この素晴らしい世界に魔獣使いを!   作:黒チョコボ

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Mission1

Mission1

 

魔界の大樹”クリフォト”、とある市街の中心にその禍々しい木は根を張った。その木は周辺に住んでいた人々の血を糧として”大樹”という言葉では足りないほどの大きさにまで成長を続けていた。そして、その木は自らの大きさに反して小さな小さな実を付ける。

 

その果実には、犠牲になった人々と同等のエネルギーが宿っており、それを喰らった者に凄まじい力を授けると言われている。それを、喰らうべくクリフォトを目覚めさせた、大悪魔を止めるべく、3人の男が宇宙に届くほどの大きさとなった大樹の内部で激闘を繰り広げていた。

 

一足先に最深部へとたどり着いた一人の赤き狩人は、既に果実を喰らい神に匹敵する力を得た大悪魔と相対する。

 

機械仕掛けの腕を持つ、若き狩人は立ちはだかる敵を薙ぎ倒し、戦友を救い、共に最深部へと向かう。

 

一人の黒き魔獣使いは敵の罠にはまり、戦友に助けられながらも、自らの使命を終わらせるべく、朽ちていく我が身に鞭を打ち、戦友と共に最深部へと向かう。

 

二人の戦士が助け合いながらも、最深部へとたどり着いた時、神をも超える力を発揮した赤き狩人によって、大悪魔は横たわり、瀕死となっていた。

 

全てが終わったかに思えた。しかし、朽ちかけの男にはまだやることがあった。その手に持った杖をこの惨事を引き起こした悪魔に突き立てなければならなかった。他の者ではなく、”自分が”、”己の手で”、奴に止めを刺さなければならなかった。それが己の手で出来る最大の罪滅ぼしだったからだ。

 

赤き狩人に無理を言い、一人、横たわった大悪魔の上に立つ。杖を突きつけ愚かな悪魔(自分)へと皮肉をぶつける。

 

 

 

 

そして、杖を大きく掲げ、悪魔の胸に杖を突き刺した。

 

 

 

 

しかし、男は望んでしまった。

 

 

 

 

目の前のもう一人の自分の発した言葉を聞き

 

 

 

 

己も強い共感を覚えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

もっと力を(I need more POWER)!!

 

 

 

 

 

 

 

 

男の一瞬の渇望によって、お互いに朽ちていくはずだった肉体は、突き刺された杖を媒体として融合を果たす。

 

しかし、男は気づいていた。

 

その力を得るのは(V)でも悪魔(ユリゼン)でもない。

 

もう一人の自分(バージル)だという事に。

 

もう一人の自分には”これまでの経験と心”は必要かもしれないが、”空っぽになった魂”は必要ないという事に。

 

 

 

 

二人の狩人が何が起きたのかと目を見張る中、必要のなくなった魂は二人のそばを風と共に通り過ぎて行き、雲の切れ目より差し込む光へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

天界では、とある地域を担当していた神が過労によってぶっ倒れたことにより、その仕事が暇を持て余している他の神の元へと本人に確認も取らずに勝手に振り分けられており、かなりの混乱を引き起こしていた。

 

しかし、その詳細は全くと言っていいほど明かされておらず、“何も聞かずにやってくれ”という形で暇神たちへと振り分けられていた。

 

「あーもうやーだー!」

 

「ヤダって言われましても……もう諦めてやって下さいよ先輩」

 

机の上の大量の書類を見て、駄々をこねる女神アクアとそれを面倒くさそうになだめている女神エリス。なぜ、こんなことになっているのか簡単に説明すると、アクアは自分の仕事をほとんどエリスに押し付けて、のんびりしていたのだが、その様子を見た上司の神が

 

『ん? かなり暇そうだね? じゃあこれをやってもらおうか』

 

と現在天界で話題になっている過労事件の巻き添えを喰らったのが原因であった。

 

「やるって言ったってこれ終わらせるのに何日かかるのよ!しかも、終わるまで外に出さないってあのクソ上司に言われちゃったし……!こんなことしでかした奴見つけたらただじゃ置かないわよ!」

 

「まあまあ、先輩。私も少しは手伝いますから頑張りましょう?」

 

「ほんと!? やっぱ持つべきものは優秀な後輩よね~!」

 

「ちょ! ちょっと先輩! 苦しいです……!」

 

アクアは喜びのあまりエリスに抱き着く。しかし、場所が悪かったのかどことなく苦しそうな表情を浮かべ、エリスはアクアを無理やり引きはがす。アクアはすっかり元気になり、先ほどまで涙目になって後輩に縋り付いていた姿が嘘のようだ。

 

「よ~し! じゃあちゃっちゃと終わらせるわよ!」

 

無事、いつものお調子者の先輩へと戻り、安心したエリスは約束通りアクアの仕事を手伝うべく目の前の資料を手に取った。その資料には亡くなった人の情報が事細かに書かれていた。普段なら、亡くなった場所や年齢、そして今まで起こした罪の大きさで、一度仕分けたあと、その魂をどこに飛ばすのか決めるのだが、今回はその資料に少し特殊な部分があった。

 

「あれ……? もしかしてコレ、全部同じ市の人じゃないですか!?」

 

「本当ね、何でアイツが過労でぶっ倒れたかが嫌というほど分かりそうね」

 

次々と資料をめくるが、どれもこれも全部同じ市でほとんどが同じような日に亡くなっている。目の前に高く積まれた紙の束を見て、まさか……と思うと冷や汗が流れる。

 

更に、本来書いてあるはずの死因が黒く塗りつぶされていた。流石に、ここまで不審な点が見つかればどこの世界で何が起こったのか気になってしまうのも当たり前だろう。

 

「これって何が起こったんですかね?同じ市から死因不明の方がこんなに居るって……」

 

「まあ、大方ハリケーンか何かの自然災害が起こったんじゃないの?良くあるじゃない?洪水で大勢が亡くなっちゃうこととか?」

 

「そうなんですかね……?」

 

「ほら!怠けてないで手を動かしなさい。早くしないと私たちまでぶっ倒れるわよ」

 

「あれ?この仕事押し付けられたの先輩だけですよね……?」

 

「その事なら心配しなくていいわ!さっき上司にエリスも一緒にやるって言っておいたから、多分あなたも終わるまでは部屋から出られないはずよ」

 

「え……?ええぇぇぇぇぇ~~~~~~~~~~~~!?」

 

部屋の中にエリスの叫び声が木霊する。その反応すら予想通りだったのか、アクアは動じることなく、エリスの前に大体半分の資料を置くと、いつも通りの面倒くさそうな表情を浮かべ、作業に入ったのであった。

 

「はぁ……」

 

アクアの不祥事の巻き添えを喰らい思わずため息を漏らす。しかし、今更いろいろと言ったところで何も変わらないことは目に見えているので、彼女は嫌々ながらも卓上の資料を手に取った。

 

(レッドグレイブ市……ここで一体何が起こったんだろう?)

 

事件性のある、謎の大量死。裏で一体何が起こったのか考えを巡らせながら、作業に入ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

(ひ、ひどい目に遭った……)

 

約半日中資料とにらめっこをし続けた結果、ありがたいことに一日かかることなく業務は終わりを迎えた。しかし、二人はもう既に満身創痍。アクアに限っては机の上に突っ伏してピクリとも動かない。

 

流石に出来たものをちゃんと渡さないとまずいと思い、積みあがった資料を上司の元まで持っていく。

 

「お、今日中に終わったのか、中々に出来るね君達」

 

「あ、ありがとうございます……。あの、すこし聞きたいことがあるんですけどいいですか?」

 

「先ほど渡した資料を整理していて思ったのですが、地上で一体何が起こったんですか?流石に死因まで隠されてるとなると、少し気になります」

 

「気になる……ねぇ。」

 

上司は辺りを少し見まわして誰も居ないことを確認すると、エリスだけに聞こえる小さな声で語った。

 

「一応、このことも他から聞いたことなんだけどさ、レッドグレイブ市?だっけ?どうやらそこに悪魔が現れたって噂だよ」

 

「あ、悪魔ですか?」

 

「多分君が思っている者よりもヤバい奴だと思うよ、なんせ私にも全く情報が来てないんだもの」

 

最後の方だけだが真剣な表情で話す上司を見て、ひとまずただ事ではないというのが分かった。しかし、それを放っておいては更に新たな犠牲者が出てしまうのではないかと考えてしまう。

 

「そんなに危険な奴が居るのに放っておいていいんですか!」

 

「いいわけがないさ。だけど、上の方は動く気はないみたいだよ」

 

「そんな……!?」

 

「もしかしたら、動きたいけど動けないのかもね」

 

少し悩んだようなそぶりを見せる上司。しかし、先ほど言ったことも真実などではなくただの想像か予測だ。それなのにも関わらず、何処か現実味を帯びた発言に突っかからずにはいられなかった。しかし、口を開こうとしたその矢先

 

「おっともうこんな時間だ。この続きはまた今度」

 

上司は手を振ってそそくさと戻って行ってしまった。流石に、無理に引き留める元気は残っていなかったので、ひとまず諦めることにした。

 

ひとまず、今は先輩を起こしに行こうと思い、先ほどの地獄の作業部屋まで戻る。戻ると、そこにはスヤスヤと寝息を立てて眠るアクアの姿があった。

 

「先輩!寝るんだったらここじゃなくてもっとマシな所で寝て下さい!」

 

アクアを軽く揺さぶり起こそうとするのだが、先ほどの激務の反動からか、全く起きる気がない。仕方がないので、適当な毛布をアクアの上に掛ける。そして、エリスはやっとのことで自分の部屋に休みに行くことが出来たのであった。

 

 

 

 

 

 

「はあ……今日はゆっくり休もう」

 

疲れのせいか目の前が少し霞んで見える。確かにこんな事一人で担当してたら過労で倒れるのも頷ける。とりあえず、自分の部屋に戻ったらどうしようか考える。この前、あの世界から仕入れてきた紅茶を飲んでみよう。きっとリラックスできるだろう。

 

そんなこんなで、部屋まで戻ってきたエリスだったが、彼女の目に飛び込んできたのは、紅茶でもなんでもなく、椅子の上に一人の男が座りながら、本をめくっている光景だった。男は立ち上がりこちらに話しかけているようだったが、彼女の脳はこれを理解することを拒否し、彼女の目の前は真っ黒に染まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

(あれ?私いつ寝たんだっけ?)

 

いつの間にか寝ていたようで重たい瞼を開けて、ベッドから起き上がる。目に映るのはいつもの光景、いつも使っているテーブル、お気に入りのランプ、黒い服を着た男……

 

 

ん?黒い服を着た男……?

 

 

「え、あ、あれ?ど、どちら様でしょうか!」

 

驚きのあまり声が裏返る。というかよくよく見ると相手は人間だ。落ち着こう。落ち着けば大丈夫だ、私。

 

「すまない、道に迷ってしまってね。良ければここが何処か教えてほしいんだが」

 

なんだ、ただの道迷った人じゃないか……。いや待てよ。こんなところで人が道に迷う?そもそもここは人が来る場所なんかじゃないじゃないか!来れるとしたら、転生の案内をするあの部屋しか……。あ、そっか。転生の部屋から来たのか。あの部屋はすぐ隣だ。こっちに人が迷い込んでもおかしくない。

 

「……ゴホン! 分かりました、とりあえず隣の部屋へ行きましょう。そこで、ご説明しますね」

 

咳払いをして動揺を隠しながらも、隣の部屋に案内する。とりあえず、二人分の椅子だけ置かれたその部屋で、私は彼の問いかけの答えを出すことにした。

 

「自己紹介からさせていただきますね。私は女神エリス。ここは死んだ人の魂が導かれる場所、天界です。」

 

流石に驚いたのか、白髪の男は目を見開き信じられないといった表情を浮かべる。自分の死が信じられない人は山ほどいる。特に珍しいことではない。

 

「驚いたな。まさか、本当にこんな場所があるとはな」

 

あれ?驚いたのは自分が死んだことじゃなくて、この天界という場所に対してですか……そうですか。これは珍しいですね。

 

「ご自分が亡くなったことを自覚してるんですか?珍しいですね」

 

「……まあな」

 

今完全にかなり彼の傷を抉ってしまったような気がするけど、恐らく気のせいでしょう。

 

「確かに、()()()()()()は死んだな」

 

……?何か意味のありそうな言い回しですが、ひとまずいつも通りに。

 

「あれ……あれ?なんで?」

 

ひとまず彼の名前と、これまでの行いを確認しようとしようとしたのだが、確認できない……。本来ならば天界に送られてきた時点で名前がわかるはずなのだが……。

 

「……ゴホン! ひとまず、貴方のお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 

「“……名前など無い……まだ生まれて二日目だもの。”」

 

「……え?」

 

「……冗談だ。Vと呼ばれていた」

 

本当に冗談なのだろう。不敵な笑いを浮かべる彼を見てそう思いたいのだが、何故か本当に生まれて間もないような、そんな雰囲気を一瞬だけだが感じてしまった。

 

「そ、そうですか。ではVさん。お聞きしますが、生前は何をしていましたか?」

 

未だに彼の経歴が全く分からないので、直接聞くことにした。

 

「詩を詠んでいたな。おしゃべりな奴も一緒に居た。詩について、よく口うるさく突っかかって来たな。あとは、旅をしていた」

 

「旅……ですか?」

 

「とある奴に、自らが捨てたものがどれだけ大事な物だったのかを分からせるための旅だ」

 

彼の言う旅が何を表しているのかは分からないが、少し悲哀を帯びた声調で語る様子を見るに苦労していたことがよく分かる。

 

ここで、この部屋に彼を案内する時に連絡しておいた、彼のこれまでの経歴を表した資料がやっと届いたのか、空からひらひらと落ちてきて、私の手に納まった。

 

しかし、その資料はまるでコピー機がエラーを起こしたかのように、変な線が入り、読めはするが、とてもまともな物では無かった。ざっと目を通すと、特に彼が大罪を犯した記録は無いことが分かった。

 

「分かりました。答えて下さりありがとうございます。では、貴方に選択肢が2つあります。1つ、このまま天国へと導かれるか。2つ、新たな世界へ転生するか」

 

「……転生?」

 

「そうです、こちらを選んだ場合はあなたの体と記憶はそのままに新たな世界に転生していただきます。その際に一つ特典も付けることが出来ますよ」

 

「……なぜ転生などという選択肢があるんだ?」

 

「その世界では魔王が猛威を振るっており、魔物に溢れています。そのせいで、その世界の人口がみるみる減ってしまって……。なので、一つ特典を授けた人を転生させ人口を増やすと同時に魔王を討伐して頂きたいというのがこちらの本音です」

 

「魔王……か」

 

私は静かに答えを待つ。この決断に私は介入してはいけない。彼自身の気持ちで決める必要があるのだ。

 

「……Huh、魔王退治か……退屈はしなさそうだな。」

 

「分かりました。では、特典を一つ選んでいただけますか?このカタログの中か、それ以外でもこちらが許可する物なら大丈夫ですよ。」

 

「……俺が使っていた杖を持っていきたい。」

 

「分かりました。では、目を瞑ってそれを強く思い浮かべて下さい」

 

彼は静かに目を瞑り、片手を前に突き出した。するとすぐに、彼の手の周囲に光が集まり始める、そして、一瞬の閃光が晴れると、彼の手には銀色の珍しいデザインをした杖が握られていた。

 

しかし、それだけではなかった。彼の髪の毛は杖を持った瞬間に真っ黒に染まり、先ほどまで刻まれていなかったはずの刺青が彼の上半身に浮かび上がる。恐らく、これが彼の本当の姿なのだろう。

 

「では、そこの魔法陣の上に立ってください。しばらくすると転生が完了します」

 

「そうか……礼を言う」

 

彼は一瞬だけ振り向いて、それだけを言うと、魔法陣の上に立ち、光に包まれて消えた。

 

「ふう……。それにしてもどうして資料がほとんど無かったんだろう?」

 

エリスはVの転生が完了したことを確認すると、肩の力を抜く。心地良い脱力感と共に彼の名前、経歴が穴だらけだったことを思い出す。

 

「よし! 一応確認しておこう」

 

その後、エリスは彼の身元やその他諸々を確認しようとするのだが、管理している者全員に聞いても、そんな人物は見たことないと言われ、最終的にはそのような人間は天界に来ていないと言われ、出所不明の謎の男を転生させてしまうという、とんでもないやらかしをしてしまい、しばらく冷や汗が止まらなくなったそうだ。

 




息抜きに書き始めました。よろしくお願いします。
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