「なぁ、ラウルのオッサン。 運び屋の奴またどっか行っちまったけど、あの放任主義いい加減になんとかならないのかよ」
「なんで俺に言うんだ、俺に……」
備品室で銃のメンテナンスをしていたラウルを横から暇つぶしに眺めていたCZ75は、突然に運び屋に対しての苦言を口に出す。
そもそもあの一件は運び屋の放任主義が原因であるともいえる。
地下での騒動も落ち着いたが、Mk23は未だに目を覚まさない中で、またも放置してどこかへ行った運び屋に流石に我慢ならなかったようだ。
ラウルは爛れた顔を顰めながらめんどくさそうに返事をする。
「ここで一番付き合いが古いのってオッサンだろ? いい加減アイツに注意とか言ってくれよ!」
「こんな醜い年寄りよりも、お前さん達のような目麗しい人形が言い寄ったほうがいいんじゃないか? あとボスと一番古い付き合いなのは俺じゃない、ED-Eだ」
「一番意見できそうなのがオッサンしかいねーんだよ。 ED-Eとレックスがアイツに物言える訳ねぇし、リリー婆ちゃんもあんなだし……あのモビウスっていう爺さんもアテにならないじゃん」
「あのボスに苦情言って、まともに聞き入れると思うか?」
ラウルは呆れ半分に言葉を返す。
そう言われるとCZ75もやはり、誰が何を言ったところで運び屋が言動を曲げるところが想像できなかった。
だが、ふと思う。
「……なぁ、前から思ってたんだけどさ、アイツって出会った頃からそんなんだったのか? よくあんなのに付いていく気になれたな」
「あぁ、他の奴は知らんが俺は助けてもらった恩もあるしな……あの時はボスに対していけ好かない態度をしてたもんだがね、今も感謝してるよ」
「へぇ、助けてもらった恩ね」
「リリーの婆さんより一回りデカい連中に囲まれながら、毎日そいつらから死刑宣告受けるのを想像してみな……そんな所に助けが来たら誰だろうと救いの神に見えるってもんさ」
「そ、想像したくもないなそれ」
一瞬想像して肝を冷やす様子のCZ75を見て苦笑するラウル、だが直後にラウル自身も腑に落ちなささそうな様子で続ける。
「昔はボスもあんなんじゃなくてかなり真っ当で善良な人間だったはずなんだが……」
「善良? ってかアイツが人間かよ、信じらんねー」
「いや、まだビッグ・マウンテンとやらから帰還してくるまで……は……」
突然に言葉に詰まったかと思えば、なにやら考えたり思い出す素振りをし始めるラウル。
そんな様子を怪訝な風に見るCZ75。
「どうしたんだよ、オッサン」
「……ちょっと気になることが出来てな、少しモビウスの爺さんの所へ行ってくる」
「え!? なんだよ突然、待てよ!」
急に思い立った様にしてラウルは険しい顔をして備品室を出て行った。
初めて見た普段の皮肉ったような態度を急変させた様子のラウルを見たCZ75は何事かと慌てて追いかける。
「ふむ、運び屋が今の様に傍若無人となった原因の一端を知っているのではないかと、ワシに心当たりがないかと聞きに来たわけか」
「……俺の記憶が正しければボスは爺さんと出会ったビッグ・マウンテンに行くまでは、かなり真っ当で善良な人間だったはずなんだ」
「手短に答えれば、その原因を知っとるのは確かだ。 更に人の枠から外れる事になった原因もな」
ラウルの後を追って展望台内にCZ75が入ると、Dr.モビウスを早々に問い詰め始めたラウル。
「つまりはボスの言動がおかしくなったのはやっぱりビッグ・マウンテンに行ったのが原因というわけか」
「だが一つ誤解を解いておくと、頭を弄って性格を意図的に改変したとかそういうものではないと言っておくぞ……いや、頭を弄られてるのには変わりはないのかの?」
「おい、どういうことだよ?」
ラウルとDr.モビウスの話に付いていけないCZ75。
しかし、口を出そうにもどこに突っ込んでいいのかわからないまま話を聞き続ける。
「まずラウル、お前さんはどこまでビッグ・マウンテンと、その出来事を知っておる?」
「……たしか戦前から様々なイカれた技術テクノロジーを生み出した場所で、そこにいる科学者連中をボスが説得して従わせたとか聞いてるが」
「シンクタンクの連中のことじゃな、結果の話としてはそれで合っておる。 だが、その過程で何があったかと言うことは聞いていないようじゃな」
「その過程とやらでボスが変わっちまったってことか」
「まず初めに、ビッグ・マウンテンに来た運び屋は【脳】【心臓】【脊髄】をそれぞれ抜き取られることになったわけだが」
「「はぁ!?」」
いきなりの無茶苦茶な話にラウルもCZ75も唖然とする。
「シンクタンクの連中に張られた罠にかかり、他のロボトミーのように脳を抜き取られるどころか心臓と脊髄まで抜かれて機械部品と置き換えられたわけだな。 あ、ロボトミーっていうのは地下にいる男連中のことじゃ、あれは脳しか抜き取られておらんがの」
「……オッサン、アタシなんかとんでもないこと聞いてる気がするんだけど」
「……言うな。 俺も長い間生きてるつもりだったが、ここまでイカれてる展開は初めてだ」
もうついていけない、そんな二人を気にせず話を続けるDr.モビウス……
「普通ならそんなことをされれば他のロボトミーの様に木偶となる。 だがそうはならなかった、肉体と脳を切り離されてもだ」
本当ならば他のロボトミーと同じ運命を辿るはずだった運び屋、しかし抜き取られた脳を廃棄される前にDr.モビウスが回収し、その自分の脳を取り戻すまでの経緯がかいつまんだビッグ・マウンテンでの出来事らしい。
シンクタンク、ロボトミー、奪われた運び屋の脳、他にもいくつか語られたとんでもないテクノロジー……更に続けて語っていくDr.モビウスを二人は一旦止めに入る。
「わかった、わかったが…… つまりは脳味噌を抜き取られたせいでボスは今みたいに変わっちまったってことか?」
「なんで脳と切り離されて、しれっと動き回ってるんだよ。 てか本当に
「うむ、そこなんじゃよ。 何故、脳と身体が分かれても正気であったかという話は今の所は置いておく。 それと今は脳はちゃんと頭の中に戻っとる……が、その戻るまでの過程が恐らく原因だろうな」
またも話を続けるDr.モビウス、だがその続けて語られた内容にまたも驚愕することになる。
「驚いたことに儂が回収した運び屋の脳は自ら明確な意思を持っておった。 今でも思い出すわい、理性的で聡明な脳だったとな……少し癇癪起こしとったがな」
「……それはつまり切り離された脳がボス自身とは別の意識を持ってたってことか?」
「うわ、もう聞いてるだけでこっちの電脳もおかしくなりそう!」
話を聞きながら頭を抱え始めるCZ75をよそにDr.モビウスは話を続けた。
「そうじゃ、そして運び屋の脳は荒廃した世界での旅路に嫌気がさしておったようでな、自分の脳を取り戻す為にワシの元へやって来たはいいが、脳が戻りたくないとゴネて運び屋自身との意見の対立が起こったのだ」
「……もう思考が追いつかんから簡潔に聞くが、結局はボスが今みたいな無茶苦茶するようになった原因っていうのは何だ?」
「なに簡単な話だ…… それまで運び屋は
「たしかに今思い出すとボスの行動からすると納得できるが……」
「いやそれ、普通にヤベェ奴じゃねぇかよ……」
到底信じがたい話に開いた口が塞がらないラウルとCZ75。
理性というブレーキが本能からの好奇心や行動を止めなくなった人物、人はそれを精神異常者……もしくはサイコパスという。
運び屋は別に悪人になったというわけではないです。
あくまで好奇心や興味を持ったことを最優先にしちゃうだけの精神異常者ってだけです。
つまり余計に質が悪いということですね。
【ビッグ・マウンテン】
Fallout史上トップクラスの科学技術テクノロジーの粋を集められた研究機関……だった場所。
シンクタンクと呼ばれる主席研究者達の狂気の実験場と化していた所を運び屋が現れ、結果として運び屋の主導の元で世界の繁栄の為に科学再興の地となった。
……が、実際は運び屋の玩具箱と化している。
巨大な山の中心部をくり抜いたクレーター状の地形で、その為別名ビッグ・エンプティとも呼ばれている。
コーラップス技術を持ち込んだら絶対にダメな場所。
【ロボトミー】
ビッグ・マウンテンの技術により脳外科手術によって脳味噌を抜き取られた被験者達。
抜き取られた脳の代わりにテスラコイルが埋め込まれている。
痛み等の感覚をほとんど感じない為に非常にタフであり、また力もブレーキなしのフルスロットルなので相当強い。
変に物を収集する癖があるらしい。
この話を読んでる方の情報はどんなもんでしょ?
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ドルフロ知ってるけどFallout知らん
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ドルフロ知らんけどFallout知ってる
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両方とも知ってるぞ
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