Fate/WizarDragonknight   作:カラス レヴィナ

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ここの前書きって、結構書くこと考えると本編より先にネタ切れになりそうですね


鹿目まどか

『フレイム スラッシュストライク』

 

 ウィザーソードガンの刃先に、赤い炎が迸る。

 

「だああああ!」

 

 紅一閃。その斬撃が、人々を絶望させる悪魔、ファントムを斬り払った。

 残った燃え滓を眺めながら、ウィザードはハルトの姿に戻る。

 

「ふぃー。疲れた」

 

 ハルトは肩をコキコキと回す。

 

「この町に来てからはや数日。大道芸にも場所が何と無く分かってきたけど、ファントム多すぎない?」

 

 ファントム。ゲートと呼ばれる、魔力を持つ人間が絶望し、生き絶えることでその内より生まれる怪物。絶望を振りまき、同類を増やしていく性質のため、どの町にも少なからず存在している。

 

 実際、これまでハルトが旅してきた中にも、ファントムが複数いる町はあった。だが、それでも週一で見つかれば多いという部類だった。

 

「一日一体は多いって。初日は四体も出てくるし」

 

 そうため息をついたハルトへ、ピーピーと呼ぶ声がする。振り向けば、赤い雀大の鳥がいた。

 プラスチックで出来たような体の鳥。それは、ハルトのことを全く恐れず、その周囲を旋回する。

 

「どうしたガルーダ? まだ魔力切れじゃないよね?」

 

 だがガルーダと呼ばれた鳥の動きは止まらない。必死に鳴き声をかけるカルタの様子を見てハルトは少し顔を青くした。

 

「もしかして、またファントム?」

 

 ガルーダがコクッと頷く。ハルトは頭を抱えて、

 

「またぁ? 少し多すぎない?」

 

 口を尖らせる。だが、ガルーダにはそんなこと関係ない。早く行こうと言わんばかりに、ハルトの袖を引っ張る。

 

「わかったわかった、ちょっと待って」

 

 ハルトは指輪をコネクトのリングに入れ替える。読み込ませた瞬間ハルトの隣に巨大な魔法陣が出現する。ハルトの背丈と同じ位の大きさのそれに手を突っ込むと内部からバイクが出現した。

 

「行くしかないよね」

 

 ハルトはバイクに飛び乗り、ヘルメットを被る。

 

「じゃぁガルーダ、道案内お願い」

 

 ハルトの声にガルーダ待ってましたと言わんばかりに駆け出した。

 

 

 

「さあ、死への恐怖で絶望してファントムを……」

「挨拶代わりのキックストライク!」

「ぎゃあああ!」

 

 ファントムの姿を見る前にその姿が爆炎に包まれる。

 今日だけでも何件目だろうか。変身を解除したハルトはアスファルトの上で大の字になる。

 

「もういや! もう無理! 今日だけでこれまでの討伐数更新しているんじゃないの?」

 

 そんなことない、とガルーダが頭上で左右に揺れた。

 ハルトはむくりと起き上がり、戦いには一切関与していないガルーダを睨む。

 

「いいよなぁ使い魔は。俺みたいな肉体労働じゃないんだから」

 

 するとガルーダは、そんな事はないよと言わんばかりに、ハルトの頭をポンポンと叩く。ガルーダの嘴が頭に刺さって妙に痛い。

 

「痛! 痛いって!」

 

 そんな端から見たらペットとじゃれあう主人のような行動を繰り返しながら、ハルトの耳に新たな鳴き声が聞こえてきた。

 

 ヒヒーンと、馬らしき鳴き声。ハルトの手元には、ガルーダと同じように、プラスチック材質でできた馬がいた。

 

「お、ユニコーン」

 

 青い材質でできた、角の生えた手乗り馬。伝説上の生き物、ユニコーンの姿と名前を持つそれは、その角でハルトの手をツンツンと叩く。

 

「痛っ。何? 魔力切れ? もうそんな時間か」

 

 しかし、ユニコーンは首を振る。その時点で、ハルトの第六感が嫌な予感を伝えた。

 

「……魔力切れでしょ? すぐに補充するから」

 

 そういって、ユニコーンの胸元へ手を伸ばす。ユニコーンやガルーダの動力源である指輪だが、それに触れさせないように、ユニコーンはその身を避けた。

 もうハルトは、観念して呟いた。

 

「……ファントム?」

 

 正解。そういうユニコーンのジェスチャーは、縦のジャンプだった。

 

 

 

「こーなったらもうこの町のファントム狩り尽くしてやる! 変身!」

 

『ハリケーン プリーズ』

 

 怒りのエメラルドの指輪を装填。バイクに乗るのももどかしく、手にユニコーンを乗せたエメラルドのウィザードは、風とともに空へ飛んで行った。

 

 

 

 

 少女の名前は、鹿目(かなめ)まどか。この町の中学校、見滝原中学の生徒である。小柄な背丈、非力な肉体。どこにでもいるような、ただの女子中学生だった。

 命の危機など、一生無縁であるはずだった。それなのに今。絶体絶命の危機に瀕している。

 

「ぐへへ……さあ、絶望してファントムを生み出せ!」

 

 見たこともない、牛の顔をした化け物。青いの人型のそれが、両手を広げながらこちらへ迫る。これが人間ならば不審者で済むが、この怪物、が纏う雰囲気は、本気の危険だった。

 

「こ、来ないで……!」

 

 目に涙を浮かべながら訴えるが、そんな情が通じる相手ではなかった。

 怪物は、どんどんにじり寄ってくる。いままさに、まどかの命を奪おうと手を伸ばし、

 

 その手が、どこからか飛んできた銃弾によって弾かれた。

 

「……え?」

 

 唖然としたまどか。そして、

 その目前に現れた、土の壁。

 

「な、何⁉」

 

 連続する奇怪な現象に目を白黒するまどか。そして、

 現れた壁が粉々に崩壊。中より、黒いローブの人物が出現、怪物へ回転蹴りを放った。

 

「……」

「大丈夫?」

 

 黄色の仮面をしたローブは、こちらへ手を伸ばした。

 驚きながらも、まどかはその手を握り返す。

 助け起こされ、まどかは恐る恐る頭を下げた。

 

「あ、あの、ありがとうございます……」

「ん。いいよ。気にしないで」

「き、貴様!」

 

 牛の化け物が、怒声を上げる。

 

「貴様! もしや、噂のウィザードか⁉」

「へえ、知っているんだ。名前が売れて光栄だけど」

「ウィザード……さん?」

 

 恩人の名前を、まどかは復唱する。ウィザードと呼ばれたマスクは手を振り、

 

「別にさん付けしなくてもいいよ。このファントムで憂さ晴らしするから」

「ふざけるな!」

 

 怒りにかられて突進してくる牛の化け物。しかし、ウィザードは一切焦らず、腰のホルスターから指輪を外し、右手中指に取り付ける。

 

『ディフェンド プリーズ』

 

 ウィザードの手前に出現した円陣。魔法陣ともいうべきそれから出現したのは、分厚い土の壁。

 それは、牛の化け物の突撃を止めたばかりか、その身を壁の中に捕えた。

 

「なにっ⁉ 何だ、これは⁉」

「ふふん」

 

 ウィザードは鼻で笑いながら、蹴り飛ばす。

 崩れる土壁とともに地面を転がる牛の化け物。

 

「ばかな……この俺が……!」

「頼むから今日はこれっきりにしてくれよ。俺だって今日の寝床探しで忙しいんだから」

 

 そう言いながら、ウィザードは手にした銃の、手のオブジェ部分を開く。

 

『キャモナシューティング シェイクハンズ! キャモナシューティング シェイクハンズ!』

 

 この場に似合わない、リズミカルな音声。それに構うことなくウィザードは、手を模したパーツに左手の指輪を読み込ませる。

 

『ランド シューティングストライク』

 

 その音声とともに、その銃からは黄色の弾丸が発射された。

 黄色の誘導弾は、そのまま牛の怪物に命中。

 その恐ろしい肉体は、瞬時に爆発とともに消滅した。

 

 

 

「……助かった……の?」

 

 ようやく安堵の息が漏れたとき、まどかの口からはその言葉しか出てこなかった。

 

「えっと……貴方は……?」

「俺?」

 

 こちらを向いたウィザードの体が、黄色の魔法陣に包まれる。通過した途端、彼の姿は黒いローブの魔法使いではなく、

 どこにでもいる平凡な少年に変わった。

 まどかよりも頭一つ背が高い程度の背丈。長らく使っていそうな、傷だらけの革ジャン。

 

「ま、流れの大道芸人、松菜ハルトです。どうぞお見知りおきを」

 

 ハルトと名乗った少年は、まさに舞台役者のように礼をする。それにつれて、まどかも思わずお辞儀を返した。

 

「あ、私、鹿目まどかって言います。助けていただいて、ありがとうございました」

「はい。まあ、無事でよかった」

 

 ハルトがにっこりとほほ笑んだ。

 この人は、悪い人じゃないのかな。そう考えたまどかは、恐る恐る尋ねた。

 

「あの、さっきの怪物は……?」

「ん? あれはファントム」

「ふぁんとむ?」

 

 目を白黒させるまどか。テレビでしか聞いたことのないような単語だったが、ハルトはさも当然のように語った。

 

「人間を襲う怪物。ま、ゲートっていう魔力を持った人を絶望させて、仲間を増やそうとする奴ら。増えたら、大変なことになるから、俺はこうして退治しているわけ」

「はあ……それじゃ、もしかして私がその……ゲートってことですか?」

「うーん、それはないんじゃないかな? だって、あのファントム結構手あたり次第って感じだし。たまたま逃げ遅れたんじゃないかな」

「そうですか……あの、助けていただいて、本当にありがとうございました!」

「いやあ……あ、そうだ」

 

 するとハルトは、ポンと手を叩く。

 

「ねえ、その……助けた後でお礼お願いするのも変な話だけど、頼みってしてもいい?」

「あ、私にできることならなんでも」

 

 ハルトは深呼吸し、

 

「この町……案内お願いできない?」

 

 

 

「ここって結構、進んでいる町なんだね」

 

 それが、見滝原を大体見て回ったハルトの感想だった。

 

「高層ビルがこんなに多いのも早々ないよ? 公園も綺麗なところ多いし」

「ハルトさん、いろんなところを旅してきたんですよね」

 

 まどかの言葉に、ハルトは頷く。

 

「うん。色々行ったよ。海外もいくつか」

「すごいですね。大道芸と魔法使いなんて」

「そんなことないよ」

 

 ハルトは右手に常備している指輪を見落とす。ベルトを出現させる効果をもつその指輪だが、まどかも同じように見上げていた。

 

「見滝原の主な場所はこんなところですね。市役所、駅、商店街、公園、動物園に水族館」

「いやあ、すごいなあ。空中にタッチパネルなんて、映画でしか見たことないよ」

「そうですか? 私、あまり見滝原から出たことがないので当たり前になっちゃったんですけど。他ではあまりないですか?」

「うーん。俺は見たことないかなあ。今って、こういう技術ってあっという間に広まりそうなんだけど」

 

 そんな笑いながらの会話の最中だった。

 突然感じた、殺気のようなもの。まどかを抱きかかえ、脇へ退避する。

 

 

 

 その時。

 

 轟、という音が大地を揺らす。

 

 振り返れば、さっきまでいた場に大きな穴が。

 そして空には、それを行ったらしき、黒い翼を生やした女性がいた。

 

「な、何だ……?」

 

 ハルトもまどかも唖然として空を見上げる。

 美しく長い銀髪、黒い衣装と黒い翼。光を塗り潰す闇が、昼の世界の色を変えている。

 そして彼女の、美しくも悲しい赤い瞳が、まっすぐとハルトを見つめていた。

 

「……見つけた」

 

 彼女の冷たい声。それだけで、彼女がファントム以上の脅威だと理解できた。

 




一週間ごとに更新したいなあ、と書きながら願っています。
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