Fate/WizarDragonknight   作:カラス レヴィナ

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三章、今回から本格スタートします!


雪空の噴水

「へっくし!」

 

 くしゃみをして、松菜(まつな)ハルトはマフラーを強く閉める。最近安く購入したマフラーは、防寒性に優れているとは言い辛く、十二月初頭の公園には少し不十分に思えた。

 

「あ……」

 

 今ので、お手玉は失敗。

 地面に転がる玉を拾い上げながら、ハルトはため息をついた。

 冷えた空気に、吐息が白くなる。

 

「え、ええっと……さあ、お急ぎでない方はどうぞよってらっしゃい見てらっしゃい!」

 

 苦手な寒さだが、ハルトは努めて声を張り上げた。

 噴水がトレードマークの見滝原公園。

 寒さが厳しくなってきたとはいえ、休日の昼間は、そこを行き交う人通りも多い。ハルトは彼らへ続けた。

 

「本日は、こちら! よっ! ほっ!」

 

 両手に持った球で、お手玉を始める。

 それほど珍しくもない芸に、足を止める人はさほどいない。

 

「続きまして。よっ!」

 

 ハルトは続いて、あらかじめ地面に置いたボールに飛び乗る。安定しない足場の上で、五個の玉を同時に投げ回していた。

 バランス感覚と難易度。今度は、多少の注目が集まった。

 

「まだまだ! 続きましては!」

 

 ハルトはポケットの中から棒を取り出す。顔を上げて、それを鼻の先に乗せた。

 

「いざ! 名付けて天狗の玉乗り!」

 

 体を一切動かさずに、腕だけで玉投げを続ける。今度は、ぽつぽつと拍手の音が聞こえた。

「よし。続きましては……」

 

 今度は片足で。そうしようと右足を曲げた直後、左足がボールから滑る。

 

「うわっ!」

 

 ハルトの足元が、雪で滑る。冷たい地面に勢いよくしりもちをつき、「痛っ!」と口に出してしまった。

 

「あ……あはは……」

 

 それにより、パフォーマンスは失敗。足を止めていた人たちも、暗い表情で歩み去っていった。

 

「今日は調子悪いな……もう切り上げようかな……?」

 

 凍える手で、広げた私物を回収し始める。

 すでに十二月にも慣れている。ここ最近積もり始めた雪にも、あまり新鮮味を感じなくなっていた。

 

「それにしても、あっちはすごいな……」

 

 ハルトの羨望の眼差しは、すぐ近くの、噴水近くの人だかりに向けられていた。

 バイオリンの音色。ストリートライブというものだろうか。

 

「ちょっと聞いてみよう」

 

 ハルトは片付け終えて、人だかりへ向かう。

 

「すごい……天才じゃないのか?」

 

 そんな声を耳にしながら、ハルトは人だかりから、見分ける場所を探す。だが、美しいバイオリンの音色は確かに耳に響いてきた。

 

「あれは……」

 

 ようやく顔を出したハルトは、演奏者に絶句した。

 それは、少女だった。ハルトよりも幼い、小さな少女。彼女を知らぬものならば、それを天才と称するだろうが、その顔を知るハルトは彼女を天才の一言で片付けることができなかった。

 やがて、少女とハルトの目が合う。彼女は少しハルトを見た後、こういった。

 

「それでは皆さん。そろそろ最後の曲にさせてください」

 

 すると、観衆から残念がる声が聞こえてきた。

 少女は構わず続ける。

 

「それでは聞いてください」

 

 そうして、彼女の最後の演奏が始まった。

 

 

 

 演奏終了。

 拍手が終わった後、観衆たちはそれぞれ名残惜しそうに少女のもとから離れていく。残っているのがハルト一人になるのに、さほど時間はかからなかった。

 

「何? あたしに何か用?」

 

 少女はバイオリンを収納しながら、ハルトに尋ねる。

 ハルトは何を言っていいか分からず、ただ黙っていた。

 

「まあ、大体見当はつくよ? でもごめんね。あたしも最近ここで演奏始めたばかりだから」

「いや、別にお客さんを得る方法を聞いているわけじゃないんだよ。……さやかちゃん」

「あれ? 違った?」

 

 少女、美樹さやかはとぼけた表情で言った。

 青いボブカットの見滝原中学の制服の彼女は、そのままバイオリンケースを肩にかけた。

 

「まあいいや。それじゃ、何の用?」

「……別に用があったわけじゃないんだけど……」

 

 ハルトはさやかから目を反らした。

 するとさやかは、ハルトの視界に敢えて回り込んできた。

 

「ねえ。あたしのこと、いろいろ気にしている?」

「……まあね」

「へえ。年上の人に気にかけてもらえるなんて。このさやかちゃんにも、とうとう春が巡ってきたかな?」

 

 うんうんとさやかは頷いて、ハルトにペコリと頭を下げた。

 

「でもごめんなさい。あたし、好きな人がいるので」

「……人生で初めてフラれたのに、あまり傷つかないな」

「ええ? 残念だなあ」

 

 さやかはそういいながら、収納したギターケースを眺める。

 

「君の……そのバイオリン……」

「恭介のだよ」

 

 この一週間強、忘れたことのない名前の一つだった。

 その名前の人物が、ハルトの前に怪物となってしまったのは、ハルトには新しい。

 そして、さやか自身も。

 

「恭介の親に相談したら、譲ってくれたんだ。形見として、あたしに持っていてほしいって」

「……」

「ねえ、そろそろ言いたいこと言えば?」

 

 さやかはハルトの目をじっと見つめていた。それは、どことなく深海のように冷たいものでもあった。

 

「はっきり言いなよ。ファントムのあたしを信用できないって」

「……」

 

 ハルトは思わず目を背けた。だが、さやかはまだ続ける。

 

「あんたとファントムの間柄は良く知ってるよ? この前キュゥべえから色々教えてもらったからね」

「! あの後接触したのか……!」

「あたしの質問に答えてよ」

 

 さやかはハッキリと言った。

 

「どうなの? これまで無数のファントムを倒してきた魔法使い(ウィザード)さん」

「……」

 

 魔法使い(ウィザード)。それが、ハルトのもう一つの姿だった。

 絶望した魔力を持つ人間(ゲート)を食い破って出てくる、絶望の権化。それから人々を守るために戦ってきたハルトだが、先日さやかもまた、そのファントムになってしまった。

 

「私も……倒す?」

 

 さやかの顔に、別のものの影が映る。それは、三つの目がついた騎士甲冑のようにも見える。

 そしてそれが、ファントムが人間の姿から怪人体になる前置きだということも、ハルトは理解していた。

 

「私もファントムだから、同じように倒す?」

「……いいや」

 

 ハルトは小さく首を振った。

 

「オレは……ファントムを倒すためにじゃなくて、人を守るために戦ってるから。君が誰かを傷つけたり……それこそ、他のファントムと同じように、人を絶望させようとしない限りは、戦わないよ」

「ふうん……」

 

 信じ切れていない。さやかはそんな顔だった。

 ほかでもない、ハルト自身も分かっていない。

 

「まあ、いいや。どっちでも」

 

 さやかはそのまま、ハルトから離れる。

 

「まあ、そのうちアンタとはひと悶着あるかもね?」

 

 その表情に笑顔を張り付けて、さやかはそのまま公園の出口まで軽いステップで去っていった。

 

「……ひと悶着、ね……」

 

 ハルトは腰のホルスターから、指輪を取り出す。ルビーが基調とされている指輪。カバーを人差し指で下ろし、それはあたかも顔のように見える。

 

「……」

 

 もし戦うときになったら、どうすればいいのかな。

 そう物思いに耽っていた時。

 

『やあ。あまり元気そうではないね。ウィザード』

「うおっ!」

 

 突然の声に、ハルトはルビーの指輪を放り投げてしまった。

 

「うわっ! やばっ!」

 

 左手の平に乗ると、今度はそのままバウンド。今度は右手に。そのまま跳ね返り、結果的にルビーの指輪でお手玉することになってしまった。

 

『おや? それは君にとって必要不可欠だと思っていたけど。少し見ないうちに、曲芸の道具になったのかい?』

「いきなり話しかけるからだろ!」

 

 思わずムキになってしまった。だが、その相手は他の人には見えていないのか、ハルトに不審な目を向ける人が多数だった。

 

「あ……」

 

 ばつの悪い顔を浮かべながら、ハルトは声を___それを声と呼ぶのなら___かけてきたものへ目を落とした。

 

「……何の用だ、キュゥべえ」

『何か用事がなければ、君に会いに来てはいけないのかい?』

 

 鼓膜ではなく、直接脳に届けられる声。キュゥべえという名前の妖精は、ハルトをじっと見つめて離さない。

 

『先の戦闘。勝ち残ったんだ。少しは心の変化とかあったかなと思ってきただけだよ』

「……あるわけがない」

『へえ。ないのかい?』

 

 無表情なのに、なぜか見透かしたようにキュゥべえは続ける。

 

『以前君は、アサシンのマスターを戦闘不能にした。そして今回は、バーサーカーのマスターを手にかけた。それでも君は、戦いを止めるために動いているというのかい?』

「……」

 

 ハルトは何も言わなかった。

 言えなかった。

 

 聖杯戦争。この見滝原で行われている、願いをかけてのバトルロワイアル。

 ハルトも巻き込まれ、強制的に参加させられているこの戦いは、すでに二回、世間を騒がせる事件を起こしている。

 一度目は、見滝原中学の謎の変質事件。校舎を含む敷地が赤黒の結界となり、怪物がはびこる世界となってしまった。結果、生徒二人の犠牲が出てしまった。

 二度目は、見滝原中央病院院長、フラダリ・カロスによる、アマゾン化支配計画。病院の水を飲んだ人がアマゾンと呼ばれる怪物に変異し、見滝原全域にパニックを引き起こした。今は完全に終息したものの、犠牲者の数は四千人にも上る。

 その時、中心にいたマスターを倒したのは、いずれもハルトだった。

 中学を変異させた我妻由乃(がさいゆの)は、ハルトが倒したことにより、全ての力を失い、結果的に何者かに無抵抗に殺されている。

 そして、病院で、アマゾン化と決して無関係とはいえない少女、クトリ・ノタ・セニオリスの命を奪ったのも、間違いなくハルトの蹴りだった。

 

『なるほど。戦いをしないと近づいておいて、油断させたところを不意打ちするのが君の定石なんだね』

「違うよ」

 

 ハルトは断言した。

 

「あれは……」

『違うというのかい?』

「……」

『まあいいさ。別にルール違反でもない』

「お前……本当にそれだけを言いに来たのか?」

『まあね。あ、どうしても用事が必要なら、これだけは言っておこうかな』

 

 キュゥべえは去ろうと足を少し動かした状態で言った。

 

『また、新しいマスターを任命したよ』

「っ!」

 

 マスター。つまり、聖杯戦争の参加者がまた増えたということ。

 そして、また犠牲者を生み出す戦いが始まるということ。

 

『そして彼は、君……というより、君たちにとっての最大の敵になるんじゃないかな?』

「どういう意味だ?」

『それを教えたら、監視役としてやってはいけないことだからね。まあ、無理矢理用事を作ったから。君も納得してもらえたかな?』

 

 そのままキュゥべえはは、噴水の頂上へ飛び乗る。水が跳ねあがるが、他の人々からは見えない妖精のため、不審な水の飛び散りに見えるのだろう。

 

『これも君たち人間の不都合の真似だよ。少しは僕のことも、親しみを持ってほしいかな』

 

 それだけ言い残し、キュゥべえはその姿を消した。

 

「……親しみとか、お前相手には永遠に持てないことだよ」

 

 ハルトはそれを最後に、見滝原公園を後にした。

 




友奈「真司さん! 大変大変!」
真司「うわ! どうした友奈ちゃん! ……てか、何で俺のバイト先に来ちゃってるんだよ!」
友奈「あ、そうだった……じゃなくて、真司さん! 三章の台本もらった?」
真司「え? まだもらってないな」
友奈「これ、もしかしなくても三章私たちの出番ないんじゃない?」
真司「ガーン 」
友奈「どうしよう? ここは、思いっきり抗議するべきかな?」
真司「待て待て待て。そもそも俺たちは主人公のサーヴァント。きっと出番あるだろ?」
友奈「だといいけど……これはまさか、二章で出番あったからお預け?」
真司「友奈ちゃんは結構出番あったけど、俺はそれほど多くもなかったような……」
友奈「これは何とかしなくちゃ! 真司さん、まずは作戦会議だよ!」
真司「俺今バイト中! 終わったら言うから、まずは注文しろ! しないならアニメ紹介コーナーしろ!」
友奈「あ、そっか。それじゃ、今日のアニメはこちら!」



___命をかけて 荒野を駆ける 戦いの日々の中 振り向くと そこにいて 震え 止めてくれる___




友奈「織田信奈の野望!」
真司「いや、できれば注文してほしかった。ん? 信長じゃなくて信奈?」
友奈「そう! 主人公の相良良晴(さがらよしはる)くんがタイムスリップした戦国時代は、なんと織田信長が女の子だった! っていうお話だよ!」
真司「ほげえ」
友奈「放送期間は2012年7月から9月! 最後の最後で新しい敵の武田信玄が出てきたから、ファンにも熱く続編を望まれているよ!}
真司「え? これって、武将みんな女の子なのか? すげえ……」
友奈「みんなじゃないけどね。あと……」
店長「こらぁ! 真司ぃ! 真面目に働け!」
真司「うわっ! そうだ、俺今バイト! 友奈ちゃん、注文は?」
友奈「あ、ごめんね真司さん。それじゃ、私先にアパートに帰ってるから」
真司「注文していって~!」
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