言葉で言い表せない難しさがある気がする。
ガチャッ!
「可奈美ちゃんっ!!」
可奈美達が宿泊していた部屋に入って来たのは、柳瀬舞衣であった。
昨日、可奈美との会話で聴こえた放送を元に可奈美達がいる詳しい場所を特定、その近辺にある安いホテルを片っ端から当たったのだ。
想像するだけで彼女の生真面目さが目に浮かぶ。
気配は残っていた。ほんの数分前まではここに居たのだろう。
だが、部屋に可奈美達はいない。見つかる危険性を考え予め備えをしていたのだ。
「…どうして…」
部屋の窓は全開になっていた。
彼女の儚い呟きは街風に吹き消され、虚しさだけが残る。
「…見つかるのが速すぎる。」
早朝、逃亡者3名は昨夜泊まっていた一室の様子を外から伺っていた。
ボソッ
「あっ…私のせいかも。」
怪訝そうに考える姫和とは別に心当たりがある可奈美。
(大方、
ジトーーーとした目で怪しげに可奈美を見つめる天馬。
戦犯はコイツだと言わんばかりの疑いぶり。
「ごめんなさい!昨日、心配しないでって舞衣ちゃんに電話しちゃって…」
「ハァ…。昨日コンビニに行ってたにしては遅かったしな。」
「今回はお前に友人を心配する学生らしさがあるとわかっただけでよしとしよう。」
そう言い残し髪をかきあげその場をあとにする姫和。思いの外怒ってない姫和にキョトンとなる可奈美。
可奈美と目を見合わせ、その後をついていく天馬。
可奈美は先行する姫和の隣を歩く。
「姫和ちゃん!朝ごはんにたべたい!」
「…そうだな。近場の監視カメラの少なそうなところを探すか。」
「もぉすぐそうなるんだから。もっと大胆に行こうよぅ!」
「原宿とか!」
「調子に乗るな!」
ドゴッと姫和から制裁を受ける。予想道理と言えばそうなのだが…
「だが、
「…なら人通りの良い場所を目指すか?」
その後、先程の可奈美の提案で原宿に訪れたのだが、昨日から続く可奈美と天馬の暴走に頭を抱える事となる。
「だからといって遊びではないと何度言えばわかる!」
「まぁそうカッカすんな
「そうだよ、姫和ちゃん!」
「ハァ…いい加減その呼び名をやめろ。」
「あれなんて美味そうだぜ、行くぞ
「アイアイサー!」
「…ハァ…」
本日何度目かになるため息は都会の騒音と彼らのはしゃぎ声で虚しくも消えてゆく。
もはや変なあだ名など気にも止めない可奈美と都会なれしていない天馬は朝方にしては偉くハイテンションかつ
ハイペースであり、姫和のことを再び振り回す。
(…こうして見ると、どちらも子供だな。可奈美も天馬も。)
なんて考えてはいるが先日の奥義による疲れと買い物という名の拷問により精神的にも肉体的にも疲弊しきっている姫和。
そんな事も知らずに彼らは姫和の事など放ったらかして品定めを始める。
「ハァ…、何で私はこんな目に…」
彼女の口から出た痛恨の悲鳴。普段、比較的弱音を吐かない彼女にとってはとても珍しいこと。
キャラでもない様子に面白みを感じた天馬はニタニタと笑いながらその様をみとどける。
「…早く来いよ!カロリー高めの選んでやらァ!」
「おい!ふざけるな、自分の食事は自分で選ぶ!」
その後、比較的安価なレストランに入ったのだが悪巫山戯が過ぎた可奈美が朝からハンバーグ定食を注文し自爆したのだった。
「うげぇー、きもじわるい。」
「自業自得だ。」
「んん?」
「あぁ、チョコミントアイスだが?」
「んん~、別になんでもねぇよ。ただよ、レアだな。」
「そういう貴様こそみたらし団子とは似合わないな。」
「やめて!もう私の前で食べ物の話はしないで!」
「…くだらねぇこと言ってんな…それより出たぞ。」
「!姫和ちゃん。何か鳴ってる。」
「ん?この音、スペクトラム計か!」
「「荒魂!」」
スペクトラム計、約5センチ程の強化ガラス球の中に、スポイト数滴分の荒魂化したノロが入っている。荒魂が引き合う性質を利用し、荒魂が接近すると振動する性質を持つ。
要するに荒魂発見器という訳なのだが。
そのスペクトラム計が反応したという事は荒魂が近くに出たというわけだ。
「まぁそんなところだ。」
「姫和ちゃん、行こ!」
「……いや、この辺りの管轄の刀使が既に向かっているだろう。今向えば鉢合わせる可能性もある、捕まる危険性がある。」
「なッ、なに言ってるの姫和ちゃん! 怪我人だって居るかもしれないんだよ!?一般の人は太刀打ちできないんだよ!?」
見捨てるの?と言わんばかりの憤慨。
可奈美は良くも悪くも真っ直ぐな刀使。自身の使命は人を守ることだと理解している。
「私にはやるべきことがある。 それに……我々だけでは…」
「ノロとやらを散らし、再び結合するまでの永遠ループってか?」
「…あぁ、その通りだ。」
「姫和ちゃん、でも…」
「…てめぇらが祓えなくても俺には出来る。」
「へ?」
「どういう意味かはわからないが例え祓えたとしても…捕まる危険性は残る。私は反対だ。」
「んん~?てめぇらが捕まるなんてことは万が一にもねぇよ。」
「それともビビってんのか?」
「姫和ちゃん。刀使が戦うのは何の為?紫様にどんな秘密があるのかは知らない。それでも荒魂を見逃す事は違うと思う。」
戸惑いがない真っ直ぐな目。本来の使命、それを理解した彼女。
その言葉は言葉以上の説得力を持つ。
「…可奈美、行くぞ。」
仕方なくが先行するが、その顔は憂いを断ち切ったような清々しさを持っていた。姫和自身、荒魂をみすみす見逃すことに躊躇いを感じていたのだろう。
「へ?」
「折神紫を撃つ事だけが刀使の使命ではない。」
「祓うのだろ?荒魂を」
天馬がただのヤバイやつになっちゃってる。
やばいよ、やばいよ