Fate/WizarDragonknight   作:カラス レヴィナ

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三回も話を切り替えたおかげで、随分かかってしまった……皆様、申し訳ありません


夜の奇襲

「葬る!」

 

 信じられないスピード。黒髪の女性は一気にこちらへ詰め寄り、ウィザードへ斬りかかる。

 

「っ!」

 

 ウィザードはソードガンで、その太刀を防いだ。銀の刃が、日本刀を受け止める。

 彼女は身を翻し、さらなる斬撃で攻め立てる。

日本刀を使う敵。可奈美という比較対象と比べてみると、どちらの技量が上か、優劣などつけられなかった。

だが、彼女が可奈美よりも明らかに優れている点が一つ。

 

「喉元を狙ってくる……っ!」

 

 黒髪の女性は、ソードガンとの打ち合いではなく、ウィザードの急所へ刃を走らせていた。ウィザードとしての肉体強化がなければ、すでにこの世にはいられない猛攻に、ウィザードは冷や汗を流す。

 

「重い……っ!」

 

 華奢な女性の腕力としては信じられない力量に、ウィザードは慄く。

 可奈美のそれとは比べ物にならない、攻撃性と容赦のなさ。ファントム以上の脅威に、ウィザードのソードガンを握る力が強まる。

 

『ディフェンド プリーズ』

 

 ウィザードが盾とした魔法陣を容易く両断し、黒髪の女性は更に詰め寄る。

 

「またか!」

『ディフェンド プリーズ』

 

 再び発生する魔法陣。今度は防御としてではなく、黒髪の女性を突き飛ばすためのものとしての使用だった。

 腕でガードした彼女は、そのまま地面を転がる。

 

「……やるな」

「まだだ!」

 

 すさかずウィザードは、ルビーの指輪をサファイアに取り換える。起動したウィザードライバーへ、サファイアの指輪を投げるように読ませる。

 

『ウォーター プリーズ』

 

 発生した青い魔法陣を突っ切り、ウィザードの姿が火から水へ変わっていく。

 

『スイ~スイ~スイ~』

 

 水のウィザードは、敵へ斬り結ぶ前に指輪を入れる。

 

『リキッド プリーズ』

 

 水のウィザードの特性たる、魔力の多さ。それが可能にした体の液状化により、彼女の刃が体を貫通した。

 

「……⁉」

 

 黒髪の女性は、少なからず驚愕を露にした。その隙を見逃さず、彼女の肩に蹴りを入れる。

 怯んだところへ、さらにウィザードは指輪を入れる。

 

『ライト プリーズ』

 

 ウィザードの手から、眩い光が放たれる。それは、暗闇に慣れた黒髪の女性の視力を麻痺させた。

 

「っ……!」

『ウォーター スラッシュストライク』

 

 目を奪われている彼女へ、ウィザードは青い斬撃を与える。

 だが、敵もさるもの引っ搔くもの。視界を潰したというのに、その日本刀でウィザードの斬撃を防いだ。

 

「すごっ……!」

「造作もない」

「造作もないの基準が絶対におかしい……!」

 

 目が慣れてきたのだろう。黒髪の女性は、すぐにこちらを睨めるまで回復した。

 

「お前……サーヴァントではなくマスターが戦うのか」

 

 赤く、冷たい眼差しで黒髪の女性が語る。

 彼女の言葉を理解する前に、黒髪の女性が突進してきた。卓越した動きは、ウィザードの反撃を掻い潜り、その刃を仮面へ迫らせる。

 

「もう止めてください!」

 

 間に割って入る、黄と白の鋼鉄。

 ガントレットで刃を防ぎ、そのまま黒髪の女性の腹へ掌底を食らわせる。

 

「っ!」

 

 反対側のウィザードにも跳ね返る衝撃。

 だが、黒髪の女性は数度地面を跳ねた後、 その反動を利用して着地。足が地面を引きずったが、ほとんど無傷のままこちらを見返した。

 響は彼女へ向き合う。

 

「どうして戦うんですか? 私たちは、語り合うことだってできるはずです!」

「語り合う……?」

 

 彼女の前髪が、赤い右目を隠す。顔に陰りがある彼女は、そのまま冷たい声で語った。

 

「聖杯戦争。そのサーヴァントならば、語り合う必要もない。私たちはそれぞれの願いのために戦う。それだけだ」

「違います! そもそも、私たちサーヴァントがいること自体が間違っています」

 

 響の言葉に、ウィザードは押し黙っていた。

 

「響ちゃん……それって……」

「ハルトさん……」

 

 響は数秒ウィザードを振り替える。彼女はしばらくウィザードを見返したあと、ゆっくりと頷いた。

 

「分かっていますよね? ここは、私たちがいるべき世界じゃない……! この世界は、この世界の人たちに任せるべきです!」

「……サーヴァントなのに、聖杯戦争には消極的なのか」

「私たちは、英霊でしょう⁉ 人を傷つけるためにその力を振るったわけじゃないでしょ⁉」

 

 だが、その言葉は黒髪の女性を押し黙らせた。彼女は静かに目を落とし、自らの刀を見下ろす。

 やがて、響に向けられた彼女の深紅の眼差しは、赤特有の明るさはなく、暗い闇ばかりが広がっていた。

 

「私に、和解などというものはあり得ない。生き延びたいのなら去れ」

「去らない!」

 

 だが、響は諦めない。

 

「私は立花響ッ! 十五歳! 誕生日は九月の十三日で、血液型はO型! 身長は157㎝、趣味は人助けで好きなものはごはん! 彼氏いない歴は年齢と同じ! ……私はあなたのことも知りたい!」

 

 彼女のひたむきな声に、ウィザードは呼吸すら忘れていた。

 

「響ちゃん……?」

「私たちは、分かり合うための言葉がある! 手をつなぐことだってできる! 殺し合う理由なんてない!」

「……」

 

 黒髪の女性は大きく息を吐く。

 

「言葉があれば、分かり合えるとでも……?」

「?」

「戯言だな」

 

 吐き捨てた彼女は、刀を数度回転させる。

 

「言葉が通じる怪物が、この世には大勢いる。お前にとって、私がそうであるように」

「だとしてもっ! 私は、手をつなぐことを諦めたくない!」

「時間の無駄だ。サーヴァント、アサシン。来い。ランサー。ランサーのマスター」

 

 黒髪の女性、アサシンが身構える。

 

「葬る!」

 

アサシンは、弾丸のようなスピードで迫ってくる。

 

「! 響ちゃん!」

 

 アサシンのダークカブトに匹敵する速度に、反応が遅れた。

 ウィザードは響を突き飛ばし、その体にまともにアサシンの刀を受けた。

 

「うっ!」

 

 サファイアのプロテクターを貫通し、生身の体に傷が入る。リキッドの効果が切れた体を地面に放り投げられた。

 

「っ……⁉」

 

 起き上がった瞬間、ウィザードは体を締め付ける圧迫感に押された。

 

「何だこれ?」

「終わりだ」

 

 アサシンは吐き捨てる。

 その瞬間、ウィザードの全身に黒い文字模様が走り出した。

 それは、彼女によってつけられた胸の刀傷からのものだった。

 アサシンは静かに告げる。

 

「村雨は一撃必殺。傷を付けられたものは死ぬ」

「なんだよそれ……反則だろ……!」

 

 ウィザードは、ひざを折った。呪詛がじりじりと体を駆け巡っていく。

 首に、心臓に達し、もうだめだと目を閉じたその時。

 

『ゴー! ド ド ド ド ドルフィン』

 

 ウィザードの体に、紫の光が降り注ぐ。

 光の粒子が体に蓄積されればされるほど、ウィザードの苦しみも和らいでいった。

 

「何?」

 

 アサシンは怪訝な顔を見せる。

 毒素が抜けた。

 立ち上がり、両手を見下ろしたウィザードは、間違いなく生きていることを確認するように全身に触れる。

 

「助かった……のか?」

「ああ。助かったぜ」

 

 突如として、背後から駆けられる新たな声。

 振り向けばそこには、金色の人影がいた。

 ライオンを人型にしたような人物。緑の瞳と黒い下地のライダースーツの他は、金色のアーマーを付けていた。

 

「くぅ~! 苦しんでいるライバルを助けるとか、俺って良い奴~!」

 

 金色のライオンは両手を腰に手を当てて感激した声を上げている。

 彼はそのまま、響へ手を振る。

 

「おい! 響! こんなところで何してんだ? 変身までして」

「コウスケさん!」

「コウスケって……」

 

 金色のライオンの姿を見る。以前あった行き倒れの大学生の姿を、どうしても重ねることはできない。

 それを察したのか、コウスケらしき金色のライオンは、両手をパンパンと叩いた。

 

「安心しろ。この姿はビーストっていうんだ。そのまんま、ビーストって呼んでくれよハルト」

「俺の正体は知っているのかよ……」

「声一回聞いたんだから分かんだろうが」

「いや、覚えてないんだけど……」

「かぁーっ! お前も結構冷たいねえ!」

 

 コウスケが正体らしき金色のライオン改めビーストは、そのままウィザードとアサシンの間に立ち入る。

 

「んで? 響、あれが人様のサーヴァントって訳だな?」

「うん。アサシンだって」

「あいつからサーヴァント全員倒したら、願いが叶う……と」

 

 サーヴァントを倒したら、願いが叶う。そのことを理解していることから、ウィザードは彼が聖杯戦争の参加者だということを理解した。

 

「おい、コウスケ……まさか……」

「ああ。俺が、響の……ここはマスターらしく言うか。ランサーのマスターだ」

「っ!」

「……コウスケさん」

「だぁーっ! 皆まで言うな」

 

 ビーストは響の言葉を遮った。

 

「俺は別に願いなんて興味ねえよ。こちとら大学終わった帰り道で疲れているんだっつーの。早くテントに戻ってバタンキューしてえだけだ」

 

 ビーストがため息をつく。その一拍の中で、

 アサシンが肉薄する。

 

「!」

「葬る」

 

 彼女の冷たい声。ビーストの運動神経が優れていなければ、明らかに彼の命はなかった。

 

「危ねえな!」

 

 ビーストは足技で反撃する。だが、斬られただけで命を奪う刀を持つアサシンに対し、ビーストは全力で攻撃できなかった。

 

「だあもうっ! めんどくせえ!」

 

 ビーストは声を荒げる。ライオンが彫られたベルトに付いたホルスターから、何かを取り出した。右手中指に取り付けたそれは、ウィザードにとっては見慣れたものだった。

 

「俺と同じ……指輪?」

 

 ビーストはその声には応えず、ベルト上部に取り付けられたソケットに押し当てる。そのまま捻ることで、ベルトの音声が起動した。

 

『カメレオン ゴー カカッ カッカカッ カメレオー』

 

 ビーストの右側に、緑の魔法陣が出現する。ウィザードのものが円形なら、それは角ばった直線的な魔法陣。それがビーストの右肩___紫のイルカを肩に乗せた紫マント___を通過する。すると、イルカの頭は、緑のカメレオンのそれに変わった。マントもまた緑のものへ交換され、ビーストはそのマフラーをはためかせる。

 

「これでも食らいやがれ!」

 

 ビーストが大きく肩を振る。カメレオンの舌部分が大きく伸び、アサシンの腕右腕を捉える。

 

「その物騒なもん、放しやがれ!」

 

 勢いよく引き寄せると、アサシンの体が宙を浮いた。

 

「響!」

「はい!」

 

 ビーストの掛け声に、響が応じる。

 彼女は一直線にアサシンへ接近。かかと落としで妖刀を地面に叩き落とす。

 そのまま響は、アサシンと格闘戦に持ち込む。二人が同時に着地したとき、すでにアサシンの腹には、響の掌が当てられていた。

 

「はっ!」

 

 響の大声。ハッケイと呼ばれる中国武術が、アサシンを大きく突き飛ばす。

 

「……くっ……」

 

 だが、それでもアサシンは倒れなかった。少し体勢を崩しかけた程度で、変わらぬ殺意の目を響とビーストを睨んでいた。

 だが、臆することを知らぬ響は、彼女へ尋ねる。

 

「どうしても、戦いを止めてはくれませんか?」

 

 その問いに、アサシンはしばらく黙っていた。

 やがて、ゆっくりと口を開く。

 

「争わずに済むのなら、それに越したことはない」

「!」

「だったら……!」

「私の命は、無数の命の上にある。戦いを止めることは、もうできない」

「そんな……」

「話は終わりだ」

 

 アサシンはそれ以上耳を貸さず、静かに刀を拾い上げる。

 

「葬……」

 

 踏み出した彼女の足が止まった。

 

 同時に、響もビーストも、ウィザードも止まった。

 上空から、溢れていたのだ。

 黒い光が。

 そして、その中心にいる、黒衣の天使が。

 

「……キャスター……っ!」

 

 聖杯戦争始まって以来の最初の敵であり、ウィザードにとっての最強の敵。

 

 キャスターがいた。

 




さてさて。キャラ崩壊していないかどうかが凄く心配
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