Fate/WizarDragonknight   作:カラス レヴィナ

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見滝原市役所では各地で無数の参加者たちが戦いを繰り広げていた。
そして、その上空では……


最強と最凶

 地上で数多くの参加者たちが見滝原北の広場でひしめき合っている中、遥か天空では黒と赤が激突を繰り返していた。

 青空を舞台に、せめぎ合う二人。それぞれが横切るごとに、雲が切り分けられて霧散していく。

 キャスターとマキマ。それぞれの力を互いに発揮していく。

 

「……っ!」

 

 キャスターの両手に出現した魔法陣。あたかもブラックホールのように黒い球体を中心にしたそれが、マキマへと投げられた。

 

「ばん」

 

 それに対し、マキマは指鉄砲で発砲。不可視の弾丸が穿ち、黒いエネルギーが消失していった。

 見えない銃弾は、そのままキャスターへも向けられる。

 だが、銀色の頭部を撃ち狙うそれは、黒く小さな魔法壁に阻まれた。

 

「不可避の弾丸……」

 

 目を細めたキャスターは、手を下げないまま呟く。

 眉を吊り上げたマキマは、引き続き指鉄砲を放ち続ける。だが、複数回放たれた弾丸も、一つ一つへ的確に防がれていく。

 一方、決して瞬きをしないマキマは空中に浮かんだまま笑みを浮かべた。

 

「見えるの?」

「否」

 

 キャスターは拳を握る。

 

「察知できるだけだ」

「へえ……すごいね。流石、最強の参加者って噂されることはある」

 

 目の前で、あたかも天使のように浮かんでいる相手。一見すればただの人間のようだが、その実は自らに匹敵するほどの脅威だと肌で理解できた。

 キャスターの傍らに浮かぶ魔導書のページがめくられる。そうして開かれたページに刻まれた魔法が発動する。

 それは、轟雷。遥か天空に走る金色の雷光が、その腕に集う。

 

「フォトンランサー・マルチショット」

 

 キャスターが手を振り下ろすと、無数の雷光が一気にマキマへと向かう。

 だが、微動だにしないマキマ。彼女の前にせり上がってきた怪物が、その盾となっていた。

 

「……」

 

 さらに、雷光が雨となり降り注ぐ。

 雲一つない空で発生した雷をよけ続けたマキマ。雷は足元に広がる雲海に吸収され、やがて雷雲へと変化していく。

 

「あーあ。これじゃあ地上じゃ雨だね」

「……」

「じゃ、次はこっちの番だね」

 

 マキマがそう告げると、キャスターの周囲を無限が覆った。

 永遠の暗闇。どこまでも続く回廊。あたかも空間そのものをキャスターの周囲に召喚したようにも見える。

 

「……これは……」

 

 空中戦をしていたはずなのに、完全に屋内に閉じ込められている。先が見えない中、マキマの声が聞こえてきた。

 

「永遠に、君はどこまで耐えられるかな?」

「ディアボリックエミッション」

 

 キャスターの主力技の前に、それは無力だった。

 黒い、広範囲を一気にうち滅ぼす黒い魔法。それは永遠の廊下を内側から破壊し、永遠の眠りを与えることとなった。

 

「内側からシンプルに破壊か。できるなら、一番いい方法だよね。この悪魔、本来それができないはずなんだけどね」

「ミストルティン」

 

 マキマに次の種を与えるつもりはない。

 魔導書が作り上げた魔法陣より、銀色の矢が降り注ぐ。

 命中すれば、無限の凍結に閉ざされるそれ。だが、それさえもマキマへは届かない。無数の怪物たちがマキマを守るように召喚され、その身に受けていた。

 

「十年使用」

 

 マキマが告げると、その手に光り輝く槍が注がれてくる。まるで天使の降臨とも錯覚できる現象とともに握られたそれを見た途端、油断ならなない威力だとキャスターの赤い目が語った。

 キャスターは両手を広げる。

 それぞれの手に黒い三角形の魔法陣が出現、それぞれ黒い光線が放たれた。

 それは投げられた槍と相殺、空中で掻き消えていった。

 発生する爆炎。だが、その中ですでにキャスターはすでに次の手を発動していた。

 ただ無言で、マキマの頭上のそれ(・・)を突き落とす。

 人間の肉体を簡単に貫通する岩石。いつの間にかマキマの脳天を叩き割るように配置されていたが、岩石が押しつぶしたのは無数の手だった。

 白い、無数の手が集まりあたかも蛇のような細長い形を形成している。そしてその頭部は、まるで舞子のような笑顔が張り付けられていた。

 

「ディバインバスター」

 

 それに対し、キャスターは魔法陣を展開。桃色の光線が、迫る幽霊を浄化する。

 一方、すぐ背後からキャスターへ迫る牙があった。

 狐。凶悪な面構えをした獣が、キャスターの背面へ食らい付こうとしていた。

 だが。

 

「……我が守護騎士たちよ」

 

 キャスターの足元に魔法陣が展開する。

 だが今回のそれは、魔法という攻撃手段ではない。それぞれ人と獣の姿となっていき、やがて形をした魔力の塊となる。

 剣を構える、桃色の剣士。烈火の将。

 鉄槌が自慢の紅の騎士、紅の鉄騎。

 フォーメーションの背面を担う、風の癒し手。

 唯一獣の姿をしている、蒼き狼。

 それぞれに目を配り、マキマは目を細めた。

 

「なるほど。君にも優秀な眷属がいるんだ」

 

 四つの魔力は、それぞれの武器を振るい、迫る狐を搔き消す。その背後で、キャスターは静かに目を細めた。

 

「眷属……」

 

 その言葉に、キャスターは眉をひそめる。だがマキマは構わず、顎に手を当てた。

 

「でもそれ、本物じゃなさそうだね。君の力だけで再現した偽物ってところかな?」

「お前にはこれで十分だ」

 

 キャスターの言葉とともに、剣士と鉄騎がマキマへ迫る。

 マキマはそれぞれを退避し、大きく跳躍。指で銃を作り、構えた。

 

「ばん」

 

 だが、不可視の弾丸はもはやこの場では決して優位にはならない。風の癒し手が作り上げた防壁が、その弾丸を完全に防いでいた。

 そうしている間に、剣士と鉄騎の攻撃は続く。それぞれ避け続けているマキマだったが、背後に気配を感じ、指の銃を即座に向けた。

 だが。

 

「犬は、攻撃できないな」

 

 その言葉が本心なのか、それとも余裕なのかはキャスターには分からない。

 蒼き狼の攻撃に対し、マキマが選んだのは反撃ではなく防御。一閃により、マキマの体勢が大きく崩れたその隙に、剣と鉄槌が挟撃を狙う。

 それぞれを紙一重で回避するマキマ。だが、掠ったのだろうか。彼女の額に血が流れだしていた。

 

「ふうん……数としても不利だね。だったら、こっちも同じことをするしかないかな」

 

 マキマはそう宣言する。

 すると、頭の傷口からゆっくりと滲み出てくるものがあった。

 その色合いや雰囲気から、それが脳髄だと推測した途端、キャスターの表情が少し陰る。

 対外に出てはならない臓器は、そのままマキマの頭上で輪を描く。まさに、天使の天輪のような形をしていた。

 さらに、マキマの体からは無数の鎖が出現する。それは、虚空より無数の肉体を引きずり出した。

 空を埋め尽くさんとするばかりの数に、キャスターは目を細めた。

 

「……アウラ以上のネクロマンサーだな」

「ああ。そう言えば、死体が喋っている、だなんて言われたこともあったね」

 

 鎖につながれた死体___スーツを着合わせていることから、公務員だろうか___が一斉に動き出した。

 それぞれが契約する悪魔の力を行使し、守護騎士たちと激突。一つ一つが地上の戦いと匹敵する勢いの衝撃で、無数の火花が青空を彩っていく。

 

「ふん……ッ!」

 

 お互いの配下たちの戦いの傍ら、キャスターは両腕を広げる。

 ディアボリックエミッション。だが、広範囲を一気に焼き尽くすこの技も、マキマの接近及び格闘により防がれてしまった。

 無数の魔法と、マキマの無数の怪物たち。無尽蔵なバリエーションの戦いが続いていく。

 それは地上の者たちからすれば、雲の向こうで神々が戦っているようにも思えただろう。

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