Fate/WizarDragonknight   作:カラス レヴィナ

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2章前半時   尺余り過ぎィ!
今       尺足りねえ!


溶原性細胞

「号外! 号外!」

 

 そんな声に、ハルトは足を止めた。

 いつの間にかハルトとクトリは、見滝原西駅まで来ていた。

 ラビットハウスの最寄り駅であり、少し大きめな駅であるそれは、ハルトにとってもう見慣れた場所であった。

 

「何だ?」

 

 群がる人だかりに好奇心を刺激されたハルトは、彼らに並び、号外を受け取る。

 

「何ですか?」

「何だろ……お?」

 

 その号外に、ハルトは言葉を失った。

 

『アマゾンの正体』

『人間がその正体と思われる』

『アマゾンの死骸より回収した細胞からは、人間の細胞が見つかった。研究により、アマゾンは人間が変異したものだということが判明した』

「やっぱり……」

 

 その文章を読んでも、ハルトは驚かなかった。むしろ、これまでのアマゾンたちのことから、そうではないかと思っていた。

 

『現在、見滝原中央病院を中心に研究が進められている。もしもアマゾンを見つけた場合、速やかに通報し、避難すること』

「避難か……」

 

 あの運動能力を持つアマゾンから逃げられる人が果たして何人いるのだろうか。と思いながら、ハルトは記事の続きに目を通した。

 

『この、人をアマゾンにしてしまう細胞について、見滝原中央病院の院長、フラダリ院長はこうコメントした』

「フラダリさん……」

 

 クトリが、そこに記されている名前を呟いた。

 それに構わず、ハルトは続きに目を通す。

 

『今回の件は、当院を中心に起こっております。皆様が当院に原因があると考えるのは理解できます。当院のプライドにかけて、アマゾン細胞の究明に尽力します』

 

 そして、アマゾンへの変化に関して、こう書かれていた。

 

『我々は、この人間を変質させる細胞を、溶原性(ようげんせい)細胞(さいぼう)と名付けました』

 

 

 

「うう……」

 

 千翼は後悔した。

 友奈から逃げるように離れたことではなく、この狭い裏路地に逃げ込んだことに。

 

「おいゴラァ! ぶつかってきてごめんなさいもなしたぁいい度胸だな!」

 

 そう詰め寄ってきたのは、ボロボロの学ランを着たリーゼントの少年。大柄の図体により、まだ子供の千翼にはまるで山のようにも思えた。

 

「ぶ、ぶつかってきたのはそっちだろ!?」

 

 少し怯えながら、千翼は敵意をむき出しにした。だが、それを見下ろしたリーゼントは、前置きなくグーで殴ってきた。

 

「がっ!」

 

 咄嗟の防御などできず、体がふらつく。

 リーゼントはさらに千翼を蹴り飛ばす。狭い路地のごみ箱に激突し、中身が散らかった。

 さらに、リーゼントはノータイムでリーゼントが、千翼の胸倉を掴み上げる。

 

「ぐっ……あっ……」

「オレはこれでも見滝原じゃちっと名の知れたワルでな? お前のようなクソガキ、百回殺せるんだよ?」

「よっ! アニキカッコイイ!」

 

 気分がよくなった。そんな顔をしたリーゼントは、そのまま千翼を叩きつける。

 

「がはっ!」

 

 背中を強打し、千翼は動きを止める。

 

「おらっ! 立てよ! 金を出せば許してやっからよ!」

「な……ないです……」

 

 弱弱しい声で、千翼は言った。それに対し、リーゼントは「ああ?」とにらみ、

 

「だったら! ぶつかってきた迷惑料の分、殴らせてもらおうか?」

「っ……!」

 

 千翼は恐怖を感じ、リーゼントに背を向ける。だが、いつの間に回り込んだのか、弟分が千翼の逃げ道を塞いでいた。

 

「まあまあ待てって」

「放せ!」

 

 千翼を捕まえた弟分は、にやにやと千翼の両肩を掴む。

 

「アニキがあんさんと、お話したいってさ!」

 

 小柄な体系からは想像もつかない腕力で、弟分は千翼を投げ飛ばした。キャッチボールそのままに、千翼の身柄は再びリーゼントの元へ。

 

「ホームラン!」

 

 そのまま、流れてくる千翼を殴り飛ばそうとするリーゼント。その拳は、千翼の顔面にジャストヒットする。

 

「ぐあっ!」

 

 短い悲鳴とともに、千翼が地面に倒れる。台となった木箱も粉々になり、一部が刺さったような痛みを残す。」

 さらに千翼の口の中に、異常な痛みが走る。

 

「歯が……折れた……」

 

 感じたことのない箇所の痛み。折れた歯の欠片が、千翼の手に零れた。

 

「痛ってえなあ!」

 

 それは、殴ってきたリーゼントからの声。手をふる彼の手もまた、出血していた。千翼の折れた歯が刺さったのだろうと理解できた。

 

「このやろう……どうしてくれんだ? ああ?」

「アニキ!」

 

 弟分がリーゼントに駆け寄る。

 

「アニキ、大丈夫ですかい?」

「ああ……何てことねえ。唾つけときゃ治る」

 

 今のうちに逃げよう。

 そう、動く千翼だが、痛みのあまり、動けない。

 

「お、おい! アイツを逃がすな!」

「はい!」

 

 そんな会話が聞こえてきた。だが千翼は構わず、匍匐(ほふく)前進で遠ざかろうとする。

 その時。

 

「……え?」

 

 千翼は動きを止め、振り返る。

 相変わらず二人の不良。彼らは、千翼が止まったことに、喜びの表情を浮かべていた。

 

「観念しろ」

「やっちゃえアニキ!」

 

 腕をゴキゴキと鳴らすリーゼント。だが、もう彼らの会話は、千翼には聞こえていなかった。

 千翼はリーゼントを指さし、言った。

 

「ア……アマゾン!」

 

「ああ?」

 

 その言葉に、二人の不良は固まった。

 そして、二人は同時に、腹を抱えて笑い出す。

 

「な、何を言うかと思えば! アマゾン? オレたちが、今話題の怪物のアマゾン!?」

「コイツ、怖くて頭おかしくなっちまいましたぜアニキ! だったら、このガキ食っちまいましょうよ!」

「違いねえ! こいつは傑作だ……」

 

 その時。千翼は見た。

 リーゼントの首元に浮かぶ、黒い血管を。

 その瞳が、人間のものからどんどんどす黒く変色していくのを。

 

「熱っ! あ、アニキ……?」

 

 蒸気という変化に気付いたときにはもう遅い。リーゼントのアニキは、笑いながらその体を、徐々に変質させていた。

 

「なあ、コイツ……も……う……食っちゃおうぜ……

「アニキ? ……アニキ! アニキ‼」

 

 煙から現れたアニキは、もはやアニキではない。弟分を壁に押し付け、そのまま首元に食らいつく、人型の生命体。

 

「アニキイイイイイイイイイイ_________」

 

 思わず千翼は、目を背ける。弟分の悲鳴を塗りつぶす、グチャグチャという人体破壊音。

 ドサリという音に目を開けてみれば、リーゼントの学ランを着た怪物。黄色いボディと、肩からの翅が目立つ、まさにスズメバチを連想させる怪物。

 ハチのアマゾンだというのなら、ハチアマゾンと呼称するべきか。

 ハチアマゾンは、肩と首を捕食し、命を奪った弟分から離れる。

 

「_______!」

 

 ブーンという羽音とともに、ハチアマゾンは千翼に襲い掛かる。

 全身を奮起させ、立ち上がった千翼は、ハチアマゾンの攻撃を避け、逃げ出す。狭い路地に転がるゴミ箱、箱、物。全てを投げつけるも、ハチアマゾンの動きは止まらない。

 やがて、表通りへ出た。それはつまり、自身を狙うハチアマゾンもまた外に出てしまうということである。

 

「ば、化け物だ!」

「助けて! アマゾンよ!」

 

 初めて見るのであろう、アマゾンの姿に、衆人はパニックになる。我先にと逃げ出すが、それは飛び上がったアマゾンにとってはビュッフェと変わらない。

 手始めに、転んだ青年を捕食。続いて、その恋人らしき女性を捕食。黄色の捕食者により、犠牲者は一人、また一人と増えていく。

 

「や、やめろ!」

 

 千翼が、震える声で怒鳴る。ふらふらと立ち上がり、捕食を終えたハチアマゾンを睨んだ。

 ハチアマゾンは、次の狙いを改めて千翼に定めた。ブーンと翅を鳴らし、千翼へ迫る。

 

「危ない!」

 

 その時。

 飛び出した誰かが、千翼の体をアマゾンの狙いから反らした。空を掻いたアマゾンは、こちらを見返す。

 

「はっ!」

 

 流れるようにアマゾンを蹴り飛ばす、その人物。千翼よりも華奢な体と赤毛を持つ彼女に、千翼は目を合わせられないでいた。

 

「千翼君、大丈夫?」

「別に……どうでもいいでしょ?」

 

 むすっと答える千翼。あははと笑いながら、友奈はハチアマゾンと相対する。

 

「……アマゾンになった人、元に戻せないんだよね」

「別に、悪い奴なんだから、いいじゃん」

 

 千翼はむすっと言った。だが、友奈は首を振る。

 

「違うよ。誰だって、他の誰かの大切な人なんだから。きっと、このアマゾンになってしまった人だって」

「……ふん」

「だから、私はこの悲劇を繰り返させないために、誰かの大切な人を倒す!」

 

 友奈はそう言いながら、ポケットからスマートフォンを取り出す。そのままアプリを起動させると、彼女の周囲に桜の花びらが舞った。

 

「だから私は、こんな、アマゾンなんて、絶対に止めて見せる!」

 

 彼女の体が、桃色に隠れて見えなくなる。霧散と同時に、勇者となった友奈が、ハチアマゾンへ挑みかかった。

 だが、ハチアマゾンは上空へ飛び上がる。ブーンという音とともに、それは一瞬で友奈の攻撃圏外へ出た。

 

「そんな……っ!」

 

 さらに、ハチアマゾンのヒットアンドアウェイ。友奈は一方的に攻撃を受ける他なくなってしまった。

 やがて、彼女はハチアマゾンを受けきれなくなり、地面に転がった。

 

「あ」

 

 他人事のような声を上げながら、千翼は友奈がハチアマゾンの餌食になる瞬間を眺めていた。

 そして、勝敗が決まる、まさにその時。

 

『ハリケーン プリーズ フー フー フーフー フーフー』

 

 緑の風が集い、魔法陣となる。それを突き抜け、現れたのは緑のウィザード。

 ソードガンを逆手持ちに、ハチアマゾンの脳天に叩き込んだ。

 

「___________!」

 

 突然の乱入に、ハチアマゾンは抵抗も許されずに地面へ投げられる。

 

「大丈夫?」

「ハルトさん!」

 

 形成が逆転し始めた。復帰した友奈も猛攻に加わり、ハチアマゾンを追い詰めていく。

 しかし、アマゾンの機転に、千翼は感心した。

 地面に転がる、死体(人の体)。それを盾にすると、ウィザードも友奈も攻撃の手を止める他がなかった。

 そして、それは一転攻勢の合図。両腕から生えた毒針を防ぐのに、二人は手一杯になった。

 

「千翼!」

 

 クトリに助け起こされるまで、千翼は自らが置かれていた状況が分かっていなかった。

 

「姉ちゃん……」

「千翼……」

 

 彼女の目が、千翼へ語っていた。

 むすっとした千翼だが、ため息とともに立ち上がった。ちょうどその時、すぐ目の前にウィザードが着地した。

 

「千翼くん? 速く離れて!」

「……」

 

 むっとした千翼は、クトリの手を離し、ウィザードの前に立つ。

 

「千翼くん!?」

 

 驚くのはウィザードだけではない。ハチアマゾンから千翼の真横まで退避してきた友奈も驚いている。

 

「どうして逃げないの!? 危ないよ!」

「うるさい……」

 

 千翼は、どんどん声が大きくなっていった。

 

「うるさいうるさいうるさい! どいつもこいつも! 俺のことを子ども扱いして!」

「千翼くん?」

「フラダリ院長も俺のことを外に出してくれないし、姉ちゃんは何も言わないし! 俺だって、戦えるんだ!」

「戦える?」

 

 その言葉にウィザードが首を傾げたが、無視した。

 そして。

 千翼は、それを取り出した。

 

「……」

 

 その手に握られた、赤い、眼のようなパーツの機械。腰に巻き付けると、それはまるでベルトとなる。

 さらに手に持った、注射器のような小さな器具。それを、ベルトの眼の部分に差し込み、傾ける。

 注射器のスイッチを押すと、ゴクッ ゴクッと、液体が流れる音がする。

 さらにそれにより、千翼の眼が赤くなっていく。

 

『NEO』

 

 静かに千翼は、背後のクトリへ振り向く。静かに頷いた彼女を確認した千翼は、叫んだ。

 

「アマゾンッ!」

 

 紅の炎。それが、千翼の体を焼き尽くす。

 やがて千翼の体は、人間のそれとはどんどん違うものへと変貌していく。やがて千翼の紅の炎の下は、肌色から青色へ変わっていく。

 そして。千翼は、変わった。

 千翼という、反抗期の少年から。

 バーサーカーのサーヴァント。

 真名 アマゾンネオへ。

 変身したのだった。

 

「ああああああああああああ!」

『アマゾン スラッシュ』

 

 その右手の刃が巨大な剣となった。その獣の跳躍力で、アマゾンネオはハチアマゾンに肉薄。その胴体を、チョップ一つで両断した。

 悲鳴すら上げられないまま地面に落ちた、アマゾンだったもの。それを見下ろしながら、アマゾンネオはそのベルトを外す。

 黒く変色したアマゾンネオは、その体を崩壊。崩れたシルエットは、千翼へと戻っていった。

 




まどか「さやかちゃん!」
さやか「おお、まどか」
まどか「一緒に帰ろう!」
さやか「おお! ……あ、でもやっぱり恭介が心配だな……」
まどか「今日もお見舞い? でも、今病院って入れるの?」
さやか「分からないけど、動けない人だって少なくないみたいだし、入れないとそれはそれで問題じゃない?」
まどか「そう。でも、上条君の腕良くならないの?」
さやか「最近は良くなってるって聞くけど。ねえ、まどかも久しぶりに一緒に行く?」
まどか「私はいいよ。でも、さやかちゃんが上条君と一緒にいたいんじゃないの?」
さやか「あたしは平気! よし! それじゃあ、まどかも行くことが決まったところで、今日のアニメ! どうぞ!」
まどか「あれ? 私、邪魔だろうから行かないって意味で言った……



___ふわふわ 口どけの 恋する トリュフみたい ズキズキ 胸の奥が 甘くって モドカシイ____



さやか「俺がお嬢様学校に『庶民サンプル』としてゲッツされた件!」
まどか「とうとうここの紹介コーナーにタイトル長いアニメが入ってきた!」
さやか「ちなみに原作だと、ゲッツじゃなくて拉致だけどね。アニメ放送は、2015年10月から12月だよ」
まどか「アニメのこの異常なまでの筋肉推しは何!?」
さやか「お嬢様学校へ一般常識を教えることになった神楽坂(かぐらざか)公人(きみと)! ハチャメチャな人たちばかりで、ある意味異世界転生よりも異世界転生っぽいよ! 同じ世界なのに!」
まどか「ウェヒヒヒ……私だったら無理かな……」
さやか「さらにさらに、一番可愛い(主観)のが付き添いのメイドさん! 放送当時はCMとつながってたから、タイミングもベストマッチ!」
まどか「それ紹介しても、あとからは確認難しい気がするよ……」
さやか「というわけで、行くよまどか!」
まどか「ああああれえええええ! 私が幼馴染にお見舞い同行としてゲッツされた件!」
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