Fate/WizarDragonknight 作:カラス レヴィナ
『チョーイイネ スペシャル サイコー』
「魔楽章 デーボスフィニッシュ!」
ドラゴンと恐竜が同時に吠える。
それぞれの口から放たれる息吹が激突し、爆発が次々に引き起こされていく。
「ぐっ……」
「ふん……ッ!」
赤い炎に紺のオーラが混じりっていくのを見送りながら、ウィザードはデスリュウジャーの戦意が未だに衰えていないことに辟易とする。
「アンタ、まだやる気……だよな」
「フン。まだだ……!」
デスリュウジャーは剣を折り、ブーメランにしてくる。
「またか……ッ!」
ウィザードはソードガンで応戦。
だが、持ち主の凶暴さが乗り移ったかのように、ブーメランは何度弾かれようが執拗にウィザードへ迫ってくる。
やがてウィザードは全身を切り刻まれ、その都度火花が散る。
ならば。
『コネクト プリーズ』
空間を繋げた先は、デスリュウジャーの背後。
盾のように目の前に生成した魔法陣は、ブーメランを持ち主であるデスリュウジャーへの攻撃と一転する。
だが、動物的な本能が危険を察知したのだろうか。すぐに振り向いた紺色の戦士は、爪でブーメランを弾き上げ、その手に再び収める。
「ほう……」
デスリュウジャーが次の手を打とうとしている。
ウィザードが次の動きを警戒していると、大きな破砕音が響いた。
「こ、今度は何だ……!?」
巨人の足元で巻き起こった大きな粉煙。
瓦解した見滝原市役所だったものが、その底にあったものによってより粉々になっていたのだ。
そして、それを引き起こしたのは。
「ブライ……! それに、キング市長……!」
紫の光を全身から放つブライだった。
彼は変わらず、両手に握った剣でキングと切り結んでいる。
超古代の技と剣だったが、どれだけ打ち込んでもキングにとっては余裕を崩す要素になり得ない。
だが、彼らの戦いはそのまま移動してくる。
その先にいたのは、デスリュウジャー。紺の獣を巻き込みながら、剣を交差していく。
「お前たち……!」
いきなり戦況が変わったが、デスリュウジャーはどうやら相手がウィザードである必要性はないようだ。そのままウィザードのことなど忘れたように、古代、錬金術の剣と火花を散らしていく。
やがてウィザードの目の前では、全ての参加者を敵に回す者たちがそれぞれに剣を向けていた。
「ブライナックル!」
やがて面倒になったのか、ブライの腕から紫の拳が放たれた。
無数の拳が飛び交う。ムー以外の全てを敵とみなす彼が、ウィザードが巻き込まれる考慮をするはずがない。
「くッ!」
「フン!」
「フッ!」
三者三様に剣を振り下ろし、ブライの黒い攻撃が叩き切られる。
「さて。色々と状況も面白くなってきたが、君のことは私も知らないな」
キングは、その目でデスリュウジャーを睨む。
「新たなサーヴァント……ふむ。他の者たちの様子から、どうやらマキマが破れたようだな」
言葉では大事を意味しているが、それを語るキングの表情は平然そのものだった。
「彼女の支配が解かれた今尚ウィザードと戦っているところを見るに、人間ではないようだな」
「人間などと一緒にするな。お前こそ、人間とは思えないな」
「誉め言葉として受け取っておこう。キング・ブラッドレイ。この見滝原の市長をしている」
「この地の支配者か。俺はデスリュウジャー……Dだ」
「デスリュウジャー。随分と物騒な名前だ。君も私との手合わせを望むのかね?」
その返答は、刃先。
キングの、そのウロボロスの形をした瞳が周囲の新たな敵を見据えている。
「……化け物だな、お前」
デスリュウジャーが吐き捨てる。
フルートバスターを構えなおし、息を吐く。
「君も変わらず私に向かってきたまえ」
キングの刃先が向かうのは、ブライ。彼もまた、敵意が全く衰えていない。
だが、この緊張を震わせる衝撃があった。
巨人の地ならし。
変わらず無数の参加者たちと戦い続けている最大級のサーヴァントの余波は、彼らの戦いを阻害するほどだった。
どちらを優先して止めるべきか。
一時的に迷いを感じるウィザードを我に返させたのは、大地を揺るがす振動だった。
すぐ背後では、超大型巨人の猛攻が強まっている。巨大な筋肉の塊が一度腕を振るえば、巻き込まれた参加者たちが次々に宙を舞い、地面に落ちていく。
「やっぱりあっちが先か……!」
「フン」
一方、デスリュウジャーもまた同じく巨人を見上げている。一度ブライとキングの攻撃を完全に切り崩し、ベルトから何かを取り出した。
それは電池。先ほどから何度も攻撃などに使用しているそれのスイッチを入れ、デスリュウジャーはそのまま虚空へ投影した。
すると、電池は巨大化。その直下に何か幻影のようなものを生成していく。
「なんだアレ……?」
その色合いは、デスリュウジャーと同じく紺。頑丈な足と、等しいほど長い前足。そして、それに見合うように細く長い胴体が形成されていく。そして一番の特徴として、その背に大きな帆が備え付けられた。
「も、もしかして……恐竜!?」
ウィザードが声を上げた。
その姿はまさに古代より蘇った恐竜そのもの。スピノサウルスを模して造られた怪物は、産声を上げるように口を開け、その口に巨大化した電池が突き刺さる。
『ガブリンチョ トバスピノ』
「行け、トバスピノ……! 幻影なのが残念だがな」
トバスピノと呼ばれた恐竜は、大きく吠えながら超大型巨人へ飛び掛かる。太く頑丈な両足で蹴り飛ばし、体を回転させて背中の帆で切りかかる。
確かに超大型巨人は大きく怯んだが、それでもまだ戦意は途絶えない。
巨大戦と等身大。この状況で被害が大きい方がどちらかなど、考えるまでもない。
ウィザードと同じ考えを持っているのは、仲間たちも同じだ。
圧倒的な物量差に気圧されながらも、可奈美たちが超大型巨人と巨大恐竜にそれぞれ立ち向かっている。
「可奈美ちゃん! みんな!」
ウィザードの呼びかけに、仲間たちが一斉に振り向く。
「ハルトさん!」
「大丈夫? みんな」
「松菜さん、あの旧復元スピノサウルス・エジプティアクスは一体どこから……!?」
「きゅ、きゅう……何?」
さらさらと長い古代生物の名前を口にするえりかに目を白黒させながら、ウィザードはトバスピノを見上げた。
よく見れば、恐竜というよりもロボットのようにも見える外観。だが、その伸縮性あふれる表皮や活発な運動性は、ロボットのようにはとても思えなかった。
トバスピノの甲高い咆哮が響く。
だがその中、巨人と恐竜は互角に渡り合っていく。剛腕に噛みついたトバスピノだったが、超大型巨人は全身で振り払い、恐竜を投げ飛ばす。
だが、その大きさにも関わらず、トバスピノは身軽だ。空中で身をひるがえし、垂直に点を目指すビルを足場にジャンプ。そのまま超大型巨人に飛び掛かり、押し倒した。
その途中経過で、果たして何度地面が揺れただろうか。無数の参加者がいる足場に構わず、トバスピノは地面を踏み叩き、超大型巨人へ迫っていく。
その細長い大顎を、超大型巨人は受け止めた。二つの膨大な質量同士が激突し、周囲の参加者たちが木の葉のように吹き飛んでいく。
「ぐっ……!」
ウィザードがいる場所が、比較的離れていることが幸いした。だがそれでも、襲い来る衝撃は並の人間では立っていられないほどだ。現に、隣でえりかが最大限に盾を展開しているが、そこから襲ってくる風圧を見れば、人間など簡単に飛んで行ってしまう。
「見せてやる……」
そんな嵐の中、デスリュウジャーの声が語る。
ブライ、キングの戦いを一時的に離れたのか、彼は剣をフルートのように持ち変えており、その先端に口を近づけている。
そして成される演奏。音色によって動く恐竜たちは、デスリュウジャーの音楽のもと、一つになっていく。
「強制かみつき合体」
デスリュウジャーはその合図とともに、フルートバスターの曲調を変える。
トバスピノがより強く吠える。
すると、大地を抉り、新たな恐竜たちが姿を現す。
「今度は何だ!?」
「アンキロサウルス・マグニヴェントリスとパキケファロサウルス・ワイオミンゲネシスです!」
「何でえりかちゃんそんな長い名前スラスラと出てくるのッ!?」
えりかの記憶能力に驚愕していながらも、状況の変化は進む。
水色と灰色の恐竜たち___トバスピノと同じく、こちらも機械のような体つきをしている___が、それぞれトバスピノの首と腰に噛みつく。
すると、それぞれの機構が変化していく。前足後ろ足に連なる黄色いパーツが一直線になるように折りたたまれ、まるで二頭の恐竜たちが腕のように変形していく。
そして、トバスピノの帆が外れる。帆は左右に展開され、スピノダイオーの腰に装着され、帆があった場所にはサングラスを付けた巨人の顔が現れた。
その頭部に象られた三日月の形をしたメットと、サングラスの光があらゆる参加者を冷たく見下した。
そんな新たな巨人の誕生を祝うようなファンファーレがどこからともなく聞こえてくる。
紺色の巨人は、大きく吠える。
自らに近い大きさの敵を見定めた超大型巨人は、他の小さな参加者には目もくれずに戦いだす。
巨人と巨人。大地を揺るがし、もはや聖杯戦争の枠組みに捉えていいか分からない戦いに、ウィザードを含め全ての参加者は唖然とする他なかった。