新章を追加してややこしくしていたみたいです。修正しておきました。前話「穏やか」をまだ読んでいない方そちらの方を先に読んでいただければなと思います。
タイトル通りの回です。相変わらずの駄作&語彙力皆無ですが、どうぞお読みください。
戦的中継、通称バトルレコーダー。刀使が倒した荒魂を記録しそれに見合った報酬を与える為のデバイス。
だが、その本質は別の所にある。決して刀使の倒した荒魂を確認する為だけに存在するのではない。
刀使の行動を管理し、予定外のイレギュラー因子を排除する。
その役割はまるで鳥かごだ。全ては折神紫の為に。
「真希おねーさん!」
折神家の一室で資料作成に溺れていた、だがそれもようやく終わり。腰を伸ばし席を立とうとする。なんせ資料作成が終われば休みという訳にはいかない。ここから先は捜索任務だ。
その矢先、甘い声が聞こえた。声の主は、人を惑わす花のような声色の可憐な少女だ。小柄な体躯を除けばその整った顔立ちに見惚れぬものは少ない。
その少女は遠慮なしに人様の自室にズカズカと上がりこんできた。
「お仕事?」
「あぁ、今から出陣だ。」
「忙しそうだね。手伝ってあげよっか?私、外出許可でなくてちょうど暇なんだ。」
「……結芽。君はいい加減我慢ということを覚えたほうがいい。」
「え〜〜、つまんな〜い。」
「自業自得だ。いつも隊率を乱すふるまいをするからその跳ね返りだよ。」
そう言い残し獅童真希は部屋をあとにする。
あのまま彼女と話を続けていると感情の制御が効かなくなると思ったからだ。
現在、獅童真希は不機嫌を極めていた。
任務の失敗、だが今回はそれだけに留まらない。
天馬との戦闘だ。結果は惨敗。内容以前に瞬殺だった。
「…どうしてこうも強者ばかり……」
溢れた本音に目を背け、少女は任務に出かけた。
その本音には、嫉妬が滲み出ていた。
「チッ、なんだよ、食えたもんじゃねぇな。んん~!」
それは獅童真希が部屋を立ったと同時刻の出会いだ。
天馬たちの乗る潜水艦は着々と目的地を目指しているようだが、地上と比べるとどうしても遅くなる。
不幸な事故により、昨夜姫和の裸体を覗いてしまい、現在姫和との間に気まずい空気が流れているためどうも暇を潰せる相手ではない。
姫和と気まずいとなると他の刀使とも同じであろう。きっと蔑む眼差しで睨みつけてくるに違いない。
だから彼は船内に設置された小規模なダイニングで一人、倉庫から勝手にとってきたサンドイッチにかぶりついていた。
「君が、天馬くんだね?」
気前の良さそうな異国の老人が声をかける。体格がよく、どこか見覚えのある顔立ちをしていた。
「隣、いいかな?」
それに対し彼は無言で席を差し出す。
「酷いだろう、ここの食事は。基本保存食でまわしていてあまり味にはこだわれないんだよ。」
天馬の隣に腰を下ろす老人はおそらくアメリカ系の白人。とても日本人とは思えない図体の良さからもそう推測できる。
「んな事どうでもいい。てめぇは?」
「そうだね。端的に言うなれば、舞草の創設者だ。」
姫和たち刀使組は癒えきらなかった傷を見て包帯を巻いていた。といってもほとんどの傷は何故か塞がっていて打ち身などの痛みもほとんど感じなくなっていた。
そして今は可奈美の足のアフターケアとして包帯を巻いている最中だった。
「おいっ、包帯が足りていないのに遊ぶなっ。このバカ荒魂を今すぐ追い出せ!」
「だからー、ねねは俺のペットだって言ってるだろ。エターナル胸ぺったん女。」
「なっ貴様、またその名を。」
「まぁまぁ、ふたりとも仲良くデスよ。それに包帯が足りていないのは私が使いすぎちゃったからデスし。ねねを責めないであげてください。」
「なっ、それは…」
「ぐぬぬぬ……恐るべし巨乳。」
エレンの発言を恨めしそうに睨みつける姫和と薫。その主な理由は発育にあった。
もともと、包帯が足りない主な理由はエレンにある。それは間違いないのだが、理由が育ちの宜しくない少女二人には強すぎる。夜見の毒が下着まで染み込んでいたため晒の代わりに胸に巻きつけているのだから。
己の成長予定と相手の規格外差に思わず力が入りすぎてしまう。
「イテテテテテッ。姫和ちゃん、縛りすぎ。」
「あぁ、すまない。」
「それにしてもびっくりだね。エレンちゃんのおじいちゃんがふぁい?なんたらマンだったなんて。」
「いや、お前、そこを掘り下げるならちゃんと言えよ。」
「ファインマンだな。」
「そういえば天馬さん、何してるんだろう。」
天馬の名前が出た途端分かりやすすく肩を震わす姫和。
「しっ、知らん。」
「冷たいデスネ。ベットを共にした仲なのに。」
「そんなこと、アイツの好きにすればいい。」
「なぁ、お前らなんかあったか?昨日の夜だってさ。」
ギクッ
図星を突かれた顔になる姫和。あからさま過ぎてもはや隠す気がないように見える。
時は少し戻る。
それは昨日、天馬がすっぽかした会議もとい情報提供の場でのことだ。
「やはり予想していた規模より遥かに大きいな。」
「そっか、姫和ちゃんは寝てたからまだ説明を受けてなかったもんね。」
「それにしてもすごいよここ。」
「やぁ、お会い出来て光栄だ。もう一人の反乱者。」
「まさに今日という日は完璧だ。」
「あ、あの人だよ、私達を助けてくれるっていった人。」
「まさか、貴方がファインマンか?」
「ふふふっまさに。だがファインマンとは仮の姿。はたしてその実態は……」
不意に長く続く艦内から声が聞こえた。
「リチャードフリードマン。
S装備の開発者であり、わたしのおじいちゃんデース!!」
「コラコラ、ネタばらしをするでない。我が愛しの孫よー!」
「グランパ!」
「……なんだこの茶番は?お前の時もこうだったのか?」
「ハハハ、でもいい人たちだよ!」
その後はこれまでの経緯の簡易説明のようなものだ。舞草の規模や姫和の母篝とのつながりなど。細部は舞草本部にて話してくれるようだ。
「─────────というわけだ。ただ一つ我々の誤算は君の行動力の高さだね。」
ファインマンの正体、エレンの祖父リチャードフリードマンはここまでの経緯を詳しく話してくれた。それこそ眠たくなるほどに。
やはりと言うべきか、姫和の行動は完全にイレギュラーだったようだ。それよりも母、篝の友人であるこの男が何故と疑問に思う。
「私たちは入念な計画を立て、実行する段階まで至っていました。けどよりによってその計画の決行日にひよよんが折神紫に正面から突っ込むなんて。」
「結局数年かけてた入念な計画がおじゃんになったんだけどな。ようはお前が余計なことしたから面倒になったんだよ。まぁ責はしないがな。」
「知らん。私は私のなすべきことの為に動いただけだ。」
「もとを辿れば我が恩師、篝さんの助力がなければなし得なかったことだ。結果として事は我々の期待以上に上手く回っている。それに篝さんの愛してやまない愛娘に出会えたのだからね。今回はそれで吉にしようじゃないか。」
最後に舞草本部に着いたら改めて話すと告げ解散となった。
そして現在。天馬とのわだかまりについて問い詰められている。
「な、何もない。」
「ねぇ、姫和ちゃん。朝から機嫌悪くない?何かしちゃった?」
「へ?」
それは艦内の一室の出来事。時として天馬の出会いと同時刻。面子は舞草組を含めた四人。
「だって顔が怒ってるから。」
「アレはちょっとした下心で、そもそも私達じゃなくて…」
「いや、違うなー。これは。」
「匂いますネ。さては……」
たじろぐように弁解する可奈美、可奈美の言うアレとはおそらく昨日、天馬の横に姫和を転がしたアレだろう。
だが今回はその件じゃない。
そして横でごちゃごちゃ話す舞草組はうるさい。
「いや、そうじゃないんだ。ただ…見られただけで」
もじもじと訂正する姫和。顔も真っ赤に染まっている。
それは羞恥に溺れる顔だ。よもやと思い彼女たちは踏み込む。
「「「ただ?何をぉ?」」」
「昨日、目を覚ますために風呂に入ったんだ。その時、見られた。」
「ほほ〜ぅ、それでそれで?」
見られた?何を?こういう時姫和は要領が格段に悪くなる。主語がわからない。会話がスムーズに進まない。
だが、その場に居合わせた可奈美は寧ろその姿が年齢相応で、可愛く見えてしまう。
薫は、逆に虐めたくなるような隙だらけの彼女をおもちゃにしたくなる。
「何を?」
「はっ、はだかを」
?ここで可奈美たち四人の頭に疑問が生まれる。なんせ女子校の出だ。女の子同士でのスキンシップには比較的なれている。中にはそういう中に踏み込むペアもいたかも知れないと推測はつく。だが姫和の場合はまた別の話。彼女は同性に裸体を晒したとしてもしどろもどろしたりはしない。なんせ可奈美との出会いは御前試合前の温泉なのだから。もちろん裸体で。
と、なるとなんとなく分かってしまう。
「誰にぃ?」
「天馬に……」
「「知ってた!けどなんで!?」」
予想的中過ぎて赤面する姫和に思わず、思い切りツッコんだ。
「ハッハッハッハッ、それは災難だったね。」
「仕方ねぇだろ。扉開けりゃそっポンポンだったんだからな。」
そう悪態をつく天馬の顔に紅葉のような手形がついていた。おそらく、と察せてしまうあたり天馬も存外わかりやすい。
「そのほっぺたは、もしや?」
「つけられたんだよ。」
「もういいだろっ。それより話したい事あるんだろ?んん〜?」
「いやね、愛しの孫を救ってくれたお礼を言ってない思ってね。」
「まご?まさかとは思うが……
「あぁ、随分と失礼なあだ名をつけてくれたものだが、そういう事だ。そろそろ舞草本部へつくそうだよ。」
そしてファインマンことリチャードフリードマンは意味深に語った。
「君と出会えて私たちの計画はより完璧に近づく。それに君の未来もね。」
己の未来と言われれば自ずとわかる。目の前のコイツは関係者だと。
「……どこまで知ってやがる。有馬のさじがねか?」
「さぁ?強いて言うならば、預言者くん?君のことは比較的知ってるつもりだよ。君の運命も。」
「チッ……そういう事かよ。心底……胡散臭ぇ野郎だな。んん!」
「君もそろそろ支度をしたほうがいい。本部での話し合いは参加してくれるかな?」
「チッ。拒否権なしかよ。」
マウントを取られた天馬は敵わんと思い諦めるのだった。彼はどこかの誰かに似ているとは思っていたが、相手を手玉に取る技量は有馬そっくりだと思った。
とある一室で天馬は昨日、有馬と話した事を思い出していた。
「そろそろ話してもいいかな。」
「てめぇの悲願と俺の目的についてか?」
「僕たちの悲願なんだけど……まぁいいか。」
「それで?どこまで進んだ?何が重要だ?んん〜!?」
含みのある物言いで問う天馬の顔立ちはやはり女人にし見える。その頬に手形がついているのだから笑える。
そして普段生意気な彼がソワソワしている。それがまた一段と面白い。
だが今は真面目な話。その件はまた後ほど姫和あたりに教えてあげようと心に決め視点を戻す。
そして静かな口調で伝えた。
「……単刀直入に言うよ。…当代の双星が決まった。」
「ッ!?」
それは短く、その事象をよく知らぬ者が聞けば驚きさえしない意味不明なワードだった。だが、その道を進む天馬には込み上げてくる物があった。
なんせ天馬は歩み始めた時からずっとそのワードを待っていたのだから。
見開いた目を今度は細め珍しく穏やかな顔を見せる。
「そうか…ようやくか…待たせやがってッ。」
その目から涙が出ていたことに少年は気づかなかった。
ありがとうございました。そろそろ謎に登場し続ける有馬さんのプロフィール書きます。
双星の陰陽師に登場する彼そのものだと思いたい。