Fate/WizarDragonknight   作:カラス レヴィナ

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在宅ワークと言っておきながら、先週はほぼ毎日出勤あったんだよな……


チノへのプレゼント

「ねえ! クリスマスの新メニューなんだけど!」

 

 ココアが突然言い出した。

 彼女は可奈美たちの前に躍り出て、両手を後ろに回す。

 

「何? 何か思いついたの?」

 

 可奈美の質問に、ココアはふんすと鼻息を荒げた。

 

「うちはピザを焼こうよ!」

 

 カッコつけてクルクル回す。

 そのまま生地が吹っ飛ぶ。

 ガラスが割れる。

 チノに怒られる。

 

 見事な起承転結が可奈美の脳裏に浮かんだ。

 

「いや、ココアちゃん? 絶対ラビットハウスの備品壊しちゃうよ!」

「そうかな?」

「そうだよ! もう少し、喫茶店っぽいものを考えよう!」

「街の国際バリスタ弁護士を目指す者としては、もう少しインパクトがあるものが欲しいんだけどなあ」

「インパクトの方向性をしっかりとした方に向けて!」

「それより皆は、クリスマスの予定あるの?」

 

 ココアが笑顔で尋ねてきた。

 毎年ならば誰かと剣の立ち合いでも頼むところだが、あいにく今年は見滝原から出られないという都合上、ラビットハウスで働く他の選択肢はない。

 可奈美は「ココアちゃんと同じだよ」と答えて、他の三人の方を向いた。

 真司は真っ先に頬をかいた。

 

「俺はその日バイトだな。遅れた分、差し入れ持っていくって、ハルトにも伝えておいてくれ」

「そうなんだ。じゃあ、ハルトさんにも言っておくね!」

「私は……」

 

 響は「うーん」と考えて、

 

「コウスケさんは大学の研究があるみたいだし、私はとにかくご飯が食べたいな。でも実のところは彼氏が欲しい、そんなお年頃なのです」

「私も予定はないよ? でも強いて言えばうどんが食べたいかな。あと、うどんを食べて、それからうどんも食べたい!」

「うどんどれだけ食べるつもり!?」

 

 思わず可奈美は友奈へツッコミを入れた。

 友奈はえへへと笑い、そんな二人にココアが提案した。

 

「なら、一緒にクリスマスパーティしようよ!」

「クリスマスパーティ? ラビットハウスでやるの?」

「やるよ!」

 

 友奈の質問にココアはそう答えた。

 

「私も友達を誘って、盛大にやろうと思っているんだ! 友奈ちゃんと響ちゃんもおいでよ!」

「おお! パーティー! いっぱい食べたい!」

「私も! クリスマスといったらやっぱりうどんだよね!」

「いや、年越しまで待ってよ!」

 

 友奈の底抜けのうどん好きに、可奈美は閉口した。

 そうして、全員でクリスマスマーケットを散策し始める。だがすぐに。

 

「おい真司いいいいいいいい!」

 

 背後から、真司の名前を呼ぶ声があった。真司は飛び上がり、後ろを振り向く。

 

「ゲッ! 店長!」

「店長?」

 

 可奈美が疑問符を付けた相手は、まだ真司とほとんど同い年の女性だった。

 彼女はそのまま大股で真司に詰め寄り、その頭をがっしりと鷲掴みにする。

 

「おい、店長でなく普通にさん付けでいい……それよりお前、今日ナベさんの手伝い終わったらウチの手伝いやるって約束したよな?」

「はっ!」

 

 真司の表情から、どうやら忘れていたらしい。

 店長___真司のバイト先の店長だろう___は顔を真司にぐいっと近づける。

 

「なあ真司。実は知り合いがこの前、シベリアの支部に飛ばされてなあ?」

「……ま、マジっすか?」

「ああ。嫌だよな? 飛ばされたくないよな?」

「そ、そうっすね。飛ばされたくないっすね?」

 

 すると、店長は満面の笑みを浮かべた。

 

「私ってさ。いい店長だよな?」

「は、はいいいい!」

 

 言わされてるなあ、と可奈美は口は動かしても声にはしなかった。

 

「そんな店長がさあ? 頼み事をしたらどうする?」

「はい! すぐに行きます!」

 

 真司は敬礼し、可奈美達に一言いう。

 

「悪い。俺、ちょっと用事できちまった。それじゃあ、またな!」

 

 そのまま店長に連れていかれた真司を唖然として見送ったのち、沈黙を破ったのは友奈だった。

 

「ま、まあ。真司さんからは私が言っておくから。パーティー楽しみだね!」

「そうだね!」

「そ、そうだ! それでさ」

 

 ココアは話を再び切り出した。

 

「プレゼント交換とは別に、チノちゃんにプレゼントを買ってあげたいんだ。いつもお世話になってるし」

「あ、それ私も」

 

 可奈美もココアの言葉に賛同した。

 

「いつもラビットハウスでお世話になりっぱなしだもんね。私達」

「そうなの! さすが私の妹! 私の考えがよくわかってる!」

 

 ココアが可奈美に抱き着く。さらに、両手で友奈と響を巻き込むようにしてぎゅっとした。

 

「うわ~! 町中でココアちゃん大胆!」

 

 響の言葉を気にも留めず、ココアは続ける。

 

「折角だからさ。ここでみんなでそれぞれのプレゼント交換のものを買って、そのあとチノちゃんへのプレゼントを選ぼうよ!」

「「「賛成!」」」

 

 三十分後。

 集まった女子四人は、チノへのプレゼントを買おうとクリスマスマーケットを歩き回っていた。

 

「うわあ、これすごいね!」

 

 友奈がそんな声とともに注目したのは、オルゴールだった。

 白いウサギののオルゴールであり、背中にシリンダーが埋め込まれていた。

 

「ウサギのオルゴールだ! チノちゃん、ウサギが大好きだから、きっと気に入るよ!」

「そうだよね。じゃあ私はこれにしよう!」

 

 友奈はそう言って、オルゴールを掴み取る。彼女曰く、何とか残っていたバイト代で支払った。

 

「オルゴールか……チノちゃんって、ウサギとあとどういうのが好きだっけ?」

「ふふふ、お姉ちゃんに任せなさい!」

 

 響の疑問には、チノの自称姉が答えた。

 

「チノちゃんはね、お姉ちゃんが大好きなんだよ!」

「あれ? 私、真面目に聞いているんだけど……」

 

 ジト目でココアを見つめる響に、可奈美はぼそりと「響ちゃん自身をプレゼントすればいいと思うよ」と呟いた。

 可奈美はココアに代わって響の疑問に応えた。

 

「そういえばチノちゃん、結構パズルとか好きだよね」

「パズル?」

「うん。ほら、この前ココアちゃんが勝手にチノちゃんのパズルを完成させて怒らせちゃったことがあるって」

「言わないで!」

「パズルか……」

 

 響は巾着を開けた。

 

「うん、パズルくらいなら、まだ何とかいけるかも。ちょっと探してくるね!」

 

 パズルに決めたようだった。

 響は早足で、別の屋台へ向かう。どうやら玩具屋も出ていたらしく、瞬く間にウサギのパズルを持ってきた。

 

「買ってきた! あと、リボンも付けてもらった!」

「おお! 早かったね! でも、響ちゃんはよかったのに」

「いやいや。この前倒れた時にお世話になっちゃったから、これくらいのお礼はさせてよ」

 

 響は笑顔で応じた。可奈美は心の中で感謝しながら、再び歩く。

 

「あとチノちゃんが喜びそうなもの……何だろうね?」

「うう……友奈ちゃんと響ちゃんが、どんどんチノちゃんの好きなものを埋めていくよ……」

「まあまあ。あ」

 

 可奈美はふと、近くの屋台に目を止めた。

 

「ねえ、そういえばチノちゃんって、ボトルシップも好きだよね」

「そうだね」

「休みの日にココアちゃんの誘いを断るくらいに」

「それは言わないで!」

 

 可奈美は、手元にあるボトルシップの作成キットの箱を手に取った。

 

「結構値が張るんだね。でも、こういうのいいんじゃない?」

「う~ん……でも、可愛い妹のためだよ! これください!」

 

 思ったより高価だったので、可奈美とココアで半分ずつ負担することになった。

 

「うう……お姉ちゃんの威厳も半分になっちゃったよ……」

「そんなことないから。元気だして。ね?」

 

 ココアを慰めながら、可奈美たちはクリスマスマーケットを散策していた。

 すでに財布の中は寒い風が吹いており、今は眺めてウインドウショッピングするほかない。

 その時。

 

「なるほどな。これがお前の希望か」

 

 そんな男性の声が聞こえてきた。

 それが赤の他人の声だったら、可奈美も気にすることはなかっただろう。

 だが、どこかで聞いた覚えのある声だったから、可奈美は足を止めた。

 

「可奈美ちゃん?」

 

 友奈が振り返る。

 だが、可奈美は動かなかった。

 クリスマスマーケットの一角。バザーで、婦人が売っている皿を、赤い服を着た青年が見下ろしている。

 半袖に薄い上着。クリスマスという季節には、ずいぶんと合わない服だった。

 だが、婦人は青年のその服装を気にすることなく説明をしていた。

 

「はい。これは、亡くなった夫の遺品なんです。でも、私ももう故郷に帰ろうと思いまして。これは、他のどなたかの笑顔を作るために使われてくれればと思いまして」

「なるほどな」

 

 青年は皿を持ち上げている。皿をぐるりと見まわす彼は、無精ひげが濃いなと可奈美は思った。

 そして。

 

「つまり、これをぶっ壊せば、お前は絶望するんだな?」

 

 キャッチ。

 危なかった。割り込んだ可奈美は、青年が勢いよく投げ落とした皿を掴んでいたのだ。

 

「てめえ!」

「その声、やっと思い出した」

 

 可奈美はそのまま、青年に蹴りを放つ。

 青年は両腕を交差してガード。のけ反る。

 

「ああ、オレも思い出したぜ。お前、この前魔法使いと一緒にいやがった女だな?」

 

 すると、青年の手から炎があふれ出す。青年がそれを打ち上げると、炎は上空で拡散。屋台を燃やし始める。

 あちこちから起こる悲鳴。

 

「早く逃げて!」

 

 可奈美は皿を持たせた婦人をそのまま逃がす。

 クリスマスマーケットの人々は、すでに我先に逃げ始めている。

 だが、青年は彼らに目もくれることなく、可奈美をじっと見つめている。

 

「面白れぇ。魔法使いだの青い野郎だのの前に、まずはてめえからだ」

 

 そして、青年の顔に、不気味な文様が浮かび上がる。

 それが起点となり、その姿が変わっていく。

 それが、ファントムと呼ばれる怪人が本当の姿になる変異プロセスだということは知っている。

 そして、以前倒したはずの敵の名前も。

 

「フェニックス……」

「さあ、楽しませてもらうぜ!」

 

 炎の怪人、フェニックスは、大剣カタストロフを携え、可奈美へ足を進めた。

 

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