「…まさか…舞草の組織に五箇伝が関わっていたとはな。」
「うん。ちょっと信じられないかも。ビックリだよ。」
うんうん。互いの顔を見合わせる二人。安心と疑心。どちらも含まれた感情を持ってた。
目線の先は気品に満ち溢れた女性、折神朱音。彼女は折神紫の実の妹であったはず。
それを遠目に見つめる二人。
「う〜ん。驚きが足りませんネ。もう少し疑り深くてもイイのに…」
「まぁ普通の反応だな。驚き半分安心半分ってところだ。」
「おい、アレ。」
更に後方から見知った二人。
そこは再会の地だ。
「舞衣ちゃーん!それに沙耶香ちゃんも!!」
「可奈美ちゃん!」
艦内から降り舞草本部のある土地、石廊崎にたどり着いた一行。ファインマンことリチャードフリードマンの
一行を出迎えてくれたのは多くの刀使たちだった。
その中には見知った舞衣それと沙耶香の姿も。
「何故お前がここに?」
姫和が冷たい声で問う。それもそのはずだ。そこに居たのは以前の敵。折神家の手駒として暗殺を仕掛けてきた死角だったからだ。
ヒシヒシと警戒を纏う問いに襲撃者は涼しく答える。
その頬は少しばかり笑っていて以前の人形同然の彼女ではなかった。
「舞衣が助けてくれたから。」
そんな彼女を見て姫和は問いただすのをやめる。
毒気が抜けいい具合に丸くなった彼女を見て責める理由はない。
「…そうか。」
「うん。」
「感動の再会のところすまないね。一度集まってくれるかな。」
「いやぁーー長旅ご苦労。」
「…前置きはいい。それより説明しろ。てめぇがこの組織とどう繋がってんのか。そしてあの
「そうだね。けどその前に。舞衣さんと紗耶香ちゃんには話したと思うけど…自己紹介を。」
ニッコリと笑うと彼はどこから取り出したのかもわからぬマイクを手に持った。そして叫ぶ。
「僕の名前は土御門有馬っ!すべての陰陽師を従える陰陽頭にして、天馬の恩師。その実力はまさに一騎当千。来る敵をばったバッタと張り投げ────」
「嘘つけっ!」
完全にお巫山戯モードに突入した長髪の彼、土御門有馬。それなりに付き合いのある天馬は彼の静止に入った。
「おっとっ……冗談はここまで。自己紹介も終わったことだし、本題にはいらせてもらうよ。僕たち陰陽師は──」
「ちょっと待ってください。そもそも陰陽師とは何なんですか?」
「そうだね。言うなれば───────刀使の起源的存在かな。」
「それを含め今からご説明させていただきます。」
「私は、折神家現当主折神紫の実妹、折神朱音です。」
「これからお話するのは二十年前に行われた戦乱についてです。」
「それは刀使と荒魂の戦いだった。」
「そしてその戦いには僕たち陰陽師も参加していた。」
パチンッ
指を鳴らすとともに和室から景色が一変した。正確には和室の壁に色が灯ったのだ。
そして折神家の外来人と陰陽師、土御門有馬は語り始める。
「今から二十年前。突如として現に出現した大荒魂。」
「ですが、このときの戦力では大荒魂には到底叶わなかった。」
「ここからの話はすべて真実です。そして貴方達の知る事実は伝えられてきた偽りの記憶を塗り替えるでしょう。」
「これは、最後確認です。これ以上踏み込めば後戻りは出来ない。終結するまで戦うことになるでしょう。」
「最期に問います。真実を知る覚悟がお有りですか?」
その問の重みはよくわかった。知ってしまった瞬間からそれは呪いのように人生を巻き取る。逃げることはできない、そういうことだろう。
だが、少女たちには各々の掲げる理由がある。
少女たちの目に宿る色は様々。惑い、不安、心配、無機質、怒り、好奇心。共通しているのは唯一つ、決意だけ。
「…いい目です。」
少女たちの返事、それを聞き入れ次にすすめる。
覚悟を見届けた、そして土御門有馬は語りだす。
「戦乱の説明をする前に一つ大きな事実を伝えなければならない。刀使についての。」
「君たちの教わる刀使の歴史にはおそらく我々は出てこない。そして長きに渡り生き続ける大荒魂も。」
「だが、最近になり人形に封印されていた大荒魂が掟を破り姿を表した。それが二十年前の戦いの背景。」
「封印?」
「あぁ、君の仇である大荒魂は元来人を媒介とする存在。言うなれば寄生生命なんだよ。」
「そしてその戦いで自らの体を大荒魂こと多岐都比売命に差し出したのが折神家、現当主、折神紫さん。彼女だった。」
ここまでの事実はすでに姫和の手紙に書かれていた。
「ここまではいいかな?……ならば次に進むよ。」
有馬は少女たちの沈黙を肯定と取り話をすすめる。
「さっき、陰陽師が刀使の討伐作戦に参加していた事を話したよね。…そもそも大荒魂とはなんだと思う?」
有馬は天馬を指名する。
「天馬。君なら分かるんじゃないかい?実際に接触した君ならば…」
「あぁ、何となくだがな……アイツからは
「それに?」
「ヤツからは
深くは考察しない。あえてしない。出来ないのではなくしない。それは未だ確定しない不安要素があるからだ。
「まぁ、大体あってるね。でもまだ足りない。」
それを知った上で有馬は天馬を否定した。
「それともう一つ。十条姫和さん。彼女と実際に対峙した君にも問いたい。…刀使とは何だろうか?」
「…荒魂を倒し、ノロを回収する者。そう認識していますが…」
「だね。でもそれだけじゃない。君は薄々勘付いている。刀使は別の目的があって作られた。そして今もなお闇の中に潜む目的がある。」
「!?それは…どういう事ですか?」
「ごめんなさい。衛藤可奈美さん。それに答えるにはまだ
「ならば、一般人と刀使の違いは?そもそも刀使の力の根源とはなんだろうね?刀使に疑問を抱いたことはないかい?」
今度は舞衣を指名する有馬。冷静かつ沈着な彼女ならば疑問を抱いていても不思議ではなかったから。
「刀使の写シは御刀を媒体にしていると習いました。それが事実なのかはわからないですが、私たちは少なくとも教わった以外のことは知りません。」
「そして間違っていると思った事はありません。」
だが、舞衣は予想に反し事実とされている事だけを述べた。
「その事実がすでに間違っていたとしても君はそう思うのかな?」
「…それは…分かりません。それでも…私たちの今は間違いないと思います。」
きっぱりと言い張る舞衣。自分の道は過ちではないと言う意思を露わにする。
その目を見て有馬は唇を強く噛んだ。
「……陰陽師のちからの根源は各々の先祖たちやその見守り手だ。」
「?」
「それはどういうi」
「要約すると、死者だ。死人を利用してるってこった。」
「!?」
「そういう事さ。僕らは死人の彼らが持つ記憶や衝動を糧にして戦っている。…ならば、君たちは一体何を糧に力を得ているのかな?」
「根源なしに力は得られない。」
「だから、その事実を自分たちの目で確かめてきて欲しいのです。」
今度は折神朱音が語りだす。
ここから先についてを。
「これからお見せするのは二十年前の大騒動についてです。」
二十年前の過去に因縁のある姫和は思わず目を見開きつぶやいた。
「二十年前…」
「…たしか…姫和ちゃんのお母さんが……」
「えぇ…そしてその現場には私や折神紫本人。そして衛藤可奈美さん。あなたのお母様、藤原美奈都さんも。」
「え…」
「「「は?」」」
「なっ……可奈美っ!貴様ぁ、なぜ今の今までそのことを黙っていたっ!そこに直れっ!!!」
「ええっ!?」
「まぁまぁ。彼女は知らなかったハズさ。なんせ美奈都さんのおかげで彼女、
「…だから…お母さんは……」
その一切を正しいと見做すだけの心当たりが可奈美にはあったらしい。
だが、それでも納得はできていない様子だ。
「そして藤原美奈都さんは最強の刀使だった。」
「そして才覚を持つ者を人々は戦わせる。安息は与えられない。」
「それは君の母、柊篝さんも同じさ。そして君たちも。」
有馬は目を細める。目線の先にはチリチリと睨む天馬にもむけられた。
「強さ故の依存。彼女たちにはある重大な選択が課せられた。」
「その選択の結果、美奈都さんも篝さんも一時的な安寧の犠牲となった。」
それを聞きある程度の事実を知る姫和は拳を握りしめた。
きっと彼女は後悔しているのだろう。そして悔しいのだろう。
「そして折神紫さんも。」
「!?」
「なにを……意味がわからないっ…」
「母を犠牲にっ…のうのうと生き延びた…そいつが…犠牲者!?」
姫和の必死さを見て天馬は有馬をにらみつける。
「
憤る姫和と、その様を見てニヤつく有馬に怒る天馬。
その様子を再度見て、陰陽頭土御門有馬は微笑んだ。
「宜しい。」
「怒りは時に原動力になる。」
「だから天馬。君に
「彼女ら刀使を守り抜き、刀使の歴史に終止符を打つ存在。君はそうなれるかな?」
「チッ……それが本懐か?何を目的としてやがる?」
「君のご想像にお任せするよ。」
「それに、時期にわかるはずさ。」
有馬は天馬に笑いかけた。息子の成長を見守るかの如く優しく慈悲深く笑いかけた。
そして朱音は事実を知る為のとしての責務を告げた。
「貴方方には私達が見たこと、聞いたことを追体験していただきます。」
「「「?」」」
「それは、どういう?」
「文字通りの意味さ。非現実的すぎて想像しにくいかもしれないけど、僕らには出来るんだ。……そう言えば陰陽師と刀使の明確な違いを説明していなかったね。」
「陰陽師とは、西洋で言うところの魔力使いの様なものさ。現実には有り得ない不思議な現象を引き起こす事ができる。」
「…天馬のような不思議な……?」
「まぁ天馬のソレは少し特殊なんだけどね。」
「さぁ、いくよ…若人たち。」
有馬は天馬を含めた七人を近場に集める。そして印を構える。
「さぁ、 と き よ も ど れ 給え」
「急急如律令」
謎めいた呪文と共に眩い光に包まれた。その光を姫和はすでに知っていた。
…ッ…チッ…好きにしろ…
記憶の片隅に眠っていた言葉が聞こえた。ここから先は未知な領域、知る事実は膨大。誰も知らぬ外来を知る事が、心臓の高鳴りを抑えきれなくなった。
随分と遅くなってしまいました。次回、過去編です。