Fate/WizarDragonknight   作:カラス レヴィナ

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ゆるキャン△が終わった……

ゆるキャン△が終わると?

ゆるキャン△が始まる……

ゆるキャン△(ドラマ版)放送中! 2期の内容は同じだよ!


聖杯戦争のルール

 壁が崩壊し、その中から炎と氷が溢れ出す。

 赤と白の煙より、龍騎とレイが取っ組み合いながら姿を現した。

 

「真司……!」

「は、ハルト!?」

 

 ドラグクローを装備したままの龍騎が、ウィザードへ向き直る。

 

「さっきのあの子は!?」

「いる! それより、今はアイツが優先だ!」

 

 ウィザードはそう言って、ソードガンで上空のトレギアを指差す。

 

「あいつは……!?」

「トレギア。……とにかく危険だ!」

「とにかく危険とは失礼だなあ……」

 

 トレギアは呆れた声を出した。

 

「それより、君もなかなか面倒な奴を連れてきたじゃないか」

 

 トレギアは新たな乱入者を見下ろしながら言った。

 新たな乱入者、レイ。ほむらの銃弾を弾き飛ばし、彼女へ斬りかかりながら、トレギアと目を合わせる。

 

「あなたは……フェイカーのサーヴァント、でしたか?」

「どうかお見知りおきを……そんなに長い付き合いにはならないだろうけどね」

 

 やがて、それぞれは入り乱れる。

 ウィザーソードガンとドラグセイバーがレイの鉤爪に阻まれ。ルーラがトレギアとキャスターを引き裂き、拳銃がレイと龍騎の胴体から火花を散らす。

 

「くっ……」

 

 離れたウィザードは、ウィザーソードガンの手を開き、ルビーを読み込ませる。

 

「真司!」

「ああ!」

 

 フレイムのスラッシュストライクとドラグセイバーの投影が、トレギアに飛ぶ。

 だが、トレギアは二つの刃を指差し、横へ反らす。すると、その念動力によって動きを変えた刃が、ほむらと合成怪物に命中した。

 

「次はこっちから行こうか」

 

 トレギアは、その爪で空間を切り裂く。禍々しい斬撃が、空間を襲う。スイムスイム、レイがそれぞれ壁と吹雪の中に隠れ、さらにウィザードが防壁を張り、龍騎とほむらをかばう。

 

「レイキバット」

『このオレに任せれば、全てが上手くいく……』

 

 レイが、再び倉庫を吹雪に染め上げていく。

 ゼロになった視界で、レイの斬撃が、ウィザード、龍騎、ほむら、スイムスイム、合成怪物を順に襲う。

 

「くっ……キャスター!」

 

 痛みに堪えた声のほむらが、命令した。

 黒い翼を広げ、キャスターが飛び上がる。

 彼女のそばに浮かぶ魔導書がページを示し、赤い光を発行する。

 さらにほむらは命じる。

 

「焼き払いなさい!」

「ジェノサイドブレイザー」

 

 古代の力より得た灼熱の炎。恐竜の咆哮とともに、赤い光線が雪景色を染め上げていく。

 レイの姿もあぶり出し、最後にキャスターは、熱線をトレギアへ向けた。

 

「ふん……その技は、もう見たよ」

 

 トレギアは両腕を黒く発光。十字に組ませ、発射した光線でジェノサイドブレイザーを相殺した。

 

「キャスター! フェイカーを仕留めなさい!」

 

 ほむらの命令に、キャスターは次の技を発動させた。

 魔導書の発光が、赤から桃色へ。

 

『咎人達に、滅びの光を』

「あれは……っ!」

 

 その光に、ウィザードは体を震わせた。

 キャスターと出会った時、彼女が見せた技。あれが、来る。

 

『星よ集え 全てを撃ち抜く光となれ』

「皆! 逃げろ!」

 

 ウィザードが叫ぶ。

 すると、トレギアは感心したようにキャスターの様子を見守っていた。

 

『貫け 閃光』

 

 キャスターは、間違いなくトレギアを狙っている。

 だが、他の参加者が巻き込まれることには、遠慮しない。

 唯一、マスターであるほむらが戦線を離脱したのと同時に、キャスターは告げた。

 

「スターライト ブレイカー」

 

 桃色の光線と、金色の斬撃波。

 そして。

 龍騎は慌ててドラグシールドを展開し、スイムスイムはコンクリートの中へ潜水。

 ウィザードはディフェンドの指輪を使い、防御壁を張る。

 そして。

 

 桃色の光線が、全てを薙ぎ払う。

 

 大きな爆発。

 ウィザードの魔法壁など簡単に引き裂かれ。

 ドラグシールドは跡形もなく粉々になり。

 スイムスイムが潜っていたコンクリートが崩壊し。

合成怪物の姿が、桃色の光に飲まれていく。その分子の一つ残らず、焼き尽くされ、消滅していく。

 そして。

 

 見滝原ドーム、その一角___関係者用スペースの大部分が爆発した。

 

 

 

「ぐっ……!」

 

 起き上がったハルトは、その惨状に言葉を失った。

 整列していた品々は、根底から破壊されつくし、すべてが瓦礫の底に埋まっている。

 

「何だ……これ……?」

 

 ハルトは茫然としながら呟いた。

 もくもくと立ち込める粉塵を凝らして見れば、他の者たちもハルトと同じように重傷を負っていた。

 うつ伏せに倒れる真司の手からはカードデッキがこぼれ、スイムスイムがコンクリートより浮かび上がる。

 あの合成怪物は、キャスターによって欠片も残さず消滅したのは間違いない。

 

 そしてただ一人。破壊の後に、立っている者がいた。

 

「あれは……?」

 

 白い煙幕の奥に現れる、より白い人影。

 処刑人、レイが、茫然と立ち尽くしていた。あたかも壁のように微動だにしないその姿に、思わずハルトはその防御力に舌を巻いた。

 だが、すぐに彼の体勢は崩される。背後にいたトレギアが、彼を殴り払ったのだ。

 

「ありがとう。盾になってくれて」

 

 トレギアが小馬鹿にした口調で言った。

 その時、ハルトは理解した。キャスターの攻撃が破壊の限りを尽くす時、トレギアがレイを盾にしたことに。

 

「貴様……何を……」

 

 レイがトレギアを呪うよりも先に、トレギアが彼を薙ぎ払う。紫の雷が、レイごと周囲を一閃する。さらなる爆発が連鎖し、レイを大きく吹き飛ばす。

 

「悪いね。運営側の邪魔者はお呼びではないんだ」

「ああ……あああああああああ!」

 

 丁寧な口調はどこへ行ったのか、見た目通りの狂暴性を見せながら、レイはその鉤爪でトレギアを襲う。だが、すでに満身創痍の彼の攻撃が、トレギアの蹴りに勝るはずもなかった。

 転がったレイに対し、トレギアが告げる。

 

「あの世に帰りな」

 

 その両腕に、ひと際大きな雷が宿る。五つの赤い点が同時に展開し、その威力を引き上げていく。

 放たれた暗黒の雷光(トレラアルティガイザー)は、そのまま防御態勢を許すことなく、レイへ迫る。

 

「あ」

 

 それが、レイの最期の言葉となった。

 純白の体を塗りつぶす漆黒。それはやがて、大きな爆発となり、全てを染め上げていく。

 そして。

 処刑人レイ。その肉体は消滅し、残ったのはトレギアが拾い上げた白いコウモリの翼だけだった。

 

「ふん」

 

 トレギアはつまらなさそうに羽を投げ捨てる。金属片の音が、乾いた倉庫敷地内に響いていく。

 

「こんなものか? 聖杯戦争が用意した処刑人は」

 

 トレギアはそう言いながら、両手を大きく広げる。

 

「お前……どうして……?」

 

 それは、真司の声。

 彼は、明らかに怒りを込めた顔でトレギアへ叫んでいた。

 

「なんでこんなことを……!?」

「こんなこと?」

 

 トレギアは嘲笑した。

 

「これは殺し合いだろう? 何も私はルール違反をしていない」

「お前……ッ! 変身!」

 

 激昂した真司は、龍騎へ変身しながら駆け出した。

 即座にドラグセイバーを召喚し、トレギアへ斬りかかる龍騎。だが、あっさりと攻撃を避けるトレギア。

 

「どうした? そんなものかい?」

 

 トレギアは、さらに迫るドラグセイバーを受け流しながら、その胸を蹴り飛ばす。

 

「おいおい……もう少し頑張ってくれよ」

 

 トレギアはそう言いながらその目を光らせる。

 赤い光が龍騎へ直進し、龍騎の体が爆発する。

 

「真司!」

 

 変身解除して倒れる真司。ハルトは、もう一度変身しようと指輪に手をかけた。

 だが、それよりも先にコンクリートが揺れる。

 再び潜水したスイムスイムが、トレギアへ牙をむいたのだ。

 

「おいおい」

 

 トレギアは首を振り、数度にわたるスイムスイムの攻撃を回避し続ける。

 やがて、再び躍り出たスイムスイムの攻撃をしゃがんで躱し、その腹に手を当てた。

 

「君の弱点は、もう分かっているんだよ」

 

 彼の手からゼロ距離で放たれる、黒い雷。それは、スイムスイムの体を駆け巡り、その体を液体から固体に戻してしまった。

 

「なっ……!」

 

 その容赦のなさに、ハルトは言葉を失う。

 さらにトレギアは、落ちてきたスイムスイムの首を捕まえた。

 

「君も少し、目障りだ」

 

 首を締め上げるトレギアは、そのまま告げる。

 液体化も許されないスイムスイムは、どんどん上昇していく。手足をバタバタと動かして抵抗しているが、トレギアには全く通用しない。

 

「そういえば、ここは聖杯戦争のエリアの北端。だったねえ?」

 

 トレギアはわざとらしく彼女の首元で語る。彼女の白い素肌が、トレギアの黒い手に潰されていった。

 

「聞いたことがなかったんだよ。見滝原を出た参加者がどうなるのか」

「……っ!」

 

 スイムスイムがもがくが、トレギアには何の意味もなさない。すでに体力が尽き、能力さえも切られている彼女が逃れる術などなかった。

 そのまま、ゆったりとトレギアは浮かび上がっていく。

 音もなく、重さもなく。

 そのまま、トレギアは倉庫の上空へ移動していった。

 

「変身……!」

『ハリケーン プリーズ』

 

 ハルトは風のウィザードとなり、急いで上空へ上昇する。

 だが、間に合わない。

 

「アヴェンジャーのサーヴァント。私の実験体になってくれ。聖杯戦争のエリアを出た参加者がどうなるのか、身をもって教えてくれ」

 

 そう言って、トレギアはその手を放る。

 水ではなく、重力の支配に飲まれるスイムスイム。彼女はそのまま、道路の上まで真っすぐ伸びていく。無造作に伸ばされる手足。

 

「届いてくれ……!」

『エクステンド プリーズ』

 

 伸縮の魔法で、ウィザードの腕が伸びる。

 スイムスイムへどんどん手が伸びていくが、届かない。さらに、液状化という能力の都合上、スイムスイムの体は水浸しになっていて、例え触れることが出来ても滑ってしまう。

 トレギアがスイムスイムを投げたせいで、時間が経つにつれて、地図上の見滝原の境目にどんどん近づいていく。

 

「頼む……!」

 

 そして。

 

「掴んだ……!」

 

 ウィザードの手が、とうとうスイムスイムの細腕を掴む。

 果たして彼女の温もりは、ウィザードの黒いローブが邪魔で伝わってこない。

 とにかくと、ウィザードはスイムスイムの体を自らに引き寄せ、全力で見滝原の内部へ移動する。

 幾つかの地区を越えたところで地上に着地___それは着地とは言えるのだろうか。地面に接触する少し前に変身を解除、転がってスイムスイムとともに冷たいコンクリートに投げ出された。

 

「っつ……」

 

 起き上がったハルトは、ようやくここが地表ではなくビルの屋上であることに気付く。

 

「はあ、はあ……」

 

 肩を撫で下ろしたハルトは、助けたアヴェンジャーの方へ駆け寄る。

 だが、その姿を見て、ハルトは固まった。

 

「まさか……!? 嘘でしょ、こんな小さな子が……!?」

 

 気を失っている、少女。だが彼女の外見は、スイムスイムと比べて明らかに幼かった。

 ココアや響どころか、可奈美やチノよりも幼い。小学生低学年のような印象さえ受ける、ツインテールの少女だった。

 

「君! ねえ、君!」

 

 肩を揺らしても、少女は起きない。気絶しているのか。

 そう思って、うつ伏せの彼女を仰向けにする。

 そして。

 

 目を大きく見開き、固まっている少女がハルトを見返した。

 

「……っ!」

 

 それを見て、ハルトは息を呑む。

 瞳孔が大きくなり、目の光も無くなっている。

 

「そんな……!」

『どうやら、間に合わなかったようだね。ウィザード』

 

 その脳に響く声に、ハルトの顔はすぐに険しくなる。ガラス玉のような少女の目に、監督役であるキュゥべえの影が差し込んできた。

 

「キュゥべえ……!」

『アヴェンジャーはどうやら死亡したようだね』

 

 何事もない報告事のように、キュゥべえは告げた。

 

『自動的に、彼女のマスターからは令呪が剥奪される。これでまた一組減ったね』

「減ったって……待ってよキュゥべえ。どうして……!?」

『どうしたんだいウィザード』

「なんで彼女は死んでるんだ!? やっぱり……」

『君が考えている通りだよ』

 

 キュゥべえはあっさりと言い切った。

 

『今回の聖杯戦争は、見滝原で行われる。それは説明したよね』

「ああ」

『逆に言えば、見滝原の外では、聖杯戦争参加者がいることは認められない』

「……」

『地図上の見滝原から、ほんの少しでも体が出た参加者は、無条件で失格。その場で死亡するというわけさ。自動的にね』

「なんだよそれ……!」

 

 ハルトが非難の声を上げようとするよりも先に、キュゥべえは告げる。

 

『そもそも、彼女は君にとっては敵だよ。その敵の死を目にして、君は喜びではなく僕への怒りを感じている。どうして人間は、一時の感情でいつも目的を遠回りしようとするんだい? 全く訳が分からないよ』

「……」

『第一、君自身、それが分かっていたんじゃないのかい? だからこそ、あそこまで必死に彼女を掴まえようとしたのだろう?』

 

 分かっていた。人の感情を理解出来ないキュゥべえに対して怒りを抱くこと自体が間違っている。

 ハルトは怒りを飲み込み、静かに言葉を続けた。

 

「どうして、それを言わなかったんだ……? 行動範囲を越えたら死ぬだなんて、参加するしない以前の大問題じゃないか……!」

 

 そんなハルトの問いに対してのキュゥべえの答えは、実にあっさりと、簡単なものだった。

 

『聞かれなかったからさ』

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