Fate/WizarDragonknight 作:カラス レヴィナ
その最中、ガルーダの力を取り込み、ウィザードはガルーダショータイムへ進化。
可奈美を止め、気絶させると、彼女は母、美奈都に憑りつかれた。
「……」
リゲルは、ずっと可奈美を睨み続けている。
彼女のゴーグルには、無数の情報が出ては消えていく。きっと、今の可奈美が何者なのかを判別しているのだろう。
一歩ずつ恐る恐るの歩調で可奈美に近づいていく彼女は、じっとその顔を見つめている。
「まさか、幽霊が憑いているとでもいうの?」
「自分で言うのも変な感じだけどね。わたしはわたしで、ピッチピチの女子高生のつもりなんだけど」
「言い方がおっさん臭いわ」
リゲルはそう言いながら、手でもゴーグルを操作する。ゴーグルには無数のポップアップが表示されては削除されており、そのプロセスだけでも情報を収集できているのだろう。
「藤原美奈都……これか」
どうやら見つけたようだ。
「二十年前、相模湾岸大災厄の際、特別祭祀機動隊の一員として活躍した……だけど、記録にあるのはこの一言だけね」
「ああ、懐かしいね」
「
「勝手に何の話をしているのよ、あなたは……」
話し込んでいると、ヤマタノオロチの頭上に乗り上がったグレムリンも苛立ちを浮かべる。
「君、敵になったり味方になったり忙しいね……一体どういう情緒なのかな?」
「うーん、説明しようとすれば簡単かもしれないけど、意外と難しいかもよ?」
「でも、そのでっかい蛇は荒魂だよね? だったら、祓わなきゃ」
「なんか面倒だな、君……」
グレムリンからは完全に敵視されている。
だが、
「あの大荒魂、わたしがやっつけた方がいいよね? あっちの緑の人は君たちがお願い」
「やっつけた方がいいって……」
以前、可奈美は確かに魔王ヤマタノオロチを討伐した。
だがその時と今では、あまりにも条件が違い過ぎる。見滝原を訪れた刀使、セイバーのサーヴァント、彼から託された祭祀礼装。可奈美にとって大きな底上げがああったあの時に対し、今回は精神が変わっているとはいえ、可奈美一人だ。
だが。
「なんのなんの。問題ないっ!」
言い放った
その動きは、まさに神速。
的確にヤマタノオロチの急所を抉り、最低限の力で最大限の効果を発揮していく。
その強さに、ウィザードやリゲルだけでなく、着地したグレムリンをも唖然と見上げている。
「ほらほら! 大荒魂ってこれくらい?」
可奈美とはまた異なる剣捌きで、巨大な怪物の動きを圧倒していく。
「た、ただでやられてあげるわけないじゃないか……!」
旗色が悪くなってきたのをようやく理解したのか、グレムリンが
「させるか!」
ウィザードはソードガンを持ち直し、翼を広げる。
「全く、君も随分と邪魔してくれるよ! だんだん僕が知ってる君じゃなくなってきて悲しいね!」
「勝手に悲しんでな!」
ガルーダの助力により、ウィザードもすさまじい速度でグレムリンと戦いを続けていく。動き一つ一つに炎が纏われ、やがて戦いの均衡はウィザードへ
大きく振るったウィザーソードガンは炎を纏い、大きな威力となる。グレムリンの剣を切り砕き、その緑の体を大きく吹き飛ばした。
「よし……!」
ウィザードはそのまま、ヤマタノオロチへ向かっていく。
すでにリゲルも、ヤマタノオロチとの闘いに身を投じていた。彼女の青い光線は、ヤマタノオロチへの牽制となり、
そして、世界に青が訪れた。
「シャイニングブリッツバースト!」
突撃を兼ねる銃撃。世界を青に塗り替える光により、ヤマタノオロチの赤は染まっていく。
そして、放たれた一撃。ヤマタノオロチの巨体を大きく吹き飛ばした。
「今よ!」
「オッケー!」
途端に、ヤマタノオロチの首が、一つまた一つ弾かれていく。
ウィザードにとって、可奈美の迅位は目で追えない。だがそれでも、気配を察したりと何とか追いかけることはできた。
だが、今の
一撃が八撃になり、すべての蛇の首を弾き飛ばしていく。完全に動きを封じられた今、ウィザードにとってそれは完全な隙となる。
「さあ、魔法使い君! 決めて!」
「はい!」
『チョーイイネ キックストライク サイコー』
発動するストライクウィザード。
足に集中する魔力は、そのまま全身を伝い、翼に達していく。ガルーダの翼は満たされた魔力を見せつけるように広がっていく。
そして飛び上がる赤い光。
ガルーダショータイムの形態としてのキックストライクは、ドラゴンではなくガルーダの幻影を魔法陣から出現させる。ガルーダはそのまま足に吸収され、ヤマタノオロチの本体へ炸裂。
すでに最強の剣術により切り刻まれた大荒魂が、この大火力に耐えられるはずがない。
時計から現出していた幻は、そのまま全身を爆発させる。
その巨体は次々に粉々になっていき、やがて消滅した。
アナザーウォッチからエネルギー体として現出していたそれは、完全に黒い懐中時計だけになり、地面に音を立てて落ちていった。
「全く、やってくれるよ……」
グレムリンはそう言ってアナザーウォッチを拾い上げた。バチバチと火花を散らす黒い時計のスイッチを押すが、それは電池が切れたかのように沈黙しか返さなかった。
「うーん、壊れてはいないよね……? でもしばらくは君との遊びはできなさそうだ」
「随分と朗報だな」
ウィザードは剣を構えた。
「だったら、このまま終わらせて……」
「残念だけど、君はよくても僕はそうはいかないんだ」
グレムリンは片手の剣を手玉にしながら言った。
「僕も聖杯が欲しくてね。まあ、君みたいに体に変な入れ墨をいれるつもりはないけど」
「賢者の石って言ってたっけ……」
グレムリンは「きひひっ」と笑い声をあげる。
いつしか彼の体は、地面に沈んでいった。
「そう。まあしばらくは雲隠れをしていることにするよ。またね、ハルト君」
その言葉を最後に、グレムリンの姿は消えていった。もう気配もない。
彼は完全にこの場を離脱したということだろう。
ウィザードは息を吐いて、
「ありがとう。えっと……」
「衛藤可奈美、じゃないのよね」
リゲルの問いに
「今でも可奈美が暴れてるよ。この洗脳してる人、相当すごいよ」
「……この後も、協力していただけませんか?」
ウィザードの問いに、
「無理だろうね。いつ可奈美が目が覚めて、君に襲い掛かるか分からないから。わたしにできることは、君に被害がいかないように可奈美をなるべく遠くに連れていくことだけだよ」
「そうですか……」
ウィザードは肩を落とした。
「……あの、絶対に見滝原からは出ないでください。可奈美ちゃん……というか、俺たちは今、見滝原を指一本でも出たら死んでしまう体になっています。それだけは……」
「分かった分かった。なんか、大変な状況になってるのは聞いてるから。だけど、これだけは言っておく」
「君は、もう隠さなくてもいい。それはもう、分かってるんだよね?」
「……うん。ありがとうございます」
今、思い出した。
可奈美と入れ替わってしまった時、彼女の体で見た夢の中で、美奈都に言われたことを。
「みんなに、というわけにはいけないけど……何があっても味方にいてくれるって言ってくれた可奈美ちゃんには……もう、隠し事なんてしません」