Fate/WizarDragonknight   作:カラス レヴィナ

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ウォッチャーの能力から逃れる手段は……女装!?
※今回のハルトはすべて女装です


人の道を外れた味方

 ハルトはもともと、大道芸人としてファントムを討伐しながら旅をしてきていた。

 すなわち、相手を楽しませるためにあえて道化になることなど日常茶飯事だった。

 今はピエロではなく、女子高生の姿だが。

 もともと嫌がっていた表情をしていたが、今や見滝原中央駅の前で。

 

「ヤバッ、ウケる!」

 

 えりかから伝授されたギャルの言葉を巧みに使いこなし、電源が切れたスマホで自画像を撮るフリをしていた。

 

「……」

 

 黒い画面しか表示しないスマホは、今は鏡として機能している。

 ハルトはポーズをとりながら、周囲の人々へ目を向ける。

 駅を行き交う人々は、ハルトの存在を少しうっとおしく感じているらしいが、明確な敵意を感じない。えりかの予想通り、ウォッチャーの集団洗脳は変装で誤魔化せるようだ。中には、ひそひそとハルトを指さしている女子高生もいる。

 これでハルトを認識していない、というのは無理があるだろう。

 

「あらあらあら。彼の方があなたよりギャルに向いているのではなくて?」

「あ、蒼井にだってできます……!」

 

 ハルトから少し離れたところで、えりかと狂三が棒立ちしている。

 もうこれだけやれば、ギャルの姿になった安全性は証明できただろう。

 ハルトはえりか達に駆け寄り、スマホをポケットにしまう。

 

「よし、この姿なら何とか出歩ける。まずは、手伝ってくれそうな……どうしたの?」

「い、いえ……」

 

 えりかが少し口を抑えている。

 何があったのかと首をかしげていると、隣の狂三が噴き出した。

 

「きひひひひっ! はっきりと言ってあげたらいかが? その姿で平然と男の声で話すのは面白すぎますって」

 

 腹を抱えている狂三は、自らの髪が震えるのもいとわない。ハルトの女装は笑っているが、本人の金色の目が見えてしまいかけるのは構わないのだろうか。

 

「それで、何でしたっけ? ハル子さん」

「あ、そうだった。んん」

 

 ハルトは咳払いをして、自身の声量を調整する。

 そして。

 

「ヤバッ、ヤバッ! ウケるウケる!」

「ご、ごめんなさいねハル子さん。思っていたよりこれでは、か、会話になりませんわね」

 

 言い出した本人である狂三がまた爆笑しだす。

 

「いけませんわ、ああいけませんわ。面白すぎますわ」

 

 お決まりのセリフも、安定した口調とは程遠い。

 一通り笑い終えた狂三は、うっすらと浮かぶ涙を拭い、話を進める。

 

「それで? これからどうするつもりですの? 最終目的も、あなたたちはまさかウォッチャーを始末するとは考えられませんが」

「俺たちは聖杯戦争を止めるために動いている。もちろん目的は、ウォッチャーに戦いをやめさせることだよ」

 

 ハルトはそれまでとは打って変わって、平然とした口調で話す。だが、外見がギャルのままなので、より一層狂三の腹筋を刺激しているようだ。

 

「あと、あの超大型巨人もですね」

「ああ、そうだそうだ」

 

 えりかの指摘に、ハルトは頷く。

 キング・ブラッドレイ市長が率いる二体のサーヴァント。可奈美を超える剣劇と、巨大な質量、そして正体不明の能力者。

 これまで戦ってきた参加者に比べて、強力な相手だ。

 

「まず俺は、三人全員に勝てなかった。えりかちゃんは?」

「蒼井も、超大型巨人の攻撃は防げますけど、長期戦はかなり不利になりますね」

「二人揃って頼りになりませんわね。でもそうですわね……そうなると、わたくしが追加されたからと言って状況が有利になるわけではなさそうですわ」

「だから、今は味方を探す」

 

 ハルトは息を吐いた。

 

「味方? このデスゲームに、味方になりえる相手がいますの?」

「……ウォッチャーの能力が人間以外と、俺のサーヴァントに及ばないとするなら……」

「ずいぶんとお花畑な考え方ですわね」

 

 狂三が鼻で笑った。

 

「聖杯戦争に参加している者たちは、たとえ命を懸けてでも叶えたい願いがあるからこそ参加する。ある意味では、聖杯戦争の参加者は全員人の道を外れているとも言えますわね。そんな外道たちに、願いを蹴ってまであなたに参加するメリットはありますの?」

「俺の目的は、この戦いを終わらせること。永遠に停滞でも、俺は構わない。千日手になって時間の無駄だと思わせられれば、それでいいよ」

 

 ハルトの頭には、すでにある参加者たちが浮かんでいた。

 人間ではない……確証はないが、おそらく人間ではないだろう。それでいて、ハルトへの敵対度合いが高くない相手。

 

「とりあえず、彼女の家に行こう」

 

 

 

「……正直、あなたを今すぐ始末した方がいいのではないかと考えているわ」

 

 そう怪訝な顔を浮かべるのは、女子中学生。

 彼女の自宅がこの場所であることは、かつて見滝原に封印されていた大荒魂の一件で判明している。

 だが、それがまさかここまで尾を引くことになるとは思わなかっただろう。ましてや、今のハルトは奇妙奇天烈な恰好をしている。

 このクールなマスター、暁美ほむらは、もう話を聞くことなく、ドアを閉じようとした。

 

「待って待って!」

 

 彼女を逃すわけにはいかない。

 ハルトは慌てて足を踏み出す。丁度ドアに挟まれる形でストッパーとなるが、足は痛みを訴える。

 一瞬顔をゆがめたハルトは、そのままドアの縁を掴んだ。

 

「少しでも話を聞いて! ほむらちゃんにとっても大事な話だから!」

「……」

 

 ほむらは嫌そうな顔を隠しもしない。

 このまま玄関で押し問答を続けていれば、すぐに銃を取り出してもおかしくない。

 その時。

 

「ちょっと失礼、ハルトさん」

 

 後ろからハルトを押しやり、狂三がほむらの前に割いる。

 

「狂三ちゃん……」

「……! フォーリナー……!」

 

 ほむらからすれば、狂三は時折共闘したことがあるだけの敵参加者に過ぎない。

 敵意をもって然るべきだ。ほむらは瞬時にその姿を紫の光に包み込ませ、変わっていく。

 

「待って待って待って! 戦いに来たんじゃない、話に来たんだって!」

 

 ハルトが叫ぶがもう遅い。

 すでに狂三もドレスを身にまとい、銃を手にしている。

 ほむらと狂三。二人はそれぞれの銃を相手の額に当てようとするが。

 

「時崎さん、ストップです!」

「マスター、そこまでです」

 

 二人の銃口に、青と黒の盾が張られる。

 えりかの手から放たれる、薄く青い障壁。彼女が戦闘時多用するものとは違い、簡易的なもので、デフレクタというらしい。

 そしてほむら側。黒く、小さな魔法陣だが、それはハルトが使役するあらゆる魔法陣よりも強い魔力を感じさせる。そしてそれを難なくほむらの手に肩を置きながら発動させた女性こそ、ハルトが今一番会いたかった相手だ。

 

「……キャスター……」

「久しぶりだな、ウィザード」

 

 長い銀髪をたなびかせ、静かにこの場にいる全員を見据える赤い目の女性。

 彼女のはっきりとした口調と毅然とした佇まいは、たとえこの場にいる全員を敵に回したとしても問題ないという自身に満ち溢れていた。

 彼女こそ、キャスターのサーヴァント。

 ハルトが知る限り、聖杯戦争最強の参加者だ。

 彼女はこれまで、ハルトにとって敵としても味方としてもその力を振るってきた。その際、彼女の闇の力は、あらゆる戦局においてバランスブレイカーとなり、傾きを変えてきた。

 

「何の用だ」

 

 ほむらを下げ、キャスターが前に出る。

 

「あ、あら……あらあら……キャスターのお出ましでしたの」

 

 狂三は笑みをひきつらせながら、少しだけ後ずさる。

 

「ずいぶんと大物を味方にしようとしてるじゃないですか、ハルトさん」

「……あんたたちは今、俺への殺意はないんだな?」

「今尋常じゃないほど沸いてきているわ。そのふざけた格好は何?」

 

 ほむらが苛立ちを隠さずに吐き捨てた。だがキャスターは全く意に介さない。

 

「お前への敵意ならこれまでと変わらないが?」

 

 その返答に、ハルトとえりかは顔を見合わせた。互いに安堵を浮かた。

 キャスターは目を細め、彼女のマスターへ振り返る。

 

「マスター。彼らを家に上げても?」

「キャスター……! 貴女、また……!」

「彼らが何か下手をした場合は、私が対処します。拠点であるこの場所を荒らされる方が面倒でしょう」

「……っ!」

 

 ほむらの顔にくっきりと書かれていた。

 ハルトに対する敵意が。

 

「……ウォッチャー関係なくほむらちゃんは敵になっちゃったな」

 

 

 

「なるほど……ウォッチャーか」

 

 キャスターは顎に手を当てる。

 見滝原市役所での出来事やジャイアントのマスターが同時にウォッチャーのマスターであること、そしてウォッチャーによりハルトが見滝原の人間すべての敵になってしまったことを説明していた。

 

「あの超大型巨人は、我々も対策を考えていた。だが、まさかサーヴァントを二人所有しているとは……」

「キャスター!」

 

 ほむらが咎める声を上げる。

 暁美ほむらの室内は、相変わらず摩訶不思議な場所だ。

 真っ白な壁の中、無数の絵画が天井から飾られている。部屋の中心にある丸机を囲むように、これまた無数の椅子が円状に配置されており、家というよりはどこかの施設の入り口のようだ。

 その中で、キャスターはずっと立ったまま腰を下ろした来客たちを見下ろしていた。

 

「マスター。ウィザードのいう通り、もしもウォッチャーがウィザードに行った術を我々に使った場合は面倒です。特に……それに彼女(・・)が巻き込まれた場合は」

「……私は嫌われても構わない。それは再三貴女にも伝えたはずよ」

 

 ほむらのれっきとした返答に、二人の間で沈黙が流れる。

 キャスターの前、丸机に接する席で不機嫌そうに腰を下ろすほむらは、少しだけキャスターに首を向けている。

 彼女たちが目で何を語り合っているのかは皆目見当もつかない。だがその内容は、きっと一言や二言では足りないだろう。

 ほむらはやがて、机に置いたティーカップを掴み、口に運ぶ。

 

「それにしても、人間を全員敵に回させるなんてね。……確かに私も、人間とは呼べないわ。……松菜ハルトへの敵意は変わらないけど」

 

 ほむらはどこか遠くを見つめた。やがて手のひらに埋め込まれた紫の宝石を撫で、来客の顔を順々に見比べる。そしてその視線はえりかで止まった。

 

「……シールダー……蒼井えりか、だったわね? 貴女も人の道を外しているのかしら?」

「蒼井は人間です。松菜さんのサーヴァントですから、魔力供給があるから、ウォッチャーの力の対象外になったのかもしれません」

「……サーヴァントだから、か」

 

 キャスターは細目を浮かべた。

 だが特に何も言及することなく話を続けた。

 

「それで? 人間には協力を仰げないが、ほかに誰か声をかける相手はいるのか?」

「ああ、そうだ。真司と連絡付けていないんだ。充電ありがとう」

 

 ハルトはそう言って、ほむらの充電器で回復したスマホを手に取る。すぐに真司へ連絡を飛ばすが、既読すらつかない。

 

「……ダメか」

「ライダーだけか?」

「……ソロはどこにいるのか分からないし連絡の取りようもない。ウォッチャー関係なく協力してくれるかは微妙だし。リゲルは……無事かもしれないけど、少なくとも鈴音(れいん)ちゃんがすぐそばにいるし、最悪可奈美ちゃんたちもいるかもしれない。……そういえば、フロストノヴァってどうなんだろう。後知ってる参加者……デイダラは論外。……デイダラって人間だよね?」

 

 ハルトは思いつく参加者を口にしていく。

 

「……うん。これ以上味方として見込めるのは真司だけだけど、本当に連絡が取れないな」

「そうか」

 

 キャスターは首を回した。

 

「いざとなったら令呪で呼び出せばいい。まだ三画あるのだろう?」

「……」

 

 ハルトは右手に刻まれた令呪を見下ろした。

 刻まれる、真司とえりかの令呪。それぞれ三画ずつ、合計六画の令呪があるハルトは、参加者の中でも随一の令呪を持っていることだろう。

 

「俺は……さ、なるべく令呪は使いたくないんだ」

「……」

 

 その言葉に、すべての参加者の視線が集まる。

 ハルトは続けた。

 

「令呪を使うとさ……なんか、聖杯戦争に賛同している気がして……この戦いを肯定しているような気がしてさ」




街を歩いているとき
ハルト「ヤバい、ウケる!」
狂三「もはやこれは天職なのでは?」
えりか「一度茅森さんに、松菜さんのギャル度を見てほしいです」
ハルト「ヤバい、ウケる!」
狂三「もはやほかの言葉を忘れてしまったのでしょうか?」
ハルト「ヤバい、ウケる!」
えりか「ゲシュタルト崩壊してきそうです」
狂三「少し黙らせましょうか?」
ハルト「いや、俺は言われたとおりにギャル語録でやってるだけなのにそこまで言うことなくない!?」
狂三「なんかムカつきますの」銃で殴打
ハルト「ぐあっ!?」
えりか「時崎さん!?」
狂三「あらごめんあそばせ。ウィッグが」
ハルト「化粧とかも軽く崩れちゃったじゃん! どうすんのこれ、見つかったらさすがに……」
???「……」
ハルト「見つかったあああああああああああああ!?」
狂三「きひひっ!」
えりか「いや笑いごとではありませんよ!?」
???「お、おう……その……なんだ、ごゆっくり」
ハルト「……? ウォッチャーの能力を受けていない?」
狂三「彼女も参加者、ということですの?」
えりか「少なくとも人間ではない……?」
???「わ、わああああああああ!?」
ハルト「な、何だ!?」
???「ね、猫!? こんなところに猫の群れが!?」
ハルト「……猫の群れに囲まれて幸せそうに苦しんでる」
えりか「逃げられなくなってますね」
狂三「……羨まっ」
ハルト「え」
???「ああっ……!? 猫がマントに嚙みついて、さらに動けなく……!」
ハルト「猫に圧されて倒れていくなああの人」
???「の、乗るな……! このままでは、私は永遠にここから動けなくなる……!」
えりか「猫たちによってホームレス宣言してます」
???「ああああ……!」
ハルト「猫ってすごいな。ウォッチャーの影響を可愛さで上書きしてるぞ」
狂三「多分、彼女がそもそも人間ではないのだと思いますが……まあ、これ以上は無粋でしょう。はい、本日のアニメどうぞ」



___ずっと僕は君のもんだ 最愛すぎて時空歪んだ 気が付けば君こそがユニバース ドックンバックンでもはやつらい……___



狂三「カワイスギクライシスですわ」
えりか「2023年4月から6月のアニメです」
ハルト「宇宙からやってきた調査員のリザが……ああなるアニメです」
???「あああああああああ、かわいしゅぎるうううううううううう!」
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