Fate/WizarDragonknight   作:カラス レヴィナ

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4章スタート!


大変! お姉ちゃんが来る!

「寝坊したあああああああああ!」

 

 そんな声が頭上からしてきた。

 腰に無数の指輪を付けたホルスターが特徴の青年は、「あー」と天上を見上げた。

 

「ココアちゃん、寝坊か……」

 

 松菜(まつな)ハルトは、天井を見上げて呟いた。

 

「あれ? 今日だよね? ココアちゃんのお姉さんが来るの」

 

 そうハルトへ言ったのは、カウンターの向かいで様々な物品を整理している少女だった。この喫茶店、ラビットハウスの赤い制服を着ながら、手慣れた様子で収納していく。

 黒い髪留めで一部を止めた、元気な顔が特徴の少女、衛藤可奈美(えとうかなみ)

 

「そうだよ。年賀状に来るって書いてあったらしくて。その日付が今日。あ、可奈美ちゃんそれ待って」

「え?」

 

 ハルトは、間違ったグラスを収納した可奈美を呼び止める。だが、タイミングがいけなかったのか、可奈美の手が滑り、グラスが真っ逆さまに落下した。

 

「あっ!」

『コネクト プリーズ』

「セーフ」

 

 だが、グラスが地面で透明な花を咲かせる直前で、ハルトの手が摘まみ上げていた。

 ハルトの位置は、ホールから変わっていない。その腕が突っ込んだ魔法陣、その先が可奈美の足元に繋がり、グラスの命を救ったのだ。

 

「あ、ありがとハルトさん……」

「危ない……気を付けてよ、可奈美ちゃん」

 

 ハルトが魔法陣から腕を引っ張り出す。すると、魔法陣を通じて、グラスがハルトの手に現れた。

 まだ上の階からドタバタと忙しない音が聞こえてきた。

 ハルトと可奈美は顔を合わせ、噴き出す。

 

「ココアちゃんが降りてくるまで少しかかりそうだし、手伝うよ」

「え? そんな悪いよ。ハルトさん、今日シフト入ってないのに」

「いいよ。どうせココアちゃんが来るまで暇だし。それになにより、やっぱり可奈美ちゃんに整理をお願いする方が不安だし」

 

 そういいながら、私服ながらもハルトはカウンターの奥に入った。

 可奈美はショックを受けた表情をする。

 

「私そんなにひどい!? 結構ここの仕事も慣れてきたと思ったのに!」

「ひどいひどい。可奈美ちゃん、きちんと整理している人は、ベッドの上に刀なんか置かないよ」

「うっ……だって……」

 

 可奈美が上目遣いで見つめてくる。厳しい指摘をするのに少し抵抗を感じて……

 

「最近、千鳥を握ってないと眠れないんだもん……」

「うん、その感覚は絶対におかしい」

 

 ハルトは思いっきりの指摘をした。

 可奈美が「ひーん!」と悲鳴を上げたが、そのすべてをハルトは無視した。

 

「えっと……それで、何の指示受けてんの?」

「皿洗いと整理だよ。皿洗いは大体終わったんだけど」

「じゃあ、整理の方は俺が手伝うよ。えっと、これは……」

 

 ハルトは、店の備品を一つ一つ確かめながら、定められている棚に収納していく。

 やがて、ほとんどのものを綺麗に収納してから、ハルトはぼそりと呟いた。

 

「……妹か……」

「ハルトさん?」

 

 思わずに動きを止めてしまったハルト。可奈美が肩を叩き、我に返る。

 

「どうしたの? ハルトさん」

「あ、いや……ほら、ココアちゃんって、つまり妹ってことでしょ? なんか、思い出しちゃって」

「思い出す?」

 

 可奈美が目を丸くした。頷いたハルトへ、可奈美は続ける。

 

「ハルトさん、妹いるの?」

「ああ……まあ、何て言うか……そういう可奈美ちゃんは、一人っ子だっけ?」

「私はお兄ちゃんがいるよ。だから、私も妹だね」

 

 可奈美はにっこりとほほ笑んだ。

 

「可奈美ちゃんも……妹?」

 

 ハルトは目を白黒させた。

 

「普段刀刀ばっかり言ってて、お人形遊びよりも剣遊びの方が喜びそうな可奈美ちゃんが妹?」

「ハルトさん今日はいつも以上に私にひどいっ!」

「お兄さんの苦労がうかがえるなあって」

「私そんなに手間のかかる子じゃなかったよ」

 

 可奈美が頬を膨らませる。

 

「それに、剣はいつもお母さんに鍛えてもらってたから」

「お母さんも剣バカなんだ……」

「うわあああああ!」

 

 すると、そのタイミングでどんがらがっしゃーんと、ギャグのような音が年季の入った店内に響いた。

 発生源の方___ホールの出口から続く、階段の方を見れば、そこには転げ落ちて足を大きく広げた少女の姿があった。

 

「うーん……」

 

 少女は、漫画のように目をグルグルと回していた。

 

「おーい、ココアちゃん。大丈夫?」

 

 額を床に押し付ける少女はハルトの声に顔を上げた。腫れた額を笑顔で誤魔化しながら、少女は足元を見下ろす。

 

「わ、わわわ! 荷物がめちゃめちゃに!」

 

 落ち着きのなく両手を振り回す少女。栗毛の髪と桜の髪飾りが特徴的な少女、保登心愛(ココア)は、散乱した荷物を一つ一つかき集め始めた。

 

「あらあらあらあら……」

 

 ハルトは彼女のスマホを拾い上げながらそんな声を上げた。

 

「しっかりしてよ。今日お姉ちゃん来るんでしょ?」

「うえーん……ごめーん」

「おお、韻踏んだ謝り方だね」

「うう……」

 

 ココアは涙ぐみながら、白い棒を拾い上げる。あまり少女の持ちものとしては似合わないそれに、ハルトも思わず首をかしげた。

 

「ココアちゃん、それは?」

「え? 何だろこれ……? 私、こんなの持ってたかな?」

 

 ココアもまた、同じように白い棒をグルグルと見渡す。だが、覚えがないのか、やはり芳しい反応を示さない。

 

「そもそも、この荷物何? どこに行くの?」

 

 可奈美が拾い上げたポーチをココアに返しながら尋ねる。

 ココアは「だって~」と前置きを置き、

 

「もう十一時だよ? お姉ちゃんが来ていたら、真っ先に私のところに来るはずだもん。……寝坊してるところには来てほしくないけど。だから、きっと迷子になってるんだよ」

「携帯に連絡したら?」

「お姉ちゃんスマホ持ってないから……」

「今時珍しいね」

 

 ハルトは頷いた。

 

「それで、逆にこっちが迎えに行こうと」

「うん。地図も書いたけど、もしかしたら迷ってるんじゃ……」

 

 ココアの顔がどんどん青くなっていく。

 ハルトは苦笑する。

 

「少しは落ち着いたら?」

「でも……」

「そうだよ。ココアちゃんのお姉ちゃんが見たいのは、しっかりと仕事をしているココアちゃんなんだから」

「さっきまで配置をガッツリ間違えた可奈美ちゃんが言うと説得力あるな」

「っ!」

 

 可奈美の笑顔が固まった。

 だが、彼女の言葉だけではココアは安心しなかった。

 逆に荷物を急いでまとめ、叫んだ。

 

「やっぱり私、お姉ちゃんを迎えに行ってくる!」

 

 ハルトと可奈美が止める間もなく、ココアは店を飛び出していった。

 

「あ、ココアちゃん!?」

「行っちゃったね……」

 

 ココアが去って、がらんと戻った入口を眺めながらハルトは呟いた。

 可奈美が頷いたタイミングで、再び呼び鈴が鳴る。

 

「あ、可奈美ちゃん」

「いらっしゃいま……あれ?」

「ただいま戻りました」

 

 そう言ってラビットハウスに入ってきたのは、小学生とも見紛う、小さい少女。銀色の髪の上に乗せたアンゴラウサギが目を引く彼女は、防寒具をしっかりと身にまといながら、胸元に買い出しの豆類を抱えている。

 

「お帰り。チノちゃん」

 

 可奈美がにっこりとほほ笑む。

 笑顔を浮かべた少女、香風チノは、会釈してそのまま歩く。

 ハルトは彼女の前に屈み、荷物を受け取ろうとする。

 

「あ、それ俺が持つよ」

「いえ、大丈夫です。立派なバリスタになるためにも、最後までやらせてください」

 

 そう宣言したチノは、そのまま店の奥へ向かっていった。振り向きざま、チノは尋ねる。

 

「そういえばさっき、ココアさんが走って出ていくのを見ました。何かありましたか?」

「ああ。お姉さんを迎えに行くらしいよ」

 

 ハルトがそう言った瞬間、ポケットから音が鳴った。

 ハルトのスマホ。取り出すとそこには、ココアが「可愛いウサギがいたよ!」と写真付きのメッセージが。

 

「おい、姉はどうした!?」

「でも、可愛いです……!」

 

 いつの間にか覗き込んでいたチノが目を輝かせていた。

 

「でも、これじゃ今度はココアちゃんが迷子になるってことになるんじゃない?」

 

 可奈美が呟いた。彼女のスマホにも同じ写真が送られており、真剣な声色とは逆に顔は随分と緩んでいた。

 

「迷子って……ココアちゃん、俺たちより見滝原に来るの半年早かったんでしょ? 流石に……」

 

 ハルトがそう弁明しているうちに、次々と写真が更新されていく。その周囲の風景を見れば、彼女がウサギを追って、どんどん駅から離れていくのが判る。

 ハルトは「仕方ない……」とスマホをしまった。

 

「俺が送っていくよ。見滝原中央駅に行けばいいでしょ?」

「多分ね」

 

 可奈美の言葉を聞いて、ハルトは上の自室よりヘルメットを取ってくる。

 そのままラビットハウスの入り口に手をかけて、言った。

 

「それじゃ。行ってくるね」

「いってらー」

「お気をつけて」

 

 可奈美とチノの言葉を背に受けながら、ハルトは店を出た。

 ヘルメットを被りながら、ラビットハウスの裏手に止めてあるバイク、マシンウィンガーに跨る。

 

「さてと。写真によれば……こっちに行けば、ココアちゃんに追いつくかな」

 

 ハルトはそう言いながらアクセルを入れた。

 その時。

 

「_______!」

 

 まさに今進もうとした瞬間、赤い鳥がハルトの眼前に現れる。

 プラスチック製の体を、ハルトが「ガルーダ?」と認識する。

 

「________!」

 

 ガルーダは、興奮したように騒ぎ立てる。

 その様子を見たハルトは、少しげんなりした様子で項垂れた。

 

「新年早々、ファントムか……」

 

 ハルトはマシンウィンガーの方角を別に切り替える。見滝原中央駅の方角でもココアの写真がある方向でもなく、ガルーダが導く方向へ。

 ココアやチノの知らない、ハルトのもう一つの顔が、その腰で光を反射した。




真司「餃子出来たぜ!」
友奈「わーい! 真司さんの餃子大好き!」
真司「今年の目標は、聖杯戦争を終わらせること! というわけで、景気づけにジャンジャン食え!」
友奈「ラジャー! いただきます!」
真司「よしよし! それじゃあ、今日のアニメ行くぜ!」



___ねぇ どれだけ離れているのかな? キミの温もり 思い出しているよ___



真司「ヒナまつり! あ、友奈ちゃん。これ、この前店長からもらった賄のイクラ」
友奈「わーい!」
真司「放送してたのは、2018年の4月から6月! 若手ヤクザの新田が、超能力者のヒナと出会って始まるギャグアニメだぜ!」
友奈「イクラ……!」
真司「苦労人の瞳ちゃんとか、貧乏でも豊かなアンズとか、色々と笑って泣ける話だぜ!」
友奈「見たらきっとイクラが食べたくなるよ! 真司さん、おかわり!」
真司「おう! って、俺の餃子よりイクラばっかり食われてる!」
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