刀使と紡ぐ物語   作:生き甲斐探す

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今回、いつにも増して時間なかったので読みにくいはず。 


頑張ってくださいー


ニンギョウ

 

 

 

 

 

 

「紫様、沙耶香にお任せくだされば、すぐに族など。」

 

 

 

「…ほぉ、その根拠はどこから来る?」

 

 

「沙耶香は私の完全傑作です。彼女は皐月夜見(あの役立たず)のような醜態は晒しません。」

 

 

「例え相手が何人だろうと、写しを剥がされようとも、必ずや目的を遂行できるでしょう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘終了の合図はいつもそうだ。相手が崩れ負けを認める、その瞬間が来るまでは目を逸らしてはならない。

 

 

 

それが、貴方の首を狙っているから。

 

油断してはいけない、鞘なしの刀は振り切ってはいけない。

 

それはあなたを二重の意味で死に追いやるでしょう。

 

 

 

 

 

 

糸見沙耶香が写しを剥がされ、辺りに落ち着きが戻る。

 

先程まで様子を見ていた累は、マンションの入口から安堵している。

 

可奈美と姫和は向かい合い、会話に花を咲かせていた。

 

 

だが、天馬はその光景を遠目から見つめ、刀の鞘を握りしめる。

 

(今だッ!)

 

十条姫和(ぺたん娘)()()()だ!」

 

声に従い勢いよく振り向くが、そこには物陰一つも存在しなかった。

 

 

だが、その次の瞬間。

 

ゾクッ

とした感覚が、首筋から全身へ嫌悪感が走る。

 

「ッ!?」

 

()()からくる気配に感づくが意識が左に集中してそれどころではない。

 

 

(っ?!うしろ!)

 

自身の危険信号。それが後方を指し示す。

その感覚に導かれるままに振り返る。

 

姫和は理解した。迫りくる背後の暗殺者に自身の首を打ち取れる事を。

 

 

可奈美は反応できない。安堵しきったその好きを狙われ、かつ天馬の見当違いな方向に惑わされたから。

 

 

防御とは自身を守るならともかく他人を守るにはあまりにも不遇すぎる行動だ。

 

 

振り向く、刹那の時間で姫和は見た。

 

 

迫りくる沙耶香のシルエットを…

暗殺者は写しなど貼っていなかった…

 

糸見沙耶香は自身の防御など知らない。自分なんてどうでもいいとすら思っている。必要とされるままに、確実に反逆者を討つ。理由なんて関係ない。ただ命ぜられるままに動くだけ。

 

 

楔に繋がれた孤独の操り人形は襲いかかる。

 

一切の躊躇い(ためらい)もなく、なんの躊躇(ちゅうちょ)もなく、そのスピードは沙耶香自身の最速を軽く凌駕する超高速となり姫和へと迫りくる。

 

 

 

 

この勝負の敗因があるとするならば、襲いかかる無心の暗殺者の驚異を正しく理解できていなかったことだろう。

 

 

「!?ッ姫り」

 

 

危ない!と叫ぶ可奈美。だがそんなものが役に立つはずもない。間に合わない。可奈美自身を守るならともかく姫和に向けられた剣をいなせるほど生身では速く動けない。

 

機械は一度動き出せば止まらない。電源を切るしかない。

 

可奈美の声は届かない。

 

無機質な瞳は断罪を取りやめることはなかった。

 

(間にあわないッ!)

 

それでも、泣けなしの希望に賭け、可奈美は剣先を投げるように伸ばす。だが、奇しくも沙耶香には届かない。

 

可奈美の剣をかいくの無念無想による超高加速が一瞬で間合いを詰める。

 

 

もはやここまでかと目を瞑る姫和。

その目からは涙が滲み出ていた。

 

 

 

懐かしい香りを思い出す。

 

 

ある場所の昔話だ。

「姫和、お父さんはね、立派にお役目を全うされたのよ。」

 

「おやくめ?」

 

「うん。お役目。」

 

「…?それって、たいせつなこと?」

 

「えぇ、いつか姫和にもわかるわ。あなたが本当にやりたい事が見つかったのなら。」

 

「ねぇねぇ、お母さん。お父さんはどんなお仕事してたの?」

 

「そうね。……#$%^&……」

 

 

そこから先を思い出せない。何を教えられたかも忘れた。

 

(まって……わたしは…まだなにも成し遂げていない。)

 

 

 

 

 

 

「…?」

死を覚悟した少女、十条姫和はゆっくりと目を開ける。

涙により曇ったうっすらとした視界。記憶を遡り見た景色と混同しそうになり、必死に目を凝らす。

 

その目に映ったのは最近であったばかりの得体のしれない、それでも信用すると決めた少年の背中だった。

 

「ッ?てんま?」

 

 

姫和が死を覚悟した直後の出来事だ。

 

可奈美の斬撃をかいくぐった沙耶香の無心な剣先が姫和の首を獲るその直前、先を見越したかのように動いていた天馬がギリギリのタイミングで剣を抑えたのだ。

当然、並大抵のことではない。

 

 

以前から腰に携えていた鞘。その鞘を駆使し爆発的な威力の御刀を受け止め、今も尚堪えている。

 

 

その様子を呆気にとられながら見ていた姫和。

まだ実感がわかない。当然だ、死にかけたのだから。

それでも生きているという事だけは認識し後ろへ後退する。

 

 

「…ボサッとすんな。構えろ!」

 

苦い表情を表しながらも差し向けられた剣を弾き返す。

 

背後に飛び退き刀使二人に並ぶ。

 

 

 

「天馬さん、任せて。」

 

「分かってんのか?あの糸見沙耶香(ニンギョウ娘)にゃ並の速度じゃ物足りねえが、斬撃を与えりゃ人殺しだ。」

 

「怪我させなきゃ大丈夫でしょ!」

 

 

そう言い終えると同時に、可奈美は天馬から奪い取るように沙耶香と刃を交える。

沙耶香の的確かつ高速な捨て身の攻撃を全てかわしきり、懐に入る。

 

(…アイツ、感覚だけで避けてやがるな…)

 

だが、すでに深い位置まで入り込んだ沙耶香の迅速はいくら懐に入ろうと後ろに後退しすきを見せない。

 

 

 

(そう簡単にすきは見せないか…確かに御前試合よりも動きにキレがある。)

 

 

(確かに速い。避け続けるには限界があるかな。それに腕もビリビリしてくる。)

 

 

 

「でも!舞衣ちゃんの方がずっと重い!」

 

「姫和ちゃんの方がずっと速い!」

 

半ば強引に体を捻じ曲げ上から迫る斬撃を弾く。

その衝撃で顔の上まで跳ね返った御刀を振り払う。

 

「へぇっアイツ、やるな。」

 

その様子を傍から見守る天馬からつぶやきが漏れた。それは紛れもなく賞賛の言葉。超高速の斬撃を避けきり、沙耶香の御刀だけを狙い攻撃を繰り出す可奈美へのものだ。

 

「そんな魂のこもってない剣じゃ、何も斬れない!」

 

沙耶香の手から御刀が振り払われる。御刀は上空へと運ばれ、御刀の籠を失った沙耶香は力なく地面にひれ伏す。その目からは先程とは違う意味での無機質さを秘めていた。

 

「…負けた…」

 

「覚えてる?御前試合で戦った衛藤可奈美。」

 

「あの試合すっごくドキドキしてた。いつかあの試合みたいな楽しい試合、してくれない?」

 

敗者に手を差し出す可奈美。だが、それは哀れみでも怠慢でもない。

 

「…」

その無邪気さに気を取られてる沙耶香の手を半ば強引に掴む。

 

 

「約束だよ!」

 

 

(私には、あんな真似はできない。…ここでは私は…)

 

 

「なぁ、姫和(ぺたん娘)除けぇなこと考えてねぇだろうな。」

 

「…」

 

「気にすんなよ。ありゃアイツしかできねぇ。」

 

 

 

可奈美(クルクルモンブラン)、その辺にしとけ、引かれてんぞ。」

 

お繰り返しとけ!とつけて足したように言うと彼は累の方を見てその場を後にする。

 

 

「ここは騒ぎすぎた。ずらがるぞ。」




沙耶香の過去を近々書こうと思います。

少し暗めな過去がいいので何かある人は感想のところで意見ください。

割と真面目に困ってます。
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