Fate/WizarDragonknight 作:カラス レヴィナ
・市役所組
ハルト 市長室突入、ウォッチャー戦
コウスケ ベルトルト→巨人戦
・見滝原テック組
真司 ミラーワールドにて戦闘不能
リゲル 会議室に潜入中、巨人出現
その他は待機、巨人出現時に対応
「あれは……!」
空を塗りつぶすほどの蒸気に、可奈美は言葉を失った。
果たしてその瞬間を見逃してしまったのだろうか。
晴天に発生した落雷という不自然極まりない現象があったかと思えば、その場所にはもう例の超大型巨人が立っていたのだ。
「い、何時の間に……!?」
隣を見れば、響、友奈、えりかの三人も同じくあんぐりと開いた口が塞がらなくなっている。
果たしてどういう経緯からか、市役所の裏側から、超大型巨人が出現したのだ。
巨人は、何か小さな虫を払うように、手を振るう。
やがて、その手がはたき落としたものが可奈美達の前に落下してきた。
それは。
「コウスケさん!?」
響が前に出て受け止めたのは、古の魔法使い、仮面ライダービースト。
着地しきれなかった彼は、全身をアスファルトに埋め込みながら、ゆっくりと起き上がった。
「お前ら……悪い。あの巨人の中身は会えたんだけどよ、よくわからねえうちに変身しやがった……!」
「どういうことッ!?」
ビーストの姿が、コウスケに戻っていく。
彼のサーヴァントである響も、コウスケへ駆け寄ってきた。
「コウスケさん、ハルトさんと一緒にいたんじゃないの?」
「ああ。はぐれた。で、オレだけ当たり引いたってわけだ」
「二連続一等賞ッ!?」
「こういうところで当たり集中してほしくねえぜ……もっと有意義なところで当たり出してくれよったく……!」
「そんなことより、来るよ!」
友奈の声に、可奈美たちは顔を上げた。
すでに巨人は、地上の可奈美たちへ狙いを定めている。その壁のような拳が、可奈美たちをまとめて押しつぶそうとしてくるが。
「させません!」
そう叫び、可奈美たちの前に立ちはだかるのは盾。
えりかが両腕を広げ、円盤状に盾を展開、巨人の拳を受け止めていた。
「うっ……ああああああああああああああ!」
明らかに全力をもってして、えりかは巨人の拳を受け流した。
ふらついた彼女の体を友奈が受け止める。えりかの盾は頑丈だが、それを支える二人は今にも倒れそうだ。
「友奈ちゃん!」
「手伝うよッ!」
可奈美と響は、それぞれ友奈の背中を支える。
合計四人とえりかのセラフの斥力で、ようやく超大型巨人の拳は反れた。アスファルトを抉った筋肉の塊は、大きな土煙を上げる。
「げほっ、げほっ!」
起き上がりながらせき込むコウスケをしり目に、可奈美たちは巨人を見上げた。
「あれが超大型巨人……!」
「すごい大きさだよ……!」
「一体いつ現れたの?」
次々に疑問を口にしていくが、その間にも超大型巨人は動きが止まらない。
全身から蒸気を噴出しながら、大きな足で踏みつけようとしてきている。
「やべえ……!」
コウスケが再び変身しようと指輪を取り出すが、それよりも早く、巨人の前に氷の壁が浮かび上がった。
「えっ」
「凍てつけ……!」
可奈美たちの意識を現実に引き戻したのは、短く叫んだフロストノヴァの声だった。
彼女が右腕を高く突き出すと、巨人の全身が氷に包まれていく。
突然の冷気を受け、巨人は驚いたように動きを鈍化させる。
だが、巨人の動きは決して止まるわけではない。
氷の中でも蒸気を放出し続け、瞬時に氷が融解していく。
「……っ!」
フロストノヴァは唇を噛みながら、左手もかざす。
すると、晴れた空に吹雪が吹き荒れる。
薄着の可奈美は肌寒さを感じ、巨人の動きが鈍化。
だが。
「_________________________!」
巨人が叫ぶ。
すると、その赤い素肌からはより凄まじい量の蒸気が溢れ出した。それは巨人を包む雪と氷を押し飛ばし、フロストノヴァの抵抗を受け付けないほどの温度に上昇していく。
「くっ……!」
「写シ!」
『Ballwisyall Nescell gungnir tron』
「牛鬼!」
フロストノヴァを助けようと、可奈美達は口々に、各々の力を発動する。
色とりどりな光とともに、その異能の力が顕現する。
白い写シ、黄色のシンフォギア、桃色の勇者。
それぞれの能力者たちは、フロストノヴァの体を飛び越え、巨人の腕へ迫る。
巨人は、その剛腕を見滝原テックの上層階に突っ込んでいた。
何かを掴んだのか、すぐさま内側から何かを引っ張り出している。
「アレは……リゲルさん!」
可奈美の目は、超大型巨人の手の中で呻く金髪の姿を捉えた。
響と友奈と頷き合い、それぞれ拳を固める。
「やあッ!」
「だあああああああああ!」
二人は同時に巨人のふくらはぎに拳を叩きこむ。少しバランスを崩した超大型巨人は、リゲルを握る手を可奈美に近づけた。
可奈美はそのまま、千鳥を振るう。紅の斬撃は数回筋肉の腕を切り裂き、その力を緩めた。
そして。
「迅位斬!」
「我流・空槌脚ッ!」
「勇者パンチ!」
それぞれの攻撃が、巨人の掌に炸裂した。
肉片が爆発し、巨人の掌が開き、その中からリゲルの体が浮かび上がる。
「可奈美ちゃん! わたしを踏み台にして!」
「うん!」
腕を組んだ友奈の腕に乗ってジャンプ。体をきりきりと回転させるリゲルの手を掴んだ可奈美は、そのまま見滝原テックの壁に飛び乗った。
「リゲルさん!」
「衛藤可奈美……!」
驚いた顔のリゲルはそれ以上のことは何も言わない。
可奈美は迅位の速度で、建物の壁を下り降りていく。可奈美の後を追いかけるように、超大型巨人の蒸気が追いかけてくる。
だが、可奈美の速度は人間のそれとは比にならない。音を超えた速度で建物の側面を駆け下り、地上へ着地した。
「リゲルさん、大丈夫!?」
「あ、相変わらずめちゃくちゃな速度ね、あなたは……」
戦っている姿なのにリゲルは可奈美の速度に体が追いつけなかったのか、くらくらと頭を押さえている。
「無事ですか、リゲル」
普段は逃げに徹しているが、さすがに心配になったのだろう。鈴音がリゲルへ駆け寄ってきた。
「まさか、あなたが連絡もなしに直接超大型巨人と接触するとは……」
「私のほうははずれよ。見滝原テックは白。殺し屋に依頼をしていたことを通報すれば、もう用はないわ」
「あ、ああ! それよりオレのが! 巨人の正体に会ったぜ!」
コウスケが叫ぶ。
「見滝原市役所にいた、長身色黒の男だ。名前は確か……そう、ベルトルト・フーバー!」
「市役所……ウィザードの主張が当たりだったのね」
リゲルがそうこぼした途端、巨人が吠える。
「そいつの身元は後でマスターが調べればわかることよ。今はとにかく、ここを切り抜ける。衛藤可奈美」
「うん?」
「行くわよ!」
リゲルはそういうとともに、その体が黒いカードに変化する。それは迷いなく可奈美の手に飛び込んできた。
「あ、うん。行くよ、リゲルさん!」
「可奈美ちゃん、わたしもッ!」
可奈美の隣で、響も意気込む。彼女は両腕を組み、全身に力をみなぎらせていく。
そして。
「イグニッション! オーバーブースト!」
「アマルガムッ!」
リゲル由来の青い光と、響のガングニールの金色の光が放たれる。
それは、それぞれにさらなる力を与えるものだった。
可奈美の体はリゲルの戦闘服を思わせる白いスーツが装着され、左手にはリゲルが使用している放題が握られる。
一方、響きの体には錬金術が作用。ガングニールと呼ばれる聖遺物は、黄金に構成しなおされ、まばゆい光を放つ装甲となる。アマルガムの名を持つそれは、響の追加の両腕となり、彼女の背中からその存在感を放っていた。
二人の変化には、さすがに巨人も戸惑っているようだ。体を大きく暴れさせることを止め、じっと可奈美と響の様子をうかがっている。
「二人の変化に対して警戒してますね。人間としての意識はしっかりあるということですね」
えりかの分析を受けながら、可奈美は千鳥を身構える。
「えりか、お前は鈴音を守っててくれ」
「はい!」
ビーストの指示に従い、えりかは鈴音とともに離れていく。
可奈美は彼女たちを横目で見送りながら、リゲルの砲台を発射させた。
青い光線は巨人の腕に弾かれ消失するが、その隙に可奈美、響、友奈の三人は接近する。
その中でもとりわけ最速の可奈美は、砲撃を発射しながら、一気に巨人の頭上まで上昇した。
「うおおおおおおおおおおおおっ!」
何度も巨人の巨体を切りつけ、砲撃で追加のダメージ。遅れて響と友奈の拳も炸裂し、巨人の移動も下半身を氷漬けにするフロストノヴァによって防がれている。
「よし! いける!」
『油断しないで!』
「もちろん! 迅位斬!」
可奈美の紅の斬撃は飛翔し、超大型巨人の肩を切り裂く。
だが、リゲルの力を合わせたこれでも、さほど巨人には大きなダメージはない。それでも、響や友奈の存在もあり、巨人には確実に負担が蓄積されているはずだ。
このまま行けば、拘束できるかもしれない。
そう思った矢先。
可奈美は、巨人の抵抗から回避する際、隣の見滝原区役所と向かい合う形となった。
リゲルと一つになったことで、彼女の飛行能力も引き継いでいる。だから、頭を地面に向ける形で落下しても、すぐに平然とバランスを戻すことだってできる。
だが、見てしまった。
見滝原市役所の最上階。その窓ガラスからこちらを見ている、
キング・ブラッドレイの姿を。
そして、間違いなく彼と目が合った。
その力強い目力に捉われた途端、可奈美の全身が震え上がった。
『衛藤可奈美? どうしたの、衛藤可奈美!?』
頭に響くリゲルの声。
だが、可奈美は反応できない。
すでに脳内は、あの時の___キング・ブラッドレイによって、全身を切り刻まれたときの痛みが、恐怖が支配していた。
写シが解除され、リゲルの力も発揮できず、可奈美の体は重力によって落下の一途をたどる。
「可奈美ちゃん!」
「えええッ!? 可奈美ちゃんッ!?」
「何してんだ可奈美!?」
「……!」
仲間たちが可奈美を救出しようとするが、それは巨人の腕が阻む。響の巨大な拳を平手で跳ね返し、友奈のジャンプを蒸気で吹き飛ばし、ビーストのカメレオンの舌を突き出させた瓦礫で軌道を変え、フロストノヴァの氷を暴れて破壊する。
『衛藤可奈美! ……仕方ない!』
可奈美との融合を解除し、リゲルは可奈美を抱き寄せる。
そのまま、彼女自身の飛行能力で一時離脱、鈴音とえりかが待つ場所に転がり降りた。
「衛藤可奈美! どうしたというの!?」
リゲルが顔を近づける。
彼女も、えりかも鈴音も驚いているだろう。
今の可奈美の表情を。
ひきつった顔で、ずっと震えている可奈美の顔を。
すでに、千鳥から写シの能力は消失してしまっている。
「う、動かない……っ!」
「やっぱりまだ戦えなかったというの……?」
「衛藤さん、立てますか?」
えりかに助け起こされ、ようやく可奈美は頷く動作ができた。彼女から拾い上げた千鳥を受け取り、可奈美はもう一度「写シ!」ととなる。
だが、千鳥は物言わぬ日本刀となり、何も答えない。可奈美は顔を蒼白にして、目を見開く。
「写シ! 写シ! 写シ! なんで……なんで!?」
いつもと同じように、御刀の力を引き出そうとする。だが、この愛刀は異能の力などないかのように、冷たく可奈美を見つめていた。
「可奈美ちゃん!」
地面に降りた友奈も、可奈美の身を案じてきた。
「どうしたの? なんか、写シじゃなくなってるけど……」
「衛藤可奈美が戦えなくなってる」
「ええっ!?」
友奈は口をあんぐりと開いた。
「戦えないって……やっぱりまだ治ってなかったんだ……可奈美ちゃん、ここは鈴音ちゃんのところに……」
「可奈美ちゃん友奈ちゃん危ないッ!」
途端に、響の声が頭上より届いた。
見れば、黄金の拳をかいくぐり、巨人の拳が降ってきていたのだ。
「いけない!」
駆け出したえりかが、前に立って盾を展開。だが先ほどと違い、えりか一人で耐えられるほどのものではなかった。
盾を弾き飛ばし、少し軌道を反らしたのみで、その落下地点は可奈美たちの目と鼻の先。
地面から打ち上げられた土砂やアスファルトが激流となり、可奈美たちを吹き飛ばしていく。
「ぐあっ!」
「うっ……」
可奈美、友奈、えりか、リゲル。
四人の参加者は負傷とともに、地面に転がった。
さらに、巨人は倒れた四人を踏みつぶそうとしてくる。その足裏を目撃した途端、可奈美の全身から力が抜けてしまった。
そして。
『ハイパー ゴー』
青と金の光が、可奈美の司会を埋め尽くしていく。
いつの間にか地面に降り立ったのか、ビーストが見たことのない姿___ビーストパーというらしい___に変身している。その手に持った銃に太陽のような光を凝縮させながら、滑るように巨人の足の先に割いる。
「食らいやがれええええええええええええ!」
『ハイパー マグナムストライク』
獣の幻影が吠え、ビーストの体に吸収されていく。
その銃口から放たれた巨大な獣は、咆哮だけで巨人の蒸気をかき消していく。
そのまま、獣は銃弾となって超大型巨人へ迫る。それは、巨人の巨体を足ごと大きく吹き飛ばし、地面に投げつけたのだ。
「うっしゃあ! もう一発!」
ビーストは指輪を___あの指輪は、可奈美が見たことないものだ___銃に嵌めなおす。
「結構魔力持っていかれるからな……これで終わってくれ!」
『ハイパー マグナムストライク』
再び放たれる銃撃。
それは、ダメージでのけぞっている巨人へ追撃として放たれる。
そして、巨人に命中して爆発。
その膨大な爆煙が、この広場を埋め尽くしていく。
それは、可奈美たちの目から、___降り立った響を含めて___超大型巨人を完全に隠してしまった。
そして煙が晴れたころ、巨人の姿はどこにもなかった。
「やっては……ねえよな」
虚空の中で、ビーストのその声だけがむなしく響いていた。