Fate/WizarDragonknight   作:カラス レヴィナ

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可奈美と鈴音はマキマによる支配から解放されたが、その代償としてリゲルがその命を落としてしまう。
一方そのころ、広場ではより多くの参加者が集まってきていた。


獰猛なる牙

 広場に氷が広がっていく。参加者の足ごと張っていく氷に、ビーストは大きく飛びのいた。

 

「こいつは……!?」

 

 アスファルトが瞬時に模様替えをした見た途端、ビーストは即座に察した。

 この能力の使い手は、かなり面倒だと。

 

「フロストノヴァまで来やがった……!」

 

 ゲートキーパー、フロストノヴァ。あのウサギ耳が本物だと聞いているのになんでマキマの影響を受けるんだ、と内心突っ込みながら、ビーストは飛んできた氷弾を狙撃して落とす。

 だが、それとは関係なく響と友奈が容赦なく攻め立ててくる。

 回避を繰り返し、両腕についている長帯、フリンジスリンガーが大きく動く。まるで生き物のようにうねる。そのまま金色の細い帯は、迫る氷を弾き落としていった。

 

「クソ、どうすんだよ……! ますます人数増えてねえか? 参加者向けのバーゲンセールでもやってんのかよ!」

「あまり面白くないです!」

 

 そう言ってビーストと背中合わせに立ったえりかは、自身の盾を手元に呼び戻していた。

 

「でも確かに、人数が少しずつ増えています。このままだと、参加者が全員この広場に集まってくるのも時間の問題かもしれません」

「想像したくねえな。そうなるのは」

 

 えりかがそう呟いた途端、頭上に影が現れる。

 

「見つけたぞ、ウィザードの仲間共!」

「危ねえ!」

「きゃあっ!」

 

 ビーストとえりかの間に炸裂する巨大な拳。張った氷がコンクリートごと粉々に砕かれ、振り落ちる霜の中から、その姿がはっきりと見て取れた。

 

「今度は筋肉ダルマかよ!」

「オレ様が無敵だ!」

 

 筋肉ダルマ。

 アブラミーという名前のサーヴァントは、砕かれた氷のコンクリートを握りしめ、ビーストとえりかへ投影してきた。

 

「シールドトルネード!」

 

 だが、氷は両断される。えりかが回転させた盾は攻防一体の性能を発揮し、迫る巨大な物質を両断した。

 だが、それは地面に落下することはなかった。あたかも生きてるかの如く、コンクリート片は動き出す。

 いや、動き出しているコンクリート片はそれだけではない。見れば数多くの参加者たちの戦いにより定位置から剝がされており、一か所に集まっていく。

 そしてコンクリート片はやがて人型となっていく。ウィザードの使い魔にも同系統の存在がいることもあり、ゴーレムという名称がすぐに浮かんできた。

 そして、その肩に乗る者に、ビーストは目を奪われた。

 

「メイド……?」

 

 メイド。そうとしか形容のしようがなかった。

 黒い制服とふりふりの白いエプロンに身を包み、茶色の髪を三つ編みにして下ろしている。一見すれば可愛らしいものだが、その冷め切った目は敵意を隠そうともしない。

 ゴーレムという無機質さと無骨さを兼ね備えた存在だが、その肩に乗る華奢な体つきの女性というのが、とてもアンバランスに思える。

 だが、メイドは全くもって手慣れたような命令を下した。

 

「潰せ!」

「!」

 

 ビーストとえりかは慌ててその拳を回避する。二人が避けた途端、めりこまれた地面は木端微塵に吹き飛んだ。

 

「何だよこの馬鹿力! おいえりか、お前ならアレ止められるか?」

「多分大丈夫ですけど、あまりやりたくないです……!」

 

 そう言っている間にも、もうゴーレムが次の構えを始めている。

 えりかは慌てて盾を広げ、数秒前ビーストが口走った通りの展開になってしまった。

 

「あのメイドもマキマの手の中かよ……! ったく、人間って範囲のくせに、やけにバラエティ豊かだよな聖杯戦争ってやつは!」

「はい。どうすれば無力化できるのでしょう……?」

「黙れ下郎。よもや貴様らのような存在など、捻り潰してくれる!」

「恨まれる覚えはねえんだけどな!」

『3 ハイパー セイバーストライク』

 

 ダイスサーベルにハイパーリングを差し込む。すると、ビーストが使役する獣たち___猛牛、ハヤブサ、カメレオン、イルカがそれぞれ三体ずつ出現し、それぞれ別々の方位よりゴーレムへ体当たりをしていく。

 ゴーレムの重心が崩れた。

 本来ならばすぐにゴーレムへ止めを刺したいところだが、この混戦ではそうはいかない。

 

「ふんっ!」

 

 ゴーレムに入れ替わってフロストノヴァの氷が雨となる。えりかの盾で事なきを得たが、その隙に響と友奈が接近してきた。

 

「お前らもこういう時だとマジで面倒だな!」

 

 ミラージュマグナムを打ち鳴らし、ダイスサーベルで応戦。

 

「うおらっ!」

 

 振り下ろされるダイスサーベル。だが、狙った響には命中せず、代わりに花びらを斬るだけにとどまった。

 

「友奈お前いつもそれ使ってたかァ!?」

 

 吹き荒れる花びらの中から、友奈が桃色の拳を突き放す。

 だが、ビーストハイパーの能力がそれを無に帰した。ビーストの胸元に象られたライオンの顔が咆哮する。

 桃色のエネルギーが吸収されていく。それを確認した途端、友奈と響が距離を取った。

 

「やっぱりあいつらを相手にしたくねえ……! 本来は味方ってことを差し引いてもよ!」

「どうすれば皆さん、元に戻ってくれるのでしょう……」

「あっちに協力するのが一番の近道なんだろうが、正直な……」

 

 上空で展開されているキャスターとマキマの戦いは、すでにビーストたちには及ばない域に達していた。

 遠目になっている黒と赤は、それぞれ容赦のない激突を繰り返している。ほんの一瞬顔を上げただけで無数の技が交錯を繰り返し、それぞれ爆発に爆発を重ねている。

 

「キャスターがすげえのか、それともそれに抵抗できてるマキマがすげえのか……」

「ど、どちらもすごいということで……うわっ!」

 

 だが、それ以上えりかとの会話は続かない。

 割り込んできた響と友奈の動きに、防戦一方となっていく。

 

「響、お前いい加減にしろ!」

 

 響の腕を防御し、ビーストは彼女を羽交い絞めにする。当然響は敵であるビーストに抵抗してきており、姿勢が全く安定しない。

 

「ったく、ここ最近なんかオレしょっちゅう響と敵対するハメになってねえか……?」

 

 アマダム戦とアウラ戦を思い返し、ビーストは仮面の下で苦虫を噛み潰す。

 その時。

 

「うっ……ぐうっ……!」

「響?」

 

 響が自らの耳を防いで苦しみだしている。

 マキマの影響により、彼らは何よりもビーストたちを攻め立てるようになっているはずだ。だが、今響はもがくことよりも耳を塞ぐことを優先している。

 

「おい、響!? どうした!?」

「歌……が……ッ! 乱されていく……ッ!」

「は?」

 

 首を傾げてから、ビーストはようやく気付いた。

 どこからか音色が聞こえてくる。だがそれは歌ではない。あたかもあえて不協和音を作り出そうとしているような旋律だ。

 

「ほう。お前もこの音色の効力を受けるのか……」

 

 その声は、どこか落ち着いている。

 見れば、無数の参加者たちが次々に血しぶきとともに倒れていた。それは、新たな参加者の乱入を告げるカーペットだった。だが、その参加者は他の者たちとは一線を画す。

 全身を紺色のスーツに身を包んだそれ。だが、見た途端に真っ先に思いつく言葉は牙だった。

 胸元を獣が噛みしめているかのように歯があしらわれており、肩口には何かしらの肉食獣の顔が描かれている。顔もまたあたかも口を開けた猛獣をかのようなデザインをしており、凶悪な印象をビーストたちに与えた。

 そして、この音の正体は彼が奏でる同じく紺色のフルートだった。だが時折それは口から離され、剣として周囲の参加者を切り伏せている。

 

「面白い。太古より伝わる戦いが、俺の血を滾らせる……!」

 

 やがて演奏を終えた彼は、フルートを中心から二つに折り曲げた。そして。

 

「サーヴァント召喚士(ガーチャー)……。さあ、俺と戦え!」

 

 彼はそう叫び、そのフルートを投影する。

 フルートは曲げられた時点でブーメランとなっており、まるで生き物のような軌道を描く。ビースト、えりか、響、友奈。そしてフロストノヴァやメイド、その他無数のサーヴァントを弾き、地面に叩き落とす。

 そしてガーチャーの手元に返ってきたブーメランをまっすぐに伸ばす。今度はそれは剣としての役割となり、接近戦を可能としていた。

 荒々しい動きで周囲の参加者を次々に切り伏せていくその姿に、参加者たちには戦慄が走っていく。

 おそらくマキマの効力は解かれていない。だが、ウィザードを倒せという悪魔の命令よりも、参加者を支配したものがあった。

 恐怖と生存本能。

 容赦なく自分達を捕食しようとするガーチャーへ、参加者たちは剣を突き出す。だが群青色の刃はいとも簡単に剣を叩き壊し、さらには参加者たちそのものも切り刻んでいく。

 

「やめろ!」

 

 洗脳だなんだと言っている場合ではない。

 まさに今、紺色の猛獣に狙われている参加者を突き飛ばし、ビーストは彼の剣をダイスサーベルで受け止めた。

 

「お前、オレたちを狙っているんじゃねえのかよ?」

「フン、バカげたことを。俺はただ戦えればいい。……別にお前でも構わない!」

「こいつ、マキマの影響は無さそうだが、それ以上に普通にやべえ奴じゃねえか!」

 

 そのままダイスサーベルと、彼の武器___フルートバスターがぶつかり続ける。何度も火花を散らし、時折隙を見てミラージュマグナムを発砲。だがそれもフルートバスターに受け流されてしまう。

 

「お前は歯ごたえがありそうだな……!」

 

 ガーチャーはビーストを蹴り飛ばし、再びフルートバスターを吹き始める。

 

「ぐああああッ!」

 

 傍らで苦しみだす響。頭を抑える彼女を見て、いくら洗脳されているとはいえ放ってはおけない。

 

「仕方ねえ。恨むなよ!」

 

 ビーストはミラージュマグナムを回転させ、ビーストハイパーリングの上半分をスライドさせる。キマイラが口を開いたデザインになったことを確認し、銃に作られている挿入口に差し込んだ。

 

「デーボスイン」

 

 一方、ガーチャーはベルトのバックルから取り出したアイテム___それは見紛うことない。紫色ではあるが、電池だ___のスイッチを入れた。それをフルートバスターの差込口に装填。

 そして。

 

『ハイパー マグナムストライク』

「魔楽章・デーボスフィニッシュ!」

 

 ビーストが放つ銃弾は、キマイラの姿をしたエネルギー。

 一方ガーチャーが投影したものは、フルートバスター。だが紺色のブーメランには、さらに電池が与える力が付与され、凶悪な肉食獣___それはまさに、太古の恐竜スピノサウルス___の姿をしていた。

 そして激突する二つの力。だが、スピノサウルスは二度噛みつき、キマイラの幻影を破壊していた。

 

「何っ!?」

 

 そのまま紺色の恐竜は、ビースト___そして近くにいるえりか、響、友奈、フロストノヴァ、メイドの合計六人___に到達し、大爆発を引き起こす。

 

「ぐあああああああああああああああっ!」

 

 ビーストハイパーの力さえも及ばない。

 地に伏せたコウスケたちへ、ガーチャーは大笑いを上げていた。

 

「こいつ、やべえ……! 一体何者なんだ……?」

「デスリュウジャー……その名もDだ。聖杯よ……永遠の聖杯戦争を続けるために、俺の物となれ!」

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