Fate/WizarDragonknight   作:カラス レヴィナ

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現状
・市役所組
ハルト、コウスケ
・見滝原テック組
真司、リゲル

その他は待機、巨人出現時に対応


残業が終わらない

「おい、待てって! って、ちゃんとそこにいるんだろうな!?」

 

 ハルトは虚空へ叫ぶ。

 市役所の内側。既に市民が入っていいラインは越えており、職員たちが忙しなく動き回っている。彼らを掻い潜りながら、ハルトはひたすらに市役所内を走っていく。

 だが、誰一人として叫ぶハルトに目を向ける者はいない。時折ハルトの声に首を傾げる者はいるが、果たして彼らがハルトの存在に気付くことはない。

 それもそのはず、今のハルトの身長は僅か十センチほど。縮小の魔法で、職員の視界からはデスクを駆使して隠れ続けており、本来一歩の距離を十歩進んでいるのだ。

 一方、ともに市役所に入ったコウスケは透明化の魔法を使っている。肉眼で見えなくなっているのは職員たちだけではなくハルトも含めてなので、ハルトは彼の足音のみを頼りについて行っているのだ。

 だが、それもかなり不安定。彼は時折ハルトを振り向いて「早く来い!」と確認してくれるが、それもいつまでもつだろうか。

 やがて、目の前で歩いている職員が何かにぶつかり転倒した。

 明らかに見えないコウスケが原因だろう。

 

「うわっ!」

 

 さらに都合の悪いことに、それによって職員が持っていた書類の束が空中へ霧散、地面に飛び散ってしまった。

 それはすぐにハルトの前まで滑っていく。

 

「やばい!」

 

 ハルトは慌てて近くのデスクの影に隠れる。目の前まで滑って来た書類を拾い上げた職員の様子から、どうやら小さなハルトの存在は気付かれていない。

 彼はキョロキョロと、何にぶつかったのかを探している。やがてエレベーターの方を見つめているが、コウスケの存在に気付いていることはないだろう。

 

「何やってるんだよ……ぶつかったら余計に怪しまれるだろうに……!」

 

 ハルトはそう言いながら、恐る恐るデスクの影から出てくる。

 まだ職員は書類を回収している最中だ。このままだと、完全にコウスケを見失う可能性がある。

 ハルトが指輪を駆使してどう切り抜けるか考えていると。

 

「これで今日も残業確定じゃないのよ、クソがあああああああああああああ!」

 

 突然の大声に、ハルトは思わず跳びあがった。

 振り向けば、先ほど受付嬢としてカウンターに出ていた女性が、頭を抱えて体を風車のように回転させていた。彼女のロングヘアーも相まって、本当に風車に見えてくる。

 

「もう残業を減らすためだったら、悪魔だろうが魂売ってやろうかあああああ!?」

「先輩ダメですよ、そんな簡単に命摺り減らさないでください!」

 

 宥めているのは後輩だろう。だが、先輩の方は暴走が止まらない。

 

「それもこれもここ最近の変な出来事が一杯あるからよ! 何よ、人食い怪物に虹みたいな怪獣が出てきたと思ったら、今度は巨人? 一体いつから見滝原はこんな魔境になったのよ!」

(すみません……本当にすみません)

 

 ハルトは心の中で謝罪し、残業への苦言をし続けている先輩をしり目に進行方向を見る。

 すでに書類は回収され、職員もどこかに行ってしまっている。

 そしてそれだけ時間が経てば、定期的にこちらを振り返ってくれるコウスケでも、いなくなっても無理はない。

 

「……コウスケのやつ、絶対に先に行ったな」

 

 ハルトは目を細めながら足を急いだ。

 その際、変わらず残業を罵っている先輩を振り返り、ふと思った。

 

「まさか、あの人も参加者じゃないだろうな……残業を減らしたいって願いで」

 

 自分で言いながら、ハルトは「ないない」と首を振った。

 もしそうならば、今までの参加者の中で最も……最も現代的かつ現実的であり得そうではある。

 ハルトは額に手を当て、見なかったことにすることを決めた。

 すでに市長がどこにいるかは、鈴音やリゲルの調べで分かっている。

 ハルトは大きくジャンプし、閉じるエレベーターにギリギリで乗り込む。

 

「何とか間に合った……」

 

 ハルトは息を吐きながら、エレベーターのフロア案内を確認し、最上階のボタンを確認する。

 誰も押されていない。数人エレベーターの中には先客もいるが、誰も彼もがスマホに目を落としており、小人であるハルトの存在に気付く者はいない。

 

『コネクト プリーズ』

 

 ハルトは指輪を発動させ、手の先をエレベーターのボタンに繋げた。小さくなっている分ボタン操作に力が必要だが、少しだけファントムの力を引き出せば簡単にボタンを押すことが出来た。

 やがてエレベーターの中から、ハルト以外の人がいなくなっていく。最上階の市長室がある廊下に着くころには、ハルトは一人だけになっていた。

 エレベーターのドアが開くのと同時に、ハルトは元の大きさに戻る。静かに廊下に踏み出し、「コウスケ?」と呼び掛けた。

 

「コウスケ……いないのかな」

 

 いくら探しても、透明になった相棒の姿はない。

 まさか、市長室の場所を間違えたのではなかろうか。ハルトはそう思いながら、スマホを取り出した。

 

「……圏外……電波暗室かよ」

 

 ハルトはため息を付きながら、とりあえずと廊下を見渡す。

 充分な明かりが灯された廊下。それは、最奥の少し豪華な装飾が施された部屋まで続いている。

 さほど距離はない。

 ハルトは息を呑む。あっという間に市長室までたどり着いたハルトは、市長室をノック。

 すると。

 

「どうぞ」

 

 あの声が。

 キング・ブラッドレイの声が帰って来た。

 

 

 

 ミラーワールド。

 龍騎が生まれた世界では、ライダーバトルが繰り広げられる舞台であり、龍騎にとっては忌むべき世界だった。

 だけどこの世界では、龍騎だけが出入りできるもう一つの世界として、存分に有効活用できるものとなっている。

 

「ところ変われば、だよなあ」

 

 龍騎はそんな感慨深さを感じながら、無人の見滝原テックの階段を登っていく。

 この世界には人間はいない。

 だから、こんな機密だらけの会社の内側を、龍騎は存分に探索できた。

 

「ハッ! これ、前の世界で上手く使えばとくダネ沢山ゲットできたんじゃねえか!?」

 

 龍騎は突然足を止めて叫ぶ。

 頭を抱えて「だああああああ!」と叫び、それを振り切るように突っ走った。

 

「い、いやいやいや! 俺はライダー同士の戦いを止めるために変身してたんだ! そんなことにライダーの力を使っちゃダメだ! 今だって、俺は聖杯戦争を止めるため! そう、これは聖杯戦争を止めるために今龍騎に変身しているんだ!」

 

 そう叫びながら、次々に階段を飛び越えていく。

 あと数フロアでリゲルと合流予定の社長室だ。

 龍騎は改めて「っしゃあ!」と気合を入れ、一歩踏み出す。

 その際、フロア内部を映し出す鏡に、予想外のものが目に飛び込んできた。

 

「あれは……キュゥべえ!?」

 

 白い小動物。

 それを見た途端、龍騎は駆け出した。

 ミラーワールドから現実世界に戻り、その際龍騎の姿は鏡のように割れ、真司に戻る。

 そして目の前では、まさに聖杯戦争の監督役が、若い女性社員と向かい合っていた。

 

「私が……願いを叶えられるの?」

 

 女性社員の問い。

 それに対し、キュゥべえが『ああ』と答えている。

 

『君が生き残れば、万能の願望器である聖杯があらゆる願いを叶える。君の意中の相手など造作もないさ』

「そ、それじゃあ……」

「やめろ!」

 

 真司はそう叫び、女性社員を突き飛ばす。

 彼女は地面を転がり、何が起きたか分からずに目を白黒させている。

 

「おい、逃げろ!」

「な、何ですか!?」

 

 突然現れた男性の部外者に怯えているのだろうが、真司は続ける。

 

「いい? あんな怪しい奴の誘いに乗っちゃダメだ! 何が願いかは知らないけど、自分の力で叶えろよ! アイツの口車に乗っても、ロクな目に合わないぞ!」

「……」

 

 女性社員は怯えながら頷き、そのまま走り去っていく。

 息を吐いた真司は、そのままこのやり取りを見守っていたキュゥべえへ振り返った。

 

「……キュゥべえ……」

『ライダー……君は神出鬼没だね。まさかこんなところに現れるなんて』

「まだ参加者が必要なのかよ! もう、一体何人いるんだ!?」

『僕が管理している参加者は現在五十人ほどだけど、さて何人消えているのかな。モノクマやコエムシの参加者は管轄外だから、総人数は分からないね』

「……」

 

 けろっとした口調で答えたキュゥべえへ、真司は顔を歪ませた。

 

「お前……そんなに増やして、一体何がしたいんだ!」

『君の記憶にあるものと近しいかもしれないね。神崎士郎、というんだっけ』

「……!」

 

 真司はその名前に顔を歪めた。

 

「そういえば、アマダムも唯ちゃんの事とか知ってたな……アイツから聞いていたのか」

『ライダー。僕は君たちが戦いを止めることに反対をする気はない。それなのに、君といいウィザードといい、どうしてライダーは僕を邪魔するのが好きなんだい?』

 

 キュゥべえはそう言いながら、いつの間にかその右耳に指輪を出現させていた。

 指輪がキュゥべえの腰元にかざされる。すると、『ドライバーオン ナウ』の音声とともに、その腰にベルト___まさに、ウィザードのものと同じものが出現した。

 

「あのベルト……! やっぱり、ハルトと同じ……!」

 

 その情報を予め耳に入れてあった真司は、その姿に腰を落とす。

 

『シャバドゥビダッチヘンシーン シャバドゥビダッチヘンシーン』

 

 ウィザードライバーとは近いが、より低い待機音声が流れだした。

 そして、キュゥべえは、やはり真司が予想していた通りの動きでそのプロセスを続ける。

 すなわち、左耳に付けられた指輪の装飾を操作し、ベルト___ワイズドライバーに読み込ませる。

 

『変身』

『チェンジ ナウ』

 

 キュゥべえの指輪から生成される、金色の魔法陣。

 それは、白い妖精の小さな体を包み、作り変えていく。

 四つ足の小動物は、人型に作り変えられ、背も大きくなっていく。

 

「あれが……白い魔法使い……!」

 

 自身の固有名詞を不要と断じたらしい、そのシンプルな名称。

 白い魔法使いは、その金色の面で真司へ促した。

 

「さあ、来たまえ」

『コネクト ナウ』

 

 ウィザードの武器とは違う、長い横笛の形状。

 その先端に付けられた刃から、剣としても使えるものなのだろう。

 

「……ッ! これ以上、参加者を増やすわけにはいかない!」

 

 真司はそう叫びながら、カードデッキを突き出す。

 すると、周囲の鏡はそのカードデッキを認識。鏡の中より、鏡の内側で生成されたベルト、Vバックルがその腰へ飛来する。

 

「変身!」

 

 無数の鏡像により、真司の姿が再び龍騎になる。「っしゃあ!」と気合を入れると、白い魔法使いはハーメルケインの刃先で隣の窓ガラスを指差した。

 

「君のフィールドで戦ってあげよう。ミラーワールドに来たまえ」

「何?」

 

 龍騎が耳を疑っている間にも、白い魔法使いの行動は続く。

 彼がガラスに手を触れると、その姿は一瞬でその反面世界に吸い込まれていた。

 

「……!」

 

 龍騎は驚き、彼が消えていったガラスに駆け付ける。

 確かに、そのガラスには白い魔法使いの姿がこちらを見つめる姿が写っていた。

 

「ミラーワールドにも行き来できるのか……」

 

 龍騎はもう一度気合を入れ、彼の後を追うようにミラーワールドへ飛び込んだ。




可奈美「うーん、ハルトさんたち大丈夫かな」
友奈「結局心配で市役所に入っちゃったね」
響「大丈夫だよ。あ、市役所って結構混んでるんだね」
可奈美「うん。すぐに戻った方がいいかな」
友奈「でも公務員かあ。そういえば可奈美ちゃんも公務員ってことになるんだよね?」
可奈美「うん。刀使は公務員扱いだよ」
響「そういえば私もある意味公務員かも」
友奈「ええっ!? 勇者だけ公務員じゃないのなんか理不尽だよ」
響「うん、将来も安心安定の公務員!」
可奈美「うーん、刀使って将来安定なのかな……? 期間限定なんだけど」
響「ええッ!?」
可奈美「御刀って実は高校生くらいまでしか使えないんだ」
友奈「でも可奈美ちゃん今は休学して見滝原にいるわけだから……あれ? 色んなところが大丈夫?」
可奈美「だ、大丈夫……」
先輩「残業が~♪ 終わらない~♪」
可奈美「な、なんだろう……あれ」
響「あれが悲しき公務員のサガだね……」
友奈「大人って大変なんだね」
可奈美「あの人なんか踊り出しちゃったよ……」
響「OTONAになるって悲しいことなんだね」
可奈美「さ、さあ、将来に悲観するよりも前に今日のアニメ、どうぞ!」



___眠くなったら寝る お昼過ぎに起きる 遊びたくて遊ぶ お腹減ったらご飯を食べる 嬉しかったら笑う 悲しかったら泣いてもいいんじゃない___



可奈美「ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います!」
響「2025年1月から3月まで放送していたアニメだね!」
友奈「まさにあそこのお姉さんみたいに永遠に残業が終わらないことを嘆いた受付嬢のアリナさんが、自分で残業の原因であるダンジョンのモンスターをやっつけちゃうお話だね!」
響「でもこれ、将来のことを気にするくらいなら自分でクエストやった方が儲かったりしないかな?」
可奈美「それ言っちゃダメなやつ!」
友奈「あ、この男の人絶対にアリナちゃんのこと好きだよね! こういうのいいね!」
可奈美「友奈ちゃんそういうの好きなんだね!」
響「でもこういうのやると、OTONAのみなさん、本当に大変だよね……公務員で私達も将来ああなるのかな……」
可奈美「……今度、刀使の将来について調べておこう……」
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