エレンも同じです。
違和感はあると思いますがお許しを!?
「先程無断で転送された……S装備の行き先がわかりました。」
「至急…捕縛隊を結成し向かわせろ。」
「紫様のご指示だ。親衛隊を使え!」
「……」
「どうした?」
「いえ…それが…既に」
「?」
「既に捕縛隊を従え向かっています!」
雨上がりの山の涼しさが心地よく感じられる。
先の雨天により濡れた髪は手持ちのバスタオルで上手く水気を抜けた。
コンディションは悪くない。
だがそんな好調にも問題は付き物。
征く宛が…石廊崎?…という場所しかない。
さてここからどうしようか、という論題に差し掛かろうとした矢先。
草むらを揺らす音が三人の耳に届く。
未知な体験をし過ぎたせいか、忘れかけていたが追われ身であった。
油断したが反省はあと。
切れた緊張の糸を類い寄せ、御刀を引き抜く。
やはりと言うべきか草むらをかき分け姿を見せたのは先程振り切ったはずの長船女学園の面々だった。
あの豪雨のなか、今の今まで探し回っていたようだ。
その証拠に全身びっしょりの目も当てられない姿になっている 。
「…お前ら、逃げたと思って探してたら…」
「こんな所で雨宿りしてたのかよ!!!」
折神邸に残る数少ない学生の一人、柳瀬舞衣はある光景を見てしまった。
それは学生と学長のやり取り。だが、そのやり取りは学生と学長の垣根を超えた嫌悪感を感じるものだった。
まるで馬の躾の様な、そんな行為。そんな様子に恐怖を感じる。
「…う、そ…」
舞衣が見てしまった光景は、一方的に責め立てる高津と、それをただひたすらコクコクとうなずく少女の姿だった。
それはいつかの御前試合、可奈美を追い詰めるも敗北した少女の姿だ。
以前見かけた時から大人しそうな印象は受けていたのだが、今の彼女の姿はまるで操り人形のように見てる。
だが、舞衣とて任務に失敗すれば多少のお叱りは受けるし、怪我人が出たら責められる。そんな職柄だ。だから仕方のないことかもとも思う。
もともと、舞衣の所属する美濃関学院の学長及び教師は穏やかで優秀だ。それは柳瀬舞衣自身の、自負もある。
だから最初は他の学院は'厳しいのだ'と勝手に解釈していた。
けどそれも束の間、高津は御刀を沙耶香に向ける。
そして頬あたりを斬り裂いた。
幸い刀傷が浅かったためか出血は多少ですんだが、それでも教師に身を置く者が生徒にしていいものではない。
「そんな、こんなのって…」
そんな行為を目の当たりにして舞衣は言葉を失ってしまった。
山中に薫の怒りの叫び声が木霊した。
その姿を見て可奈美と姫和は引き抜いた御方を収めるかどうか悩む羽目になる。
流石に可愛そうと感じたのだ。
だが、そんなことは関係ないと笑い飛ばす者がいた。
まさにそれは隣に立つ天馬だ。
相手を煽るように目に涙を浮かべゲラゲラと大笑いをかます天馬。
その行為はまさに火に油を注ぐもの。
それを横目で見ていた可奈美は察してしまった。
怒らせたな、と
「お前らッ!!許さないからな!!」
((何故私も!?))
案の定。お怒りのご様子。
ブチッと血管が切れる音がした…気がする。低身長を極めた幼児体型の益子薫から。
ここ一日の重労働、苦労をバカにされ、薫の頭にはしわが大量発生している。怒りのまま、思いのままに御刀を振りまわす。
全長2メートルもある巨大な御刀をその小柄な体躯に見合わぬスピードで地面に叩きつけられた。
地面にひび割れ雨でぬかるんだ地面を斬り裂く。
「威力だけだな。一対一なら兎も角、手数が物を言う集団戦では使い物にならない。」
それを姫和が迎え撃つ。何故怒らせた本人の天馬が迎え撃たなかったのかはこの際どうでもいい。
姫和は向かってくる巨大で強大な剣を、持ち前のスピードで交わす。
「ハアァァァ───」
地面に伝わる衝撃を回避するために回り込んで────そして薫の懐を一刀両断に斬り裂く。
「ッガァッ!」
斬り裂かれる感覚に悲痛の声を上げる薫。
写シを斬り捨てられ生身の肉体に戻された、その際の身を引きちぎられるような痛みが薫の動きを一瞬鈍らせる。
姫和は、その時間を利用し薫の背後に回り押さえ込む。拘束のかわりに首元に剣先をちらつかせた。
「…動くな。もう決着はついた。」
「へぇ、やるな…」
諦めたと言わんばかりに地面に御刀を落とす。
通常、御刀を媒体に写シをはる刀使にとって御刀をおろすことは命取りである。その行為自体が禁忌と言っても違いない。
つまりそれは降参の意思表示。
だが、その目から失念の意は伺えない。
まだ何か企んでいる、そんな顔をしていた。
薫は姫和に見えないように慎重に内ポケットを漁る。
姫和の僅かなすきを突く。
「けど、甘ちゃんだな!」
言葉とともに動き出す薫。
突きつけられた剣になんの躊躇もなく振り向く。
その小柄な体は姫和の剣をすり抜けかがむ。
首を捻じり体ごと姫和の方を見て、内ポケットから取り出した物を引き抜く。
「避けろ!!」
「ッッッ!?────」
振り向き様直後。
パ~ンと景気のいい音が鳴り、色鮮やかな爆発が姫和を巻き込む。
極小規模で発生する爆風に姫和の長い髪が揺れる。
その威力、蟻一匹を有にこの世から葬ることができるだろう。
姫和の視界は真っ白になった。
はずだった…
「姫和ちゃ───────?あれ?」
「ぐっ…くッ…ん?」
(?いき…てる?)
爆発に巻き込まれたと錯覚したが、体の感覚はまだ残っている。
ゆっくりと目を開ける。
眼の前にはニタニタと笑う長船女学園の二名。
ちっさい方の手には爆発の物が握られている。
先程の極小規模の爆発の正体はパーティーなどで使用される傾向のある厄災、クラッカーだった。
今回ばかりは笑えない。三者が3社とも意味も分からず混乱する。
ニ日続きで死を覚悟した姫和に関しては硬直状態だ。
(生きてるよな…だったら…何故に…クラッカー?)
(!?)
(やべぇぞ…全然わかんねぇ…アイツら小学生か!?)
「ねぇ天馬さん、あの人…何してるの?」
「そんなのわかんねぇよ!俺に聞くな。………兎に角目を合わせるな。…馬鹿が移るぞ!」
理解の及ばぬ行動につられ、よくわからないが、理屈もないハイテンションに駆り立てられる三者。
天馬自身も珍しく大混乱に巻き込まれ、普段道理の思考にたどり着けていない。
だが、そんな様子に構うでもなくマイペースにことを進めていく。
驚きの余り固まっている姫和たち一行に薫とエレンはニヤニヤと笑い説明を始める。
「お前らー、ご〜かくー!!」
「おめでとうございマス!!」
「「Welcome 舞草!!!」」
「……………?」
「「「はぁ?」」」
その時は心底気の抜けた声をしていたらしい。
「雨がやみましたわね。」
「あぁ…そろそろかな…夜見、探知を頼む。」
「はい。」
「準備はいいかい?」
「ええ。」
「さぁ、山狩りだ。」
先のことあってから横からの視線が痛い。
クラッカーなんて巫山戯たことをしたのが原因か…
特に、姫和と天馬からのジトーとした目線が辛い。
「…一体どういうつもりだ?」
説明を求めると言うよりは、半ば強要する姫和。
それもそのはず。話に噛み合いがないのだ。
「おい…そもそも舞草って何だよ!?」
「ちょっと二人とも!一度にそんなに…」
「「うるさい!!バカは黙ってろ!!」」
「バカ!?ひどいよ!!」
「おい、お前らー。うるさい。」
「そうデスよ!」
隣で騒ぎ立てる天馬たちをほどほどに黙らせ、本題にはいろうとするエレンと薫。
けどそこに行き着くにはクリアするべき条件がまだ残っていた。
それは情報共有。先程、無意識かは知らぬが姫和と天馬が試みたものだ。何を始めるにもある程度の信用はいる。
けどそれは本来、あのメッセージを見た時点でクリアしていたものだ。
「ウぅー…それにしても。どうも会話が繋がりまセンね…メッセージちゃんと見マシた?」
目的地知ってる?石廊崎だよ…と、最初から説明せねばならぬ苦労を理解したエレンと薫のツーマンセルは諦めた。
…せめて下積み段階の説明くらいしといてほしかった…
切に願う薫であった。
「いいデスか?」
「俺たちについて…順を追って説明してやる。」
山道を下り既に十五分は経過しているはずだが…
未だこの頭の固い奴らと言ったら、なかなか信用しない。
まぁ警戒するなというのも無理な話なのだが。
「確かに我々は石廊崎に向かっているが…メッセージにはすべて目を通せていない。」
そもそも、姫和たちは累の家に送られてきたメッセージでは、なんの情報も得れていない。
メッセージを開けたタイミングで妨害が入ったからだ。
だから、石廊崎へ向かっているのはあくまでるも累の指示。
「そのメールには何がかかれていた?」
「舞草の詳細についてデ〜ス。」
先程からエレンが話しているそれは恐らく糸見沙耶香の襲撃により確認できなかったメッセージの事だろう。
可奈美は、累が累以外にメッセージの内容を知っているのは送り主だけだと話していたのを思い出す。
「!もしかして…送り主さん?」
「そうだよ。正確には違うけどな…メッセージの送り主、ファインマンは俺たちの上司だ。」
文字以上に気怠げな薫のセリフ。
もともと雨に打たれ疲れ果てている上に面倒くさい説明を再度しなければならない。
薫の気だるげさはそれが原因だ。
「ファインマン?」
「あー、もう!面倒くせぇ!!メッセージの送り主くらい見ろ!!!」
「そうデスよ!頑張って自己紹介文、考えてたんデスよ!」
「結局使えなかったみたいで…凹んでましたケドね。」
結局確認していないメッセージの製作にどれだけの時間を費やしたのか…それほど重要な内容であったのか…
申し訳なさを覚え始める。
ひと通り説明を受けた。かなり簡略化されていたそれからは、此方への配慮が伺える。
(まぁ…歓迎されてねぇ訳じゃなさそうだな。)
「雑談は以上だ。難しい話は後で話すとして、一応伝えたぞ。」
「ねっねねね〜!」
気づけば薫の頭には毛むくじゃらな生き物が乗っかっていた。
先の会話中、自身の存在を控えていた辺りを考えると利口さを感じた。
「わっ!ちょっと!やめてよ〜」
その生き物は天馬、姫和、可奈美の順に見回す。
品定めだ。そして最有力候補の可奈美の方へ、主にその成長期真っ只中の胸目掛けてダイブする。
「くすぐったいってば〜」
ウリウリと突く珍獣に驚くも、その愛らしさにホッコリする可奈美。
途中姫和の方も見たのだが、ある部分がない為かそっぽ向いてしまう。
「なっ!?コイツは何だ?」
何故かバカにされた気分になる姫和。
胸がないのだよ、天馬は心の中で呟いた。
「おい…少しは控えろ!!」
実はいつものことなのだが、他所様の手前無理やり可奈美から引き剥がす。薫の表情は呆れていた。
「コイツはねね。俺のペットだ。」
ちなみにさっきからいた。と後付する。
「そして俺が益子薫。こっちのデカイ()のが古波蔵エレンだ。」
「遅くなりました、よろしくデス!」
今回は2話連続投稿です