Fate/WizarDragonknight 作:カラス レヴィナ
ともに見滝原へ戻ろうとするが、その時ガイガンが襲い掛かってきた
「松菜さん!」
えりかの声で、ハルトは我に返る。
すでにガイガンの凶器が、目の前に迫っていた。
「っ!」
ハルトは赤い目でバク転、体を切り裂こうとする大鎌の根本を蹴りつけ、大きく距離を取った。転がる勢いで直立し、緑の怪物を睨む。
「後だ後……! 今はあいつを何とかしないと……!」
ハルトは頭を振る。だが怪物、ガイガンはハルトが回復するのを待ってはくれない。
何の恨みがあるのか、その鋭い鎌でハルトに斬りかかってきた。
「っ!」
ハルトたちは飛びのき、大鎌が空を切る音を目の前で感じる。人間だったら間違いなく真っ二つになるに違いない。
さらにガイガンは、ハルトへの攻撃の手を緩めることはない。目からの光線、鎌と、多種多様な殺意が攻撃となってハルトを狙う。
「なんだかわからないけど、やるしかない……!」
ハルトは脅威を感じながら、再び迫る大鎌に対し、ウィザーソードガンで応戦する。
一方、えりかもスマホを取り出し、掲げた。
「どうか安寧な記憶を!」
頭上に発生した空間の穴。そこから出現する
「ありがとう!」
この隙はありがたい。
ハルトはウィザーソードガンを回転させ、ガイガンの胴体に突き刺した。
火花が散り、ガイガンが大きく後ずさる。
今ならば、余裕が持てる。
ハルトは右手の指輪を即座に腰のベルトに指輪を押し当てる。
ドライバーオンの指輪により造り上げられる銀のベルト、ウィザードライバー。それは陽の光を反射しながら、操作によって起動する。
『シャバドゥビダッチヘンシーン シャバドゥビダッチヘンシーン』
廃墟の街を駆け巡る魔術詠唱。
ハルトはホルスターから指輪を___
その刹那、ガイガンの目が赤く光る。
痛みを感じていないのだろうか。ガイガンの反撃は、ハルトの体に命中。赤い光線に焼き尽くされ、ハルトは大きく弾き飛ばされてしまった。
「ぐあっ!」
そして、タイミングの悪いことに、まだハルトは指輪をつまみ上げた直後だ。主力たるルビーの指輪は、瓦礫の中へ消えていってしまった。
「しまった……!」
だが、回収する時間をわざわざガイガンが与えてくれるはずがない。
目前に迫った緑の怪物は、大きな足でハルトを踏みつけてくる。
慌ててハルトはウィザーソードガンを盾にしてガイガンの重量を支えた。
怪物の力量は、人間が太刀打ちできるものではない。ファントムの力を腕に込めていなければ、そのまま体が拉げていただろう。
「松菜さん!」
その時、助け船を出してくれたのはえりか。
彼女のセラフが鋸のように回転しながら、ガイガンを横殴りにする。眼中に入れていなかった相手からの攻撃に、ガイガンはさすがによろけ、ハルトから離れた。
「ありがとう、えりかちゃん!」
ハルトは起き上がり、ルビーの代わりの指輪をホルスターから取り出す。
詠唱が続いていたベルトへ、即座に指輪を押し当てた。
「変身!」
『ランド ドラゴン』
生成される琥珀の魔法陣。足元から徐々に頭上まで上っていき、その姿が変わっていく。
『ダンデンズンドゴーン ダンデンズンドゴーン』
土砂を纏ったドラゴンの幻影が纏われ、変身が完了する。
大地の力を秘めたウィザード、ランドドラゴン。魔力、速度を落とした代わりに、物理能力を極限まで高めた形態である。
ウィザードへの変身が完了すると同時に、ガイガンがえりかを鎌で殴り飛ばしていた。
「えりかちゃん! この……!」
ウィザードはすぐに、ドラゴンの力を内包した指輪を手にした。
『チョーイイネ スペシャル サイコー』
ガイガンの両腕が鎌ならば、こちらは鉤爪。
両腕に装着された鉤爪は、ガイガンが振り下ろした大鎌に抵抗し、大きな火花を散らした。
「ぐっ……!」
力自慢の地のウィザードでさえ、ガイガンの力量に圧されえてしまう。ひざを折り、それでも
ガイガンは、口を開いて声を発する。ガイガンの心境は分からないが、明らかにウィザードを追い詰めていることに快感を覚えている。
その時。
「
狂三が宣言すると、彼女の背後に巨大な時計板が現れる。
時計が刺す時刻から、彼女の銃にエネルギーが注がれていく。
そしてその銃口は、まっすぐにガイガンへ向けられた。
目の前の相手より、妨害の方が面倒だと判断したのだろう。ガイガンはウィザードを蹴り飛ばして飛翔。狂三の銃弾は、瓦礫を打ち砕いた。
「動物のくせに、意外と視野は狭くないのですね」
舌打ちをした狂三を飛び越え、ガイガンは空中でその赤い目を光らせた。
「させません!」
それに対し、えりかが両腕を掲げた。
彼女の盾が、大きく広がる。六つの機械の間に広がる見えない盾が、赤い光線をすべてはじき返していった。
「さっきもいいましたが、アレはなんですの? ウィザードを執拗に狙っているように見えますが」
「俺あんなのに恨みを買った覚えはないんだけどな」
「名前は言えたのに?」
「……」
狂三の言葉に、ウィザードは口を噤んでしまう。
「協力を申し出るのなら、隠し事は感心しませんわ」
「本当に心当たりなんてないんだ。あんな怪物、見たこともない」
ウィザードの仮面越しに訴えるが、果たして狂三にはどう伝わっているのだろうか。
その間にも、接近してきたガイガンはえりかの盾を切り飛ばし、ウィザードに狙いを定めてくる。
本当に恨みでも買ったのか。そんなことを考えながら、ウィザードはガイガンの鎌を受け止めた。
「ぐっ……!」
「シールドレイ!」
だが、ガイガンの背後から、えりかの盾が再び円を作り、光線を放つ。
ガイガンの背中に、小さな爆発が生成される。すると、怪物の体は大きく怯み、その隙にウィザードは鎌の射程圏から離れることができた。
ウィザードはその隙に、トパーズの指輪をエメラルドに交換する。
『ハリケーン ドラゴン』
そして生成されるのは、翡翠の魔法陣。
ウィザードの頭上に現れたそれは、大きな風を纏いながらゆっくりとウィザードの体を上書きしていった。
『ビュー ビュー ビュービュー ビュービュー』
ハリケーンドラゴン。
風の力を纏ったウィザードは、ウィザーソードガンを逆手に持ち変える。全身からも風を放出させ、先ほどとは別人のような動きでガイガンに切りつけた。
突然の速度に、ガイガンは数歩後ずさる。だがガイガンはすぐさま反撃として、鎌でウィザードへ対抗を示す。
刃と鎌は何度もぶつかり合う。火花が散り、切り結ぶ。
「
再び狂三の宣告がなされた。
横目で見れば、再び狂三の時計板が宿主へ力を注いでいるところだった。銃口を容赦なくガイガンへ___この斜線を考えればウィザードごと___向けた。
だがまたしても、狂三の技はこの怪物にそれは通じない。
ガイガンの赤い目が発光し、光が散弾となって放たれる。
「ベー……ッ!」
今回は間に合わないと判断したのだろう。
狂三は応戦よりも回避を優先し、結果時計板は光によって破壊されてしまった。
「今日は面倒なことばかりおきますわね……!」
「よく言うよ……俺ごと狙おうとしていたくせに」
ウィザードはそう言って、つけたままの指輪をベルトに読み込ませる。二度目に発動したスペシャルの魔法により、風がウィザードの背中で凝縮され翼となる。
さらに機動力を上昇させたウィザードは、そのまま上空へ飛び上がる。
すると、ガイガンもウィザードを追跡するように宙へ浮かび上がってきた。ウィザードとガイガンはそのまま上空で激突を繰り返す。翡翠と緑がぶつかり合うたびに、昼間の空に星が瞬く。
「はああああああああああああ!」
ウィザードは体を回転させる。あたかも風を纏った槍となり、ガイガンへ迫っていく。
その突出力はガイガンにとっても危険視するべきものだったのだろう。初めて防御態勢を取り、ガイガンの体は地面に突き落された。
『ウォーター ドラゴン』
ウィザードは着地と同時に、その体色を翡翠から瑠璃へ変更していく。
『バシャバシャバシャーン ザブンザブーン』
エレメントが風から水となり、纏うドラゴンの力もその属性へ変化していった。
「さっさと終わらせますわよ。奴がいると、話が進みませんわ」
隣に立つ狂三。彼女に頷いたウィザードは、右手の指輪を一度薬指に置き換え、さらに別の指輪を中指に嵌めた。
『チョーイイネ ブリザード サイコー』
「
ウィザードと狂三は、それぞれ同時に相手の動きを封じる技を発動させた。
氷結と時間停止。二つの能力を同時に全身に浴びたガイガンは、瞬時に体の動きが鈍っていく。やがて氷と時に閉ざされ、ガイガンは完全なる彫像と化していった。
「決めるよ!」
『チョーイイネ スペシャル サイコー』
「
ウィザードが発動した魔法。
それは、ウィザードの腰へ水と氷の魔力を過不足なく充填させていく。やがて魔力はドラゴンの尾という形となり、その存在感を示すように強く振るわれた。
一方、狂三もただの豆鉄砲でガイガンを倒せるとは思っていないのだろう。狂三の時計そのものからのエネルギーが彼女の銃に注がれ、無数の分身たちが影より出現。ガイガンを囲むようにその銃口を向けた。
「力を合わせれば、必ず勝てます!」
ウィザードたちの背後で、えりかも宣言する。
彼女は手を掲げ、その周囲をえりかの盾が旋回する。
すると、一体どんな仕掛けなのだろうか。その力は、ウィザードと狂三に注がれていく。
えりかのセラフにある力は、シールダーたる防御能力だけではない。味方を統率し、支援する
「ありがとう、えりかちゃん!」
「敵に支援されるというのも、変な気分ですわ……」
狂三も、そして彼女の分身たちも、えりかの支援による能力向上を感じているのだろう。
四方八方からの狂三の銃撃が、ガイガンの凍り付いた全身に浴びせられていく。
全身のいたるところにヒビが入っていくガイガン。そんな怪物へは、すでに氷でできた道が出来上がっていた。
「はあああああああああああああああああああああッ!」
氷上を滑るように移動するウィザード。
瞬時にガイガンに迫ると同時に、その体を一気にひねる。
すると、勢いを付けたドラゴテイルが、ガイガンの体に炸裂する。
氷結、無数の弾丸、そして威力上昇。いかに強靭な肉体を持つ怪物であろうとも、ここまでの重ね掛けの能力を受ければ、無事で済む道理はない。
生物と機械の融合体は、このドラゴンスマッシュによって粉々に砕け散ったのだ。
「……一体何だったんだ、こいつは……?」
まだ冷気が残る中。
変身を解除したハルトは、ガイガンの破片を見下ろしながらそう呟くのだった。