Fate/WizarDragonknight   作:カラス レヴィナ

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実は六章で一番禍根を残したのはこの組でした


人魚姫の夢

 どこか遠くで、爆発が聞こえた気がした。

 鹿目まどかは、一瞬だけ意識を別のところへと持って行っていた。

 見滝原中学の最終学年、三年生としての幕あけを昨日終え、今日、ようやく捕まえた。

 

「さやかちゃん!」

 

 まどかの呼びかけに、親友である美樹さやかは足を止めた。

 

「おおっ! まどか!」

 

 ようやく話しかける機会がもてた。

 青いボブカットがトレードマークの少女、美樹さやか。彼女はまどかの声に、笑顔で答えた。

 

「何々? どうしたの?」

 

 あくまで、今までと変わらない笑顔。

 だが、それを見るまどかは、言葉一つ一つを考えながら口を動かしていた。

 

「さやかちゃん……その……」

「いやあ、春休み終わっちゃったねえ。今日の授業もなかなか大変だったし……ねえ、気分転換にどっか遊びに行かない?」

 

 だが、それ以上のまどかの言葉を、さやかが防いだ。

 頷く以外の行動をとれなかったまどかは、そのまま彼女に付いて行こうとするが。

 

「待ちなさい。美樹さやか」

 

 その呼びかけに、彼女は足を止めた。

 その声の主は、まどかにももう分かる。まどかの肩を掴み、そのまま脇に押しのける彼女は。

 

「ほむらちゃん……」

 

 その、黒く長い髪が真っ先に目を引く彼女の名は、暁美ほむら。

 常日頃、いつもまどかの近くにいる印象を持つ彼女。クールビューティという言葉が似合う彼女だが、その手にしているのは、中学校には似合わない拳銃。

 

「おお、転校生! ……いや、もう転校生っていうのもおかしいか。もう半年も経ってるんだもんね」

 

 銃口を向けられているのに、平然としているさやか。銃口と笑顔のギャップに、まどかは頭が痛くなった。

 

「美樹さやか。貴女に聞きたいことがある」

 

 冷淡に、声のトーンを落としたまま、ほむらはさやかを睨む。

 

「貴女は……ファントムなの?」

「……ほむらちゃん……!」

 

 それは、まどかも気になっていた問いだった。

 ファントム。

 それは、ゲートと呼ばれる魔力を秘めた人間の絶望を食らい、生まれ出でる怪人。

 まどかもこれまで幾度となく襲われ、知り合いの指輪の魔法使いに助けてもらったことがある。

 そして、つい先日。春休みのある日、さやかがまどかの目の前で、そんなファントムに変貌したのだ。

 だが、さやかは顔をピクリとも動かさず、ほむらを見つめている。

 

「それ、あたしが口で言わないといけないの?」

 

 表情は笑顔のまま。だが、彼女がほむらを見つめる眼差しは、間違いなく冷たいものとなっていた。

 

「前も言ったでしょ? 美樹さやかの人格も、記憶も、全部持ってる。あたし自身、美樹さやかのつもりだって。それにほら、人を絶望させてファントムを増やそうなんて思ってないし。それで、何か問題ある?」

 

 さやかはそう言って、ゆっくりとほむらの拳銃、その銃身に触れる。

 驚いたほむらは、慌てて拳銃を引っ込めた。

 

「ほむらちゃん?」

「……やられたわ」

「え? ……!」

 

 そこで、まどかはほむらの銃の異常に気付いた。

 さやかに触れられた部分が濡れている。彼女の手を見比べれば、確かに彼女の手のひらから、雫が滴っている。

 

「……普通の水なら、発砲に問題ない……けど」

「なら、試してみる?」

「……!」

 

 さやかの挑発に乗ったほむらは、そのままさやかへ向けて引き金を引く。

 だが、銃は無情にも、空打ちの音を響かせるだけだった。

 

「ファントムのあたしの水が、ただの水なわけないでしょ?」

「……」

 

 ほむらは銃を盾に入れて収納し、また新たな拳銃を引っ張り出した。

 

「おお、さすがの四次元ポケット」

「私なんか、相手にしていないって感じね」

「まあね」

 

 さやかの瞳が、サファイアのような輝きを宿す。

 人間離れしたその美しさに、まどかは思わず息を呑んだ。

 

「……私が貴女を相手取るのに、一人で来ると思う?」

 

 ほむらの落ちた声に、さやかの眉が吊り上がる。

 

「ああ、あの黒い女の人? あの人連れてくるのはずるいよ」

「……キャスターは使わない。それに、この学校には、私以外にも参加者がいるのよ」

「参加者?」

「……聖杯戦争の?」

 

 まどかが呟くのと同時に、その足音が人のいない廊下に響く。

 さやかの背後から、新たな人物が姿を現したのだ。

 

「確かアンタは……」

「隣のクラスの柏木さん、だよね?」

 

 まどかがさやかの言葉を引き継ぐ。

 三人と同じく、見滝原中学の制服を纏った彼女。黒いボブカットに切りそろえた髪を揺らす彼女、柏木鈴音(かしわぎレイン)の特徴は、その左目のほくろだろう。半年前の同級生が引き起こした事件の時は欠席していた彼女は、静かにさやかを凝視していた。

 

「……暁美さんから、おおよその事情は聞いています」

「へえ……サーヴァントを呼ばずに、同級生を頼るんだ。あたしも舐められたもんだね」

「暁美さんのサーヴァントは、何をするにも規模が大きすぎますから」

「……アンタも参加者だったんだ」

 

 さやかは冷たい目を鈴音へ向けた。

 そのまま、さやかが正面から鈴音へ向き直ろうとすると。

 

「動かないで」

 

 冷たい声が、廊下を支配した。

 まどかの位置からだと、それまでほむらとさやかが壁になって見えなかった。

 いつの間にか、見知らぬ女性が、腕にある砲台をさやかの背中に突き付けている。

 長い金髪と長身長。まどかにとっては、憧れの眼差しでしか見れない女性が、さやかへ殺意を向けていた。

 

「少しでも変な動きをしたら、撃つわ」

「おお、怖い怖い」

 

 にやりと笑みを浮かべるさやか。

 すると、彼女の顔に変化が現れる。

 彼女の顔に、うっすらと浮かび上がる紋様。吹奏楽器のベル部分が並んでいるようなデザインの顔が重なる。

 

「さやかちゃん……!」

 

 夢ではなかった。夢であってほしかった。

 まどかが軟体生物を思わせる怪物に襲われた時、さやかが見せたその姿。あの人魚を思わせる異形へ、さやかが変身したのだ。

 それは。

 

「ファントムに……どうして、さやかちゃんが……?」

「また? どうしてってそりゃ当然、絶望したからだけど?」

 

 あまりにもけろっと答えるさやかに、まどかは一瞬言葉を失う。

 親友と絶望。二つの、全く遠いワードを結び付ける要素。

 まどかがその答えを連想させるのに、時間はかからなかった。

 

「上条君……?」

「上条恭介が亡くなったのは去年の十一月よね……? 五か月前からファントムに?」

「そもそも……あたしがこうなったのも、恭介が死んだのも、アンタ達参加者のせいでしょ?」

 

 その声は、本当にさやかのものだったのか。

 彼女の手に、青い雫が発生する。それは、一粒が無数となり、縦長の水柱となる。一度さやかがその水滴を振り切ると、それは鋭く長いレイピアとなる。

 

「「っ!」」

 

 さやかの体から敵意。それは、まどかさえも感じられた。

 さやかを左右にはさむほむらとリゲルは、それぞれ飛び退く。

 まどかを抱きかかえたほむらの跳躍。それぞれ着地すると同時に、さやかの体が発生した渦に包まれていく。

 

「ひっどいもんだよ、ファントムの体って」

 

 渦が消え、現れたファントム、マーメイド。

 先述した金管楽器が並んだような頭部。青いマント。そして名前の通り、人魚のような足。細く綺麗な腕は、動くたびにしなり、流れる水を連想させる。

 マーメイドは指揮棒のようなレイピアを持ち上げながら続ける。

 

味覚(・・)も嗅覚もないし、視界の色も若干薄く見える。特に鮮やかになるのは、誰かが絶望を感じた時だけ。普通に生きているだけでも、気が狂いそうになるよ?」

「っ!」

 

 リゲルが発砲。

 彼女の砲台から放たれたのは、銃弾ではなく青い光線。

 それに対して、マーメイドはレイピアを振る。その剣先に水が迸り、正面からリゲルの光線を打ち弾いた。

 マーメイドはそのまま静かに着地。だが、地面につま先が触れた途端、彼女の体は変化する。

 固体から、液体へ。

 床に潜った(・・・)

 

「何……!?」

 

 驚くほむら。

 徐々に廊下の中に沁み込んでいくマーメイドは、その最中であっても言葉を止めない。

 

「アンタ達の身勝手な戦いのせいで、あたしはこんな化け物にされた。ねえ、哀れじゃない? それともアンタ達にとっては、あたしなんかどうでもいいんだね……そりゃ、自分の願いのために他人を蹴落とすんだもんね」

「「……!」」

 

 マーメイドが言い終わるのと、その全身が完全に液体になるのは同時だった。

 強張った顔を浮かべるほむらと鈴音。

 対してリゲルは、その両目にゴーグルを装着し、マーメイドが消えた足元を観測していた。

 

「暁美ほむら! 後ろよ!」

「! まどか!」

 

 ほむらの背後には、動いていないまどかがそのままいた。

 その言葉が正しいというように、まどかはすぐ背後で動く気配を感じた。

 

「まどかァ……まどかは、今でもあたしを友達だって認めてくれるかな?」

 

 髪から水を流しながら、ゆっくりと起き上がっていくさやか。目を大きく見開き、さらに高く吊り上げた表情に、まどかは一瞬、さやかから後ずさりしてしまった。

 

「……ねえ? 何、その顔」

「え?」

「もしかして、怖いの? あたしがさ」

「!」

 

 その言葉に、まどかは開いた口が塞がらなかった。

 そして、自らが拒絶を示す手をさやかへ伸ばしていたことに気付き、慌てて手を引っ込める。

 その手を見下ろしながら、さやかは俯く。彼女の顔を通り、顎から落ちていく水滴。

 決してその目は通らないその水は、地面に落ちては即座に蒸発していく。

 

「そっか……人間じゃないあたしは、怖いんだ……」

「そんなこと……」

 

 それを否定しようとするまどか。

 だが、それ以上の言葉が紡がれるよりも先に、彼女のレイピアが首元へ突き刺さる。

 

「ヒッ……!」

「じゃあさ。あたしと同じになってみなよ」

 

 さやかの顔が、前髪に覆われて見えない。

 ほむらも、リゲルも、斜線上にまどかがいる以上、下手な手出しはできない。さやかの一挙手一投足を、固唾を飲んで見守っていた。

 

「そんな顔したって認めたくないならさ、絶望して、あたしと同じファントムになってよ……! 友達が怪物になったって絶望してよ!」

「……!」

 

 叫んださやかは、やがて静かに体を起こす。

 

「無理だよね……当然だよね。あたしは所詮、アンタにとってはそれくらいの存在だもんね!」

「ちが……」

 

 まどかは、反射的にさやかへ足を動かす。だが、そんなまどかの腕を、ほむらが掴んで止めた。

 さやかは、その体を再び液体に変えていく。ビチャビチャと水音を立てながら、その体を溶かしていく。

 

「さやかちゃん……」

「まどか……あたしたち……もう、友達やめよう」

 

 さやかはそう言い残し、コンクリートの廊下の中に消えていった。

 しばらくそれを見つめていたリゲルは、ゴーグルに手を当てながら告げる。

 

「反応なし……彼女はもう、この学校からは離脱したようね」

 

 その声が、しばらくまどかの耳から離れなかった。




真司「お疲れ様でしたー」
真司「さってと。今日はまかないのおかげで昼の腹も膨れたし、今夜は友奈ちゃんに食わせるものだけでいいかな」
真司「お?」
怪人「我は秘密結社アガスティアの怪人! この世界は、我々の物だ!」
真司「な、何だあれ!?」
白衣の女性「フッフッフ……今回は、いつもヒーローたちに邪魔されていない見滝原へわざわざ足を運んできたのよ! この街を拠点に、新しい土台を作り上げるのよ!」
真司「世界征服!? そんなことはさせないぜ! 変身!」
龍騎「っしゃあ!」
白衣の女性「何あれ!? まさか、この街にもヒーローがいたの!?」
怪人「邪魔はさせねえぜ!」
龍騎「くっ! この!」
ビシッバシッ\ソードベント/\アドベント/
怪人「ぐあっ……!」
白衣の女性「な、なんてこと……我がアガスティアの怪人が、こんな見知らぬヒーローに……!?」
龍騎「怪人は許さねえぜ!」\ファイナルベント/
龍騎「はああ……だあああああああ!」
怪人「ぎゃああああああああああああ!」
白衣の女性「そ、そんな……」
龍騎「お前たちの好きにはさせないぜ!」
白衣の女性「フッ……いいわ。なら、高々に宣言させてもらうわ! あなたを、私達の宿敵として認めさせてやるわよ!」バサッ



___いつも BA-RI-BA-RI-BA-RI 立ち向かって そうGI-RI-GI-RI-GI-RI-食いしばって 君は”絶対諦めない”それがチカラさ 大切なSpecial force___



白衣の女性「アガスティア所属、怪人開発部の黒井津よ!」
龍騎「アガスティア……!?」
黒井津「2022年の1月から4月、全国放送されてたわね……普段の主な敵は剣神ブレイダーだけど、正直企業あるあるのことが悪の組織でも同じことをやってる印象が強かったけど……」
龍騎「あ、悪の組織も大変なんだな……」
黒井津「他にも、全国あちこちで、悪の組織とご当地ヒーローが戦っている世界観よ……って、何言わせんのよ!」
龍騎「そっちが勝手に言ったんだろ!」
黒井津「顔は覚えたわ! 覚えてなさい!」ε≡≡ヘ( ´Д`)ノ
龍騎「あ! 逃げやがった!」

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