FALL OUT GIRLS   作:WarBoss

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受付窓口や営業もする上に自衛もできる自動販売機、しかも通販もできる。


Come on in. Coke

 とあるグリフィン基地、そこにある一室。

 中はカーテンが閉め切られて薄暗い空間となっているが、その部屋の片隅でオレンジ色に怪しく輝く瓶を挟み、二つの人影が声を潜めながら密談していた。

 

「こっ、これがヌカコーラ・ビクトリー…… 味の方はどうなんです?」

 

「クォーツとは違って意外と爽やかな味だよ。 クァンタムも飲んでみたいけどさすがに手が出せなかったよ」

 

「たしかにスターキャップ50枚は…… 私あのサンセット・サルサパリラの味苦手です」

 

 人影の正体である戦術人形のM4A1とコルトSAAは目の前の燈色に光るコーラをジッと見続ける。

 

 スプリングフィールドのカフェでの一件以来、ヌカコーラ・クォーツを飲んだM4はそれからというものヌカコーラの味にハマってしまっていた。

 ハマりすぎて定期メンテナンスの検査でとんでもない量の放射線量を貯め込んでいるのがバレてしまい、ペルシカから厳重注意と共にヌカコーラ禁止令が出されたぐらいだ。

 

 そして同じく元々コーラ好きであるSAAがM4からヌカコーラのことを聞きつけてハマってしまったのも、また必然であったとも言えた。

 しかし仕入れ先の運び屋から買い付けているスプリングフィールドは放射性物質が含まれているこのコーラの入荷を断固として認めない。

 だが、その程度でコーラへの渇望を止められるSAAであるはずもなく、運び屋から直接購入し始めるのにも時間はかからなかった。

 M4はその購入の為の費用をこっそりSAAに渡して、ヌカコーラを秘密裏に受け取っているのだ。

 ちなみにスプリングフィールドのカフェで出される品は基地が福利厚生費で購入した支給品扱いなので、基地に所属する者であれば無料である。

 

「いやー、さすがエリート小隊の隊長さんだね。 M4のおかげで随分まとめ買いできたよ♪」

 

「いえ、そんな……」

 

 グリフィンに所属する人形という立場で給金を貰える人形というのはそれほど多くはない、彼女達はあくまでG&K社の備品という扱いであり社員ではないのだ。

 そんな中で給金を貰えて尚且つ高給取りとなると本部所属の一部の小隊や、特殊な立場の小隊に所属するM4のような人形ぐらいだろう。

 実際、グリフィンから一番多く給金を貰えることができている人形は、AR小隊というエリート部隊のリーダーであるM4だった。

 

 とはいえ元々の性格もあり、人形である彼女がお金を使うことなどほとんどあることは無かった。

 ヌカコーラに出会うまでの話ではあるが……

 

「大量購入でその分安くしてもらえたし、その分しばらく飲み放題だよ!」

 

「でもこの大量のコーラをどこに隠しておくんですか?」

 

 部屋の差し込む光を遮る形で窓際に積み上げられたダース箱、二人がいる部屋が薄暗くなっている原因でもある。

 

「んーっとね、それは──」

 

 とっておきの場所がある、SAAがそう口にしようとした瞬間──

 

 

「FBI OPEN UP!」

 

 

 突然に部屋のドアが蹴り破られ、次々と侵入してくるダミー人形を引き連れたSuper-ShortyとSR-3MP(ヴィーフリ)が部屋を制圧する。

 何事かとパニック状態になるSAA、逆に突然の強襲に臨戦態勢をとるM4は流石のAR小隊のリーダーといったところだったが……

 

「なんというか国家保安局でやってた頃を思い出すな、そう思わないか?」

 

「チッ、思い出して腹が立ってきたわ」

 

 続いて入ってきたのはM16A1と416、ふざけ半分で言い合っていながらも二人の目はM4を厳しく見つめていた。

 

「うげ!?」

 

「M16姉さん!?」

 

「ペルシカに止められてただろ、指揮官も本気で心配してるんだぞ」

 

「おかげでこんな下らないことに私達が駆り出されたってわけよ」

 

 心底呆れた風なM16と、軽蔑したような目で見てくる416の視線に耐え切れずM4は肩を落として目を逸らす。

 

「しかしそれほどハマる程美味いかねぇ、これって」

 

 地面に転がった光り輝いて自己主張するヌカコーラ・ビクトリーを拾い上げて訝しげに眺める。

 

「わかってないなぁ、このガリガリと放射能が五臓六腑に染み渡ってくるのがいいんじゃないか」

 

「あんたはお黙り、コーラジャンキー」

 

 ヌカコーラの素晴らしさを称えるSAAを一言で断ずる416の隣で、M16はM4を諭そうとする。

 

「M4の好みや趣向に口を出す気はないけど、ペルシカや指揮官に禁止されたモノを飲むどころか基地内に持ち込んだのはいただけないな」

 

「……ごめんなさい、姉さん」

 

 

「M16も酒を控えろって言われてなかったっけ?」

 

「こいつの場合はもう匙を投げられて手遅れだからいいのよ」

 

「お前らな…… というか、まともに酒を飲めない416がそれ言うか?」

 

「何言ってるのかしら、完璧な私がお酒も飲めないなんてわけないじゃない」

 

「……お前のタチの悪い所は飲んだ後のことをまともに覚えてない所だよ」

 

 SAAのツッコミに対して416が言い放った台詞に笑顔を引きつらせるM16、そのやりとりを見たM4はふと声を上げて笑ってしまった。

 

「ふふっ、そうでしたね。 私達が取り締まられるならM16姉さんもお酒を控えてもらわないとですね」

 

 

 

 その後、結局観念したM4とSAAはSuper-Shortyとヴィーフリ達に連行されていった。

 今頃は指揮官に厳しく説教されていることだろう。

 

「しかしこれはヘリアンが言ってた通りよろしくない展開ってやつになってきてるな」

 

「あの運び屋、この基地だけじゃなく他の基地や本部まで顔出してるって話じゃない」

 

「本部の方はあのセキュリトロンっていうロボットに監視されてるも同然らしい」

 

「しかもAR小隊の隊長があのザマなんてね」

 

 M16が難しい顔をしながら呟くと、416は皮肉ったように言葉を返すがその顔は同じで、お互い運び屋によって痛い目を見ているのもあるせいか、二人ともどうしても疑心に駆られててしまうのだった。

 

「聞いた話じゃ、他のPMCや正規軍にも取り入ってるらしい。 グリフィンや正規軍の一部と既に関係を築いているとか」

 

「たった一人に今の情勢を動かされかねない状況ね。 UMP45もあいつに警戒してたようだけども、あいつの目的は一体何?」

 

「わからんさ、ただとりあえず今はこの山積みのコーラをどうやって処分するかが先決だ」

 

 416は詰みあがったダース箱を目の前にすると腰に手を当てながら溜め息をついた。

 

「放射能のせいで下手に廃棄できないのが立ち悪いわねこれ……」

 

 

 

 

 

 その頃、その運び屋はというと作業台に向かって黙々と問題のヌカコーラを次々と量産していた。

 その傍でM3とセキュリトロンが佇んでいる。

 

「い、言われた材料持ってきました」

 

 その手伝いをしているM3は運び屋の指示通りに空き瓶を並べ準備をしていくと、次に二種類の多肉植物を運び屋に手渡していく。

 運び屋は渡されたタマサボテンとネバダ・アガヴィの果肉を受け取る、それをビーカーやフラスコの中に突っ込み希釈してなんやかんやしたものを空瓶に詰めていきキャップで蓋をしていく。

 今度は瓶に詰めた何本かを別の実験用具を使ってなんやかんやすると、何故か発光し始めたりキンキンに冷えた状態になったヌカコーラに早変わりし、それを新たに瓶詰していく運び屋。

 

 黙々と作業をしていくそんなヌカな化学者(Nuka Chemist)をハイライトの消えた目で見ながらM3は思う。

 

(炭酸を含ませるのはまだわかるんです…… でもなんであの材料と工程のどこから放射能が追加されるんですか……)

 

 ちなみにヌカコーラに含まれる放射能について態々入れる必要があるのかと抗議したのだが、運び屋曰くヌカコーラにとっての放射能はフレーバーであって欠かすことができないらしい。

 

 M3は出来上がったヌカコーラを受け取ると傍で待機していたセキュリトロンの肩部分に次々と差し込み詰めていく、セキュリトロンにとって本来その肩部分はミサイルポッドが内蔵されている箇所であるのだが、今は改造され瓶を冷蔵する為の場所となっている。

 

 瓶を詰め終わると、セキュリトロンが起動し音楽を鳴らしながらモニタースクリーンの画面内にぎこちない態度のM3と嫌そうな態度のCZ75が映った映像が流れる。

 

《い、いつでもどこでも貴方が喉が渇いたとお思いの時に……モハビ・エクスプレスが飲料をお届けします》

 

《ったく、なんでアタシまでCM出ないといけないんだよ。 えーっと、ヌカコーラ各種にサンセットサルサパリラ、アルコール類をご提供できます。 だってさ》

 

《ほ、他にもご入用でしたらこのセキュリトロンにお申し付けください……仕事のご依頼も承ってます。 ……こ、これでいいんですか? え、まだ録画まわってるんですか?》

 

《もういいじゃんか、全部流しちゃえよ》

 

 そんなCM映像をモニタースクリーンに映しながらセキュリトロンはそのままどこかへ行ってしまった。

 

「……あ、あんな雑なコマーシャルでいいんでしょうかね」

 

 そんな疑問をつい口にするM3だが、そんなことは我関せずと運び屋は黙々と次のセキュリトロンに放り込むための飲料を作り続けていた。

 

 こうして次々と自動販売機と化したセキュリトロンが様々な地区や戦場へと送り込まれていくのであった。

 

 




ということでフリー素材なセキュリトロンです。
Falloutな飲料がほしい時に見かけたら是非購入してやって下さい。
ちなみに武装のミサイルは飲料瓶に変換されてますが、9mmサブマシンガンとガトリングレーザーはそのままな上にグレネードがヌカ・グレネードに換装されるので敵対すると手痛い反撃を食らうのは相変わらず。



【ヌカ・コーラ・ビクトリー】
オレンジ色に光り輝くコーラ。
割とあっさりして飲みやすいらしいがクォーツと同じように放射性物質が多量に含まれている。
飲むと活力が漲り行動力が増加する。
劣化版クァンタム


【Nuka Chemist】
運び屋は数本のヌカコーラを材料に、更なる種類のヌカコーラを作ったり、常に冷えた状態のヌカコーラを作り出す技術を持っている。
材料はヌカコーラのみで他は一切使わずに生み出す様は正に錬金術である。

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  • ドルフロ知らんけどFallout知ってる
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