Fate/WizarDragonknight   作:カラス レヴィナ

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キュゥべえ『……ん?』
コエムシ『先輩? どうしたんすか? またクレームっすか?』
キュゥべえ『いいや。これは……ランサーの宝具が、発動されたみたいだね』
コエムシ『宝具……? あー、捨て設定になってたんで完全に忘れてましたわ。サーヴァントの切り札的な奴ッスよね』
キュゥべえ『そう。令呪を使わない限り使えない、最強の切り札。どうやらランサーは、ここで勝負に出たみたいだね』
コエムシ『んなことより、まだまだクレーム止まらないっすよ? ホント、今時はすぐクレーム入れたがるんだからなあもうやになっちゃう』


"Synchrogazer"

「響ちゃん……その……姿は……!?」

 

 祭壇に舞い戻った響の姿に、ウィザードは唖然とした。

 これまで見てきた、黄色がメインの響の姿は、今や真っ白な武装を身にまとっていた。マフラーの先端は大きくグレードアップしており、それが広がった際は、もう天使とも見紛う神々しさを放っていた。

 

 響は笑顔で頷く。

 

「エクスドライブ。私の、最後の切り札、絶唱を力にした姿だよ」

「絶唱?」

「おい、響!」

 

 ビーストが慌てて響へ駆け寄る。

 

「大丈夫なのか? 今、あれだけの攻撃を受けて……」

「うん、かなりギリギリ。ウッ……」

 

 響が動こうとする前に、彼女の体がふらついた。

 

「おい、本当に大丈夫なのか?」

「へいき、へっちゃら……」

 

 額に汗をにじませながら、響は答えた。

 

「響!」

「うわっ!」

 

 安心も束の間、背後から駆けつけてきた未来に、ウィザードは突き飛ばされてしまった。

 未来はそのまま響の手を掴んで、何かを叫んでいる。

 ウィザードは少し口を噤んで、ラ・ムーへ視線を投げる。

 ムー大陸の神、ラ・ムー。および、その頭上で上半身だけを出しているブラジラは、唇を噛みながら響を睨んでいた。

 

「おのれランサー……どこまでも私の邪魔を……」

「……」

 

 ラ・ムーの前。今まで彼と戦闘をしていたリゲルも、ラ・ムーから視線を離さないままウィザードたちのもとへ戻ってきた。

 

「ランサー、貴女も無事だったのね」

「なんとかね」

「私は悪いけどさっきから限界なの。そんな隠し玉があったなら、そろそろ変わってもらえないかしら?」

 

 その言葉を示すように、リゲルの体はそれまでとは比にならないほど傷ついていた。バングレイとの戦いで負っていたダメージはさらに大きくなり、全ての武装はもう使い物にならないほど破壊されていた。

 

「……リゲルちゃん、未来をお願い……」

「ちゃん付けはやめて」

 

 リゲルはそれ以上は何も言うこともなく、未来の腕を掴み、引っ張っていった。

 未来はさして何も抵抗することもなく、リゲルに連れていかれていく。ただ、彼女はその間ずっと、名残惜しそうに響を見つめていた。

 

「さてと」

 

 ウィザードは指輪を入れ替える。そして、ウィザードライバーを操作し、魔法の待機状態にした。

 

「そろそろ……終わりにしようか」

「ああ。オレも賛成だ」

 

 ビーストもまた、変身に使った指輪を撫でる。

 響も頷き、ブラジラへ向き合う。

 

「これ以上、皆を傷つけさせるあんたを、私は許さない!」

「ぬかせ! 人間ごときに、我が計画を止めることなどできん! やれ! ラ・ムー!」

 

 ラ・ムーの無数のドリル。

 それに対し、響は翼となったマフラーを振り回す。

 外見以上の攻撃力を持つそれは、触れるドリルを片端から破壊していく。

 

「俺たちも行くぞ!」

「ああ!」

 

 ウィザードとビーストは、同時に指輪を入れる。

 それぞれの切り札である、最高威力の指輪を。

 

『チョーイイネ キックストライク サイコー』

『ゴー キックストライク』

 

 ウィザードとビーストの足元に、赤と金の魔法陣が現れる。

 だが、ラ・ムーは食い止めようと、両手を刃にして振り下ろす。

 だが、それよりも早く、二人の魔法使いは駆け出した。

 ウィザードとビーストがその場を離れたと同時に、ラ・ムーの剣が床を粉々に砕く。

 どんどん走っていく亀裂から逃げるように、ウィザードはバク転し、やがて跳ぶ。

 一方ラ・ムーは剣を避けられたと見るや否や、剣をドリルに変え、ミサイルのように連発してくる。

 

「撃ち落されんなよ!」

「そっちこそ!」

 

 ウィザードとビーストは、それぞれの右足に光を溜めながら、別の指輪をベルトへ指す。

 

『ディフェンド プリーズ』

『ファルコ ゴー』

 

 足場に作った防壁をもとにジャンプ、ウィザードは無数のドリルへ回転蹴りをして、ストライクウィザードの余力で破壊した。

 ビーストはハヤブサのマントにより、さらに速度を上昇させる。自らを追ってくるドリルを、別のドリルとぶつからせて対消滅させた。

 そのまま二人の魔法使いはラ・ムーの前へ躍り出る。無数のドリルはすでに爆破により、赤い花火となっていた。

 

「だああああああああああああ!」

「うおりゃあああああああああ!」

 

 それぞれの魔法陣が重なり、合わさったキックストライクがラ・ムーに命中。大爆発を引き起こす。

 そして、その衝撃により、ラ・ムーに取り込まれていた残り二つのオーパーツが吐き出される。

 

「何!?」

 

 焦るブラジラ。そして、それを見上げたビーストは叫んだ。

 

「そいつが切り札だ! 響!」

 

 そう。その斜線上には、ベルセルクの剣を取り込んである、響がいた。

 ビーストの変身が解かれるにも構わず、コウスケは続ける。

 

「勝機を逃すな! 掴み取れ!」

 

 だが、飛び上がる響でも届かない。

 ウィザードはハルトの姿に戻りながらも、ウィザーソードガンで二つのオーパーツを弾く。

 

「この……っ!」

 

 銀の銃弾は、そのまま二つの古代の石を弾き、響のもとへ届けていく。

 そして響は、ジャンプ。

 

「オーパーツを……っ!」

 

 ブラジラの表情に、焦りが見える。

 

 その瞬間、時が止まった。

 ウィザードもビーストも。

 リゲルも。

 ブラジラも。

 そして、未来も。

 

 ただ、彼女が二つのオーパーツを掴む瞬間を見守っていた。

 響が両手でそれぞれを掴んだ瞬間、赤と緑の光とともに、それは響の体に吸い込まれていく。

 

 

 

「うっぐああああああああああああああああああああ!」

 

 響の悲鳴とともに、その体より、黄、赤、緑の光がそれぞれを喰い合おうと蠢いている。

 

___カラダ、ヨコセ___

___カラダ、ヨコセ___

___カラダ、ヨコセ___

 

「うっぐ……があああああああああ!」

 

 全身が黒い影に覆われ、響が呻き声に近い悲鳴を上げた。

 

「響ちゃん!? もしかして、初めて変身した時みたいな暴走……!?」

 

 その場で黒い影となり、蹲る響。ハルトは駆け寄ろうとするが、エランドが再び進路をふさぐ。コウスケもまた、ハルトの後ろでエランドと、ラ・ムーの攻撃に苦戦していた。

 

 

 

「響!」

 

 誰よりも響を案じる者。未来が、響の元へ駆けつけようとした。だが、その腕をリゲルに掴まれる。

 

「無茶よ! 危ないわ!」

 

 だが、未来はリゲルの腕を振り払う。

 

「以前、響は言ってくれました。響は、響のままで、変わらずにいてくれるって……だから、前も、そして今も! 私はずっと、響が闇に飲まれないよう、応援するって決めたんです!」

「でも、今のあなたは……」

「私は、助けられるだけじゃない! 響の力になるって、決めたんです!」

「ッ!」

 

 何がリゲルの心を動かしたのか、その手を放す。

 そのまま未来は、彼女の陽だまりへ走っていった。

 三つの光が、それぞれ奪い合おうとする響へ。

 

 

 

 未来を襲おうとするエランド。

 だが、その体は、無数の切れ込みによって、バラバラになる。

 エランドを切り裂いた少女、可奈美。

 

「ここが正念場だよ! 踏ん張って! 響ちゃん!」

 

 

 

 動けない響へ光線を発射するエランド。

 だが、その光線をその体で受け、途切れたところで桃色の拳を叩き込んだ、友奈。

 

「強く、自分を意識して!」

 

 

 

 祭壇に轟く、龍の雄たけび。

 天空に現れたドラグレッダーは、その口より、目下の者へ炎を与える。

 龍の炎の蹴りを、エランドの軍勢へ放ち、全てを灰と化す龍騎。

 

「これまでの自分を! これからなりたいと願う自分を!」

 

 

 

 エランドたちが見たことのない、小さな球体。

 それは、手榴弾。

 一斉に爆発を起こし、エランドたちの姿は、爆発とともに消滅した。

 それを眺める、髪をなびかせる少女。ほむら。

 

「人助けの多い人……」

 

 

 

「それが、ランサーです」

 

 キャスターは、その両手に黒い光を宿す。

 光の柱は、キャスターの剣のように伸び、そのまま祭壇に蠢くエランドたちを飲み込み、一気に無に帰していく。

 

 

 

「五月蠅いマスター共にサーヴァント共!」

 

 激昂のブラジラは、ラ・ムーとともに唸る。

 

「黙らせてやろう!」

 

すると、ラ・ムーはその両腕で強く祭壇を叩いた。物理的な衝撃が、参加者たちの動きを止める。

 ハルト、コウスケを含め、全ての参加者たちは吹き飛ばされ、地面を転がる。

 

「うがあああああああああああああああああああああああああ!」

 

 さらに大きく悲鳴を上げる響。

 だが、そんな響の耳に、ただ一つ届く声があった。それは……

 

 

 

「響ぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!」

 

 

 

「っ!」

 

 三色の力が蠢く中、響は自らの意識を目覚めさせた。

 

「……そうだ……今の私は……一人だけで戦ってるんじゃない……」

 

 響の意識に、仲間たちの姿が過ぎる。

 かつての世界で苦楽を共にしてきた仲間たち。

 この世界で、戦いを止めるために奮闘する者たち。

 そして、未来。

 三つの力へ手を伸ばしながら、響は叫んだ。

 

「この衝動に、飲み込まれてなるものかああああああ!」

 

 

 

 そして。

 サンダーベルセルクとなった響の体に、異変が起こった。

 炎と木の葉が、雷の肉体に追加されていく。

 背中に備えられる赤い二つのマフラー。

 イナズマケンを掲げる右腕は、雷とともに変わり、一つに溶けあっていく。

 

「まさか……貴様が……三つのオーパーツを、その身に宿したというのか……ッ!?」

 

 ブラジラが目を見張るほど、響の姿は変化していた。

 三つのオーパーツをガングニールに融合させたもの。

種族を越えた王(トライブキング)

 

「そんなこけおどしなど! ラ・ムー!」

 

 ラ・ムーは、その腕を変化させ、ドリルとなる。無数のドリルはそのまま飛び交いながら、響へ向かう。

 だが、響は焦ることなくその腕の剣を大きく横に薙ぐ。

 すると、黄、緑、赤の三色が斬撃となり飛んでいく。それは、ラ・ムーに至るまでに配置されたドリルを全て切り崩し、ラ・ムーの体に突き刺さる。

 ラ・ムーはその痛みに体をよろけさせた。

 

「おのれこれしきの事ッ! ラ・ムー! ムーの雷を落とせ!」

 

 ブラジラの命令に従い、光線の発射体制となる。頭の先端部を響へむけ、光の砲台となる。

 だが、響もそれに対応すべく、右手の剣をラ・ムーへ向ける。

 すると、響の剣を中心に、ベルセルク、シノビ、ダイナソーの紋章が三角形の頂点を描くように現れた。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 声を上げながら、三つの紋章を線で結ぶ響。描かれた三角形は、そのまま淡い光を伴いながら、質量となっていく。

 響はそれを振り上げると同時に叫んだ。

 

「我流・三種族の壊撃(カイザーデルタブレイカー)ッ!」

 

 響が剣を振り下ろすと同時に、描かれた三角形より放たれた、七色の光線。それは、ムーの雷とぶつかり合い、ムー大陸全体に轟く。

 

「有り得ん、有り得ない! この私が、この救星主が! 貴様のようなものに敗れるなど!」

「最速で、最短で! 真っすぐに!」

 

 徐々に、ラ・ムーの力により、トライブキングの体が悲鳴を上げ始める。

 メキメキと軋む音を塗りつぶすよう、響は声を上げた。

 

「一直線にいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」

「なめるな、人間風情がああああああああああああああ!」

 

 やがて、それぞれの光線は互いに少しずつ攻撃を与え、やがて周囲ごとそれぞれに命中させた。

祭壇全体に広がる爆炎。

 聖杯戦争の参加者たちは、誰もが皆目を伏せる。

 地面を大きく削り、ムーの粉塵が舞う。

 そしてその中。

 

 立花響は、その身一つだけでラ・ムーへ。その頭のブラジラへ向かって走っていた。

 

「あと一発だけお願い、ガングニール……! アイツを、一発ぶん殴るから! それだけ!」

「おのれえええええええええええ!」

 

 ブラジラの叫び。全身にヒビを走らせたラ・ムーは、生身の響へ攻撃を行う。

 無数のエランド、ドリル、マシンガン。

 生身のまま、響は唄う。___それはもはや歌ではない。ただの喉がはち切れそうな勢いの声だった。

 

「Balwisyall!」

 

 響は拳を振りかぶり。

 

「Nescell!」

 

 全身が再び黄色く輝き。

 

「gungnir trオオオオオオオオンッ!』

「ランサアアアアアアアアア!」

 

 ジャンプで飛び上がったと同時に、ブラジラの剣が響の頬を擦切る。

 そして、ガングニールの拳が……生身の響の、右腕だけが変化したガングニールが、ブラジラの頬を殴り飛ばした。

 ラ・ムーの頭部に叩きつけると同時に、響は飛び退く。

 

「我流……ッ!」

 

 響は、そのままガングニールの右腕を突き上げた。すると、ガングニールのままの籠手には、雷を纏ったイナズマケンが現れる。

 

「まさか、貴様生身で……ッ!」

 

 ブラジラの予想通り、もう響には、完全なシンフォギアを纏う余力さえ残っていなかった。だからこそ、右腕だけが、ガングニールに。さらに、新たな聖遺物を使ったデュオレリックを発動させたのだった。

 

「サンダーボルトオオオオオオッ! ブレイドッ!」

 

 右腕だけが異能の力となり、響はイナズマケンを振り下ろす。

 雷鳴を宿した剣は、ラ・ムーごとブラジラを中心から切り裂いた。

 

「グおおおおおおおおおおおッ! どうしたラ・ムー!? おのれええええ! この身、滅びてなるものかああああああああ!」

 

 その叫びもむなしく、ブラジラの体はどんどん爆炎に飲まれていった。

 やがて、ラ・ムーの体そのものは、大きな爆発とともに見えなくなっていった。

 

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