Fate/WizarDragonknight   作:カラス レヴィナ

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巨人たち、キングたち。
彼らは見滝原北を舞台に、戦いを続けていた。


呼応

 巨人たちの腕が上がれば、何かしらの建造物が消滅し、体が動けばインフラが壊される。

 もはや見滝原北は、二体の巨人が戦うグラウンドとなっていた。

 

「おい、今度はあれを止めろってのかよ……! この一時間で何回慌てさせるんだよ! 変~身!」

 

 金の魔法陣により出現したビースト。

 並び立ったウィザードは頷き、巨人たちの取っ組み合いを見上げた。

 

「まあ、一刻も早く止めないと、見滝原が焦土になるのも時間の問題だ」

「笑えねえ……で、どっちから倒すとかあるか?」

「正直どっちも放っておけないからなあ」

 

 ウィザードがそうぼやいていると、巨人たちの頭上から無数の爆弾が落下する。それぞれの肩にぶつかり、巨人たちの動きが大きく鈍った。

 

「あれは……!」

「ほむらだ!」

 

 暁美ほむら。

 近くの建物から、無数の銃火器を打ち鳴らす。爆弾だと誤認するほどの大量の銃弾が、巨人たちの気を引いていたのだ。

 動きが止まる二体の巨人。邪魔な彼女を先に始末することにしたのだろう、巨人たちはそれぞれの腕を振るった。

 だが、その動きは自由にはいかない。二体の巨人の足場を邪魔するように、無数のちり芥集まり、動きを阻害していた。

 まだ名前も知らないメイド。彼女がその未知の技術を用いて土砂を動員し、足場を固めていたのだ。

 だが、巨人たちが大きく足を振り上げると、それは哀れ粉々に砕けていく。さらに、狙いを完全に相手の巨人から小さな邪魔者に切り替え、そちらへ攻撃の手を加えていく。

 超大型巨人はほむらへ。スピノダイオーはメイドへ。

 

「ハルト!」

「分かってる!」

 

 ウィザードとビーストは、それぞれ近い方へとジャンプ。

 ビーストはすぐにほむらと合流し、それぞれが持つ遠距離攻撃で超大型巨人と応戦している。

 彼女の手から投げられた手榴弾が、ちょうど迫ってきた巨人の顔面に炸裂する。

 連続して巻き起こる爆発。仮に各部位の重要性が人間と同じならば、これは大ダメージに違いないはずだが、煙から現れたあとの様子を見るに、効果はさほど期待できない。

 

「大丈夫?」

 

 一方、ウィザードはメイドのところまでたどり着いていた。

 スピノダイオーの無数の謎技術が火を噴いており、メイドが作った土の魔法をいとも簡単い切り崩していった。彼女を掴み、そのまま飛びのくのが間に合ったのは奇跡以外の何者でもない。

 

「ウィザード……」

 

 一瞬呆けた表情のメイドは、自らの身の安全を確認し、安堵のため息をついた。

 

「……礼は言わないぞ」

「別にいいけど、君平気?」

「何がだ?」

「何がって……全身傷だらけだけど、自覚ないの?」

 

 おそらく、言われてから気付いたのだろう。

 メイドは、自らの体を見降ろした。

 整然としていたときの名残りなど今やほとんど残っておらず、全身傷だらけになっている。白かったフリルも煤に汚れており、もはや黒一色と言っても遜色ない。

 

「こんなもの、どうとでもなる。それより、奴らはなんなのだ。何が何だかさっぱりわからん。なぜ見も知らないキサマを猛烈に憎んでいたのか、なぜいきなりこの場にいたのか、もう頭がおかしくなりそうだ!」

 

 敵の目前だというのに、メイドはうなされていく。

 彼女を何とかなだめようとするが、すでにスピノダイオーの鉄槌が迫ってきている。

 

「悩むのは後にしてくれ!」

『チョーイイネ キックストライク サイコー』

 

 防御として、ウィザードは最強の魔法を発動させる。その場で即逆立ちして、一気に跳ね上がる。

 ウィザードの最大火力。それでも、あの巨体にすれば通常攻撃との匹敵にすぎない。

 お互いに反発しあい、ウィザードとスピノダイオーは互いに後退する。

 だが、スピノダイオーはすぐさま次の攻勢に入る。振るわれた鉄球が、すさまじいスピードで迫る。

 

「ええいっ! 邪魔だ!」

 

 一方、メイドが怒りのあまり声を荒げる。

 彼女の感情に呼応して、地面から這い出たゴーレムが、鉄球の一撃を防ぎ、砕けた。

 

「はあ、はあ……ウィザード! とにかく、キサマは今私と敵対の意志はないと考えていいんだな!?」

「あ、うん。いいよ!」

「だったら、もういい! この場を切り抜けるために力を貸せ!」

「喜んで!」

『ランド ドラゴン』

 

 ウィザードは土の指輪に変更。琥珀色の魔法陣が身を包み、ランドドラゴンが顕現した。

 

「顔は後で見せるよ。俺、松菜ハルト。君は?」

「キサマの顔に興味などないが……信頼を得るには、明かす他ないか。(リン)だ。燐・ヴィスポーズ。ネビュリス皇庁が第二王女、アリスリーゼ・ルゥ・ネビュリス九世の側近だ」

「……ごめん。専門用語がさっぱり頭に入ってこないんだけど。ええと、燐ってのが名前でいいんだよね?」

「バカにしているのか?」

「してないっ!」

 

 そこまで言ったところで、スピノダイオーの攻撃が迫っていた。

 同時に回避し、ウィザードと燐は互いにそれぞれの魔法を発動させる。

 

「はああ……!」

 

 ウィザードのローブから溢れ出る大地の魔力。

 隣の燐と混ざり合い、彼女のゴーレムにさらなる硬度が与えられる。スピノダイオーのほんの十分の一程度の大きさながら、今度はその攻撃を受け止めることができるほどだった。

 

「ぐっ……! これは……!」

「特性が近いから、俺たちの魔力が呼応しているんだ! 燐さん、しばらくそのままでお願い!」

「何をする気だ!?」

 

 燐の問いに答える時間はない。

 ウィザードはすぐさま、右手に新たな指輪を付け替える。粗削りだが、同じ属性の魔法を合わせればより強力なものになる。

 

『チョーイイネ スペシャル サイコー』

 

 ウィザードの両腕に装備されるドラゴンの鉤爪(ドラゴヘルクロー)

 膨大な魔力を制御し、ゴーレムに一気に注ぎ込む。すると、土の塊の巨人に、琥珀色の血管が浮き彫りになっていった。

 

「お、おおっ……!」

「これでいけるか?」

「無理ならもう蹂躙される他ない。行くぞ!」

 

 燐がゴーレムの肩に飛び乗った。

 彼女の指示に従い、巨大な土人形は動き出す。スピノダイオーの足にしがみつき、その進撃を止めた。

 だが、それでもスピノダイオーの動きは止まらない。

 足元のウィザードと燐の両方を、一気に投げ払おうとしてくる。

 だが、先ほどまでとは状況が大きく違う。

 二人分の魔力が内包されているゴーレムは、たとえ小さくてもその馬力は化学反応のように跳ね上がっていた。スピノダイオーを少しずつ押し返していく。

 業を煮やしたのだろう。スピノダイオーは力比べではなく。質量でゴーレムを突き飛ばそうとしてきた。振り下ろされた腕が、そのままゴーレムを狙う。

 だが。

 

「バインド!」

 

 その動きが、黒い拘束によって止まった。

 

「キャスター……!」

 

 頭上で浮遊しているキャスターが、スピノダイオーの腕に向けて手を伸ばしていた。彼女の黒い魔力が綱となり、スピノダイオーを拘束している。

 味方になってくれる最大戦力の帰還にウィザードは一時心を躍らせたが、その姿を見て一瞬唖然としてしまった。

 

「キャスター……? その姿は……?」

 

 満身創痍。それ以外の言葉が見つからなかった。

 黒い甲冑はあちらこちらにヒビや汚れが目立ち、長く美しい髪はボロボロになっている。

 

「気にする、なッ!」

 

 少し声を張り上げながら、キャスターは腕を大きく引く。彼女の全力に、スピノダイオーは大きく転倒した。

 ゆっくりと着地したキャスターは、大きく息を吐いた。

 彼女がここまで疲弊している姿を見るのは、初めてだと感じた。

 

「大丈夫か? すごい疲れているけど」

「……マキマに存外苦戦した。奴はすでに倒したが……」

「そう……」

「それよりウィザード……」

 

 若干ふらふらになりながら、キャスターは腕を伸ばした。

 

「お前のものだろう?」

「これって……!」

 

 キャスターから手渡されたそれを見て、ウィザードは言葉を失った。

 

「結梨ちゃんの……指輪……」

「マキマからの戦利品だ。最も、魔術回路が壊れていて、私にはガラクタ同然だったがな。持ち主のお前なら、本来の役割が果たせるかもしれないと思って持ってきた」

「いや……ありがとう」

 

 キャスターの予想は大きく外れている。

 もともと、指輪を作る際の失敗作だ。魔法の発動も出来ず、何の役にも立たない。

 だがこれは、魔法使いに憧れを抱いた少女のお気に入りとなったのだ。生み出された父親に好き勝手に材料にされた少女の、ただ一つのオリジナリティ。

 こんなことをしている場合ではないのに、ウィザードはただその言葉を止めることができなかった。

 ただ、無意識に力を込めて、その指輪を握りしめていた。

 そして。

 

「……これは?」

 

 ウィザードは気付いた。

 ボンドルドの錬金術に巻き込まれ、キャスターとマキマの戦いの余波を存分に受け。この指輪は結梨に渡したときのようなただの魔力のない指輪ではなくなっている。

 言うなれば、数多の技術の余波を受けて進化したのだ。

 まるで呼びかけたかのように、ホルスター及び左手の指輪が浮かび上がっていく。火、水、風、土。四つの指輪が示し合わされたかのように等間隔に円を描き、魔法陣を作り上げていく。

 キャスターの桁外れの魔力と、マキマの同じく桁外れの能力値により大きく拡張した魔力の内包量。そこへ、四つの指輪からのエネルギーがだんだんと注がれていく。

 そしてそれは、指輪そのものにも変化をもたらしていく。小さく丸い形状から、縦長に発展し、指にではなく、手そのものに付け加えるのに適したものへとなっていく。

 ウィザード、キャスター、マキマ。

 錬金術で拡張された下地に聖杯戦争で三大といってもいい魔力を持つ者たちの力を蓄えたそれに、ドラゴンを象った部品が生成されていく。

 最後に、一番の特徴が備え付けられる。時計を模したような円形のもの。魔法陣がそのまま立体となり、ドラゴンのオブジェが見守る先に設置されたのだ。

 いつしか変身が解除されたハルトの手に、それは音もなく落下した。

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