Fate/WizarDragonknight   作:カラス レヴィナ

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現状
・市役所組
ハルト 市長室突入、ウォッチャー戦
コウスケ ???
・見滝原テック組
真司 ミラーワールドにて戦闘不能
リゲル 会議室に潜入

その他は待機、巨人出現時に対応


迷い込んだ

「よし……」

 

 無事、エレベーターに乗れた。

 コウスケは魔法を解除し、その姿を現す。

 

「ハルト、もういいぜ。魔法解けよ」

 

 だが、コウスケの声に返事をする者はいない。

 キョロキョロとエレベーター内の床を見下ろすが、小さくなったハルトの姿は影も形もなかった。

 

「アイツはぐれやがった!」

 

 叫んだコウスケは天井を仰いだ。

 既にエレベーターはコウスケを設定している最上階へ運び終えており、コウスケは仕方なくそのフロアに降り立つ。

 実際のところ、コウスケが乗り込んだエレベーターは市長室がある最上階まで続いてはいなかった。いくら待ってもハルトが来ることはないのだが、そんなことを露知らず、

 

「……仕方ねえ。アイツも後から合流すんだろうし、先にちゃっちゃと片付けておくか」

 

 コウスケはそう言いながら、忍び足で廊下を進む。

 

「っと……市長室市長室……うおっ!?」

 

 足を踏み出した途端、コウスケは思わず咽た。

 足が地面を叩くだけで、凄まじい量の埃が舞い上がって来たのだ。

 

「ゲホッ、ゲホッ! おいおい、しっかり税金取って運営してんだから、掃除くらいしとけよな……」

 

 コウスケはそう言いながら、フロアを見渡す。

 見滝原で最高責任者の一角である市長がいるフロアにしては、少し扱いがぞんざいではないか。そう思いながら、コウスケはフロア案内を探す。

 だが、エレベーター周辺を何度確認してもそんな道しるべはどこにもない。

 

「ちゃちゃっと見つけて終わりって思ったのによお……どうしたもんかねえ」

 

 コウスケは腰に手を当てながらそう呟く。暗い電灯を見ながら、自分が見当はずれなフロアになっていることに徐々に気付き始めた。

 その時。

 

「あの、すみません」

 

 かけられた声に、コウスケは飛び上がる。

 見つかった。

 コウスケは振り返りながら、言い訳を考えるために脳をフル回転させた。

 話しかけてきたのは、色黒の男性職員だった。

 かなり長身で、背の高い方のコウスケよりもまだ高い。落ち着いた声色で、コウスケへ語り掛けている。

 

「市民の方ですか? ここは立ち入り禁止のフロアですよ」

「あ、ああ……悪いな。道間違えちまったみてえだ」

 

 コウスケは頭を掻きながら応える。

 見つかってしまった以上、もうコウスケが動くことはできない。

 ハルトとはぐれたのが幸か不幸か。彼に全てを任せた方がいいだろう。

 諦めて、リゲルたちの小言を聞き入れることにしよう。

 コウスケは観念を覚えながら、「えっと、どこに行けば出られるんだ?」と職員へ尋ねる。

 

「ご案内しますよ」

 

 職員は快く、道の奥へ手を伸ばした。

 どうやら職員側のエレベーターから出てくるところは見られていないようだ。

 コウスケは頭を掻き、「どうもすみません」と進む。

 彼に先導され、通路を歩み、角を曲がる。

 

「こちらの階段を降りれば、非常口に繋がります。今後は立ち入り禁止を跨がないでください」

「す、すいません」

 

 コウスケはまた頭を掻きながら答えた。

 だがコウスケは、この行為をすぐ後悔することになる。

 頭を掻く。その行為は、人間は誰しも利き腕で行う。そして、コウスケの利き腕は右。

 令呪が刻まれている方の腕だ。

 コウスケは職員の前を通り過ぎ、階段を降りようとすると。

 

「動くな」

「……!」

 

 突然後頭部に突き刺さる冷たい感覚に、コウスケは両手を挙げた。

 

「うおっ!?」

 

 それは、獣の力を持つゆえの本能がそうさせたのだろう。

 コウスケが身を屈んだその直上を、銀色の閃が横切っていた。

 

「な、なんだ……?」

 

 コウスケは階段を大きくジャンプし、すぐ下の踊り場で着地する。

 見上げれば、職員が冷めた目でコウスケを見下ろしていた。

 

「その令呪……参加者か」

 

 この瞬間、コウスケの顔付きが変わった。

 不敵な笑みを浮かべ、相手を横目で睨む。

 

「……! いきなりビンゴってことか」

 

 職員は、手にしていた剣を掲げる。

 そう、剣。だが、その刃は可奈美の日本刀に比べると、全く違う形を呈している。言ってしまえば、巨大なカッターナイフが最も近いだろう。

 

「何でわかった?」

「さっき、僕にぶつかっただろ? あの気配を追って来たんだ。気のせいの可能性もあるから、普通に対応してみたけど」

 

 ぶつかった時。

 つまり、透明になっていたコウスケの気配を追いかけてきたということだ。

 

「……中々やるじゃねえか」

 

 コウスケは不敵な笑みを浮かべた。

 

「……君をこの場で始末するのは簡単だけど、まさか一人で乗り込んできたわけじゃないだろう? 情報を吐いてもらおうかな」

「……残念だがそうはいかねえんだよな!」

 

 コウスケはそう言って階段を駆け上がり、飛び蹴りを放つ。

 コウスケの足が職員の剣、その内一本を弾く。同時にフロアへ踊り戻り、ダイスサーベルを手にした。

 

「普通の人間……だよな。その手の物騒なモンが無ければ」

 

 彼は肩を捻り、落とした武器を拾い直す。

 

「やる気かよ……オレは多田コウスケ。マスターだ。お前も参加者なんだろ?」

「そうだよ。僕が隠さないのは、君を帰すつもりがないからっていうのは、分かっているね?」

「ま、そうなるよな……」

 

 コウスケはため息を付く。

 

「フロストノヴァから二連続で当たりを引くとか、運がいいのか悪いのか……少なくとも、参加者だよな……お前がアイツのマスターか?」

「……アイツ?」

「あの……巨人だ」

 

 長身の職員は応えない。

 ただ、じっとコウスケに視線を当てているだけだ。

 そして。

 

「それに応えたら、君は死んでくれるのかい?」

「!」

 

 そのあまりにも物騒な物言いだけで充分だ。

 職員の動きに合わせ、コウスケは体を大きく反らす。腰に手を当て、ダイスサーベルを取り出して防御した。

 大きな金属音が響き、コウスケの背筋が凍る。

 

「コイツ、本気かよ……一般人じゃねえよな……!」

 

 マスターとして、おおよそ一年以上も戦いを続けている。

 彼が纏う殺気も、肌で感じられる程度には熟練している。

 そして、来る。

 男性職員は、日本の薄い刃でコウスケの首を狙って切りかかる。

 ダイスサーベル一本でそれを切り抜けるのは難しい。コウスケはダイスサーベルで一本を、もう一本は身を屈めて回避する。

 

「おらァ!」

 

 コウスケの蹴りは、確実に職員に命中。

 

「ぐっ……!」

 

 見事にみぞおちに入った。男性職員は痛そうに顔を歪めるが、すぐに持ち直し、コウスケの顔を睨む。

 

「……!」

 

 反撃。

 男性職員の腰には、いつの間にかベルト状の装置が固定されていた。その左右の発射口から、細い糸のようなものが発射された。

 それは狭い回廊の壁に打ち込まれる。回避に成功した、と一瞬思ったものの、すぐにガスが噴射される音がコウスケの耳を貫いた。

 

「な、なんだそいつは!?」

 

 コウスケの疑問に答える暇などない。

 腰に着いた装置を起点に、職員は体をコマのように回転させた。

 まったく読めない剣の軌道は、均衡していたコウスケの全身を切り刻み、大きく吹き飛ばす。

 

「ぐあっ!?」

 

 ここが人のいないフロアだったのが幸いした。

 大きな音を立てながら、コウスケの体は壁に打ち付けられていた。

 同時に、彼の斬撃は彼自身の首から下げていたネームプレートを切り落としていた。

 コウスケの前にひらりと落ちる、彼のネームプレート。そこに記された名前を、コウスケはしっかりと記憶した。

 

「ベルトルト・フーバーってのか……!」

 

 全身の切り傷を撫でながら、コウスケは職員を睨む。

 海外の名前だろうか。それとも、こことは別の世界の名前だろうか。

 

「何だよ、あのインチキ機動力……!」

 

 コウスケは唾を吐き、指輪を取りだす。

 

「こりゃ、指輪使っても怒られねえくらいには苦戦しそうだぜ」

 

 選んだ指輪は、猛牛。

 

『バッファ ゴー』

 

 発生した魔法陣が、赤いマントをコウスケに齎す。頭に取り付けられた牛のオブジェが、コウスケの肉体をより強靭なものに変貌させていった。

 

「っらああああああッ!」

 

 その突進は、多少運動能力があろうとも人間に耐えられるものではない。

 無論、強力な装備で埋められるようなものでもない。

 長身の男性職員、ベルトルトを突き飛ばし、彼をフロアの反対側まで吹き飛ばす。

 身構えたままのコウスケは、彼の次の動きに注目する。ゆっくりと起き上がった男性職員は、じっとコウスケを睨み。

 

「強いね」

 

 それまでとは全く想像出来ないような口調だ。

 穏やかに、だけどその目は確かに燃えている。

 彼は刃先をコウスケに向けながらゆっくりと口を開いた。

 

「君は、この世界の戦士なのかな」

「あ? 戦士? フロストノヴァもんなこと言ってたが、その言い回し流行ってるのか?」

 

 コウスケは牛の指輪をダイスサーベルに装填する。

 得物たる武器に内蔵されているサイコロの出目は、2を示した。

 

『2 バッファ セイバーストライク』

 

 二つの紅い猛牛が魔法陣より出現。それは、狭く逃げ場のない廊下の床を埋めながらベルトルトへ迫っていく。

 だが、それこそが彼が付けている装置の本領発揮だろう。左右のワイヤーを天井に打ち付け、その体に作用する重力を逆転させる。

 だが、それこそがコウスケの目論見だ。

 コウスケは大きくジャンプし、天井へ回避したベルトルトへ蹴りを放つ。

 確かにベルトルトは蹴りを受けた。だが、吹き飛ばされる直前、彼の両手はコウスケの足を掴んでいた。

 

「しまっ!」

 

 体勢的に抵抗は許されない。

 コウスケは、彼に引きづられる形で、そのまま市役所の分厚い窓ガラスを突き破ってしまった。

 空中に投げ出されるコウスケとベルトルト。落下の風を受けながら、コウスケはともに落ちていく市役所職員を睨んだ。

 

「お前、何て無茶を……!」

 

 地上から遥か高い高度で、コウスケは叫ぶ。

 だがベルトルトはあのワイヤーを駆使し、徐々に上昇していく。

 

「チッ……!」

『ファルコ ゴー』

 

 ハヤブサのマントで空中を浮遊。

 だがその時。

 決して大声ではない。静かな声だったが、コウスケの頭上から、ベルトルトの声が振って来た。

 

「君は、あの超大型巨人を探しに来たんだよね」

「あ?」

 

 だんだん彼の姿が小さくなり、見えなくなっていく。

 それなのに、彼の言葉だけはハッキリと耳に届いた。

 

「だったら、君の望み通りに……見せてあげるよ。僕の、戦士の力を……!」

 

 太陽に吸い込まれていく彼の姿が、なぜか雷のような閃光が包まれていく。

 そして。

 彼を中心に、大きな爆発が発生した。

 

「うわあああああああああああああああああっ!?」

 

 爆風に煽られ、コウスケの体が無軌道に回転する。何とかファルコマントを持ち直し、

 

 空中から建造物が組み上がっていくかのように、赤い血肉が作り上げられていく。

 大よその形が組み上げられてからこそ、その姿はハッキリした。

 

「超大型巨人……」

 

 ベルトルト・フーバー。

 この長身の男性職員こそが、超大型巨人だったのだ。

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