Fate/WizarDragonknight   作:カラス レヴィナ

314 / 393
冬への逆行

「行くよ……!」

 

 ウィザードは、銀の銃剣を構える。ウィザードライバーと同じく、手のオブジェが開く。

 

『キャモナシューティングシェイクハンド キャモナシューティングシェイクハンド』

 

 歌い出す銀の銃剣、ウィザーソードガン。即座に指輪を当てることで、魔法がウィザーソードガンに適用される。

 

『コピー プリーズ』

 

 魔力により複製されるウィザーソードガン。

 二本のウィザーソードガンを駆使し、ウィザードはグールたちの軍勢へ切り裂いていく。次々に火花を散らしながら、グールたちは次々に倒れていく。

 

「ちぃ……だったら!」

 

 アルゴスはその無数の目を光らせる。

 すると、その体から目が飛び出す。それらは素早い動きでウィザードの剣先を翻弄し、その中から紫の光線が放たれる。

 

「ぐっ……!」

 

 背中から散る火花。怯んだウィザードは、振り向きざまにウィザーソードガンを大きく振るう。

 斬撃が赤い軌跡を描き、その道中にあった目を一気に破壊する。さらに、ウィザーソードガンをガンモードに切り替え、次々に撃ち落していく。

 

「だが、まだグールはいくらでもいる……やれ!」

 

 アルゴスが宣言した通り、グールはいくらでも出てくる。次々に現れてはウィザードへ駆け込んでくる。

 ウィザーソードガンを下ろしたウィザードは、腕を左右に大きく広げる。

 

「はああ……っ!」

 

 円を描くように腕を回転させると、紅のローブのところより炎が迸る。それはそのまま、ウィザーソードガンへ注がれていく。するとウィザーソードガンの刃は、深紅の炎に満たされていく。

 

「だあああっ!」

 

 大きく振り降ろされる刃。

 するとそれは、二重の弧を描き、全てのグールを切り裂き、爆発させる。

 

「すごいなこれ……今までのスラッシュストライクくらいの威力じゃないか?」

 

 ウィザードはそう言いながら、ウィザーソードガンを見下ろした。

 だが、アルゴスもまた剣を構え、ウィザードへ斬りかかってきた。

 ウィザードはアルゴスの剣を受け流し、逆に二本の刃を交差させる。火花が散り、アルゴスは大きく後退していく。

 再びウィザードは、両手を大きく広げる。

 再び深紅のローブに、炎の魔力が宿る。

 今度はウィザーソードガンの刀身に集中していく魔力。

 斬撃の一つ一つに炎の残滓が残るほどの威力となるそれは、アルゴスやその援護として繰り出してきた眼球を斬り落としていく。

 

「正面では敵わない……!」

 

 アルゴスの判断は早い。

 彼はウィザードとの直接戦闘を諦め、すぐさま残ったグールたちへ号令を下す。

 

「グール共! 奴は無視しろ! とにかくゲートを絶望させろ!」

「えっ」

 

 アルゴスの声に従い、グールたちが一斉にウィザードから離れていく。

 彼らの目先は、まだ避難がなされていない地区。まだ脅威に晒されていない人々が、グールの姿を見るや否や逃げ出している。

 

「こっちに集中してよ!」

 

 ウィザードは大きくジャンプし、グールたちの前に飛び出る。振り向きざまに赤い斬撃で、数体のグールを爆発させた。

 

「こうなったら、新しい指輪の出番かな」

 

 ウィザードはそう言って、これまで指を通したことのない指輪を手にする。

 

『ルパッチマジックタッチゴー ルパッチマジックタッチゴー』

 

 ウィザードライバーが操作され、その手の向きが入れ替わる。

 魔法の発動条件である魔術詠唱がなされ、ウィザードが掲げた指輪の魔法が発動する。

 

『エキサイト プリーズ』

 

 新しく作り上げた魔法。

 魔法陣がウィザードの全身を覆い、その効力が発動する。

 魔力でみなぎるウィザードの体。それは、真逆の性質である筋肉によって作り変えられていく。

 果たしてそこには、上半身のみが巨大化したウィザードがいた。逆三角形のマッスルボディを誇る、強烈なインパクトを放つウィザードが。

 

「ええっと……こういうときは、こういうポーズすればいいのかな?」

 

 うろ覚えのサイドチェストを披露し、拳を固めてグールたちを叩き潰す。

 魔法(物理)の力が、次々とグールたちを拳の染みにしていく。ウィザードの張り手が、文字通り数体のグールたちをペラペラに押しつぶしていく。

 

「は……はは。凄いな、これ」

 

 魔力の効果が切れた。

 本来の姿のウィザードなのに、少し寂しく思える。

 折角最近強くなったのになあ、とウィザードは自らの赤いローブを振る。

 

「さて……最後はお前だけかな」

 

 ファントム、アルゴス。

 もう、先回りしてゲートを狙うことは難しいと認めたのだろう。そのすべての目が、ウィザードを向いている。

 

「さて……どの魔法で行こうか?」

 

 新たな指輪へ手を伸ばそうとしたとき、ウィザードはその手を止めた。

 

「え?」

 

 おかしい。

 そう感じたのは、ウィザードだけではないようだ。

 アルゴスも、たちまちに色を変えていく周囲に目を見張る。

 

「何だ? いきなり、冬に逆戻りしたのか?」

 

 そうとしか思えない。

 五月の大型連休も終わったというのに、体が震えを覚えるような気温になっていたのだ。

 やがて、寒さの象徴たるものが、視界に飛び込んでくる。

 

「……雪?」

 

 白く儚い気象現象に、ウィザードは思わず手を伸ばした。

 手のひらの一点を白く染め、瞬く間に溶けていくそれ。

 溶けていく雪の結晶を胸元に引き下ろすと同時に、今度は世界が白く染まり出す。

 足元が徐々に色を変え、温かい色を書き換えていく。木組みの街の花々しい世界が、一瞬で氷のオブジェに生まれ変わっていく。

 

「これは……!?」

「騒がしいな……」

 

 そして響く、低い女性の声。

 振り向けば、真っ先に兎のような長い耳が目に入った。

 それを生やすのは、兎ではなく人間。肩まで伸ばした白い髪と、同じく白と灰色の服装は、ローブと呼称していいのか疑問符が浮かぶ服装の女性。ところどころボロボロに擦り切れており、その先端部は擦れなどの汚れも溜まっていた。

 だからこそ、右腕に付けられているオレンジ色のマフラーがとても異彩を放っていた。

 鼻のところに深い切り傷___それは切り傷なのだろうか。カサブタにしては、とても光沢があるように見える___を走らせた彼女は、冷たい目でウィザードを、そしてアルゴスを睨む。

 

「……」

 

 ウィザードは思わず、ウィザーソードガンを下ろす。

 これまでの経験則から、ウィザードは知っている。

 今、この見滝原において、彼女のような目をした人物は、ウィザードと同じく……

 

「何だお前? わざわざ絶望しに来たのか?」

 

 どうやらアルゴスは、彼女の出現と現在の環境変化が結び付いていないらしい。

 手にした剣を女性に向けながら、再生した目がその身より飛び出す。さらに合わせて、魔力が込められた石を女性の周囲に投げつける。

 

「グール共!」

 

 アルゴスの掛け声とともに、魔石がグールへと成長する。それぞれ槍を構え、徐々に距離を詰めてくる。

 だが。

 

「私を絶望させるだと……?」

 

 彼女が言葉を一つ一つ紡ぐごとに、気温が下がっていく。

 

「やってみろ……」

 

 冷たく言い切る女性。

 すると、突如としてグールたちの動きが止まる。

 それぞれの体が氷に閉ざされ、氷像と化している彼らを一体一体一瞥した彼女は、自らの手に息をかける。

 

「ふう……」

 

 すると、その掌から手首に至るまで、氷の塊が生成されていく。

 美しい氷で作られた刃のそれを振るう。すると、藍色の閃光とともに、氷塊となったグールたちが一瞬で粉々に砕け散った。

 

「氷を……操れるのか……!」

 

 だが、彼女の肌は、不健康なまでに白い。

 あの能力は、自らにもダメージが大きいのではないか、と予感する間にも、彼女は走り出す。

 いや、彼女の動きそのものは歩行に過ぎない。だが、彼女が触れる地面が氷を張り、滑りながらウィザードとアルゴスへ接近してくる。

 

「っ! 来る!」

 

 彼女にとっては、ウィザードもファントムも敵であることに変わりない。

 ウィザードとアルゴスの間に入り、その刃で一閃。ウィザードとアルゴスに等しくその胸元を斬りつけた。

 

「ぐっ!」

「この……!」

 

 ウィザードとアルゴスは、共に防御。ともに腕から火花を散らしながらも、ダメージはごくわずか。

 

「ちぃ……魔法使いの次は氷女か! とんだ厄日だな!」

 

 アルゴスはそう叫び、目から光を放つ。

 フラッシュによる目潰しだったが、彼が何かの動きを見せるよりも早く、女性の目の前に氷の壁が生えてくる。

 それは光を霧散させ、その威力をゼロにしていく。

 さらに、氷の壁より真っすぐ氷柱が伸びる。ウィザードとアルゴスを串刺しにしようとするそれに対し、ウィザードは指輪を発動した。

 

『ディフェンド プリーズ』

 

 炎の魔力を込めた防御の魔法。

 すると炎が壁となり、氷柱が接触と同時に蒸発する。アルゴスはそれを利用し、ウィザードの背後で安全を確保している。

 

「……」

 

 じっと炎の壁を見つめる氷結の女性は、静かに手を伸ばす。

 すると、無数の氷弾が彼女の周囲に並び立つ。

 

「……なんじゃありゃ」

 

 ウィザードが思わず声を零す。

 伸ばした手が下ろされるのが合図となり、氷の弾丸が猛烈なスピードとともにウィザードとアルゴスへ降り注いでいく。

 今度はディフェンドの防御だけでは心もとない。そう判断したウィザードは、防壁を解除し、二本の(ウィザーソードガン)で氷の弾丸を斬り落とす。さらに、あふれ出る炎の魔力が、その余波で氷弾を焼き尽くしていく。

 一方のアルゴスも、上空へ無数の眼球を飛ばす。同じく無数の光が発射され、上空の氷と打ち合う。

 

「ぐっ!」

 

 ウィザードは地面を転がり、爆発の余波より離れる。

 同時に、ウィザーソードガンの手を開き、その魔法を発動させた。

 

『キャモナシューティングシェイクハンド キャモナシューティングシェイクハンド』

 

 ウィザーソードガンの詠唱。同時に、ルビーの指輪を押し当てる。

 

『フレイム シューティングストライク』

「はああああっ!」

 

 燃え盛る銃口を上空に向けて発射。

 すると、ドラゴンの形をした炎が銃口より発射される。それは大きく吠えながら、氷の雨を一気に蒸発させていく。

 

『ボー ボー ボー ボー』

 

 さらにウィザードは、ウィザーソードガンを振り下ろす。

 すると、銃口から繋がる炎の竜は、同時に地面へとその身を打ち付ける。

 アルゴスと氷結の女性を巻き込む炎。氷は瞬間的に昇華、アルゴスの眼球も一気に焼け落ちる。

 敵対する二人の動きが鈍っている今こそが勝機。そう判断したウィザードは、すぐに腰のホルスターの指輪を取り外す。

 氷結の女性以上にウィザードが狙うのは、当然。ファントムであるアルゴス。

 

「ちぃ……グール共!」

 

 アルゴスが助けを求めるように魔石を放る。

 そして現れるグールたち。だが、ウィザードへその刃を突き刺すよりも先に、その灰色の体が水色の水晶に閉ざされていく。

 

『チョーイイネ キックストライク サイコー』

 

 その隙に発動した赤い魔法陣。

 ウィザードの足元に、深紅の魔法陣が発生する。その右足に炎の魔力を供給するそれは、氷結の女性が作り出した氷の世界を徐々に融解させていく。

 

「はあああああ……っ!」

 

 ウィザードは腰を大きく落とす。すると、地面に刻まれた魔法陣より、深紅の魔力が右足に注がれていく。

 両足をそろえて跳び上がるウィザード。その身を回転させながら、

 

 ウィザードの動きを横目で見つめながら、彼女は腕を大きく振るう。

 すると、ウィザードを妨害しようとするグールたちが一気に氷像と化していく。

 そしてその中心で凍えているアルゴスへ、ストライクウィザードが炸裂。

 

「ぐああああああああっ!」

 

 悲鳴を上げるアルゴス。

 アルゴスを中心に、引きおこる爆発。それは、氷像と化したグールたちを一気に粉々に消滅させた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。