Fate/WizarDragonknight 作:カラス レヴィナ
ここでは……
「ほら、可奈美! 私、強くなったでしょ?」
可奈美はそれらを全て受け流しながら、何も答えられなかった。
「木綿季ちゃん……」
「ほら、もっと見せてあげるよ! 私の技!」
「ほら、すごいでしょ! 私、こんなにできるようになったんだよ!」
すごいよ木綿季ちゃん。ここまでの技、中々見れないよ。
違うよ木綿季ちゃん。こんなの、全然楽しくないよ。
二つの心が、可奈美の中に去来する。だが、
「ほら可奈美! この勝負に勝ったら、可奈美のこと食べさせて!」
その言葉に、可奈美の腕が一瞬遅れた。
「っ!」
写シの霊体でなければ、取り返しのつかないことだった。息つく暇もなく
「僕の勝ちでいい?」
「じゃあ、食べさせてもらうね」
「っ!」
降り降ろされる黒曜石を千鳥で受け止め、一気に息を吸い込むと同時に起き上がる。
「木綿季ちゃん! 本当に、私を食べようとしているの? 本当に、これが木綿季ちゃんが望んだ立ち合いなの!?」
「え? 僕、何か変なこと言ってる?」
可奈美の剣を切り払い、階段の上段へ浮遊しながら、
「だって、可奈美が言ったことでしょ? いつか、僕と立ち合いしたいって。今がその時だよ? ほら、僕こんなに動けるようになったんだから」
飛翔能力を見せつけるように、
それを見ているとき、可奈美は思い出した。
『あと二週間で、ボクの命がなくなるってこと。末期らしいんだ』
なぜ気付かなかったのだろうか。
なぜ、彼女が外へ出られるようになったのか。
なぜ、話すこともできない彼女が、車椅子だけで動けるように回復したのか。
なぜ、自分と竹刀の打ち合いができるくらいになっていたのか。
「アマゾンに感染していたから、体が自由に動いたんだ……アマゾンだったから、回復していたんだ……」
それが正解だというように、
怯んだところへ、可奈美は千鳥で斬りつける。だが、
「うっ!」
息を吐き出した可奈美は、そのダメージにより生身に戻ってしまう。再び白い霊体になった直後、
「ぐっ……木綿季ちゃん……」
痛みのあまり、意識が飛びそうになる。可奈美は右胸___生身であれば、ちょうど心臓にあたる部分の剣を抜こうとする。
「ねえ、どう? 僕、強くなったでしょ?」
可奈美に顔を近づける
黒曜石の剣を抜いたと同時に、写シが解除される。階段に落ちた可奈美の頭上で、
「ねえ、どうしたの可奈美?」
「どうしたって……」
「僕の勝ちってことでいい? それじゃあ、いただきます!」
続いて、食欲を曝け出しながら、
「あれ? 可奈美! どうして避けるの?」
可奈美よりも下の段に降りた
「うわっ!」
食堂を転がりながら、可奈美は
窓際まで投げられたことで、可奈美の耳には、雨が窓をたたく音しか聞こえなかった。
「可奈美。さあ、ここなら広いよ? 立ち合いの続き、やろう?」
「……あああああああああああああ!」
可奈美は悲鳴を上げながら、千鳥を抜刀。
「分かった……分かったよ! やろうよ立ち合い……! やればいいんでしょ!」
これまでこんな気持ちで剣を持ったことがあっただろうか。可奈美は
「そうだよ可奈美! やろうよ!」
「え?」
「うわっ!」
飛行手段を失った
可奈美はそれを追いかけて、病院の外へ出る。
「木綿季ちゃん。まだ戦うんだよね?」
可奈美のその言葉に、
「えへへ……すごいよ。まさか、空を切り落とされちゃうなんて」
「……」
つまらない。
「じゃあ、次は僕の番! 僕が驚かせてあげるよ!」
つまらない。
「ほら! 受けてみてよ!」
それは、可奈美には、止まっているようにも見えた。可奈美に反応を許す時間でもなかったが、彼女がありったけを剣の先に込めているのが分かった。
「やあっ!」
「がっ!」
そのあまりの速さは、可奈美でも受けきれない。
続いて、左上から右下への五発。突き技が一発命中するたび、凄まじい炸裂音が鳴り響き、可奈美を守る写シがどんどん削がれていく。
十字に十発の突きを放った
「ぐあっ!」
写シの解除。それを貫通してきた、生身へのダメージ。
びちゃびちゃと水たまりを弾きながら、可奈美の体が吹き飛ばされる。
「うう……」
起き上がろうとするも、もう全身に力が入らない。顔が水たまりに沈み、右目だけが
「可奈美! もう終わり?」
「すごかったでしょ? 私が編み出した必殺技! この前は失敗したけど、今度はしっかりできたよ! 可奈美だって倒せるくらいの技!」
意識が朦朧としていく。やがて、可奈美の世界は、
『ほら、しっかり! まだ負けてないよ! それに、あの子にこんな重圧背負わせていいの? あの子、このままじゃ本当に怪物になっちゃうよ? 姫和ちゃんだけじゃなく、木綿季ちゃんも救えなくなっちゃうよ? それでもいいの?』
___いいわけないじゃん。でも___
『身勝手かもしれないけどさ。あの子のためだよ』
___それって、結局木綿季ちゃんを___
『でも、ここは天秤にかけるしかないでしょ? それとも可奈美は、怪物になった友達に人喰いをさせるの?』
___それは……嫌だけど……___
『だから……ね?』
口に入ってきた石をかみ砕く。
可奈美は大きく目を見開き、解体しようとしてきた黒曜石のレイピアを弾く。そのまま両足をプロペラのように回転させ、
「だああああああああ!」
レイピアを立て直すより先に、千鳥で
「あはは……あはは……!」
「さあさあ! もっとやろうよ! 立ち合い!」
再び迫る
最初は左肩。そこから右腰に掛けて、合計五回、千鳥で突く。
そして右肩。そこから左腰へ、これも合計五回、千鳥で貫く。
「うあああああああ!」
悲鳴を上げながら、可奈美は腰を落とす。全力を込めて、十突きの中心へ一撃を入れた。
「があああああああああああああ!」
可奈美の最後の一撃は、
「木綿季ちゃん……」
膝を折った可奈美は、脱力した腕から千鳥をこぼす。だが、可奈美はもうそれを拾う余力もなかった。
動くこともできず、ただ茫然とインプアマゾンを見つめていた。
アマゾンの顔。だが、その口元は大きく開き、吊り上がった口角から、まるで笑っている。
だが、雨の元、小さな悪魔妖精が動くことは、もうない。
「どうして……どうして……!」
可奈美の悲鳴は、大雨の中掻き消されていった。
「うわああああああああああああああ________!」
ただそれを。