルトは歯を食いしばった。

 四人のエンジェルは並び、歪んだ笑みでハルトとビーストを見下ろしている。

 

「あんな分身を作れるなんて、便利すぎんだろ……クソ、オレもオレが四人いりゃなんとかなるかもなのに……」

「……俺が四人いれば……? そうか……!」

 

 ハルトは起き上がり、顎を拭う。

 

「おい、何する気だハルト!?」

「分からないけど……これに賭ける!」

 

 ハルトはそのまま、指輪を付けた。

 だが、それを見たエンジェルたちはせせら笑う。

 

「無駄だ。貴様が何をしようと、もはや私たちに勝ち目はない。諦めろ!」

 

 だが、ハルトは耳を貸さなかった。左手に持った指輪___ルビー、サファイア、エメラルド、トパーズ___を放り投げる。

 

「俺は諦めない……! 止めてやる……っ! 今すぐ、この悪夢を!」

 

 諦めそうな闇に射す、四色の希望(ひかり)。それを見上げながら、ハルトは切り札の指輪を使った。

 それは。

 

『コピー プリーズ』

 

 複製の魔法。ハルトを通過する魔法陣が、同じハルトの分身を作り出す。

 

「ふむ。足りんぞ? それ程度では」

「「ああ。だからもう一回、使えばいい」」

『『コピー プリーズ』』

 

 二人のハルトは、もう一度コピーの指輪を使用。倍々ゲームにより、二人が四人となった。

 そして、それぞれのハルトが伸ばした指に、リングが滑り込む。

 

「「「「さあ、ここから逆襲が始まる」」」」

『『『『ドライバーオン プリーズ』』』』

 

 四人のハルトの腰に、一斉にウィザードライバーが出現する。

 コピーの魔法は、複製はすれども同じ動きしかできない。だが、今四人のハルトの指には、それぞれ別のウィザードリングが装着されている。

 そして。

 

『『『『シャバドゥビダッチヘンシーン シャバドゥビダッチヘンシーン』』』』

 

 いつもの待機音声が、四重奏となる。

 

「「「「変身!」」」」

 

 四人のハルトが同時に指輪を使う。

 当然、ウィザードライバーはそれに応える。

 

『フレイム プリーズ』

『ウォーター プリーズ』

『ハリケーン プリーズ』

『ランド プリーズ』

 

 四色の魔法陣がハルト達を包む。そして、そこには現れたのだ。

 四人のウィザードが。

 

「す、すげえ……っ!」

 

 ビーストも、思わず舌を巻く。

 

「ふん。そんなものが何になる?」

 

 血まみれのエンジェルが剣をこちらに向けた。

 

「我々とは違う、急ごしらえの分身に、我らを上回ることなどできるはずがない!」

「排除する」

 

 サイボーグのエンジェルが全身よりミサイルを放つ。

 ムーの祭壇を無差別に破壊(当然、後ろの響や未来、ラ・ムーには届かない)するそれに対し、ウィザードは魔法を使う。

 

『『『『ディフェンド プリーズ』』』』

 

 これまで幾度となく破られてきた防御の魔法。だが、四つの属性が合わさった防壁には、サイボーグのエンジェルのミサイルなど無に帰していた。

 

「何っ!?」

「面白い……」

 

 サイボーグに変わって、血まみれのエンジェルが前に出る。赤い剣を振るい、深紅の斬撃をウィザードたちへ飛ばした。

 だが、ウィザードたちは全く同じ動き……ウィザーソードガンの手を開き、指輪を読ませるという所作を行った。

 

『フレイム スラッシュストライク』

『ウォーター スラッシュストライク』

『ハリケーン スラッシュストライク』

『ランド スラッシュストライク』

 

 ウィザードもまた、同じ動きで斬撃を飛ばす。

 一人の斬撃と四人の斬撃。ほとんど威力を軽減することなく、エンジェルの攻撃は掻き消され、火、水、風、土の斬撃はエンジェルたちに命中した。

 地面を転がるエンジェルたちへ、ウィザード四人はトドメの攻撃を放つ。

 差し出した指に、最後の指輪を交わす(Last Engage)

 

チョーイイネ キックストライク サイコー

 

 四色の魔法陣が、四人の魔法使い(ウィザード)の足元に灯る。

 姿勢を低くし、これまた幾度となく行ってきたバク転。

 両足を天に突きあげ、そのまま蹴りの体勢に入る。

 

「「「「だああああああああああああ!」

 

 四色の、飛び蹴り。それが、それぞれの魔法陣を足元に出現させながら、四人のエンジェルへ命中する。

 

「ばかな……ありえない……!」

 

 その声は、どのエンジェルのものなのか分からない。

 爆炎を抜け、着地した時、すでに変身解除一人に戻った状態でハルトは告げた。

 

「たかが過去の亡霊に、俺たちが負けるわけがないんだ……」

「貴様の……分身どもにか……っ!」

「違う」

 

 ハルトは振り向く。そして、その視線を、エンジェルではなく。

 膝をつき、満身創痍のビーストへ向けた。

 

「俺と、そこにいるやかましい魔法使いのコンビにだ」

「皆まで言うなよ……こっ恥ずかしい」

「だから言った」

 

 その言葉を聞き届けたのか否か。四人のエンジェルは、爆発とともに消滅した。




ハルト「2020年夏アニメのエミリア三銃士を連れてきたよ」
コウスケ「三銃士?」
ハルト「まずはリゼロ。言わずと知れた、知名度ダントツ」
エミリア「今まで影が薄いと言った人。怒らないから正直に手を挙げて。今は立派なヒロインだから」
ハルト「次は魔王学院。別に祝わない。主人公の先生なのに、あの扱いはひどい。というか、性格もひどい」
エミリア「何を言っているのですか。私は、貴族として当たり前のことをしているだけです」
ハルト「とおっしゃっていますが、いかがお考えですか? ラピスライツの貴族、エミリア枠の聖人エミリアさん」
エミリア「え? まあ、精々言ってなさい。そういうのも人それぞれでしょうし」
ハルト「幽霊(ゴースト)憑りつかれてるぞ」
エミリア「ごーすと、って、何?」
エミリア「あり得ません! そんなもの!」
エミリア「」白目

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