Fate/WizarDragonknight   作:カラス レヴィナ

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現状
・市役所組
ハルト 市長室突入
コウスケ ???
・見滝原テック組
真司 ミラーワールドにて戦闘不能
リゲル 会議室に潜入

その他は待機、巨人出現時に対応


止められた

 キング・ブラッドレイ。

 ほんの一か月前は、大学教授のところに入り浸る見滝原市長だった。

 だが今は。

 今の彼に対する印象は、あの時とは全く違う。

 あくまで可奈美や友奈、真司から聞いた話でしかなく、ハルト自身が直接確認できたわけではないが。

 ホムンクルスであるパピヨンを弟と称し、真司と友奈を下した。そして何より、祭祀礼装___最強の力を持った可奈美さえも切り伏せた。

 今までと同じ顔なのに、対峙するだけで彼からは殺気を感じる。

 

「松菜ハルト君。……突然の来訪とは驚いたな」

 

 キングの口調はあくまで平静。だが、その目付きは、かつて研究室で会った時の穏やかなものではない。

 全てを切り裂くような、鋭い眼光だ。

 ハルトは息を呑みながら、ゆっくりと言葉を絞り出す。

 

「あなたには……聞きたいこともある」

「ふむ……」

 

 キングは顎に手を当てた。

 やがてデスクを回り、ハルトと向き合う。

 

「私は見滝原の市長として色々と忙しいのだが……このところアポなしの来訪が多くて困る」

「教授のこと……ボンドルドのこと、知っていたんですね」

 

 ハルトの言葉に、キングは眉を吊り上げた。

 

「君も知っての通り、彼とは友人同士だが」

「俺が言ってるのはそういうことじゃない!」

 

 ハルトは思わず声を荒げた。

 

「あの人は……非人道的な実験を行っていた……可奈美ちゃんたちが、あなたがパピヨンと親しく話しているのを目撃してる。教授が人造人間(ホムンクルス)を作っていることを、知っていたんじゃないですか?」

「ああ。知っていた」

 

 平然とした態度で、キングは応えた。

 その瞬間、ハルトは自身の表情がさらに強張っていくのを防ぐことが出来なかった。

 

「だったら……! 止められたんじゃないですか……!?」

 

 ハルトの声が大きくなる。だが、一度表立った感情は、もうハルト自身にも抑えが利かない。

 

「結梨ちゃんのこと……パピヨンのことも……! いや、遡れば、見滝原中央病院のことだって……フラダリさんのことだって、あなたは知っていたんじゃないですか!」

 

 ハルトは叫ぶ。

 

「あなたは聖杯戦争のことを知ってるって言ってた……ボンドルドからすでに聞いていたって……! なら、その力を利用している人たちのことだって、街のために止められたんじゃないですか!?」

「フラダリ君のことは個人としては知っていた。が、彼があのような実験をしていたことは知らなんだ」

 

 キングは平然とした口調で答えた。

 ハルトは何て反応すればいいか分からず、叫ぶことも黙ることも出来ず、全身を小刻みに揺らしていた。

 その間にも、キングは続ける。

 

「だが君が知りたいのはそんなことではあるまい?」

「……先日現れた、あの超大型巨人」

 

 負傷した傷跡が疼く。

 ハルトは痛みに耐えながら、リゲルに市役所を調べる理由をそのまま述べた。

 

「あの巨人は、あなたのサーヴァントじゃないんですか……?」

 

 キングは、ハルトの問いには答えない。

 彼はじっとハルトを見つめ、やがてその上着を脱ぎ、その下のシャツのボタンを外す。

 あっという間に、彼の鍛え上げられた筋肉が露わになる。

 そしてキングは、躊躇いなくその胸元の肌を剥ぎ取る。肉体が破れる音と共に、その心臓部が外気に触れた。

 

「!」

 

 ハルトが反応するよりも早く、それは顔を出した。

 それは。

 

「……! 賢者の石……!」

 

 ハルトはそれに似た物を、すでに見たことがある。

 パピヨンが体の核としていた賢者の石。ただ、今キングの胸元にあるそれは、あのときパピヨンが見せたものに比べて二回りほど大きく、その輝きもより鮮明であった。

 

「さきほど君はパピヨンと口にしたね。彼は私の弟。私もまた彼や結梨と同じく、ボンドルドによって生み出されたホムンクルスだ」

「あなたまで……!?」

 

 驚いたものの、心のどこかでハルトはそれを予想していた。

 直接耳にしたわけではないにしろ、パピヨンが……ハルトと何度も戦ったホムンクルスが彼を「兄貴」と呼んでいたのだ。

 キングはじっとハルトを睨み、やがて唸った。

 

「さて。君の質問に答える前に、この後飛んできそうな問いにはこれで答えになりそうだが……改めて、君の質問だね。私があの巨人のマスターではないか……」

 

 キングが答えようとしている。

 ハルトは平静を装いながら、キングの次の言葉を待つ。

 キングはしばらくして、机に手を触れた。すると、カチッと何かが作動する音が響いた。

 きっと、スイッチでも仕組まれていたのだろう。

 キングはそのまま、ハルトをじっと見つめて言った。

 

「君に……いや、君たち参加者に会わせたい者がいる」

「……!」

 

 ハルトの背筋が凍る。

 この局面で、ハルトに……参加者に合わせたい人がいるという発言。

 それはもう、確定ではないか。

 果たして数秒で、ハルトの背後からノックが鳴る。

 ハルトの背後でドアが開く。

 するとドアの向こうから、ビジネススーツを纏った赤毛の女性が姿を現した。

 仮面のような笑顔を浮かべた彼女は、何も言わないままじっとハルトを見つめている。

 数歩後ずさりしたのは、彼女が纏う雰囲気から……そう、恐ろしさを感じたからだ。

 

「この人が……巨人……」

 

 そう決まったわけではない。

 だが少なくとも、キングと彼女の関係は。

 

「お呼びですか?」

 

 瞬きを決してしない目に、体が勝手に震えあがる。

 ファントム___人の道を外れた怪物であるハルトがそれを覚える時点で、彼女が普通の人間ではないことは明白だ。

 キングはそんな彼女を、こう表した。

 

「紹介しよう。私のサーヴァント……ウォッチャーだ」

「よろしく」

 

 何度見ても、それは普通の女性にしか見えない。

 だがその開いたままの目は、少し人間離れしているように見えた。決して瞬きを見せないその目。光のない、ハルトを見ているけれども見ていない、そんな目だ。

 

「アンタ、自分でホムンクルスって言ったばかりだろ……ホムンクルスは参加者になれないって、パピヨンが……」

「君自身、私をホムンクルスだと考えてきたのではないかな。否定でもして欲しかったかね?」

「……っ!」

「まあ(パピヨン)の場合は不可能だろうね。体のベースたる賢者の石が不完全なものだった。だが、私は違う」

 

 キングは脱いだ服を着なおしながら説明を続ける。

 

お父様(ボンドルド)が作り上げた最初にして最高の賢者の石。それはどうやら、今回の聖杯戦争の参加資格を得られるほど完成されたものだったらしい」

「……!」

「さあ、次の時間までの暇つぶしだ。君の相手をしてやろうか」

「……!」

 

 キングがそう告げるのと、ハルトが体を横に反らすのは同時だった。

 ハルトがいた場所を、キングのサーベルが大きく切り裂く。

 赤い目をしたハルトが、極限までに力を入れて初めて追いつける速度。もし、彼が本気であれば、ハルトの体は真っ二つになっていたかもしれない。

 

「くっ……!」

 

 ハルトは大急ぎでホルスターの指輪を取りだす。

 だがこちらに悠長な変身の時間など、与えられるはずがない。

 選んだのは、変身ではなく魔法の指輪。

 

『サンダー プリーズ』

 

 着地と同時に放たれる緑の雷は、そのままキングへ向かう。

 だが。

 

「やっぱりか……」

 

 もとより、これでキングを倒せるとは思っていない。

 だがまさか、普通の剣で簡単に真っ二つにされるとは思っていなかった。

 

「これは……可奈美ちゃんたちを倒した話、本当かもしれないな」

 

 また来る。

 コネクトで即手に入れたウィザーソードガンで剣を防ぎ、そのまま蹴りで返す。

 しかし、ハルトの蹴りは決して屈強な肉体に突き刺さることはなかった。

 

「硬い……!」

 

 だが、あくまでそれは人間として。

 すでに赤い目のハルトは、その体を大きく変貌させていた。

 人間のそれとは大きく違う肉体構造。丸太のように太い手足と、部屋を縦断する大きな翼。

 前に大きく伸びたワニに近い形状の頭部が吠えれば、轟音が鳴り響いた。

 キングの胸に接着し続けている足も、その重量を跳ねあがらせる。

 一気にキングの肉体は吹き飛び、壁に打ち付けた。

 

「ほう……」

 

 感心するキング。

 彼の肉体はあくまで人間と同じものなのだろう。だが、これだけの強さを見せつけられた以上、手加減は出来ない。

 ドラゴンとなったハルトは、体を大きく回転。その大きな尾で、動こうとするキングを打ち付ける。

 

「むっ!」

 

 キングがサーベルで防御するものの、ドラゴンの尾の威力は彼の想定以上の力だったのだろう。

 サーベルは粉々に砕け、キングの体はさらに大きく後退。窓際近くまで引きずられていった。

 

「ほう……」

 

 キングは冷静な声色だ。

 この怪物の姿を見た人間は、今までも___可奈美達を除いたとしても___何人かいる。だが、誰も彼もがこの強靭な姿と力に対抗できていないが、キングはそうはいかない。

 

「それが君のファントムの姿というわけか」

 

 キングの顔には、全く驚きはない。

 平然とドラゴンを睨み、服のしわを整えた。

 

「人は殺せるが、君のような頑丈な化け物だと少し手こずりそうだ」

「……」

 

 平然としたキングへ、ドラゴンは警戒を解かない。

 だが、すぐ背後にいる彼のサーヴァントにも気を配らなくてはならない。

 二人に挟まれながら、ドラゴンはじっと二人の動きを待った。

 そして。

 

「ウォッチャー。彼の相手をしたまえ」

「はい」

 

 その言葉に、ドラゴンはすぐ背後の女性___ウォッチャーを振り向いた。

 彼女の姿勢に全く変化はない。

 目が合い、しばらくしてからようやく臨戦態勢になったようだ。

 ゆっくりと右手を持ち上げ、手で銃の形を作る。

 

「……?」

「バン」

 

 口で紡がれる発砲音。

 何の意味がある、と思った途端、ドラゴンは凄まじい痛みを経験した。

 何と、ドラゴンの大きな右翼に、大きな穴が抉られていた。

 

「な……に……?」

 

 肉体を壊された。

 指鉄砲に打たれた。

 悲鳴にならない声を上げながら、ドラゴンはその場に蹲る。

 

「何をした……?」

「さあ? 何だろうね?」

 

 彼女は笑みを浮かべ、再び指を向ける。

 

「ぐっ!」

 

 ドラゴンは翼を畳んだまま、横方向にジャンプ。

 途端に、ウォッチャーの指が向けられた壁が抉られ、市長室が拡大した。

 

「あまり部屋を壊さないでくれ。修繕費を建て替える言い訳を考えるのも面倒なのでな」

「はいはい」

 

 ウォッチャーはマスターの言葉を流しながら、引き続きドラゴンへ指先を向ける。

 このまま逃げていても埒が明かない。

 ドラゴンは両翼を広げ、一気にウォッチャーへ迫る。

 だが。

 

「蛇」

 

 軽く、言い切られる言葉。

 だが、それが引き起こす現象は比較にならない。

 狭い市長室を埋める、膨大な白い質量。

 巨大な蛇が召喚され、ドラゴンを喰い尽くそうとしていた。

 だが、ドラゴンにも十分に対応する時間は与えられている。

 ドラゴンの背びれが赤く発光し、口内に炎が沸き上がる。

 放たれた熱線により、巨大な蛇は跡形もなく消し飛んで行った。

 だが、蛇の存在はあくまで目くらまし。

 それを予め予測していたドラゴンも、すぐ頭上で日本刀を手にしているウォッチャーの存在に気付いていた。

 

「へえ」

 

 感心した静かな声とともに、彼女は鋭い斬撃を放つ。

 可奈美の剣もかくやと思うようなそれは、ドラゴンが防御として突き出した長い爪を叩き切った。

 

「ぐあっ!」

 

 さらに、彼女は目の前で回転。ドラゴンの腹に平手を押し当てる。

 そして。

 

「どん」

 

 それは、その細腕からは信じられないほどの力だ。

 質量とエネルギーからは想像もつかないような力がドラゴンの腹を貫き、その肉体は地を跳ねて転がっていく。

 

「がはっ……!?」

 

 ドラゴンは口から火が混じった唾を吐き、ウォッチャーを睨み上げる。

 彼女は平然とした表情で直立しており、明らかにこちらの次の動きを待っている。

 

「……遊ばれているな」

 

 彼女は、完全にこちらの動きを待っている。

 ならばと、ドラゴンは指輪を付け替えた。

 

『ドライバーオン プリーズ』

 

 起動するベルト。

 ドラゴンはそのまま、左手に……ちょうど両手とも、先ほど爪を壊されたため、スムーズに指輪を通せた……ルビーの指輪を取り付ける。

 

『シャバドゥビダッチヘンシーン シャバドゥビダッチヘンシーン』

 

 緊迫した雰囲気の中に流れだす、ウィザードライバーの歌声。

 深紅の指輪を付け、即座にそのカバーを下ろす。

 そして。

 

「変身!」

『フレイム ドラゴン』

 

 深紅の魔法陣がドラゴンの体を作り変えていく。

 指輪の魔法使い、仮面ライダーウィザード。

 超大型巨人相手には後れを取ったが、今度はそうはいかない。

 ウォッチャーへ踏み出そうとした。

 その時。

 眩い閃光が、外の世界を埋め尽くした。

 

「な、なんだ!?」

 

 突然の天変地異に、ウィザードは目を疑った。

 大地が揺れ、轟音が全てを支配する。

 見れば、外の見滝原の景色は全く見えない。

 全て、赤いたんぱく質に埋め尽くされていたのだ。

 そして、ようやく理解した。

 今、この見滝原市役所の外に、いるのだ。

 巨大な参加者。

 超大型巨人が。

 ガラスを通じて室内に伝わるほどの熱気が、ウィザードたちを覆っていった。

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