モハビ・エクスプレスの拠点である廃棄された複合レジャー施設を、アームの先にある丸鋸やバーナーを使い作業するロボットや、周囲を彷徨くサイボーグ犬達を横目に、M3は渋々ながらにスケアクロウに施設を案内されながら歩いていく。
ラウルはそのままM3のことをスケアクロウに任せてどこかへ行ってしまった。
「ほ、本当に放置されるなんて…… 酷いです……ラウルさん」
「あら、彼はまだここでは良心的でかなり真面なほうよ。 貴女の買い手である運び屋なんて放任主義もいいとこよ」
そのせいでラウルが苦労してるんでしょうけどね、と言いながらスケアクロウは歩みを止めた。
M3もその場に止まり、目の前の施設を見上げる。
そこには掠れた文字で【ふれあい動物園】と書かれたゲート看板があり、文字の横にはデフォルメされた動物のマスコットイラストが描かれていた。
……イラストの一部が剥げ落ちたりして大変ホラーな雰囲気を醸し出している。
「その放任主義のせいで大きく問題になっているのがここです。 どこから連れてきているのか知らないですが、ここの動物飼育スペースには得体のしれないクリーチャーが飼育されてます」
「も、もしかして、E.L.I.D感染生物ってやつですか……」
少し怯えを見せながらM3は言うが、スケアクロウは首を横に振りながら、
「いいえ、それとはまったく違うどころか、コーラップス対して免疫があるクリーチャーばかりみたいです。 人類の研究者なんかは喉から手が出るほどのサンプルでしょうね」
そう言いながら険しい顔をする。
「ちなみに過去三回、クリーチャーが脱走する事件が起きてます。 その一回に出くわしたことがありますけど……思い出すのも悍ましいです」
様子が豹変するスケアクロウ、僅かだが肩も震えていた。
「い、一体何が……」
そのスケアクロウの様子にM3は問うが……すぐに聞くべきではなかったと後悔した。
「M3、貴女は1m級の
「あ、あわわ……」
顔を真っ青にするM3と元々白い肌である顔を更に青褪めさせるスケアクロウ。
未だに鉄血の人形であるスケアクロウに懐疑的であったM3だったが、一気に同情的な心境になる……どころか、これから自分自身もその境遇に置かれると気付いてしまうのだった。
「奥にある水族館も同じようにナニかが飼育されてるようです。 私は見たくもありませんが……とりあえず、ここを離れて次へ行きましょう」
そのまま、魔の動物園から離れてしばらく歩くと少し盛り上がった丘の上に展望台と思われる施設が建っているのが見えた。
丘の上付近にはちらほらと蠍型のロボットが見え隠れしている。
そして、なんとか気を取り直したスケアクロウは続いて説明し始める。
「あの展望台周辺は立入が禁止されているゾーン。 私はもちろん、許可のない者は立ち入れない場所です」
「も、もし入ってしまったらどうなるんです?」
「こうなります」
スケアクロウは腰に装着され待機状態だった小型ビットを立入禁止ゾーンへ向かって飛ばす。
ビットが展望台のある丘に向かって飛んでいく……が、突如その下の地面から蠍型の大小様々なロボットが次々と現れ、尾の先から青いレーザーをビットに向かって撃ち始めた。
≪止まれ! 貴様は禁止ゾーンに無断で侵入した! よって我が僕が貴様らを破壊する! ロボ・スコルピオン、攻撃せよ! ≫
蠍型のロボット達が音声放送を響かせながらスケアクロウの飛ばしたビットに殺到して破壊しにかかる様子を見て、M3はついに目のハイライトが消えていく。
「……マトモな場所無いんですかここ」
「下手なことをしなけりゃ何も起こらないだけまだマトモよ、ここは」
ビットを呼び戻して回収するスケアクロウ、どうやらエリアから離れると攻撃はしてこないらしい。
「……全部避けたと思ってたのですけど、前より命中精度が向上してるみたいですね」
ショートして火花を散らしたビットを手に乗せ眉を顰めるスケアクロウは、後で修理請求をラウルにしておくことにした。
「そしてここが事務棟ですわ」
「お、思ってたより普通ですね」
セキュリトロンが二体で入口の警備をしていたが、案内されたのはそれ以外はごく普通の古ぼけた事務棟だった。
次はどんな魔境があるのかと身構えていたM3だったが、杞憂に終わったらしい。
「運び屋が帰ってきていれば恐らく中で会うことができるでしょう。 もし居なければラウルも戻ってきているでしょうから、彼に聞きなさい」
「あ、案内してくださって、ありがとうございます」
「貴女がグリフィンの人形だったのなら、案内ついでに放り込んであげたのですけどね……」
そう言いながら浮遊し、そのままこの場を去ろうとするスケアクロウ。
だが、その前にM3はどうしても再度聞いておきたかった。
「……やっぱりスケアクロウさんはまだ鉄血と繋がった状態なんですか?」
「ええ、修理されただけで鉄血とのネットワークもそのままです。 もちろん『傘』も……これはグリフィンやI.O.Pではまだ極秘でしたか」
「じゃあ、何故ここに? モハビ・エクスプレスで雇われてるとかじゃない……ですよね? ここに居つく意味がよくわからないんですが……」
「そうですね、一応は鉄血側からの橋渡し役を任されてるというのもありますが……救ってくれた愛しの彼への恩返しをしたいからというのが一番ですかね」
スケアクロウは完全に鉄血側の人形だと正直に白状するが、M3は後半の部分でさらに疑問が増えてしまった。
先ほど彼女は、愛しの彼と言ったか?
「い、愛しの彼……ですか?」
「ええ、彼は私の破壊された身体を修理し、自壊した電脳を修復してくれたのですわ!」
そう答えるスケアクロウの顔は口元がマスクで隠れていてもなおわかる程に緩んでいた。
その表情は正に恋する乙女の顔というやつだった。
「か、彼と言うと運び屋さんでしょうか?」
「あんな何考えてるかわからないのと彼を一緒にしないでくださいます?」
M3の言葉に、急に冷めた目付きになるスケアクロウ、かなり心外だったらしく心なしか睨まれてる気がした。
(と、ということはラウルさん……じゃなさそうな態度だったし、もう一人いるE.L.I.D感染者っぽい人なの……かな?)
これ以上スケアクロウの地雷を踏まないように思案しているM3だったが、そこで後ろからビープ音と犬の鳴き声が聞こえた。
<──♪ ・―!>
「ワウッ ワン!」
二人の後ろから現れ近づいてきたのはドローン型のロボットとサイボーグ犬、アイボットのED-Eとサイバードッグのレックスだった。
M3はそのまま事務棟へ入っていこうとする二匹(いや二体?)を避け行き先を譲ろうとする……が、突如横からスケアクロウがその場に立ち塞がった!
いや、正確にはED-Eに対してだけだったが……
「あぁ! おかえりなさいED-E♪」
<!! ──!>
そのまま、目にも留まらぬ速さでED-Eを胸元へ抱き寄せ、愛おしそうに撫でるスケアクロウ。
ED-Eは警告音やビープ音を鳴らしながら嫌がっているのかスケアクロウの抱擁から抜け出そうとしているが、曲がりなりにも鉄血のハイエンドモデルである彼女の拘束から軽量級ロボットであるED-Eは抜け出すことはできずなすがままだ。
「愛しの彼っていうのはもしかして……」
「ふふ、そうですこの彼が私の愛しのED-Eですわ」
ED-Eにゾッコンなスケアクロウに呆気にとられるM3、だがその熱愛っぷりに目の前の現実を受け入れざる得なかった。
鉄血の人形は人類を敵視しているが、人でない機械同士ならばそういうのもありなのか?
片方のED-Eは嫌がってるように見えるが、実際に言葉がわかるわけではないのでなんとも言えない……
「な、なんにせよ私達が入れる空気じゃないですね……」
「ワゥン……」
初めて顔を合わせたばかりであったM3とレックスであったが、この空気に互いは共通して意識を通わせた。
【ロボ・スコルピオン】
大蠍のミュータントをモチーフにして作り出されたロボットで様々なサイズがいるが、最低でも1mサイズ以上はある。
ハサミ部分は強力なペンチアーム、しっぽ部分にはアトミックレーザーが搭載されている。
中にはステルス機能を持ったものや、接近戦や射撃戦に特化したタイプとバリエーションは意外と多い、また破壊されると小規模な爆発を起こし爆風で敵を巻き添えにする。
運び屋がアメリカ東海岸を旅した話を聞いた製作者はそれにインスピレーションを受け、最近は地中を潜行できるように改造された。
この話を読んでる方の情報はどんなもんでしょ?
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ドルフロ知ってるけどFallout知らん
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ドルフロ知らんけどFallout知ってる
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両方とも知ってるぞ
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