刀使と紡ぐ物語   作:生き甲斐探す

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いつか姫和や可奈美、天馬の過去を書きたい。

タイトルはもう決まっている。

まだ先になりそう…


刺と心

「もっしもぉし〜♡」

相手を小馬鹿にする電話が届いた。

折神紫親衛隊の客室にだ。

襲撃事件の直後、何があるかはわからない。

その場にいる者は誰もいなかった。獅童真希以外、誰もいない。普段紅茶を淹れてくれる皐月夜見の姿もない。他の親衛隊は捜索任務で出払っている。

この場に居合わせたのは獅童真希ただ一人。

(この状況、出るべきか?)

戸惑い、迷い、その他の感情を抑え込み、思考の末、通話に応じる。その感情の中には先の戦闘で受けた不可視の攻撃を解明したい、知りたいといった願望。奇跡にも等しい期待がある。この電話がただの業務用電話かも知れないのに。

 

「…あれ、聞こえてないかな?もしもし?あのぉ〜折神紫さんに用があるのだけど、」

(やはり紫様関連、だったら…徹底的に聞き出す。)

「…何者だ。」

 

「あっ。やっぱり繋がってた。…折神紫さんに代わってもらえるかな?」

 

 

「…この番号を知る人間はそう居ない。貴様、何者だ?」

 

 

 

「その声は知らないなぁ。管理局の人たちとは違うみたい…あぁ 末端の刀使か…なら言伝を頼んでいいかな?」

 

 (なんだ…この男、会話が通じないなか?)

 

「…言伝?」

 

「二十年前の…すべては時期に終結すると…」

 

「!?二十年前?何のことだ?大荒だッ」

 

「ご本人に聞いてみるといい。」

完全に言葉を遮られた。

プッと獅童真希からの問いかけから逃れるためか電話が切られてしまった。 

彼女の期待道理の結果にはならない。そもそも期待できる人物だったかも定かではなかった。だが一つわかるのは電話の主は真実に近い答えを持っているということだった。

 

(二十年前の?やはり大荒魂討伐と関係が!?)

 

着信履歴にも残らなかったその電話は後に未来を左右させるほどの効力を持つこととなる。だが、彼女を含め誰もその未来を知らなかった。

 

 

 

「…その紙切れ、信用できんのかよ?」

珍しく可奈美に問いかける天馬。

紙切れとは先のやり取りで忘れ物と称して舞衣から受け取ったクッキーと共に添えられていたものだ。

「罠の類ではないのか?」

 

「舞衣ちゃんが渡してくれた手紙だから、罠なんかじゃないと思う。それにあの字…舞衣ちゃんの字じゃない。」

 

「ふぅん、信用してんのね?あの女のこと。」

 

「だって…こんな所まで私を心配してきてくれる人だよ。」

 

「…わかった。…」

 

その後、電話の主と会話し、待ち合わせ場所にフードゴリゴリで潜伏する3名。

見たところ人気も少なく静かな場所だったが…決して安全というわけにはいかない。

「この場所で合ってるのか?」

 

「うん、電話ではここでって、」

 

「罠だった場合、戦闘もあり得るぞ。」

 

 

気を引き締めておけ…とでも言わんばかりの口調。

 

「…?」

その緊迫した空気の中天馬の意識は別の所にあった。

 

天馬はニタァと笑みを浮かべる。

 

姫和脅かしたらどうなる?

 

「……バァ!」

 

「!?ッッ」

ビクッ

 

結論:凄くびっくりするでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「オイっ!?何をする!?」

 

「見てられねぇほどガチガチだったからよ。」

 

「私は、別にそんなこと…」

 

「アハハハッ あれ?姫和ちゃん、緊張してたの?」

 

しょうがないなぁと小突く可奈美。その顔は出会って数日の姫和を苛立たせるには十分すぎる表情だった。

苛立ちと恥ずかしさの余り憤慨する姫和、その様を大爆笑する天馬。

 

 

大爆笑の末目尻に涙までも浮かべている天馬は更に追い打ちをかける。まるで瀕死寸前の敵に銃弾を撃ち込むように。それは見事に姫和のメンタルをけずりとる。

 

「面白ぇ面してたぜwww」

 

「グギギィッッ」

よほど悔しかったのか、ワナワナと肩を震わせ歯を食いしばる。

 

今度は可奈美と絡み始める天馬。

標的が移り、遠目で観察していた姫和はあることに気がついた。

 

先程の緊張感は明らかになくなっていたのだ。

 

(コイツ…場を和らげるために?)

 

 

そんな矢先…

「居た、こっちにいたのかぁ。」

そこにいたのは、一人の女性。見るからに社会人。その女性の手から傘とは別にレジ袋のような物が差し出された。

 

 

和やかな空気の為か、連日に渡る逃亡からくる疲労の為か全く気配に気づかなかった3者。天馬ですら気づかなかった。

いや、気づけなかったのである。

その距離約5メートル強。

 

追手の刀使の奇襲だったら確実に間合いを詰められゲームオーバーだった。

 

(不意をつける状況で仕掛けてこなかった時点で恐らく追手じゃねぇが…) 

不意を突かれる恐怖以上の屈辱に歯軋りする伝馬。

 

(…反省は後か…)

 

天馬は姫和程疑い深い訳ではない。それでも彼女が追手である可能性を考慮する。

天馬は、疲労困憊、更に意表まで突かれ冷静を完全に失った姫和に代わり前に出る。

 

 

「お、君が正体不明の反逆者(ナイトくん)?」

 

「…そういうてめぇは?」

手渡された袋を強引に奪い取り探りに入る。間合いの詰め方からして何処か戦闘訓練を受けた気配を感じたためだ。

彼は一度消した可能性を再び鑑みる。

 

コイツは安全か?

 

「っと、そうだった、私は恩田累。可奈美ちゃんはさっき電話で話したから分かるよねぇ。」

 

「あぁ、そうそう、君たちを捕まえるためじゃないから、羽島学長に頼まれて ね?」

 

 

その後彼女の誘導のもと影に停められた車に乗り込み彼女の自宅まで送られた。ここまでに至る経緯を説明されながら、大方の事情を知らされる。

 

 

 

 

 

 

「うわぁーー!!大っきい!これが累さんのお家?」

 

「…ちいせぇなぁ…」

 

「!?天馬さん!?」

 

「…なんでもねぇよ…」

天馬の呟きに驚く可奈美。

可奈美が知る由もないが、天馬の家系 鸕宮家は元々大きな家系であり、つまるところ天馬は田舎のボンボンなのである。その敷地の大きさは計り知れない。

 

 

だが彼女の気を悪くしてはと何故か本能が語りかけてきたのでその続きは言わない。天馬が自身を曝け出すのはまたいつかのお話。

 

 

「ひどいなぁ、これでも結構自信あったのに…それに比べて可奈美ちゃんの素直な反応。」

 

「姫和ちゃんはどう思「お邪魔します。」…あれぇ?」

 

「もう 姫和ちゃん。失礼だよ。」

そう言い通されたマンションの一室へお邪魔する可奈美。

「って…思ってたのと違う…」

 

「可奈美ちゃん!素直なのはいい事だけど…それは言わないで!汚いとか…」

 

想像以上の広さに大喜びの可奈美、それはそれは凄く元気で疲労が溜まってないはずないのだが…兎に角物凄く元気な可奈美。 

だったが、部屋の汚さを見て急に元気を失う。コロコロと表情を変える姿はやはり年齢相応。

この元気な娘の反応に現役社会人はついていくことはできない。なんせ同年代の友人ですら苦労しているのだから。

 

(…これも生きた時代の差なのかしらね…逃亡中だっていうのに凄く生き生きとしてる。逆に姫和ちゃんは落ち着きすぎているけど…)

 

 

「…先お風呂入って。体冷えたでしょ。」

体を見回すと気づかなかったが、先程の雨をもろに直撃したため床を濡らすほどボトボトだった。

 

 

「可奈美、お前は先に入れ。」

そう言い可奈美を部屋から追い出す。あの元気さは完全にグロッキーな姫和には応えるようだ。

 

可奈美の入浴を確認し本題へ入る。

「ここまでは美濃関の学長の指示と聞きました。貴方も美濃関の?」

 

 

「えぇ、元刀使よ。とっくに引退してるし、御刀も返納しちゃってるけど。」

 

「まさか…」

 

「予め言っておくけど私は管理局とも何処とも繋がってないよ。 安心して。」

 

「…」

未だ警戒中の姫和を目尻に会話に参加する天馬。

姫和からしたら信用しろというのが無理なのだろう。

これでも我慢している。

 

「…鸕宮天馬…調べてみろって(トップ)に伝えろ。」

 

「オッケ、ありがと…天馬くんって意外に親切?」

 

「なんてね。天馬くんはどうして二人を」

 

「…命令だ。土御門有馬(トップ)からのな」

 

「へぇ、君も苦労してる側?」

なんちって

そう言い動き出す累。

タンスの中から何かを取り出す。

「あ、部屋の物は適当に使っていいから、明日早いのでもう寝るね。可奈美ちゃんにもよろしく。」

 

忘れてたと言わんばかりに二人に先程取り出したタオルを渡す。その後テレビをつけ部屋をあとにした。

 

その後、ソファに座り何となくテレビを見ていた。

 

気まずいというか両者とも探り合いをしている為か姫和はシリアスな空気を感じていた。

 

その空気を断ち切るかのように、そもそも空気など、はなから気にしていなかった天馬は自分のタイミングで問いかける。

 

天馬自身、どこか思うところもあったのだろう。

彼は決して空気が読めないわけではないのだから…

 

「…お前、なんか俺に聞きてぇ事あんだろ?」

 

「…聞きたいことは山程ある。整理がついてないだけだ。」

 

「なら俺から……折神紫とお前の関係はなんだ?」

 

「……折神紫のその中に巣食う大荒魂は(かたき)だ。」

     

「ふぅん、まぁそんなとこだよな。だが、完全な奇襲も失敗。はっきり言って無謀だぜ。」

 

「まだやる気か?」

 

「ッ…わかっている。それでも…」

言葉が続かない。続けられない。真っ直ぐな意志が折れそうだ…

 

天馬の言葉に悪意はない。ただの事実。

姫和自身なんとなくだが理解はしていた。敵わないと…

 

だが、そこまで理解していても譲れないものがある。姫和の人生は今の今まで宿願のためにあった。自身もそれを自覚していた。

体が、カタカタと震える。姫和とて女の子だ。人生を掛けた目的が成し得ないと分かってしまったら、叶わないと分かってしまったら…

 

 

 

(…私には何が残るんだろう…)

 

「…私は…」

 

目元が熱くなる。声が滲む。

その表情は今にも泣き出しそうだろう。幸いタオルで顔を覆っていたため天馬には見えていないだろうが…

 

(…強く在りたい…目的を成し遂げたい…)

 

「姫和ちゃん!お湯どーぞ!」

不意に届いた助け舟。この空気をぶち壊す破壊力は一人しかいない。

「…あぁ、」

助け舟に身を任せ、力なく告げ、その場を後にした。

 

 

 

その後ろ姿はあまりにも細く、か弱く、普段の凛々しさを感じられない。

 

「天馬さんって、意地悪なんですね!」

 

「チッ、聞いてやがったのかよ…」  

 

ガラッと窓を開けガレージに逃げるように飛び出す。

 

 

「…何でこうなっちまうんだろうな…」

 

先程の会話、天馬はその間ひたすら黙って聞いていた。

 

天馬は知っている。迷う人の最後を…

 

だからはっきりしておきたかった。ただそれだけだったのだ。

 

「ハァ……千里ねぇちゃん…」

 

ビル風が強く吹き荒れ、都会の街に消えてゆく。

空を見上げるその表情はやはり消え行きそうな寂しげなものだった。

 

 

 

 

 




覚えておいて欲しいキャラ

鸕宮天馬 主人公

土御門有馬 陰陽師の頭

外院周助 鸕宮天馬の傘下


とりあえず覚えておいてほしいです。
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