FALL OUT GIRLS   作:WarBoss

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犬もどきさんの【METAL GEAR DOLLS】でのエピソード『緊急合作案件!! 危険な運搬物』より、緊急のとても重要な物資輸送依頼が来ました。

いったいどんな重要な物を運ばされるんだろうなぁ(すっとぼけ)


DEATH STRANDING

 とある日の輸送依頼の途中でそれは起こった。

 

 輸送の依頼主はMSFというPMCで、G&K社が規模で手広くやるPMCならば、MSFは質で攻めていくPMCであり、その実力と団結力は凄まじいものがある有名な傭兵集団だ。

 運ぶように依頼された物はかなり大きなサイズの木箱で、かなりの大重量(Heavyweight)を一人背負って運ぶことになるが、強化された脊椎(Reinforced Spine)頑丈な背中(Strong Back)を持っている運び屋にとっては何の苦にもならない運搬だった。

 木箱の中身は知らされていないが、依頼をしてきたMSFの戦術人形であるスコーピオンによると「重要な兵站物資」であり「下手に扱うとMSFが二つに割れかねない」かなり重要な物らしい。

 

 

 そして、そのスコーピオンからMSFの一部の戦術人形達が運搬中の物資を狙って後を追ってきているという連絡が来たのが数刻前。

 

 今は恐らく追手であろう戦車に砲撃を撃たれまくっている状況だった。

 牽制の為に撃ちまくっているのであろうが、それでも一発でも掠めればいくら運び屋でも致命傷である……致命傷で済めばそのまま平然と立ち直るのが運び屋とも言えるが。

 しかも向こうは殺しにくるがこっちには非殺傷を追加依頼してきた。

 仲間との団結力が高いのはわかったが、なら何故その一部が暴走してるのか、腑に落ちないながらも運び屋はスニーキングしながら周囲の物陰を縫い移動していく。

 

 周囲から聴こえてくる砲撃音と着弾により舞い上がった土埃が次々と降ってくる中、運び屋はヘルメットがズレないように押さえながら砲撃を凌ぐのに丁度いい物陰に隠れてPip-Boyの無線機能を起動した。

 

『あ、運び屋さん!? 今どうなってんの!? いや、だから絶対に殺しちゃダメだって!』

 

 無線応答しているスコーピオンに戦車砲を次々と撃ち込まれている現状を説明する。

 とりあえず、ついでにわかる範囲の相手の情報を聞き出す運び屋。

 

『えっとね、戦車に乗ってるのは多分FALとVectorだね、タンクデザントしてた人形がいた? ふむふむ、あーそれ多分わーちゃんとグローザだよ』

 

 戦車の砲撃が始まる前にチラリと見かけたタンクデザントしていた二体の人形のことも聞いておいたが、砲撃が始まる直前に降り立った身のこなしを見るからに手練れだと判ったが、実際にやはり二体とも特殊部隊所属の戦術人形らしい。

 

『まさか戦車まで持ち出すとは思わなかったよ。 いや、戦車隊じゃなかっただけマシなのかな?』

 

 無線越しのスコーピオンはなんともお気楽に言ってのける。

 だが現状の相手がわかった運び屋は荷物である木箱を物陰に隠し置いて、まず戦車を無力化する為に動き出した。

 

『何度も言うけど殺しちゃダメだからね!?』

 

 

 

≪運び屋とやら、出てきなさいよ! 出てこないとそのふざけた雑誌ごと全部灰にしてやるわよ!≫

 

≪やたらと撃ちまくるのをやめなさいよ、砲弾が足りなくなるわ≫

 

 煩くスピーカーから二体の戦術人形の声がする戦車に忍び寄る運び屋、近づくまでの途中で何発か別方向から銃撃を食らったが無視してそのまま近付き、戦車の履帯にC4プラスチック爆弾を取り付け離れた後に起爆装置のスイッチを押す。

 

≪っきゃあ!? やりやがったわね!≫

 

 大きな爆音がし戦車の車体が揺れる……が、履帯を損傷させるも壊し切れなかったようで、移動速度を下げることはできたものの異音を立てながら旋回し、運び屋の方へ正確に向きを変えて踏みつぶそうと前進をする。

 

 先ほどから撃ってきているスナイパーかスカウトかその両方かに監視されていると察した運び屋は懐から閃光手榴弾(フラッシュバン)を取り出すと、更に取り出したテディベアの口に突っ込んだ。

 そして、それを物陰から放り投げると暫くしてテディベアが口から閃光と爆音を響かせながら爆発する。

 これは投げ込んだテディベアを囮と見せかけ、こちらを覗いていたスナイパーやスカウト等の視界を一時的に潰す為の行為であり、相手が手練れであるほど割とよく引っ掛かる手法である。

 

≪ちょっと大丈夫!? WA2000応答して……ちっ、こいつただの運び屋ってわけじゃないわね!≫

 

 どうやら監視役の目を潰すことには成功したようだと判断した運び屋は身を屈めながら再び戦車に近づくと今度は上に飛び乗り上部ハッチを無理矢理こじ開けると、その中を覗くと上を向いて運び屋の方を唖然としながら見つめる戦術人形のFALとVectorがいた。

 

「え……ウソ!?」

 

「っ!? 呆けてないで応戦よっ、独女さん!」

 

 未だ呆けているFALを押しのけて運び屋に銃を構えるVectorだったが、運び屋は至近距離で撃たれるのを気にもせずいくつもの閃光手榴弾を次々に放り込む。

 

「フラッシュバン!?」

 

「ちょっと!? 冗談じゃ──」

 

 運び屋がハッチを閉めると同時に内部で強烈な音が炸裂するのが聞こえた後、再びハッチを空けると中には互いに庇い合ったのか、二人して抱き合って気絶しているFALとVectorをそれぞれ片手で捕まえ戦車内から引きずり出すと、互いを向かい合わせて再び抱き合う形で一緒に縛り付ける。

 互いが胸を押し付け合う形となり、その二人の胸の谷間の隙間に安全ピンを抜いた手榴弾(フラグ・グレネード)を突っ込んだ。

 二人が無理に離れようとすると胸の谷間にある手榴弾が爆発するという単純な仕掛けである。

 

 ……運び屋は()()()殺していないと言い張るつもりらしい。

 

 

 

 依頼の品である木箱を隠していた場所に戻ると、周囲に何かが爆発したと思われる跡に気が付く運び屋。

 

 実は木箱を隠した周囲にはパウダーチャージと呼ばれる物をいくつかバラまいていたのだが、どうやらその内の一つに誰かが引っ掛かったようだ。

 パウダーチャージはブリキ缶にダイナマイト火薬を詰め込んだものにセンサーモジュールを繋げただけの威力もあまりない簡易地雷のようなものだが、これの厄介な所はサイズが小さい為とにかく見つけ難く視認し辛い所にあるだろう。

 もし視認しても知らない者は唯の捨てられた空き缶と見間違い油断してしまうのも非常に厄介な所である。

 

 だが運び屋にも驚きに値する予想外のことがあった。

 実はここへ来るであろう相手が誰かは、スコーピオンの情報からほぼ予想していた。

 先程相手にした戦車に搭乗していたFALとVector、遠距離から監視と狙撃をしていたであろうWA2000、それ以外となるとOTs-14(グローザ)と呼ばれている人形だけだ。

 スコーピオンからは『お酒に目がないから、それを交渉材料にしたら案外いけるかも!』という冗談交じりの情報を得ていたが、仕掛けたパウダーチャージの目を少しでも反らせるのならと、酒の空き瓶や中身を少し残した酒瓶等を同じようなゴミに見えるようにいくつかバラまいていたのだが…… 中身が残っていた酒瓶は全て回収されていた。

 

 なんという尋常じゃない執念であろうか、運び屋はその執念にある種の敬意を払わざる得なかった。

 たとえ、そのお酒の中に炎の下剤を盛っていたとしても……

 

 

 

 運び屋は木箱を再び背負うと、目的地であるMSFの基地へ向かう前にとある中継地点を目指していく。

 MSFのスコーピオンと合流すると共に、そのスコーピオンから聞くに恐らく最大の壁となるであろうWA2000を相手にする為にED-Eとも合流するのが目的である。

 WA2000はMSFの人形の中でも最高峰に位置するスナイパーらしく、さすがの運び屋も視界外からの長距離狙撃を食らいながら基地に辿り着くのは至難の業だからだ。

 

 目潰しも一時しのぎにしかなっていないだろう。

 だが、焼き付いた視界というのは意外と治りにくいものである。

 精密な狙撃を阻害するには十分効果があるであろうと予想し、途中WA2000に狙われるのも覚悟し道中を進んでいく。

 

 狙われると不味いのは運び屋自身ではなく、背負っている木箱だ。

 

 運び屋は背中の木箱を破壊されると終わりだが、WA2000は中継地点でED-Eと運び屋が合流した時点で終わるだろう。

 ED-Eの索敵能力にはいかなる者も隠れることが出来ないからだ。

 




え? ちょっと向こうの扱い酷くないって?
い、一応殺傷しない限りはいいらしいから……(震え声)



【Heavyweight】
運び屋は重量物をまるでその半分の重さであるかのように運ぶことが出来る。
どんなトンデモな重さでも半分である。
これで金塊泥棒もお手軽ですね。


【Spineless/Reinforced Spine】
運び屋の背骨は一度抜き取られた後に、戻されるが更なる強化を得た。
それにより筋力が増強されると共に、胴体に重傷をほぼ負わなくなり装甲値も得ることになった。


【Strong Back】
運び屋の強靭な背中は、一般の人に比べ更に多く物を持ち運ぶことが出来る。
持ち運べるものが多いと言うことはそれだけでアドバンテージで優位になるということである。


【パウダーチャージ】
空のブリキ缶にダイナマイト2本分の火薬を詰め込んだ手作り簡易地雷。
その割にはそこまで威力はないが、とにかく見つけ辛く設置した本人ですら引っ掛かる始末である。

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