Fate/WizarDragonknight   作:カラス レヴィナ

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パソコンとWi-Fiが同時に壊れて遅れた……

現状
・市役所組
ハルト 市長室突入、ウォッチャー戦
コウスケ ベルトルト→巨人戦
・見滝原テック組
真司 ミラーワールドにて戦闘不能
リゲル 会議室に潜入

その他は待機、巨人出現時に対応


巨大な拳

 今この瞬間まで、リゲルはあらゆる分析機能をオンにしていた。何か変化があった場合、リゲルの察知能力がそれを逃すはずがない。

 だから。

 

「ジャイアント……!」

 

 本当に唐突に現れた、巨大な人体模型に、リゲルは唇を噛んだ。

 こうなっては、例え人殺しの会議だろうと中断せざるを得ない。

 

「ぬ、ぬおおおおおおおおおおおおおっ!?」

 

 最も窓際の席にいた社長は、大声を上げて机を蹴飛ばした。大きな音を立てた机の隣に倒れ込んだ社長が、外の筋肉でできた怪物を目を見張っている。

 震える指で巨人を指差しながら、怯えた口調で叫んだ。

 

「あ、あの化け物は何だ!?」

「おい、あの怪物、こっちを見てないか!?」

「に、ニュースで出てたやつだ! 逃げた方がいい!」

 

 役員たちは口々に驚愕を露わにしていく。

 彼らにとって、明らかにあの巨大な怪物は予想外の出来事のようだ。いくら報道でその存在が明るみになったとはいえ、対岸の火事とみなせば、現実のものとは思わないだろう。

 リゲルは密かに、そのままマスターである鈴音へ連絡を飛ばす。

 そして、そんな非現実の権化のような巨人がじっと会議室を睨んでいる。その視線に囚われただけで、恐怖のあまり人々は動けなくなっている。

 そして、そんな弱々しい存在に向け、この巨大な肉体は拳を振り上げた。

 そうなってしまえば、次に行われるのは何か。

 報道内容や、ウィザードの体験談が一気にフラッシュバックされる。

 この見滝原テックの建物そのものが、粉々になってしまう。

 だが、その巨大な右腕は、爆発によりその動きを止めた。

 煩わしそうに顔をしかめた超大型巨人は、振り上げた腕を大きく振り回し、何かを叩き落とす。

 それは偶然、会議室の窓を破り中に入ってきていた。

 

「今度は何だ!?」

 

 騒ぎ立てる役員たち。

 むっくりと体を起こした乱入者は、キョロキョロと会議室を見渡す。

 あの人物に見つかるとまずい。

 リゲルは隠れようとしたが、彼の野生の勘とでもいうべき目線が、変装したリゲルを捉えてしまった。

 

「おい、リゲル!」

 

 野生の乱入者は、迷いなくリゲルの名を口にする。この瞬間、潜入作戦が全て泡となった。

 リゲルは頭を抱えるが、その間にもこのコウスケという大学生はお構いなしに駆け寄ってくる。

 

「あの巨人の正体と顔は分かった。あとはこれを、鈴音(れいん)かお前に報告すればいいんだよな」

「あんた少しは周りの状況を見なさいよ……」

 

 リゲルの指摘を受けて、ようやくコウスケは改めて悪い顔付の大人たちに囲まれていることに気付く。

 

「……悪い。取り込み中だったか」

「どこに潜入捜査中の味方に意気揚々と話しかけてくるバカがいるのよ……!」

 

 コウスケに潜入依頼をしたことに後悔の念が滲んできたところで、社長がリゲルを指差す。

 

「き、キサマ……! ウチの社員ではないな……! なら、今の会議を聞かれたのはまずい……!」

「それどころじゃないでしょ! あの巨人、この会議室を狙っているじゃない!」

 

 リゲルは叫ぶ。

 すでに超大型巨人は、拳の第二波を繰り出そうとしていたのだ。

 

「ビースト!」

「変~身!」

『セット オープン』

 

 コウスケはすでに、魔法の指輪を発動している。

 指輪がベルト左右に備え付けられているスロットに差し込まれ、そのギミックを起動させる。ベルト___ビーストドライバーの扉が解錠され、その金色の内部が咆哮を上げた。

 

『L I O N ライオーン』

 

 獣から発せられる金色の魔法陣。コウスケが走る先に出現した金色の魔法陣とともに、彼の姿は古の獣を象りし魔法使い、ビーストに生まれ変わる。

 

「っしゃああああああ!」

 

 ビーストは吠え、勇んで超大型巨人へとかけていく。ファルコマントを装備し、超大型巨人の喉元に食らいつく。

 あの巨体からすれば、大したダメージではないのだろうが、怯ませるには十分だ。攻撃を中止し、超大型巨人は金色の羽虫を掴まえようと躍起になっている。

 リゲルは、サーチ範囲を拡大する。

 出発点である広場では、すでに連れて来た参加者たちが超大型巨人へ臨戦態勢、及びビーストの加勢へ向かっている。

 それぞれが突出した能力者たちだ。彼らが超大型巨人の相手をしてくれているならば、あの怪物も早々こちらに注意を向けることはないだろう。

 こうなった以上、情報を探るという手段はかなぐり捨てた方が有効かもしれない。リゲルは直接社長へ詰め寄り、声を荒げる。

 

「あなた、さっき会社のために誰かを殺すとか言ってたわね? どういうこと? あのサーヴァントのマスターがあなたじゃないの?」

「あわ、あわ、あわ……」

 

 だが、動揺している社長はまともな受け答えが出来ない。

 彼の襟首を掴み、さらに大きな声を上げた。

 

「どうなの!? 答えなさい!」

「な、なにを聞かれているのか分からないんだ!」

「分からない? だったらこの上なくハッキリと聞いていてあげるわよ、さっきの殺人会議はなんなの!?」

「……」

 

 これだけ切羽詰まった状況なのに、社長は即答しない。

 リゲルは右手に剣を出現させ、社長の首元にあてる。すると、甲高い悲鳴を上げた社長は早口で白状した。

 

「わ、我々は、見滝原南の殺し屋集団に依頼しているだけだ!」

「殺し屋に依頼ですって……?」

 

 あまりにもスケールの小さい話に、リゲルの眉がぴくっと揺れる。

 だが、彼が嘘をついていないことは、その脈拍からも明らかだ。リゲルは目を動かし、彼の両手を確認する。その薄汚れた両手には、令呪という刻まれた紋様は存在しない。

 社長は続ける。

 

「本当だ! 業績が上がって来たのは、あくまでこの企業努力が功を奏しただけだ! ウチの財務諸表にも、調査費だったか外交費用だったかで計上しているはずだ!」

「そんなクソみたいな企業努力があってたまるか!」

 

 少し論点とはズレたことを無視し、リゲルは社長を放り投げる。丸々と肥えた肉体はゴロゴロと転がり、会議室の入り口___役員たちが戸惑っているところで止まる。

 

「悪いけど、私が見聞きしているものは全て仲間にリアルタイムで記録させてもらってるわ。後日通報させてもらうから、あなたたちの命運もここまでね」

「な、なぜだ! 貴様、どこかの企業スパイか! なら、我々の味方にならないか? 金ならいくらでも出すぞ!」

 

 今度は買収しようとしてきたか。

 リゲルは呆れながら、その足元に頭を下げる社長の頭を蹴飛ばした。

 

「いらないわよ! 正直、ただの殺し屋への依頼って時点で、私にとってあなたたちはどうでもいいのよ。命だけは見逃してあげるから、とっとと消えなさい!」

 

 リゲルが吐き捨てると、見滝原テック上層部たちは次々に会議室から出ていった。

 見届けたところで、すでに超大型巨人は、その巨大な拳を放ってきていた。

 

「こんな無駄骨で……最悪……」

 

 万一に備え、砲台のチャージは完了している。

 超大型巨人の拳がリゲルに放たれるのと同時に、リゲルは青いエネルギー弾を発射した。

 リゲルの砲撃と、超大型巨人のジャブが激突する。

 この一撃は、即席とはいえ全力に近い物だ。だが、それと巨人のただの拳は同程度の威力。

 

「私一人じゃ、逆立ちしても勝てないわね……これは」

 

 リゲルは少し冷や汗を流しながら断定した。

 やがて、リゲルの反撃は消失。巨人の拳もはね返せたが、すぐさま彼は体勢を立て直す。羽虫のようにビーストや地上の仲間たちを振り払い、左手をリゲルに伸ばした。

 

「しまっ……!」

 

 それはリゲルの体を捕え、会議室___見滝原テックの建物から引きずり出していく。

 

「……くっ!」

 

 凄まじい力で、リゲルの体は少しも動かすことができない。

 巨人はそのまま、リゲルを遥かな高度までリゲルを持ち上げる。このまま、リゲルが地面に叩き落とされれば、青のゼクスといえども命はない。

 だが。

 

「迅位斬!」

「我流・空槌脚ッ!」

「勇者パンチ!」

 

 三つの光が、巨人の左手を穿つ。

 そのダメージは、超大型巨人の手の拘束を解き、リゲルを空中へ投げ出させた。

 飛行ユニットを展開させる間もなく、リゲルの手を掴むのは。

 

「リゲルさん!」

「衛藤可奈美……!」

 

 小柄な少女、衛藤可奈美だった。

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